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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
Knights of round Vol.1 Runaway
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振り返ると

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

 メイラン・タウンの出来事から3日がたとうとしている。

 子供達はあれからドロシーの家へ来ると、全員は倒れるように寝込んでしまった。やはり、これまでの旅が過酷であったことと親達との対決は彼等を打ちのめしていたのだろう。メガンに至っては熱を出した。

 しかし、家主のドロシーはそんな彼等に対して嫌な顔一つしないで(メガン以外は)放っておいてくれた。

 そのおかげで彼等はこの2日の間、世間のわずらわしさも、追っ手の影に怯えることも、仲間を気遣うことも、明日の事で不安がることもなく。自分の疲れに浸って、ただただ睡魔をむさぼる贅沢な時間を手に入れることができたのだ。



「ン~~~~……、ファーー」


 なにやら気の抜けた声をあげながらホークガールは目を覚ました。

 寝ていた彼女の横を、老いた猫が静かに通り過ぎたせいで全身の細胞が起きろと騒いだようだ。やはり、【鳥】と【猫】は相性が最悪らしい。

 のびをする、若い娘がYシャツにパンツ姿で長椅子に横になっているのはなかなかにして絵になる姿ではある。

 両手両足をのばし、次にクルクルと関節をまわしていって調子を確認する。長く寝てばかりいたせいだろう、けだるさが残ってはいるが疲れの方は抜けたことをはっきりと感じることができる。

 胸が少し重い気がするが……ああ、これはいいのか。着やせする彼女は、以外にも隠れ巨乳であったが時々本人もそのことを忘れてしまうことがある。


 床に脱ぎ捨てられていたGパンを手に取って履きはじめる。あまり記憶にないが、この家に来て寝ている合間に、喉がかわいたり、トイレに行ったりする時にコイツをきていたはずだが。どうも再び眠る前は脱ぎ散らかしていたらしい。

(自分の家でこんなはしたないことしたら大騒ぎで、叩き起こされてたよね)

 メガンや男共の部屋を覗いてみる。ヴィクターはまだ調子が悪いのだろう、こんこんと眠っていたがメガンは熱が下がったと言うし、他の連中も寝惚けながらもモゾモゾと起きだしているようだった。



 階段を下りて顔を洗う、頭の方はこれで完全にすっきりした、はず。

 さっそく家主のドロシーにあってちゃんとお礼を言わなければ、と思った。寝惚けてなんどか話した時も、そんなことを言った気はするのだけれど、寝惚けて言えばいいことではないことくらいはわかる。

 しかし、家の中には彼女の気配が無かった。

 かわりにTVの前にディアナが張り付いて、一心にディスプレイを見つめている。


「ハイ!」

「……ハイ、調子は?」

「悪くない、かな。まだちょっと痛むとこ、あるけど。それよりドロシーさんだっけ、知らない?ちゃんと挨拶とかしなくちゃと思ったんだけど」

「ああ……それならあたしが言っておいた。でも、皆そろった時にまた言った方がいいかも。ドロシーさんは1人で養蜂場をやっているんだって。1時間ぐらいで戻るって言ってたけど、お腹がすいているならパンでも齧っててって」

「ふーん」


 そういいながらホークガールは長椅子に座るディアナのそばに腰を下ろす。自分と違い、どうも彼女の様子はおかしいと感じていた。神経質にチャンネルを変え続けているし、顔色も自分と同じく起きたばかりであるはずなのに青白く見える。


「……ねぇ、見たい番組が無いの?」

「…………」

「それとも探している?それなら……」


 握られたリモコンを取り上げようか、とおもっていると。その前にディアナの指が止まった。どうやら探していた番組を見つけることができたらしい。そのかわりに目は大きく開かれ、顔色は一層悪くなる。



「……ンヒルより、最新のニュースをお届けします。

 この平和な町を、突如として発生した竜巻が襲ってから今日で7日を過ぎようとしています。事故の発生から34人もの怪我人がでましたが。不幸中の幸いか、死者は出ませんでした。

 かわりにここに30年住んでいると言う…………さんや、…………は……とうことで………病院の集中治療室に入ったまま……状態です。

 救助を終え、けが人を運び出した後のがれきの撤去が未だに行われていないことに関して。警察の捜査が遅々として進んでいないということがあげられます。

 奇妙な噂ではありますが、竜巻発生当時。この町で超人達が暴れていた、という証言が今もなお根強く噂されており。その真偽について…………」



 見覚えのある場所だった。

 ガソリンが入っていれば、とりあえず機嫌よく動いてくれたおんぼろ車が、こっぱ微塵に吹っ飛ばされたガソリンスタンド”跡”は特に記憶に残っている。喉元に迫った危険ですっかり忘れていたが、名前も覚えていないあの町でディアナが最後にしてしまったことを、ホークガールは思いだしていた。

 そんな彼女をみないまま、ディアナはつぶやくように語りだす。


「あの町のこと……ずっと気になってた。酷いことをしたのに、自分は逃げてしまったから。

 だけど……そんなの調べている暇もなかったし。そのあとの町でも新聞を見ようとしたら、ドロシーさんと出会ってこうなったから。色々あったから……はぁー、おかしいとはね。思ったんだ。

 嘘か本当かわからないけど、ドロシーさんは新聞取ってないって言うし。だから……」

「ディー……」


 言葉をきって顔を覆ってしまった彼女を元気つけようと、ホークガールは体を寄せる。


「やぁ、おはよー。元気……っ!?」


 寝惚けた声でおきてきたトニーはいきなり泣いているディアナと鋭く睨んでくるホークガールに気圧されて動きを止めてしまった。

(な、なんだよ!?おっかないぞっ)

 余計なことを口に出したら、これは”死刑”とか言われるかもしれない。

 ホークガールは睨みつけながらジャスチャーで”彼女は自分に任せて、暇ならエサでも食ってろ”とやると(それが全部相手に理解されたかは分からないが)ディアナを連れて外へ歩いていってしまった。




「ディーのことは、彼女に任せよう」


 トニーは肩をびくっとふるわせた。いつの間にか、後ろにはルーベンが立っていたのだ。


「あ、だってよぅ」

「任せよう」


そう言うと、長身を長椅子に沈めるように座ってTVのチャンネルを変える。すると、また例の町の被害状況について流していた。


「これって」


 恐る恐る自分も長椅子に腰かけながらトニーは口ごもる。だがルーベンは躊躇なく口にした。


「ああ、ディーがやったんだ。あの町から逃げる時に」

「でもさ、ディーは魔法が使えないんじゃなかったのか?}

「それでも”使った”。それでこうなった」


 ここにディアナが居なくて良かったのかもしれない。トニーには全く自覚が無かったのだ。あの時、彼がやった行動と決断が、ディアナを”その気”にさせてしまったという事実を。


「そう、なのか。そうだよな」

「ああそうだ。ヴィクターの”ミス”だったな」

「…!?」


 突然、ルーベンがヴィクターについて言及したことがトニーの勘に触る。


「おい、ルン!どういうつもりだよ。ヴィクターが何をミスしたって!?

 だいたい俺達は向こうの奇襲を食らってたし、それにあの時のミスと言うなら俺だろ?おれがあんな怪我をしなけりゃ、ヴィクターだって今みたいに寝込むこともなかった。そんなおかしな…………」

「おちつけよ、トニー。まず話を聞け」


 頭に血が上りかけているトニーだが、ルーベンにこういわれてしまうと素直に従ってしまう。


「”授業”でも習ったろ。これは白か黒か、良いか悪いかって話ではないんだ。

 ヴィクターは、確かにあの時あの場所でミスをしたんだ。考えてもみなよ、いきなり母親に拘束され、父親は他にも引き連れて目の前にあらわれたんだぞ?普通でいられる方が不思議さ。

 あの両親にヴィクターが殺されかけたのはちょっと前のことじゃないか。

 それに思いだしてみろ。この家出だって、本来なら目的地もしっかりとしたものはない危険なものだった。”目的と勝利条件を明確にする”、これは作戦を実行する際に必要なことだと学んだろ?

 色々あったけど、それでもこうしてうまいこと逃げ続けていられたのは、運が良かったってこともあるけど。ヴィクターが細心の注意を払っていたからさ」

「そうだ。あいつはずっと気にしてた」

「それもやりすぎじゃないかってくらいに。でも、おかげでここまで来れた。

 だけど、僕等は親達に追いつかれた、あそこで。自分達の限界を思い知った。だから、ヴィクターはミスをして、僕等はそれを指摘しないまま受け入れた」

「……順次離脱が間違いだったと言っているのか?」


 トニーの言葉に、ルーベンは苦笑しながらそうじゃないんだよ、といってTVの電源を消す。


「ヴィクターを責めたいわけじゃない。僕等が意識を変えなくちゃいけないってことだ」

「……」

「トニー、ディーは今それで苦しんでいる。僕等も……いままでのようではいられない。それじゃ、逃げられない」

「……ルン、お前が言っていることはさっぱりわからねぇ」

「おい、トニー」

「いや、言わせてもらうぜ。それは”俺達”じゃない、”お前の問題”だって。

 俺は……俺はさ、いいか?あの日、皆の前で言ったのは本当のことだ。本気でそう思ったから言ったんだ。

 冗談でもないし、外の空気が吸いたい程度の不満じゃない。心の奥底から、あんなクソ共と同じ場所に居ることが嫌だから言ったんだ。

 兄弟に、ヴィクターに相談した時にも言ったんだ。俺達がやらされることも、やらなきゃいけなくなることも、みんな御免だって。だからここにはいられないって」

「……」

「冗談じゃすまないことは十分わかってる。だから、俺はあそこに戻るつもりはない。これは死んでも嫌だっていうことだ。この意味はちゃんと分かっているし、そのために必要なことも考えた。俺は馬鹿かもしれないけど、ガキじゃねぇんだ。

 ヴィクターも一緒に来てほしいけど、そうでない時はどうか追ってこないでほしい。もし、あらわれたら俺はお前を殺さなくちゃならない。だけどもし一緒に来てくれるなら、お前の親が来たなら俺が、俺の親が来たらお前が手をあげることになるだろうって」

「……そんなことを。知らなかった」

「ルン、俺とヴィクターはとっくに覚悟を決めている。ディーが今それなら、それは結構な話さ。お前はどうする?それは自分で決めてくれ」

「……分かった。ここまでにしよう」


 そう言うと、ルーベンは話を切りあげた。同時にメガンとヴィクターが姿を表したからだ。



 その夜、ドロシーは”あのこと”について黙っていた。まだ早いのだ、もう少し時間が必要なのだ。

 子供達は傷ついていた、再び力強く羽ばたいていかなくてはならないが。それでも休む時間が必要だった。

 だから、子供達が揃って礼を口にしても気にしないでと言い。夕食は腕をふるってたくさんの料理を用意した。

 楽しそうな彼等を見る一方で、ドロシーには”わかっている”ことがある。

 この可愛そうな子供達の後ろからゆっくりと迫ってくる黒い影があることを。怒り、恐怖、憎悪、そういったものの塊が今この時も彼等の姿を探してここらをさまよっている。彼等は再び、逃げなくてはならないという未来を。

ラストに向けての準備回、というところ。

ディアナにとって厳しい回であり、せまってくる脅威に向けて彼等が再度決意を新たにする回でもあります。

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