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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
DEADMAN CALLING
81/178

本能

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

 逆転への布石はすでに用意されている!

 その思いで公園の中を突き進むタクシーであったが、意外なことにそこには人の姿がほとんど見られなかった。


「なんだ?なぜ、人がいない!?どこで集まっているんだ!!」


 苛立ちから声をあげ、ついつい力んでしまう。

 そして半ば八つ当たり気味にドライバーの頭に圧力をかけてしまったようだ。タクシードライバーは前を見て無表情のまま、また激しく鼻血をバッと吹いていた。

 それを見たことで、マルコはようやく冷静さを取り戻しはじめる。そして気がついたのだ。

 そう、そもそも客を避難させると言うあの放送。あれから全てが罠であるという事実を。


「なんて間抜けな……くそっ、これは罠だ!罠の中に自分から入っていたんだ!!」


 頭の中では何も考えられなくなり真っ白になってしまった、ためなのか。ひっきりなしに口から言葉が思考がそのまま吐き出されている。ドライバーはそれに何も答えず。淡々とアクセルとハンドルを操作し続ける。

 そして、公園の中の木々の間から再びアインが飛びだしてくると今度はタクシーの横腹に突撃を敢行した。その強烈な一撃にタクシーは見事に車体を浮き上がらせると、地面に引きずられて減速する中で2度3度と横転を繰り返していく。



▼▼▼▼▼



 衝撃が襲いかかり、激しい揺れによってマルコは意識が遠くなりかけた。痛みのおかげでかろうじて気絶することだけは免れたが、この感じでは乗っていた車が横転しているようだし、動くことに期待はできないだろう。

 腕の中の妹が息をしていることを確認すると。ドライバーの様子を見る。そちらの方は、駄目だったようで完全に気絶してしまっていた。

 なんとか離さずに握りしめていたマシンピストルを握りなおし、車の外へ這い出ると苦労しながら妹を引きずり出す。

(なにがあった?いや、それはもういい。追ってきた奴はいるのか?)

 いるのはすぐにわかった。

 くそっ、あの獣人だ。2度も体当たりでこちらに追いすがるとは、まったく超人という奴は!!


 一方で、追いすがった方のアインも無事ではいられなかった。


 ショルダータックルだけでは足りない。最初の攻撃でそう感じた彼は2度目の時はよりにもよって全力で、肩ではなく頭から体全体で突撃を敢行したのである。

 おかげでタクシーは横転し、走行不能にしたものの、自分も激しい衝撃で気を失いかけて朦朧としてしまっていた。まぁ、ようするに不覚をとりかけたわけだが。ここは逃げられないように足止めに成功した彼をきちんと褒めてやるべき状況ではあるだろう。

 しかし、デスグラジアの片方は動けないままだが、もう1人は怒り狂い、こちらを探しているのはアインの鼻が相手の放出するアドレナリンを感じることから理解できる。

(ヤベ―、こりゃヤベ―よ)

 そう、確かにこの状況は好ましいものではない。

 いくら獣人特有の超反応ができるとはいえ、精神攻撃をつかうテレパス相手にはこの睨みあいに近い状態は不利であった。更に付け加えると、逃がさないようにと全力疾走をしたものだから”自分用”の武器を一つも持ってきていなかった。

 なのでやれる事といえば、周囲に転がっているゴミか石を手にして相手に”全力でぶつける”ことしかない。


 ただこれにも問題はあって、『この1投に、己の命の全てをかける』などという、あのハリウッド映画の熱い、たとえるならば『ロッキー』のような決断を下すのはやはり簡単なことではない。

 そして当たる当たらないという問題以上に問題なのは、当てた相手の当りどころが悪ければ超人が相手といえども殺してしまう可能性があるし、狙いを外した時に起こる想定外のさまざまな結果について考えると寒気すら感じてしまう。

 こうなると、自分はここで相手の動きを牽制しつつ。仲間達が追いつくのを待つのがもっとも賢い方法だと思われた。



 マルコは自分達デスグラジアが最悪の状況に入りこんでしまったことを理解した。

 テレパスの力を使って感じる周囲の状況は、公園から人々が素直に離れていくことがわかる。そのなかでも10人ほどの馬鹿が野次馬根性を出して逃げようとしていないようだが、みな流れ弾を恐れてか遠巻きにこちらを窺っているようだ。マルコ1人の力では、もう少し寄ってきて貰わないとその思考を奪うことはできない。

 ここにきて銃を使ったのはマイナスだったようだ。

 そして近くに潜んでいる獣人の警官の思考は読めるものの、本人がどこに隠れているのかわからない。どうやら、こちらが意識を読んでくるのを想定して、自分の隠れ場所を考えないようにしているのだろう。


「ベルナデッド。おい、この馬鹿!起きろ!寝ている場合じゃないぞ」


 そう声をかけ、妹の意識にも接触して起こそうと試すが駄目だった。

 今からでも2人で力を合わせることができれば、逃げだした連中を呼び戻し、そいつらを操って警官達にけしかけることが出来るのだ。

(どうする?身動きもとれない。逃げられなければ捕まる。相手は超人とは言え、まだ一人だ…………1人?)

 不意に、名案を思いついてマルコは悪い笑みを浮かべる。

(そうだ、追ってきたのはあの獣人だったな。超人は普通の人間に比べると”精神の形や規模”が違うことが多いが。中でも獣人のそれは独特だったはずだ。変異によって得られた種族的特性は、人の持つ野生の部分につながるはず。

 つまり、苦労はするものの獣人1人なら、自分だけでも”本能を刺激して狂わせる”ことが可能なはずだ)

 思い立つと同時に、すぐさま相手の意識を探りだし、心の奥にあるであろう”野生”を探すべく意識の襞をかき分け潜っていく。



 隠れて相手の動きを観察していたアインは、相手がそれまで醸し出していた不安の空気が変わるのを感じると同時に、自分の中へザワザワと波のような”何かが入りこんで”くるような妙な感覚を覚えた。

 それは、テレパスによる意識への干渉だと勘が告げていた。

(うへっ、コッチに的を絞って来たッスか)

 咄嗟に頭の中に余計なことを考えないように空っぽにしたアインであったが、この場合かえって悪い結果に繋がってしまった。

 心を落ちつけ余計な考えをしないようにとしたアインではあったが、そのことによって精神の抵抗が弱まってしまい。目指す物を探していたデスグラジアは容易く意識の深層にまでたどり着くと、見つけた”それ”を掴み取った。

 猛り狂えばわき続ける泉音如く終わりの無い闘争本能、”獣人の野性”というものを。



 その瞬間、アインは自分の肉体におこった変化に驚き、意識がブラックアウトしてしまう。

 突然、心の奥底からコントロールの効かない激しい衝動の波が押し寄せてきて、アインの理性をいとも簡単に飲み込んでいってしまったのだ。

 そしてその危険な肉体を支配したのは、原始の衝動ともいうべき獣の意志である。


「出てこい」


 支配者として、主人としての命令を口に出すと。周りにあった木の一本が激しく揺れたかと思うと、アインが大地へと降り立ち姿を見せた。

 マルコの顔に満足の笑顔が浮かぶ。

(よし、”こいつへの支配が完璧”かを試したら。次はあそこにいた連中を襲わせにいこう。その間にこのデスグラジアは、町を出るんだ)

 いささか乱暴な計画ではあったが、こいつを使えば十分な結果は望めるはずだ。


 マルコはアインにゆっくりと、勝利の笑みを浮かべて近づいていく。

 彼を見つめるアインの目には理性がないのがわかる。瞳孔が開きっぱなしになっているからだ。

 その身体は、いつものボケーっとした空気がなくなり。かわりに張り詰めた緊張感と、離れていてもわかる激しい興奮を感じる。それは決して気のせいなどではなく。その身体すべての筋肉が一段と膨れ上がり、いつも以上に体を大きく見せているのだ。


「いいぞ、ケダモノ。俺の、デスグラジアの命令を聞き。実行するのだ。それがお前の幸せとなる。ご主人様も大満足だ」


 そういうと、アインの顎の下に向けて手をのばしていく。

 まるで、”飼い犬をかわいがる主人”のようになでてやろうというのだ。

 だが、触られる方はそんなことを望んではいなかった。ガウゥと唸り声をあげると素早く一噛み。一瞬だけ手を口に入れてから、後退する。


「っ!?……ぁぁぁああああああっっっっ!!」


 マルコは一瞬で変わり果ててしまった自分の手を見て衝撃を受け、続いて激痛に悲鳴をあげる。アインによって、その手はたったそれだけで肉を潰され、骨を砕かれてしまっていたのだ。

(だ、駄目だ!落ちつけ!慌てるんじゃない。冷静になって、相手を刺激することを忘れるな。正気を取り戻されてしまうぞ)

 痛みに顔をしかめつつ、それでもまだ自分のいうことを聞かせようという試みを止めない。

(支配だ、支配するんだ。完全に屈服させる。それで相手は服従する。間違いなくだ!!)

 苦痛を堪え、再びアインを服従させようと力を強めて意識を拘束しようする。

 しかしまたしても、この獣人は誰かの支配の手を激しく拒んでみせた。

 改めて精神を支配しようとするテレパスのマルコに飛びかかると、今度はその頭から飲み込むかのように激しく噛みつき、体ごと持ち上げ、自身の首を左右に振りかぶることで口の中で一気にその命を散らさんとした。



「そこまでだ!!アイン巡査。そいつを降ろせ」


 このとき、ようやくコピーキャットが姿をあらわれ大声をあげて、アインの作業の邪魔をする。

 獣と化したアインはすぐさまペッと口の中の男を吐き出したが、今度はこの怪人を睨んで唸りだした。命令を聞いたわけではないのだ。口の中に物を入れていては”次の奴”と戦えないから解放しただけなのだ。


「よくやった。だが、これはやりすぎだ。そんな事をする必要はもうないだろう」


 そう言うと、コピーキャットは深く息を吸い。そして吐く。

 口から吐き出された息は、煙草を吸ったわけでもないのに白い煙となって吐き出され。それはまるで”意思がある”かのように漂いながらアインの方へと動いていき、最終的にはその黒い鼻の中へと吸い込まれていった。


「ウゥ……ウゥ、うっ!?うごっ、ぐはっ。むむむむ、なんじゃこりゃ!?」


 理性をなくしていたアインだったが、突然鼻を押さえて苦しみだすと地面を転げまわった。と同時に、一瞬で興奮が鎮まると理性が唐突に戻ってきたようだった。筋肉の緊張が解け、凶暴さを感じる興奮の様子は無く、目は涙目になっていた。

 そんな彼の姿をコピーキャットは涼しい顔で見下ろすと声をかけた。


「アイン巡査、気がついたか?」

「へっ?えっ?んんっ!?ど、どうなったんスかっ」

「逮捕、お見事だった。だが、やりすぎたな。あのまま咥えて、あともう2度ほど”捻り”を加えていたら。男の方の体は引き裂かれて君の口の中で、中身をぶちまけていた所だ」

「はいぃぃっっ!?」

「混乱しているようだな。そのまま座って休んでいるといい。すぐに応援が来るはずだ」


 そういうと怪人は後ろを振り返った。

 その耳には遠方からこちらにむかってくる、複数のサイレンが聞こえはじめていた。



▼▼▼▼▼



 通信本部から『犯人逮捕、怪我人多数』の報を受け取ると、サンダーランド警部はすぐに立ち上がった。

 まず、イハラ刑事が撃たれて怪我を負い、アインがテレパスに操られかけたと聞いて心配したが、そのアインによって逮捕した犯人の片方が重症を負ったと聞いて顔をしかめた。

(やはりあいつらだけに押し付けるべきではなかったか)

 そう考えるたものの、だからといって自分が行けば良かったかといわれれば難しいところだ。とにかく、犯人は押さえたし部下に大きな怪我もなかったことは幸いだった。

 今回のことはそう割り切ることにするしかない。



「ルシール検事!」


 廊下の先から足早にやってきたサンダーランド警部が声をかけてきたのを見て、ルシールは小さな声で「ちっ、まったくなんで寄ってきちゃうのかな。しつこいんだから」と不満の声を漏らす。そのあまりのいいように、脇に控えた警備員は微妙な顔をするが、黙っていた。


「あら、警部?どうかなさいましたー?」

「話がある、検事」

「こっちはないの。自白は出た。証拠は完璧。他に何かある?」

「検事、あんたは間違っている」

「あははは、なにそれ。こっちの心に訴えるってわけ?暴行、殺人犯に気を使えって?馬鹿じゃないの」

「そうじゃない。あんたは間違った犯人を捕まえたという意味だ。さきほど、うちの刑事が真犯人を逮捕したとの報告があったんだ」

「はぁ!?なにそれ、寝惚けているのはここの署員全員ってこと?」

「こちらを侮辱しても現実は変わらないぞ、ルシール検事」


 そういうと、用意していたファイルをぽん、とそのどこまでも平たい胸に警部は叩きつける。


「真犯人は別にいたんだ。デスグラジア、アマチュアの殺し屋兄妹だ。EUで活動することが多い。だが、彼らの仕事の性質上。遠方でも仕事をすることにこだわらない。

 超人、テレパスなのはわかっている。

 3年前、ロンドンで捕えられてから注目された。刑は言い渡されたが、何度も脱獄を成功させている。”広い交友関係”のおかげでそれが可能なのだとある」


 渡されたファイルを急いで開いて目を通していく中、サンダーランド警部の説明が続く。

 だが……。


「なによ、これ?単にバカンスにこの町に来ていた殺人鬼を捕まえたと言うだけの話じゃないの。これのどこを見たらあの暴行犯が無罪だと言えるって言うの?」

「検事、繰り返すが証拠はちゃんとある。まず、彼等がこの町に来たのは決してバカンスではないと言う証拠だ。ホテルに残された記憶媒体から複数の”不審”な映像が残っていることが報告されている。

 そこにはパトリオットの事件の様子もあったんだ」

「ええ、でも……」

「まだある。彼等はここの警察署にも、潜り込んでいた。その時の様子は、防犯カメラに映っていた。気になるなら後でちゃんと見せるし、好きに証拠を調べてくれ。

 容疑者達は抵抗したためにすぐに事情聴取はできないそうだが、あの馬鹿……パトリオットの逮捕はまずい。すぐに取り消してくれ。」


 この男がここまで言うとはよほどの自信があっての事だ。ルシールにもそれはわかった。

 しかし……これは…………まずいことになった。どう説明したらいい?

 長い沈黙の後、考えがまとまらないまま大きく深呼吸をして、ごくりと唾を飲み込む。


「け、警部。サンダーランド警部、実は……実はあなたに伝えなきゃいけないことがあるの」


 ルシール検事がなにかを言おうとしたその時。

 彼等の側で世界情勢を伝えていた24時間のニュース番組が、新しいニュースを伝え始めた。



▼▼▼▼▼



「イハラ刑事ー、無事ッスか?」

「あああん!?これを見てそれいうかっ。痛いわ、ムカつくわっ。どうしてやろうか」

(うわー、男みたーい)

「それよりも巡査、よくやった!あのクソ兄妹を公園で見事に地獄に落としてやったってな。褒めてやる」

「いやいや、地獄ってどうッスか。殺してないし、褒める事じゃないでショ」


 イハラは、撃たれたものの全てかすり傷で実際には1発も当たらなかったが出血はしていた。頭や腕などに包帯を巻いており、血がにじんでいるのが痛々しい。そのかわり、素の部分が表に出て来たらしく。いつものねっとりしたセクハラだの嫌らしい目つきだのが引っ込んでしまっていた。

 怪人コピーキャットはというと、その2人の側に立ちずっと無言でいて何を考えているのかわからなかった。

 そもそもは彼にされた依頼とは”カーネル・パトリオットの起こした殺人事件”の真犯人を見つけだし、逮捕することである。その意味で考えると、怪人の役目はすでに終わっており、まだこの現場から立ち去らないのはなにか別に予感があってのことだろうか?


「だって、お前食べちゃったんだろ?」

「食べてないッス。人食べたら怖いでショ。ちょっと……飲み込みかけて、振り回しそうになっただけッスよ」

「おおー、いいね。そのまま食ったんだよな?Nipponじゃそういうの、踊り食いっていうんだぜ。知ってたか?」

「イイエ、知りたく無かったッス。野蛮スネ、Nippon人って」

「ああん?お前も食ってみろ!うまいから、ありゃなかなか悪くないぞ。あれだよ、議員と寝た時にしたデートで連れていってもらったんだ。お前もきっと、気にいるって」

「……いま、サラッと変なこと口走りましたヨ。気を付けてくださいネ。ちなみに今のは聞かなかったことにしますから」


 興奮はまだ残っていたが、現場には事件は終わったと言う安堵も漂よい始めていた。そのためこうして明るく馬鹿話をしていても、気分がいい。


 しかし、怪人コピーキャットはスッと前に出てくると2人の肩に手を置いてきた。そんな親しげな態度をとってきたことに両者が驚いていると、コピーキャットは静かに口を開く。


「残念だが友よ。我々の努力は報われなかったようだ」


 怪人の言葉の意味がわからず、その視線の先を2人も見て追った。

 救急車の荷台には携帯用のTVが置かれて流しっぱなしになっていた。その放送内容が新しいニュースを告げている。


「……が先頃の発表によりますと。アークシティでカーネル”サウザンド”パトリオットを名乗る自警団員が、●×日の深夜。

 1人の女性を襲っていた暴行犯との喧嘩に及び、相手を撲殺した犯人として正式に逮捕されたことが発表されました」


 3人に言葉はない。

 空気が加速度的に重くなっていくのを感じる。


「なんスか?これ?」

「……」

「逮捕したッスよ。真犯人、なのになんでこんなことしてるッスか?」

「……」

「これ、これじゃ……こんなことなら」

「落ちつけよ、巡査ァ!」


 体は女だが、素に戻っているイハラが低く声をあげてうろたえるアインを一喝した。


「で、でも」

「仕事はした。証拠もある。犯人も押さえた。にもかかわらず、この発表。驚く事じゃない」

「……」

「警部はこうなることを恐れ、想定もしていた。お前だって気がつかなかったわけじゃないだろ?検事は、いや検事局か。ん、司法省?とにかく、あいつ等は最初からこれを狙っていたんだ」

「???」

「わからないか?」

「す、スイマセン」


 苛立たしげなイハラの声に、思わずアインは謝罪で返してしまう。


「アイン巡査、深呼吸をしろ」


 黙っていた怪人はそう言うと、かわりに口を開く。


「つまり、今回の事件はどっちにしてもパトリオットという”犯罪者”を生み出すシナリオが用意されていた、ということだ。

 我々は捜査をして、証拠を見つけだし、犯人を捕えた。これは無駄ではない。

 しかし、このシナリオの流れを変えるにはまだ力が足りないのだ。それだけだ」

「じゃ、どうするって……?」

「知るかっ!!」


 吐き捨てるように怒鳴るイハラを手で宥めると、怪人は厳かに呟く。


「人はこれを政治の問題、というだろう。しかし、だからといって希望を失うことはない。

 反撃の手札は残っている。サンダーランド警部もわかっていたはずだ。そして、このコピーキャットはこの事件を解決するために協力しているのだ。

 さぁ、立つんだ友よ。延長戦に入るぞ」

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