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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
Knights of round Vol.1 Runaway
66/178

策士

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

 決断すれば、後はもう進めるだけのことだ。

 そこそこの準備をしていた荷物を子供達がまとめている間、ジェシカは方々に連絡を入れ、ドロシーは隣の農場へ行って車で子供達をある場所に送り届けるようお願いしに行った。暇そうにしていたのは、屋根の上で丸くなって昼寝をしていた猫くらいのものである。

 彼等の準備が終わった時、すでに正午から大分時間がたっていた。


 ドロシーは息せき切って駈けこんでくると


「駅までは隣の農場の息子さんに頼んで送ってもらえるわ。大丈夫」

「そう、これで足は揃ったわ」


 ジェシカは満足げにうなずく。そして2人は振り向いた。

 2階から子供達が荷物をまとめた姿で降りてくる。いよいよ、別れの時が来たのだ。



「いい、子供達?車を用意したわ。それで駅に向かうの、そこで駅員に私の名前を告げなさい。それで切符がとってあるから、全員分ちゃんともらってね。

 ああ、お金の話は無し。勿論払ってもらうわよ?でも、それは全部終わって落ちついてから。

 電車が来たらそれに乗りなさい、個室を取ったけど。時間稼ぎにはならないかもしれないわね。

 でも、私が出来るのはここまでよ。後は自分達で頑張りなさい。車内だと身動きが取れないし、なにかあれば酷い騒ぎになってしまうわ。くれぐれも気を抜かないでね」


 そう言って皆の顔を見回すと、ディアナのところで止める。


「ディアナ、前にでて」

「?」

「これを渡しておくわ、いいわね?もし”その時が来た”らこれは役に立つはず。だから絶対になくさないで」


 そういうと、ジェシカは自分の携帯電話をそっと握らせた。


「でも、これをあたしがもっていったら困るんじゃ?」

「もちろんよ!でも、これは”あなた達のお守り”になるはずよ。だから持っていきなさい。それに、それが役に立つなら私の所にもちゃんと戻ってくることになっているんだから」


 なんだか分からないが、とにかく持っていけばいいらしい。ディアナは黙ってうなづくとそれを受け取ってポケットの中に放り込んだ。


「アークシティの友人達には連絡を入れておいたわ。だから、あの町に入ればすくなくともあなた達は安全よ。でも、そこまでは安全だと言う保証は何もないわ。

 頑張るのよ、子供達。絶望してはいけない、ゴール直前の100メートルは気力で勝負するしかないの」


 彼等はその言葉を胸に刻みつけ、力強くうなずいてみせる。

 続いてドロシーがそれぞれと別れを済ませていく。メガンは「ありがとう」とだけ言うのが精一杯だったし、ヴィクターとトニーは照れ臭そうにしていた。ルーベンは「また来てもいいですよね」といってドロシーを喜ばせ、ディアナとザビーにはあわせて黙って抱きしめた。

 そして、隣の家からもらってきたというサンドウィッチとニシンのパイが入ったバスケットを渡す。昼食を食べる暇が無かったからね、と彼女は言い、子供達はその好意を素直に受け取った。

 それから10分後には、子供達を荷台に乗せたトラックの姿はもう小さくなって遠くを走っていた。


 ドロシーは手を振るのをやめると、ため息をひとつ付いた。

 別れのさみしさと、彼等の旅の無事を願う祈りは、不安となって彼女を悩ませた。


「ジェシカ、あの子たちは疲れていたわ。とてもよ。もっとここで、休む時間があればよかったのだけれど」

「そんな心配はいらないわよ、ドロシー。あの子たちはわかっているわ。これまでだって決して楽な道ではなかったはずよ。でもやりきってきたし、その旅もあと少しで終わる」

「……そうよね」

「ゴールしても、彼等の戦いは終わりではないでしょうね。あんなに若くても、あれほどの厳しい過去と生まれは彼等の重荷にしかならないでしょう。でも、きっと大丈夫よ。

 だって考えてごらんなさい?あなたが見たという、私と彼等の対面はあなたの尽力があってこそこうして実現したのよ?

 きっと彼等は、あなたの予知によい終わりの物語を作りだしてくれるはずだわ」


 そう言って2人は後ろ髪惹かれる思いを振り切りながら、家の中へと入っていく。すると、突然ジェシカが「あら、いけない」といって大声をあげたのでドロシーは驚いた。


「ど、どうしたの?」

「ドロシー、大変よ。考えてみたら私、貴方にお呼ばれしたから自分の新刊のサインツアーの合間にここにきたのよ?

 つまり私はお客さん、なのにあなた。私をこき使ってばかりで荷物は玄関に置きっぱなしじゃないの。

 ……まぁ、いいわ。私と一緒に荷物を運びこんでちょうだい。そしたらお茶にしましょう。食事って気分じゃないけど、今はなんだか疲れちゃって。あなたとはゆっくりお話がしたいわ」


 そういって2人は初めて顔を見合せて笑うことができた。



▼▼▼▼▼



 その部屋は薄暗く、男が1人床の上に胡坐で座っていた。

 彼の前には100インチはあろうかという巨大なディスプレイがあり、画面には小さなウィンドウが複数あって、それぞれが情報をそこに映していた。


 彼の名はタオ・ヤンロン。

 髪はほうきにもみえるようなモヒカンヘアーをして、真っ白な服の胸には青と赤の大きな太極図が描かれている。身長は175センチをこえるこの男は超人でもあった。


 その彼が眺めているディスプレイに新たなウィンドウが開くと同時に、ピロピロンと電子音が鳴った。

 彼は無言のままその内容に目を通したが、どうやらなにか気にいったことが書いてあったのだろうか。次第に口元に笑みが浮かんでくると、横に無造作に置かれていた電話を取った。


「ええ、タオです。……そうですよ、それです。実はちょっと聞きたい事がありましてね。……ええ、いいですか?

 例の事件の捜査なんですが……そう、それです。それの最新情報を知りたいのです。あともう1つ。あの辺に、今。うちのエージェントは誰かいませんでしたかね?

 …………当然です。そのための彼らです。まさか”人間”に押し付けるとでも思いましたか?

 ……ほう、それは丁度いい。なら、その”彼女”を呼び出してください。そして、こちらから送るポイントに向かってほしいと伝えるのです。……ええ、そうです…………だからなんだというのですか?

 仕事ができたからやれと言っているだけです。ちゃんと物事の道理を教えて従わせなさい。そのかわり、出来る限り”彼女”の希望はかなえてさしあげなさい。

 ああ、そうそう。ひと段落したら、こちらに直接報告してくれるように。ええ、そうです。お願いしますね」


 そう言って受話器を置くと、再びディスプレイに注視する。

 なかなか面白いことになってきた。この政府の施設になにものかが今、情報を送ってきたのだ。特に処置のされていない、普通に送られてきたその情報の送り主はすぐに誰だかわかった。なかなかの”悪名”の持ち主である。

 そして、どうやら自分達が知らないところで何かがゆっくりと進行していることがはっきりとわかってくる。いくつか手早く操作してウィンドウを閉じると、その代りに映像データを呼び出してかなりの大きさで巨大な画面に映し出す。


『ハニー!?なにがあった!』


 画面の中では、あるダイナーでおこった強盗カップルの未遂事件の模様が再生されている。

 少し前の事件だ。たいしたことのない、小さな事件であったが現場に居合わせた客がこっそり盗撮していたこの映像はネットに投稿されて少し話題になっていた。

 タオは薄笑いを口元に残したまま、だれにともなく独り言を漏らす。


「なかなか元気な子供たちじゃないですか。才能のある若者は国の宝ですよ。是非、うち(U.S.エージェント)に欲しい人材なんですがねぇ」



▼▼▼▼▼



 空は朱に染まっていた。

 すっかり静かになってしまったドロシーの家では、まだ机を挟んで老女たちは話込んでいる。そろそろ世間では夕食の準備をしている頃だが、彼女達は話に夢中で今はジェシカのテキサスでのサイン会でおきた騒ぎの顛末を、面白おかしく聞かせているところだった。


 そんな彼女達のいる家の居間の壁が、轟音と共に吹き飛ばされた!!


 ドロシーとジェシカは、ただただいきなりのことに驚いて、ポカーンとしているしかなかった。空いた穴から男達が次々とあらわれると、黙ったままドロシーの家の中へと入ってきてもくもくとなにかを探して回る。

 良く見れば、彼等の胸には皆『R9』とプリントが入った不穏な戦闘スーツを身につけている。


「2階にいない。だが、誰かがいた後はあった。ここだ、間違いない」


 そういって降りてきたロイとボクストンの報告を聞くと、ドブとリメーンがさっそく怒りをあらわにして2人の老女につめ寄る。


「このババア!ガキだ、ガキ共がいたはずだ。俺の息子が!」

「どこにいる!?どこに隠した!?」


 ドロシーは困惑顔をしているが黙ったまま、かわりにジェシカがサバサバと答える。


「なにをいきなり物騒な登場をしたかと思えば。あの子らの親かい。いい子だったよ?20ドルぽっちしか出せないけど、しばらく泊めてくれないかって言ってね。

 しょうがないからそれで毎日こき使ってやったわ。1人、調子が悪い子がいたけどその子の具合が良くなったと言って今朝方出ていったわよ」

「っ!?」

「どこだ、どこへいった!?」

「知らないわよ、どうせ訳ありの家出だろうとわかってたし。むこうも聞かれたくないのだから言わなかったわ。自分達の子供なんでしょ、自分で探したらどうなの?」


 そう言ってジェシカはしらを切って見せる。たいした演技力である、これが映画ならオスカーの助演女優賞ノミネートは固いくらいだ。


「隠したらためにならんぞ!?」

「騒がないで頂戴、生きずりの子供達なんかを隠したりするもんですか。むこうだって宿泊費にかわって十分に働いてやったとでも思ってたんでしょうよ。2階の部屋を荒らし放題のままさっさと出ていったわよ。

 なに?あなた達、クリーニング代でも置いていってくれるって言うの?」

「馬鹿言えっ」


 ドブはそう言って忌々しそうに吐き捨てた。また逃げられた、その事実に彼等の顔は一様に不機嫌になる。

 この場にいても仕方が無い、そう判断したのだろう。リメーンはさっそく皆の方へと向くと


「仕方がありません……とりあえず、ここを離れましょう。近くの情報を広く集めて……」

(やった、ちょろいもんね。上手くいったかも)

 ジェシカは相変わらず不機嫌な老婆を演じつつ、内心では小躍りしていた。最後に彼等の背中に向かって壁の修理代を出せ、とか警察に連絡してやる、とでも吐き捨てた方がいいのかもしれない。


 だが、そうそう上手くは事は運ばなかった。


「ちょっと待て!」


 ひそひそと相談していたボクストンがそう声をあげると、ロイが机の前に座ったままの2人の老婆の前へと出ると腕を組んで両方の顔を確認する。

(ああ、こりゃまずいかもしれないね)

「ドロシー?ドナ・マクダイス夫人?」

「それはこっちよ」


 そういって顎で正面に座るドロシーをジェシカは指し示す。


「そうだろうな。2階の部屋にある写真ではそっちのほうが旦那と写っていた。ところで、先程から饒舌なご婦人の名前を聞かせてはもらえないかな?」

(あらあら、やっぱり抜け目が無いわね)

 そんなことを思いながら、もう一度抵抗を試みる。


「ジェシーさ。”ジェシー・ランズベリー”だよ」


 少し張り詰めた空気が、また緩んだ気がした。上手くだませただろうか?

 リメーンは再び、皆に行こうと促すとドブがブツブツと悪態をつく。ボクストンもまた、踵を返そうとする。そこにイゴーがゆっくりと進み出るとうやうやしく一礼などする。


「すみませんね。奥様方、失礼をした。マクダイス夫人、”ランズベリー”夫人」

「ああ、いいよ。あの子供の親なら納得さ。さっさと帰っておくれ」

「ええ、まぁ。ご希望には沿いたいとは思ってますよ。ラズベリー夫人」


 そこでイゴーはにやりと笑った。ちっとも目が笑っていない、恐ろしい笑顔だ。


「ジェシーじゃない。ジェシカ・ラズベリー。それがあんたの名前だ。ごきげんよう、そして初めまして」




 獰猛な獣のごとき咆哮が上がると、ドブがドカドカと音を立ててジェシカに近づきブチ殺さんと襟元を捻りあげて老女の体を吊るしあげる。それをみて、イゴーはゆっくりと「やめろ、おろしてやれ」とだけいう。

 下ろされたジェシカは、ちょっとだけ涙目でゴホゴホと咳をすると


「まったく、乱暴な人達ね。子供達はもういないと、ちゃんと教えてあげたじゃないの」


 といった。だが、ドブはその答えを聞くと目を剥いて怒鳴りつける。


「黙れ!このクソババァ!これがあのジェシカか。疫病神のジェシカ!」

「ええ、そうよ。あなたのような酷い人に疫病神と言われるのは気にいらないけど、確かにそんな風に言われることもあるわね」

「なにをぬかしやがる。てめぇのようなクソ人間のおかげで、俺達がどれほど迷惑しているか」

「あら、それはひどい言い草ね。私はただ旅行好きなだけ、いった先であなた達のような人が騒ぎを起こすからいつもこっちが迷惑を被っているのよ」

「もういい!その辺でやめろ」


 止められると、ジェシカは倒れた椅子を元に戻してそこに再び腰をかける。


「ジェシカ夫人。あなたは確かに嘘は言っていないだろう。だが、全部は教えてもらっていないな」

「当然よ。これでも皆がヒーローと呼ぶ人達に友人が多いのだから。そうそう簡単に、秘密を他人には明かさないわ」

「ふっ、強がるのはよせ。どうせ時間稼ぎのつもりなのだろうが、アンタは馬鹿じゃない。黙って我等を”楽しませたり”はしないはずだ」


 するとロイが進み出てドロシーの腕をつかむとその場に立たせた。脅迫のつもりなのだろう。

 ジェシカはそれを見ると、わざとらしくため息をつき。小声で子供達ごめんなさいなどとつぶやいてみせる。

(これが限界だったわね。でも、まだやれることはあるわ)

 だが、口を開いた彼女は内心とはまるで別のことを口にしはじめた。子供達はアークシティに向かっている、あそこには保護するように連絡を入れた。今頃は最寄りの駅についているだろうし、そこから列車も出発しているはずだ。

 それはほぼ全ての計画を彼等に教えてしまっていた。


 アークシティに子供らが保護を求めていこうとしている、そのことを聞いて大人達の顔色が変わる。

「いそぎましょう」リメーンの言葉に、男達は頷くかに見えたがイゴーとロイだけは首を横に振った。


「我等はここに残る。残ってこの女が他に隠していることを聞きだしておこう。皆は急いで列車の方へ向かってくれ」


 それを聞くと魔術師と1人を置いて男達は振り向くことなく、車へと再度乗り込むと凄い速さで飛びだしていく。



▼▼▼▼▼



 車の音はまたたく間に聞こえなくなったが、残った2人は何をするでもなく黙って突っ立ったままだった。そこにジェシカが口を開く。


「あのね。こんなことは言いたくないけれど、私達に答えられることなんてもう何もないわよ?知っていることは全部言ってしまったのだから」


 男達は「ああ」とだけ口にするが、どこか上の空で動きも緩慢だった。

 しかし、それも僅かの間だけで、突然イゴーは無言のまま、そのかわりに顔には憤怒の形相を浮かべてジェシカの横っ面を力一杯張り飛ばした。


 ガシャン!


 音を立てて吹っ飛ぶと、備え付けのオーブンに叩きつけられてジェシカは一瞬呼吸ができなくなる。

 ドロシーがやめてと泣き叫んだ懇願するが、ロイは無表情のままその様子を見ているだけだった。


「ジェシカ。そうよんでいいかね?

 ミズ・ジェシカ。あなたは賢い女だ。超人に友人は多く、彼等の悩みも把握している。君にあった我が子等も、それを君に告げたはずだ」

「いたた……そうね、そんなこといってた」

「どういっていた?『絶対に戻らない』か?『死んでも帰らない』かね?

 だが、あいつ等は死なないし、絶対に我等の元へ戻ってもらう。そのために我等はここに来たわけだからね」

「……親御さんが自分に執着していると知れば、もしかしたらあの子たちも喜ぶかもしれないわね。それで?なんであなた達は子供らの後を追わないのかしら?」

「追わないのは何故か?ふふふふ、はははははっ!これはおかしい、行かない理由が知りたいとはね。まったく愉快だ」

「本気で聞いているのよ?」

「本気で我等を馬鹿にしているのかっ!?我等がいかないのは、それがまったくの”無意味”だとわかっているからだ!

 アンタのような女が、娘達にただあの町へ行けと言って終わるわけが無い。何かを用意しているはずだ!

 それを話してもらう、今からな。だが、忘れるな。

 お前が話した内容が、あの子達を我等から永遠に取り上げるようなものであった場合!この怒りを全部味あわせてやるからな」


 ジェシカはよろよろと立ちあがると、再び椅子を元に戻してそこに腰をかける。今度はさすがに厳しかった。腰や足が、頭もガンガンする。


「ひどいことをするわね」

「そうでもない。”ひどいこと”ってのは、この後に待っているものだ」

「そうでしょうね。ところで、私が何をしたのかを知りたいってわけね?いいわ、確かに、わたしはさっき全部を話したりはしなかったわ。2つだけ、黙ってた」

「素直だな。いいだろう、話せ」


 ジェシカは大きく息を吸った。これが最後の呼吸になるかもしれない。

 だが、先程目の端でとらえた”影”が本物なら、あの子達の力になることができる。それが間違いないことを、今は祈るしかない。


「確かに、2つ黙ってた。ひとつは……」

「早く言え。つまらん時間稼ぎにはつきあわんぞ」

「ひとつは、あなた達全員をあの子達を追いにいかせる。これで、あの子達は自分の身を心配するだけで、私達のことは考えなくて良くなる。こんな風に殴られたりしないってことね」

「失敗したな。それで、もうひとつは?」

「ええ、こっちはプランBよ」

「良く聞くフレーズだ」

「そうでしょうね。こっちはね、私達がおとりになることで彼等の負担を減らそうって計画よ」

「ふっ、随分と優しいんだなミズ・ジェシカ。見知らぬ子供達の為に自己犠牲か?」


 鼻で笑う男達に、今度はジェシカが必死にいたずらっぽく笑顔を見せると”勝利宣言”を発した。


「まさか、私はそんなに人間はできてないわ。自分の命を犠牲にしてっていうほど、立派じゃないの。勿論保険はたっぷりかけたわよ。私の知り合いの政府職員に情報を送ったわ。数時間前の話よ。

 例の騒ぎを起こした連中が私の友人の家に遊びに来るかもしれない。ちょっと話を聞きに来てってね」

「っ!?」

「なに!?」

「ええ、本当よ。”例の騒ぎ”としか書かなかったけれど、むこうはそれは議員の事件だと考えるでしょう。そう読めるようにわざと書いたのよ。もっとも、議員の事件なんて知らないわよ。話すとしたら、”あなた達”が子供達と遭遇したあの町での騒ぎになるけど」


 最後の方はもう2人はジェシカの言葉を聞いていなかった。慌てて窓の側によると、油断なく外を覗き見る。

 いつの間にそこにいたのだろうか、3台のSUVが音もなくいつの間にか家の前に止まっていた。そして、一斉に扉が開くと中から人が飛び出してくる。

 2人をのぞいて現れた黒服黒メガネの男達は、いろいろパーツをくっつけたMP7(サブマシンガン)を手に握りしめ、家の中を油断なく見つめている。

 そして異様な姿の2人は彼等の前に出てくる。


 1人は背が小さかった。165センチもないのではないだろうか?そのかわり、腕も身体も肉厚で頭にはすっぽりとマスクをかぶって素顔を見せない。左目にかかるようなスコープのパーツと、インカムがあるだけで不気味である。

 その手には、あまりにも釣り合わない巨大なライフルが握られている。


 そしてもう1人は女であった。

 肌の色はやや黄ばみをおびていて、目の色が恐ろしく透明な水色であること以外、真っ白であった。髪も、眉毛も、そして身につけた戦闘服も全部白で統一されている。


 男の名はヴァズ、女の名はシルバーフォックスという。

 その彼女は拡声器を手に持っており、それを使って自分達の所属名を明らかにしてきた。


「中の連中に告げるよ!こちらはU.S.エージェントだ。人質がいるのもわかっている。命が惜しかったら30秒やるから武装解除して出ておいで。引き延ばしには応じない、時間が過ぎたら突入して顔を拝んでやるからね!」


 問答無用の滅茶苦茶な要求に、イゴーとロイは顔をゆがませた。

次回更新は金曜日になります。

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