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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
DEADMAN CALLING
71/178

プレデタ―

今回から第5部【DEADMAN CALLING】の開始となります。


オリジン物を書きたいという欲求が終わらない。なので某キャラクターでササッと構想を練ってみました。ところがこれがすこぶる評判が悪い。

「やめろ。書くんじゃない。病んでる。気持ち悪い」のコンボで断念。


ところで【シャドー(1994)】という映画を見たことがあるでしょうか?

面白いアメコミ原作の映画なのですが、唯一の欠点が当時イケメンすぎだった主役の俳優という。なぜその人を選んでしまったんだ、なお話しでした。週末のテレビで見かける特撮ヒーローを見かけると、いつもこの映画の事を思い出してしまいます。


さて、今回の話は上の廃棄した物語から使えそうな部品を取り出していって作りました。

どんな着地が出来るかまだわかりませんが、上手くいけばそれなりに面白いものになってくれるだろうと楽しみにやってます。それではよろしくお願いします。

 人が超人と混ざり合ったとしても、世の中の生活に大きな変化はない。

 夜の闇の中で、常にそれはおきる”可能性”を絶つことはできないのだ。

 女が1人、いた。

 彼女は建物から通りにそって続く街灯が照らす光が道を照らしていることに完全に安心をしていたわけではなかった。

 それでも、このような深夜にわずか50メートルの違いを惜しんでこんな場所に入るべきではなかったのだ。

 夜は闇を呼び込み、その闇の中では常にプレデタ―(捕食者)達がいた。彼等は息を殺し、時を待ち、得物を選別する。そして、彼女は選ばれてしまったのである。


 すすり泣きは可能な限り、最小限に小さくなるように努めた。嗚咽は漏れないよう、必死で口を塞いだ。そうしなければ、またもや男の凶悪な拳が振るわれ、すでに腫れあがっている彼女の顔はまた左右にシェイクされることになるだろう。

 唇を切り、片目は半分ふさがれ、鼻血も出ている。

 だが、その怯えを隠さなければ自分に明日はないかもしれない。

 抵抗の2文字はすでに遠い記憶の彼方に置いてきた。今はさっさと満足して自分から離れていってほしい、これだけだった。だが、彼女の望みは刻一刻と絶たれていっている気がするのは気のせいなのだろうか?


 怯える女を前に、男は舌なめずりをした。

 そして、懐からお待ちかねの”道具”をとりだすと紹介をしてやる。


「ベイビー、こいつは俺のもう一つの”息子”だ。こいつはいい。なんといっても、キレ味が最高だ。前もこいつで。つまり、お前の前の女の事だ。

 そいつもセンスの無い服を着て抵抗したんだ。この俺が声をかけたのを無視してな。あれも激しかった。

 だが、こいつであいつの何百ドルするかしらねーが、服を裂いた時のことさ。フフッ、笑っちまうよ。なんと悲鳴をあげたのさ、可愛い声で、ィギャーってな。

 なんでそんな声をあげたと思う?この、俺の、”息子”が悪さをしてな。ちょいと皮を裂いて、肉まできれいにカットしちまったのよ。そりゃ……声もあげるわなぁ?ああ、分かるぜその気持ち。

 でもな、俺はそれが気にいらねぇ。そうなると、満足するまでノンストップよ」

「……殺したの?」

「殺す?俺が、女を殺すだって?馬鹿な!」


 なぜか奇妙な安堵のようなものを女は感じた。よかった、気のせいであったか。それなら、このまま黙って耐えてさえいれば…………。


「俺は女を殺したことはない!だが、女達はいつも死んじまう!!なぜだ!?!

 ただ声をかけて、気持ちを通じ合わせ、愛を確かめ合いたい。それだけのことだ。教会でも言うだろう?愛は何よりも大事ってな。そうだろ?あそこのホモ野郎共はいつもそうやって、したり顔で説教している」

(ああ)

 絶望が心の中にシミとなって広がるのを感じる。やはりだ、やはり自分は運が無い。もう、助からないのだ。

 男のいう”息子”が、わざとらしく彼女の目の前に近付けられる。

 殴りつけるという効果も狙っているのだろう、無骨なナックルガードがついている。そしてその刀身はアラビアの貴族が映画で振り回すようなのたくっていた。その銀色の冷たい輝きは、よく手入れがされているのだろう必要以上のキレ味であることを主張している。


 死が近づいているのを感じていた。

 獲物としての無慈悲な運命が自分にも来たのだと思い知らされていた。最初に、怒りと屈辱があり、次に恐怖と嘆きがそれらを綺麗に押し流していってしまった。もはや、逃げる力も残っていない。



 突然、ヒュンと風をきって闇の中からビールの空ビンが飛んでくると女を壁に押し付けるようにして組伏せていた男のはるか上を通り抜けた。それは壁に叩きつけられると、粉々に砕けてあたりに飛び散る。

 誰かはわからないが、自分めがけて投げられたのだと男は感じ取り、体を丸めて震えている女を放り出すと立ち上がった。瓶が飛んできた方向にこれみよがしに手にもったナイフを見せびらかしながら、声を上げて警告する。


「誰だ!?ふざけたことをしやがって、こっちのお楽しみを邪魔するんじゃねぇぞ。おれの”息子”にてめーの粗末なモノを切り落とされたくはねぇだろうが!」


 そうは言いつつも、すでに相手の存在は見てとれた。

 闇の中に立つ男が1人いる。そう、たった1人だけだ。

(バカが、イキがりやがって。自分がやっている事、わかってないんだろうよ)

 クズはそう考えるも、せっかく捕まえた女を放って駆けだしたりなどしない。この手に持つ凶器ではやはり、男より女の肌を傷つけたいからだ。つまり、あいつは運がいいのだ。このまま自分が行ったわずかな時間稼ぎという行為に満足して回れ右をするだけで、奴は助かることが出来る。

 もし、間抜けにも近づいて来てみろ。その時はたっぷりと後悔を味あわせてやることになるが。


 闇の中に立つ男は、凶器を持って興奮を隠さないこの危険な相手にもまったく躊躇することなく、ゆっくりと歩きだす。それは自信に充ち溢れた足音であった。

 ガラスを踏みしだくそれは、厚底の軍用ブーツ。

 薄明かりの中、見えてくるのは安っぽい迷彩柄のBDUパンツとシャツ。手には木製のバットを握っている。

 そして、ついにその顔が明らかになる。

 まるでパルプマガジンに搭乗するヒーローを真似たのだろうか、それとも本気で顔を隠しているつもりなのか。アイガードだけをつけ、不敵な笑みを浮かべていた。


 カーネル”サウザンド”パトリオット


 このアークシティでもっとも”危険取扱物”指定のヒーローがそこに立っていた。

 なぜ、彼がここにいるのか?それはどうでもいい。

 では、これから彼はなにをするのか?それはもうあきらかだ。


「その可愛らしいのが、お前の”ペーパーナイフ”だって?ところで俺の”相棒”をみて感想を聞かせてくれよ、色男。この”アデレード”のセクシーさに、お前はきっと言葉もないはずだぜ?」


 ナイフを振りあげると男の獣のような咆哮が上がる。

 それにこたえるように、パトリオットはバットをしごくと半身になって迎撃態勢に素早く入る。

 この闇に沈む町の中で、互いが互いの”獲物”を探していた捕食者達は激突した。一方は自分の楽しみを奪われないために、一方はそいつで自分が楽しむために。

 それを呆然と眺める女は、この野獣達の戦いを見てどう思ったのだろうか?

 神の慈悲?守護天使の降臨?それとも、闇の中で互いに獲物をむさぼる獣同士が食い合う醜い姿?

 だが、争いは長くは続かなかった。


 何度か振り回した事で、パトリオットの体にナイフの刃をとどかせるのが難しいと悟ると。男は標的をパトリオットの持つバットに変更した。

 よほど自分の持つナイフの切れ味に自信があったのだろう、十分な重量を持つ木製のそれの表面に刃を当てようとしてくる。だが、すでにパトリオットのそのことは予想しており、見事なスイングを見せながらも巧みに刃に逆らわないように扱って見せる。

 その膠着状態から長く続くかに思われた戦いは、唐突に終わりを告げる。

 ここぞとばかりに引いたナイフを思いっきりつきだして突進してくる相手に、パトリオットは見事なサイドステップで体を一回転させて体の位置をいれ変えると、その瞬間にすばやくこれまでになく大きく構えに入った。

 パトリオットにとって獲物とは目の前の男だが、男にとっての獲物とは後ろに居て動けない女である。立ち位置が入れ替わった瞬間、そのことが動揺となって男の動きを鈍らせ、次の行動の予測を容易にしていた。

 そして、それを見逃す相手ではなかった。

 振り向き、奥の女が動いていないことを見てわずかに安堵を覚えた男が次に見たのは、勝利を確信した相手が鋭いステップインを交えてバットを振り抜く姿であった。


パゴンッ!!


 斜め下45度から顔面を襲った衝撃で、男の体は綺麗に回転しながら吹き飛び、顔面を大地に叩きつけて昏倒した。

 ピクピクと手足が痙攣し、それ以上の反応はなにもない。息があるのだろうか?

 そんな、男のことなどまったく確かめようとはせずにパトリオットは鼻を一度だけ鳴らすと、女の方へと体を向ける。

 自分を襲おうとした男が、突然現れた変人によって”暴行”を受けた瞬間、その凄まじい迫力に「ひっ」と小さな悲鳴をあげていた彼女は、何が起きているのかわからないまま座りこんで動けないでいた。

 パトリオットはそこに近づくと、いくつか言葉をかわす。


「……ねぇ、あの。彼、あのまま放っておいていいの?」

「ん?あれか、気にしなくてもいいぜ。捕まえるのは、警察のアホ共がやる。あんたが電話すりゃ、ここにすぐに来るからな」

「そ、そうよね」

「それより、大通りに出るまであんたに付き合おう。そこで警察が来るのを待つんだ。俺は用事がある。この町の夜は、まだ終わっていないからな」

「わかったわ」


 パトリオットに腕を借り、足を引きずりながらも不安から女は最後に倒れ伏して動かない男をもう一度見る。

 近くに彼が言っていた自慢の”もう1つの息子”が転がっていたが、突っ伏したそいつはまったく動こうとはしなかった。




 それは、よくある日常でもあり。防がれた惨劇となるはずだった。

 だが、これがよもや大きな事件になろうとはだれが考えただろう?




 それから半時間後、通報を受けて事件現場に辿り着いた2人の警官は、突っ伏したまま動かない男を発見してゆっくりと近づいていく。

 通報内容から、”この有様”にしてくれたのがあの愛国者であることは聞いていた。とはいえ、動かない暴行犯とそのそばには彼の凶器が放置されたままになっているのだ。少しは警戒もする。


「あのやっかいなヒーロー殿、なんでああも半端な仕事をするんだ?」

「なんだよ」

「あれだよ、武器とかをなんで犯人の側に平然と置いておけるんだ?神経がわからねぇよ」

「そういうなよ。あれでも刑事組から評判はそう悪くない。なんせ、現場をそのまんまで放置してくださるからってさ」

「制服組には理解できない考えだね。お前も刑事になりたいから、あの変人に悪い感情が無いってことか」

「まぁね」


 軽口をたたきつつ、2人は銃を動かない男に向けたままナイフの元へと移動する。


「よし、回収した」

「これで一安心だ。愛国者様ありがとう」

「ほら、感謝した」

「うるさい、それよりこっちだ」


 そういうと2人は暴行犯へと意識を向けた。


「よーし、お前。寝てるだろうが一応、権利を話しておいてやるぞ。お前には……」

「どうした?その先は忘れたか?」

「ああ、クソッ。どうなっているんだ?!」

「?」


 相棒が突然毒づくと、取り押さえるべく掴んだ手を放して一歩後ろに飛びのいた。その慌てように相棒は驚いたもののどうしてそんな行動をとったのかわからず困惑する。


「なんだよ?なにがあった?」

「なんてこった、信じられねぇ…」

「おいっ!?」

「アァッ!!」

「聞いているだろう。聞こえていないのかっ?」

「ああ…………死んでる」

「はっ?」

「だから、コイツ死んでるんだよ。息をしてない。見たところ出血してはいないが、完全に死んでいる」

「……嘘だろ?」

「笑い話にもならねーよ。これは、これは……ああ、クソッ。まずいことになったぞ、あの愛国者は、カーネル・パトリオットは暴行犯を殴り殺しちまったんだ!!!」


 2人は、このことがアークシティの警察署最悪の出来事の始まりになるのではないか、そんな予感を漠然と感じ始めていた。

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