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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
Knights of round Vol.1 Runaway
57/178

彼女と彼等の事情

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

 キャンプに戻ると、留守番していた2人が火を焚いて待っていた。

 そのままみんなで火を囲むようにして腰を下ろす。


 最初に話を始めたのは、ディアナ達からだった。先に話してしまった方が、ホークガールの話に集中できると思ったし、それに正直言えば、自分達の過去についてどんな反応をされるのか、知りたかったのかもしれない。

 彼等は順に、時に思い出したように口をはさみながら思いつく限り全部を話そうとした。


 カルト教団のなれの果て、【レヴォリューション9】という犯罪集団にいたこと。

 親達はそこに所属していて、自分達も将来その組織に所属することになっていた事。

 彼等が自分達にする【授業】は常軌を逸していた事。

 そんな未来に、全員で立ち向かうにはもう時間が残り少なかったということ。

 可能な限り、時間をかけて実行した脱出計画。

 だが、外に出ても彼等は所詮は犯罪者の子供。世間に救いを求めることができなかった事。

 全員が逃げたことを知って、親達は間違いなく今も追ってきていると言うこと。

 だが、この数日間はホークガールのおかげで大変助かったということ。


 とにかく全てを話して聞かせた。

 話が終わると、ホークガールはとりあえず大きく目を丸くして驚いた顔をやめ


「そうね。思っていたよりも、ちょっと……どこかのダークヒーローの思い出話を聞いたみたいに……クールで…………ヤバい話だなって思った」


と軽口をたたく。


「ヒーローならそうだろうな。でも、現実はちょっとしたクソガキの重い、後ろ向きな話さ」

「次は君の番だ、ホークガール。話して欲しい」


 促されると、彼女は3度大きく深呼吸した。どうやら、ちゃんと話してくれる気になったようだった。



 彼女は、ホークガールはまず最初に自分の名前を教えてくれた。ザビーネというらしい、だがそれだけ。

 本人によればもう使うつもりの無い名前で、自分はホークガールでいいと思っていると言った。

 彼女は詳しくは教えてくれなかったけど(まぁ、そうだよね。こっちは凶悪な犯罪者の子供だし)、思った通り東海岸近くからやってきたのだと言った。

 まぁ、ようするに彼女もまた家出をしたのだと言う事だ。半年以上前のことだという。

 だが、やはりまだ根強い抵抗感があるらしく。そこから先にはなかなか話が進まなかった。


「どうして?なにか問題があるの?」


 メガンが直球でそう聞くと、ホークガールは顔を歪め


「っていうかね。ここから先はみんなの話を聞いておいてなんだけど。ちょっとね……いや、そこそこ面白いとは思ってもらえるとは思うわ。でもね、それがなんともこう……パルプマガジンにでてくるマッチョなヒーローって感じに受け取られてしまいそうでね。はぁ、気が進まないんだ」

「わかるよ、その気持ち。

 俺達にしたって、世界を滅亡させるって言っている親達が、世界を征服するって言っている大人達と付き合ってるのを見た時はひどい光景だと頭を抱えたものさ。ブロードウェイのコメディクラブでこれをネタにすれば、1人2人は笑わせることが出来るって話してたもんな」

「おい、トニー……」

「でも仕方ない、本当の事なんだからさ。だって、そういうもんだろ?」


 いつになく真剣な顔でそう語るトニーを見て、ホークガールは諦めがついたようだった。


「……そうね。いいわ、今から話すから、おかしかったら笑って頂戴。でもね、間違っても涙なんか流して感動した、とかいうんだったら。ケツを蹴りあげてやるんだからね」




 家族の中で、自分が異質だと感じたのは多分、5歳の時だったと言う。

 だが、それが何故かはわからなくて。時々悲しくなって泣いていたから、家族は困っていたと言う。

 でも問題なんてどこにもないように、その時は見えたのだ。

 優しい両親、年の離れた2人の兄と姉が1人。

 みんな優しかったし、嫌な思い出なんてほとんどない。人並な幸せって奴があったと思う。


 8歳の時、友達が何気なく口にした言葉。

「お兄ちゃん達とお姉ちゃんとは髪の色が違うんだね」

 それを聞いてまた、不安になった。

 自分は黒髪だが、兄や姉達はそれはもう輝くばかりに見事な金髪だったから。特に姉の髪は綺麗で、うらやましくて時々は櫛を入れさせてもらって「いいなぁー」と口に出して羨んでいた。

 家族は涙目で再び問う彼女に対し、黒髪だからって東洋人ってわけじゃないんだよ。みてごらん、目鼻顔立ちはそっくりだろ?といって誤魔化していた。

 でも、やっぱり確実な証拠はなかった。その時も。



 最初のピンチは10歳の時だ。

 その日は体が何故かけだるく、すぐに疲れてしまって指を動かすのがやっとだった。夕食もシャワーも無視して、ベットに飛び込んだが。今度は何故かひどく寝ぐるしい。

 窓の外の【真っ赤な満月】を横目に寝返りを何度もうっていたが、それでもようやくのこと眠りについた翌朝の事だった。


 あの最悪の目覚めは今でも時々悪夢となってみると言う。

 目を開けると、やけに頭の中がはっきりとしていて、同時に世界は真っ暗だと気がついた。

 自分が毛布などを頭からすっぽりかぶっていることに気がつき、えいやっと思いっきり蹴飛ばそうとして……そこで、最初の違和感を感じた。身体が思うように動かなかったのだ。

 なぜかはわからなかったけれど、どこかを動かそうとすると手も、足もどこにあるのか”わからない”気がした。少なくとも、昨日までとは同じ感覚では思うように動かなかったのだ。

 仕方なく、ベットから苦労して這うようにして出てくると、そこでふと顔を上げて部屋にあった鏡に映る自分を見た。


 最初に驚き、次に”ソレ”が自分の上半身だと理解する。

 その時点で頭の中には(どうしよう)の言葉で溢れてしまって何も考えられなかった。

 しばし硬直した彼女は、ようやく絶叫することと”ソレ”な姿を誰にも見せないようにと、再び毛布の中に退散することを同時に行った。

 なにがあったんだと駈けつけた家族が見たものは、ベットの上で姿を隠して丸まったまま「見ないで」と叫び続ける下の妹の姿であった。


 確かに、一夜にして”ソレ”な姿に変貌したことはショックだっただろう。

 髪はすべて抜け落ち、肌は真っ白になっていた。まるで白いペンキでも塗りたくったかのように。

 そして体中が、手も、足も、顔も、背中にも、醜く力こぶのような隆起がみられ。それが醜さを一層際立たせていた。

 そんな醜くなった自分の姿をいきなり見て、彼女は震えて泣きながら思った。


 そう、まるで感謝祭のたびに見たことがある。羽とくちばしの無い鳥みたいな姿に自分はなってしまった、と。


 入院すると、彼女はさっそく集中治療室に入った。

 思った以上に、事態は深刻だったのだ。

 彼女は人間ではなく、超人だった。

 そして、超人としての力の発現に失敗したことで、このような姿になってしまったのだと医師は告げた。

 その後の様々な検査で、多くのことが分かってきた。

 まず、彼女はいわゆる獣人へと変身する力だとわかった。

 続いて、そんな姿になってしまったのはたった一晩で力を解放しようとしたために、その途中で能力が形になる前に止まってしまったのだろうということもわかった。

 そして、最後にこれを一発で解決するような特効薬はないということも、わかったのである。


 集中治療室での1ヵ月は、誰にとっても失望させるに十分なものだった。

 様々な検査が終わり、様々な投薬で彼女の肉体におこりかけたまま停止した変貌をもう一度なんとかさせようとしたが、どれも失敗したのである。



 いい結果が出てこない状況を心配して、少女の為に病院は新たに精神科の医師を用意した。その彼との言葉のやり取りが、意外にも状況を打開する鍵となった。


「先生、私はずっとこの姿のままなのかな?」


 少女は悲壮な思いを口にすると、医師はそんなことはないと答えた。

 そして、少女の体におこっている変化について、分かりやすく噛み砕いて説明を繰り返すと。最後に止まってしまった君の体の変化を進めることができれば、明日にだって退院できるよ。と、励ましたのである。

 少女は黙ったままであったが、その言葉の意味はちゃんと理解していた。


 そして翌日、なんと彼女は元の人の姿を取り戻していた。

 娘の症状がなくなったことで、家族は喜んだが。医師達は暗い顔をして少女の体におこったことについて報告をしなくてはいけなかった。




「翌日には治っちゃったの?」


 メガンのその驚きの声はここにいるみんなも同じであった。


「そそ。翌日には髪もうっすらと生えてきてたし。肌も元の色に戻って、なによりボコボコした隆起もきれいさっぱりなくなっていた」

「すげーんだな。翌日だってよ、ヴィクター……?}


 頬を上気させて同意を求めたトニーは気がついた。ディアナとヴィクターだけが、徐々に顔を真っ青に変えていくことに。


「お、おい。どうしたんだよ。2人とも」


 それには答えないまま、ディアナはかすれた声を絞り出すように


「あなた、あなたもそうなんだね……」


 そういうと、ヴィクターはうめき声を上げる。


「ああ、そうね。私もね【チャンネル】を使うの。君達が言っていた【ハイブリッド】になるわね」


 辺りに衝撃が走った。




 一晩で再びホークガールの肉体は変化し、元の人の姿に戻ったが。それは良いことではなかったのだ。

 医師達は最初、少女の体の変化から鳥族の特性の表れと判断し、最終的には背中にできた力強いうねりが、そのうち翼の形になるだろうと予想していた。

 ところが、結果はまるで別物となった。背中の大きな隆起は綺麗さっぱりとなくなってしまっていたのだ。


「まずね、私の身体能力が上がった。次に聴覚、そして方向も自然にわかるようになった。勘?みたいなのも敏感になって。

 で、最大の変化はこれ。見せるけど、驚かないでよね?」


 そういうと、サングラスを外す。その下の目が大きく見開いており、次の瞬間には瞳が様々な形に変化を見せた。


「どう?わかったかな。

 目がね、よくなったのよ。それも異様にね。だいたい30メートル以内ならよく見えるし、調子がよければ500メートル先のものでもわかるわよ。

 兄はこれを見て『鷹のホークアイだ、かっこいい』って言ってくれたけど。姉さんはお前は天使になるチャンスだったのにって残念そうだったな」

「大変だった?」

「そうね。家にいる時はそう思ってたけど、出てきた今はそうでもないな」


 能力を上手く使いこなせないことで、彼女は苦しむのだが、それは主に彼女の扱いに悩む周囲の声を無差別に彼女の耳が拾ってしまう事だった。


「あれはきつかったわ。私の前では優しい兄達が、裏では姉にどうしたらいいんだと悩みを打ち明けて励まされているのを知ったり。教師や隣の家の知りたくもないクソ話を拾ったときなんかがあってね」


 だが、そんなことはあってもこの力を呪うことはなかった。なぜなら、これが無ければこの先多分、一生知ることの無い真実を知ることができたからだ。

 一度だけだ。自室に入った両親が口にした、ザビーネは自分達の実の娘ではないという言葉を聞くことができたのだから。


「ショックは……そんな、なかったと思う。かわりに申し訳ないって思ったかな。だって超人になった時に、もうこれは決定的だろうって思ったからね。

 家は私以外は全員、普通の人間だもの。それに獣人の力が出るのは血族の関係が、って言ってるのも聞いちゃってたし。

 で、それから色々数年あって。めでたく家出、これで全部だよ」


 スッキリした。そんな風にホークガールはサングラスをかけたまま、顔に笑顔を浮かべた。



▼▼▼▼▼



 メガンはディアナに寄りかかるようにしてスヤスヤと寝息を立てている。夜更かしして睡魔に勝てなくなったようだ。

それをじっと見つめていたホークガールは、ふと気がついたように顔を上げると。


「ああ、忘れてた。それで?私は明日には出て行った方がいいのかな?」


 確かに忘れていた。そのためにも必要な話し合いであったのにもかかわらず。

 するとルーベンが素早く答える。


「その必要はないよ。正直、君が一緒に居てくれるのは心強い。君にはここまで借りを多く作ってしまったしね。返すならそばにいてもらった方がいい」

「じゃ、お互いの利益になるってことね」

「どうかな。むしろ君が余計なトラブルを抱えてしまっただけかもしれないよ。それでもいいと言ってくれるなら、改めて歓迎するよ。ディー、それでいいよな?」

「…ええ」


 トニーも頷いて見せたが、めずらしいことにヴィクターは顔を曇らせている。


「不味かったか?」

「ルン……、そう言うのは先走ってもらっちゃ困るんだよ。でもまぁ、この質問に答えてくれるなら。僕は反対はしないよ」

「何かな?シャーロック」

「……君の話した過去が本当だとすると」

「しつこいなぁ、嘘じゃないよ」

「わかった。とにかく、本当だとすると一つ疑問が残る。それは僕らに使った金額だ。あれはちょっとした出費だったよ。同じ家出者としていわせてもらうと、新しく知り合った5人の面倒をしっかりみるなんて余裕すぎるんだよね。それが出来る理由が知りたい」

「……なにいってるの?彼女、昨夜は盗みに入ったじゃない」

「ディー、それがそもそもおかしいんだよ。キャンプ場近くにある小さな店に大金なんてあるわけがない。彼女は僕らの食事、服、装備の全部を用意してくれたんだ。忘れたかい?」

「ふふふ、ヴィクター。やっぱり君は意外にムカつくやつだなぁ」

「……よく言われる」

「いいよ、答えるよ。そんなにたいした話じゃない」



▼▼▼▼▼



 まずね、話をする前に教えておかなきゃいけないことがあるんだよね。

 【この国の西海岸と東海岸ではルールが違う】、これは業界の常識なの。

 え、業界って何?野暮なこと聞かない。何について話していると思ってるの。

 西海岸は政府の影響が強いのよ。だから、暴れる奴が出てくるとTVにもでてくる有名な連中がドドンとでてくるわけ。

 反対に東海岸はちょっと雰囲気が違うんだよね。あそこで活動している連中は、どっちかというとマイペースなのが多くって、自分の流儀を押し通すのばっかり。

 だから度々東西でぶつかることもある。

 そうそう、ついでだから南も言っておくとね。あっちはカオスね。

 町によって、天国か地獄かがはっきり出ちゃう。それでも北の地獄しかないのに比べたらマシ、なのかな。


 とにかく、業界ではそういうことになってるの。

 でね、そう言うこともあって。東海岸のチームの中には情報をチク……タレコミすると、賞金を出してくれるところがあるの。で、わたしが持ってたのは全部それで稼いだ自分のものよ。

 でもね、これが結構困りものでさ。

 彼等の中には当然、警察と親密な人もいるわけ。そんなところに家出娘が1人。悪党の情報を盗んで売りつけるのも、いつばれるかわからないから怖いんだよね。

 それもあっていつまでも銀行に預けていられないから全部引き出しておかなきゃならないし。


 で、現在私は新しいネタをつかんでいるわけ。

 あの店に入ったのもそれを確認するため。あそこの店主、なんか連絡員らしいのよね。


 知ってるかな?ヤバい組織なんだけど【クライム ソサエティ】っていうの。

 ”C’S’I”って呼ばれているんだけど、そこが近く予定している計画についての情報を追っているの。

 あれあれ、みんな大丈夫?顔色が悪いよ?

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