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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
DEADMAN CALLING
87/178

コメディアン

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

 ウダルー民間刑務所前に到着してからすでに2時間が経っていた。

 遅れて到着した応援と、到着からずっと忙しくしている警部やイハラ、ルシール検事と違いアインは随分と暇をもてあましていた。

 まぁ、それもしょうがない。

 特戦班の問題児2人。ドリーとロジャーの面倒を見ろと、サンダーランド警部直々の命令を受けたからだ。

 その2人は、なにやら手提げ袋に入れてきた武器をあれやこれやと引っ張り出しては、戦略なのか願望なのか良くわからない議論を延々と先程からしていた。


 さて、このドリーとロジャーなる2人である。

 すでにサンダーランド警部が言ったように、警察の秘密兵器として扱われているコイツ等には、少しどころではない問題があった。


 この2人、ドリーとロジャーは誰もが認めるバカ、なのである。


 これが冗談でもなんでもないことが、この2人の洒落にならない所なのだが。

 もともとこの南米系の血を引く2人はニューメキシコ州で、有能ではないが気のいい警官をやっていた。

 ドリーはどちらかというとダウナ―っぽい、下ななめ方向にカッ飛んだ男で、ロジャーはいかにもな明るく脳天気な筋肉野郎であった。

 ここで、時の市長が支持率低下挽回を兼ね。警察を相手に内輪叩きに走っていたのだが、そのタイミングで大量の警官襲撃事件が発生し、警察で死人の山が作り出されてしまった。

 この時、この2人だけが”なぜか生きていた”ので、市長は周囲の反対も聞かずに無条件でこいつらを勲章と一緒に刑事にしてしまったのである。

 これによって、現場からはため息と共に市長への恨みの声が一段と高まることになる。


 なにせこの2人、揃っているとひたすらバカ話ばかりしているし。取締りくらいなら最低限なんとかできるが、捜査となるとまるで何もできない考えない。

 それどころか現場にある備品を勝手を持ち出して来ては、ひたすら下品なジョークを喋りつづけるなんて信じられないことまでする。それは、まるで才能のないコメディアンのようであった。


 あの馬鹿市長、よりにもよってアホ2人を刑事になんぞしやがって…、と現場が血の涙を流す頃。ついに、彼等の隠された力が……もとい、なぜあれほど陰惨な殺人事件に巻き込まれておいて”帰ってこれたのか”判明してしまった。

 まぁ、その後はそんなに面白い話でもなく。このアークシティへと流れてくると、その能力のみ評価されて、晴れて特戦班へ加入することとなったわけだ。


「……さ、そうだろ?なぁ、ロジャー。そいつは不味いって。警部も許してはくれないさ」

「何故だよ、ドリー。見ろって、このRPL=XLのボディを。ゾクゾクきちゃうセクシーなラインをしているだろ?こいつがブッ放す小型ミサイルは、あんな刑務所の壁程度なら一発で吹き飛ばすさ!」


 できるだけ会話に参加しないよう、つかず離れずの位置にいたアインだが、2人からもれ聞こえてきたこの発言には口を挟まずにはいられなかった。


「あ、アー。ちょっと、ロジャー刑事?それ、そのミサイルランチャーは駄目ッスよ。っていうか、なんで警官のあなたがそんな武器を持っているんデスか」

「お、アインも相談のってくれる?」

「なぁ、ロジャー。アインは俺達と違って将来有望の、特戦班確実の超人だ。そんなに手を煩わせてはいけない」

「いや、まだ違うッスから。っていうか、なにを出しているんですか。なにを!?」

「これな!ガウスライフルっていうな。ああ……おい、ドリーなんだっけ?」

「ん?ピュンピュンだ」

「そう!ピュンピュンなんだ!……違う、そうじゃない!その、レーザー銃だ!すごいだろ!?」

「違いマスって。ガウスライフルは電磁レールガンでしょ、それ。って、なんで自分の方が持ってる人よりも詳しいんスかっ」


 おおう、と2人はアインの回答に驚きの声をあげると。


「流石だ、アイン」

「凄いね、アイン」


 と微妙にハモらない声で褒めたたえる。この辺ですでに頭が痛くなってくるのだが、ここで話をやめると後でとんでもない結論を口に出すので粘り強く相手をしないといけない。


「そんなコトより。なんであなた方はそんな武器をしこたま抱えているんでスか?」

「そりゃ…………銃が大好きだからさ!!」

「銃の所持は、この国が認める権利だからね」

「いやいや、それは答えとしてはオカシイっすヨ。レールガンとか、ミサイルとか、レーザーガンとか。そんなの警官が使うなんて聞いたこと無いッス」

「そうか?」

「時代の流れなんだよね、多分」

「時代ってなんスカ!?そんなに治安、悪くないッスよ。うちの町は!……もう、勘弁してくださいよ。お2人が今回の頼りなんスから。警部もきっと期待してマスよ?」

「わかってる!だから、たっぷり持ってきたんだ!」

「これなら、軍隊相手でも1時間は戦えるよ」

「いやいやいや!だから!!軍隊相手に戦うなんて、いつ決まったんスか。今回はムショで、暴徒の鎮圧と特定の人物を確保することッス。そんな物騒な武器は必要ないんスよ!」

「そうか?」

「悩ましいところだね?確かに僕等はナパームもバンカーバスターもない。そもそも爆撃機をもっていないんだもの。ねぇ、今度新しい武器に小型核弾頭をもってきてもらおうか?」

「ちょっと!!!それ以上は洒落になりませんって!」

「大声出して、大丈夫か?アイン」

「あのレーザーを思い出すね」

「そうだ!あのレーザーガンなっ。アイン、俺達は武器を愛している。だから、お気に入りの奴には名前をつけているんだ。ちなみにレーザーガンはピュンピュン。なぜそんな名前かというと……」

「撃つとピュンピュン鳴るから」

「その通りさ、ドリー!わかってるぜ、お前の愛銃も紹介するってー。あー……あそこにあるのがそうだ。弾の代わりとなるエネルギー源が違うらしくてな。撃つと出る音が違う。だから、こっちはピュョンピュョン……難しいな、ドリー?」

「ああ。だからピョンピョンでいい」

「それでいいのか?……まぁ、いいや!そういうわけでこっちの俺がピュンピュン。あっちのドリーのがピョンピョンだ。よろしくなー!」

「…………ですカラ。話を聞いてくだサイ、2人とも。そんなおっかない武器は今回必要ない、そういっているんデス」

「え……ミサイルはいらないか?」

「いりまセン!」

「だが……だが、グレネードならどうだ?いや、ならレーザーでいい。あれ、レールガンだっけ?とにかく、この辺のはいいと思わないか?」

「……いらないッスねー」

「そんなぁ、これは刑務所なら使える装備を持ってこようと。慌てて持ってきたんだぞ。俺達は、こう見えても武器のエキスパートだ!使う場所によって、ちゃんと道具は使い分けている。あー……ドリー、なんだっけ?病院でつかってはいけないのは?ミサイルだっけ?」

「違うよ、ロジャー。EMP地雷だ。忘れたのか?あれを使うと、患者に被害が及ぶからって、ほら」

「ああ、あぁ……ああ!!そうだった、忘れてないぞ。うん、忘れてない。

 つまりだな、アイン!……今回使う……なんだっけ?そうだ!ミサイルだ!こいつはすぐれものだぞ―。

 ビルなら一階を丸ごと、銀行なら分厚い壁を、ウォール街なら金持ちを軒並み吹き飛ばすことが可能だ!なに、一発がダメでもこいつは高性能だから、続けて5発まで撃てるから大丈夫。綺麗に焼き払えるさ!」


 ……もう、言葉もない。


「わかったッス。いえ!2人が言いたいことがわかった、という意味ッス。

 残念ですが、今回はどれも使いません!仕方ないんデス!刑務所に突入、殺傷兵器は禁止の縛りがはいっているノデ。つまり、”そんなに御自慢の武器を使いたい”というなら、非殺傷兵器でお願いします!以上ッス」


 アインの言葉に、黙りこんで悲しそうな顔をしている2人を置いて。再び距離を取った。

 要望はちゃんと伝えて、あれなら一応は理解してくれたはずだ。また、決まったよ。このミサイルだ!とかならないことを祈ろう。



▼▼▼▼▼



 問題児達からは眼を離さないが、会話には巻き込まれないようにと離れたアインに、今度はコピーキャットが近づいてきた。


「大変そうだな。だがしかし、士気は高い」

「まぁ、いろいろいますけど。警官デスから、やるっていうならいつでもやりマスよ。ってことで、いつまでこのままなんでショウ?」

「心配しなくても、もうしばらくすれば始まる。発生とほぼ同時に到着したんだ。順調に運んでいる」

「……あの、俺は良くわからないんスけど。このままで大丈夫なんデショウか?」

「どういうことかな?」

「いえ、なんか政治の話だって言うし。なんか政府の上の方が横槍入れているみたいだし」

「なんだ、そんなことか。無論、大丈夫じゃない。大騒ぎになるだろう」

「っ!?」


 フサフサした尻尾を立てて、全身を硬直させているアインの事などお構いなしにコピーキャットは続ける。


「簡単にいえば、カーネル・パトリオットという男は政府に選ばれたのだ。そして、これはおそらく彼に用意された能力試験だ。彼等の期待する結果が出せれば合格。無罪放免になるが、不合格ならばそのまま。そういうことだ」

「……マジっすか?」

「そうだ。そしてあの警部がこれからしようとしていることは、その試験場からして全てを吹き飛ばそうという試みだ。失敗は許されない」

「あわわわわ」


 真っ青になる獣人の顔色を見て、コピーキャットは笑みを浮かべる。

 まぁ、アインを散々脅かしてしまったが、嘘は言っていない。なかなかに難しい勝負だと思う。


 しかしこっちが一方的に不利ということはない。デスグラジアというやっかいな真犯人を押さえている今なら、十分に勝ち目はある。問題は、この試験場に選ばれた場所の中から、どうやってあのカーネル・パトリオットを引きずり出すか、という問題だ。


 サンダーランド警部はその力がない、と判断して悩んでいた。

 自分だけではこの混乱を収められないと思ったのだ。雷人とて、人の心を持つのだ。部下達を信じないわけではない。

 しかし、未曾有の大混乱の中にむかって死の行進になるかもしれないようなことを、人間の部下達にしろとは言えなかったのだ。

(恐怖は迷いとなって彼を動きを止めさせたが、それを振りはらった今ならばやれるだろうよ)

 それは同時に彼、コピーキャットがこの場にいて、依頼されたこと……カーネル”サウザンド”パトリオットとの直接対決の時が近づいている事を意味している。だが、それに気負う様子はこの怪人にはない。


「そ、ソレで。状況は?」

「なかなか面白いことになっている。命の惜しい看守のほとんどは職場を放棄して外に出てきた。警部達が、協力を求めているが。どうやら暴動が起きた時点で彼等は看守の任を解かれているという解釈らしいな。

 協力要請を拒否して、代案として州兵の出動を言いだしている」

「うわー、サイアク」

「そうだな。まだ中にいると思われる看守達は、捕まったか。襲われたか、それとも抵抗しているのか。情報はない」

「じゃあ、あのパトリオットは?」

「フフフフ。嫌、失礼。凄いぞ、彼の活躍は。

 ここでは4つだか、5つの派閥が作られていたそうだが。すでに2つを単独で壊滅させたらしい。ほら、何度か銃声がしたり、悲鳴が上がったりしていたときがあっただろう?あれがそうだったみたいだ。

 自分達の仲間を集め、バリケードで通路を塞いだりもしていたようだが。そこを侵入して、あっというまに。1人も残すことなく叩きのめして暴れ回っているそうだよ」

「うへぇ」

「このままだと数時間もたたずに、囚人達は全員がパトリオット1人になすすべもなく狩られてしまうかもな」

「そ、それはイイ考えかモ」

「だが、そうなると政府もその頃には動くだろうから。こちらの動きも封じられるだろうな。帰っていいよ、ご苦労さんということになる」

「そ、そんなァ」

「心配はいらない。そうならないように考えて動くさ」


 コピーキャットの言葉に、さっきから電話や無線を手放せない上司達の後ろ姿をアインは見た。


「なぁ!ちょっと、来てくれよアイン!ようやく決まったんだ、意見を聞かせてくれ!」


 絡みたくない人達が、またぞろあの脳天気に明るい声で呼んでいるのを聞いて獣人は溜息をつく。

「がんばってこい」とコピーキャットがエグザイルの顔で笑顔で送り出してもらえたのが僅かな慰めで、すぐにその表情が凍りついたように固まる。


「あー、なんスかそれ?」

「何だと思う?!」

「自分からお2人に聞いているんで、疑問で返されてる答えられないッス」

「そうか!」

「…………そうですね、あえて言うなら……どこかのハリウッドムービーで見たことあるような、ゴースト退治でもするのデスか?」


 アインが2人の姿を見てそう評するのも無理はなかった。

 ダウナ―な顔のままのドリーは、分隊支援火器(短機関銃)にもみえるような重そうで銃口の長いライフルを2丁。それぞれを両脇に抱えるようにして立ち。

 ロジャーはというと、こちらはバズーカ状の電子機器のようなものを背負っていた。

(リアルランボーとリアルコマンド―で解決だ!とか言い出すつもりカシラ)

 やはり、斜め湾曲状に話がまとまってしまったのだろうかと不安に思っていると、意外なことを言いだした。


「違うな!アインのいうことをちゃんと”俺たちなり”に検討したんだ」

「レーザーはどっちだという激論もした」

「そう!あれは悩んだね!なんせ、ピュンピュンもピョンピョンもレーザーだが。ありゃ確かに死なすこともあるけれども。灰にしてしまったり、当たり所が悪くて焼き切ってしまったりという結果だ。つまり、結果的に死ぬんであって。殺傷兵器?ではないんじゃなかろうかって」

「そんなことないワケないでショ。十分に殺傷兵器ッスよ。人なんか撃ったら、ヤバイっす」

「ああ、わかっている。俺達もそう考えたさ!」

「議論の末に、だけどね」

「だからこれになった!どうだ?カッコいいだろう?」

「……ええ、マァ。ドリー刑事の持っているマシンガンの2丁撃ちとか子供心に燃えるものがあるッスね。弾倉もやたらおおきいですし、撃ちまくったらきっと穴だらけになるんだろうなーってマジ思います。

 ロジャー刑事も負けてないッスね。なんかゴテゴテしてますけど。バズーカっぽいし、っていうかバズーカですよね?それ。わー、なんか撃ったらぶっ太いレーザーが発射されたりして、凄いことになるんじゃないかって容易に想像できマス。

 ええ、1ついいですか?

 なんでそんなものをえらんじまったんスか!!?」


 思わず話していて我慢しきれず、最後についに爆発してしまったが。そんなアインを見て2人は不思議そうに顔をかしげる。


「なぜだ?だめなのか?」

「理由を言ってもらわないとさ。こっちも、長い時間をかけて悩んだわけだし」

「殺しちゃダメ!殺しはダメ!捕えて、無力化させたいんスよ!!」

「わかってる。だからコレだ……あ、お前。ひょっとして勘違いしているな?」

「?」

「ゴホン、紹介しよう。こいつはスペシャルなウェポンだ。なんせ、世界にはまだ一つしかない。なぜなら……俺達がアイデアを出して、作らせたものだからだ!」

「いつの間にそんな事を!?とゆーか、ドーやって!」

「そこら辺の事は秘密だ。それで、だ。名前を聞いて驚け?

 ドリー&ロジャー・スーパー・スペシャル・リアル・ショックガン・パックという。通称、D&R,S,S,R,Sという」

「訳わからんッスね」

「それがいいんだってさ」

「そうさ!それがいいんだ!!ほら、度々ショックガンの仕様は見直すべきとの声があっただろう?俺達がアイデアを出し、開発させたこいつは次の会議にでも提出して採用にこぎつけたい。そう思ってる」

「色々とね、権利で儲けられるって思っているんだ」

「そりゃー、スゴイ。儲かったら、奢ってクダサイね」

「おお!」

「いいよ、バージョンアップのアイデアも聞きたいし」

(それなら間違いなくすぐ出せるッスね。大きさが問題だ!)


そんな、無理矢理つまらないコメディーショーを見せられた気分になっているところに、ついにサンダーランド警部が集合の合図を出した。

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