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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
Knights of round Vol.1 Runaway
56/178

不審

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

 ホークガールと名乗った少女は、なんとも奇妙であった。

 15歳(なんとディアナと一緒!)、170センチをこえる身長、黒髪には幾分が淡い茶色が混ざっている。性格は明るくさばさばしており、昼夜を問わずサングラスを外すのを嫌がっていた。このことを彼女は頑なにファッションだと言いはっていた。

 なによりあんな出会いであったというのに、こちらのことを聞こうとせず、そして自分の事も話したがらなかった。

 そのことはディアナ達にとっても大いに助かった。まさか、自分達の親がカルト教団のメンバーで、そんな彼等のもとから逃げだしてきた、などとどう説明すればいいと言うのだ。とてもマトモだとは思われないだろう。

 彼女は慣れているのか、山道をまったく問題にしなかった。なにか、サバイバルの技術があるのかもしれない。あれから町をあっという間に出ると、深い森の中を突っ切ってそこで一夜を明かし。次の日には隣町へとたどり着いていた。


「……ルン、なんだっけ。あの映画」

「…………【ラ●ボー】のことをいっているのか?メガン。これとは全然違うぞ」


 

 その町の名前を確認して、ヴィクターも2度、驚いた。

 地図で確認すると、自分達はあそこからまっすぐ西側に移動していたことになる。だが、彼女はここに着くまでの間、一度として自分達の前で地図を広げたりはしなかったからだ。

 「私はね。勘がいいの」と彼女は言うが、何かそれだけではない理由も感じた。

 だが、それでも彼女との旅をやめようとは子供達は全く考えもしなかった。正直頼もしかったし、この関係だったらお互い気にすることなくやっていけると思ったのである。



▼▼▼▼▼


「この間抜け野郎!」


保安官は取り合えず怒鳴っておく。怒鳴られた方もなれたもので、首なんぞをすくめてみせればこの人は満足することをちゃんと分かっている。


「てめぇ、よりにもよってホイホイと渡して返しちまった、とか。そんな寝言、よくも俺に言ったもんだな?」

「でも、保安官?」

「黙れ!誰がしゃべっていいと言った。おまえはしゃべるのも、食うのも、寝るのも、マスかくのも、女房と子作りするのまで全部、俺の許可が無ければ許さん。そんなことは初めに教えたはずだ!……それで、その。子供の親というのは、本物だったのか?」

「そりゃそうですよ。ちゃんと答えてくれましたし。ダイナーでの証言通り、一緒にいた子供達の名前も言ってましたね」

「そうか、それでなんだって?もう一度言ってみろ」

「ええ、なんでもココから北の方の隣町で、【キャンプ帰りの子供達】と待ち合わせだったのがまだ来ない、とかで。それで、ここでの事件を知って確認しにきたそうですよ」

「なんだ、そりゃ!?じゃ、消えた子供達は迷子ってことじゃないか。めんどうな……カメラを持った連中がくるかもしれん。町の連中は喜ぶがな。こっちは迷惑だ!それにうっかり死なれていても困るし、山にも入らなきゃならん」

「いや、その心配はいらないようですよ。もう一つ先の町に言ってみると言ってましたし。特に騒ぎもありませんし」

「そうか。静かなのか、なら問題ないな」


 とはいえ、腹の中に溜まっている怒りは全て吐き出したわけではなかった。

 昨日、こんな山奥の、それも田舎町のダイナーでよりにもよって強盗事件を起こした馬鹿2人が居た。それはすぐに取り押さえることができたが、それを手伝ってくれたらしい子供達の集団は現場から姿を消していた。

 かわりに押収した財布の中に、その子供のものと思しき財布が残っていたが。この目の前に立つ助手の馬鹿が、人が居ない時に訪れた彼等の親を名乗る集団に渡して……返してしまったらしい。

(まぁ……いいか)

 どうせ話を聞きたかっただけだし、あとはよくやったと紙切れでもくれてやる程度の事だ。これにTVが興味を示せば、町長辺りが派手にセレモニーをやりたいと言いだすだろう。だが、保安官はそういった面倒は大嫌いであるべきなのだ。

 強盗は逮捕、いい仕事をした子供達は親達と一緒に帰宅。つまり、問題なく誰もが納得の解決をしたわけだ。

 そう考えると、もうあの事件について考えるのをやめた。


 この保安官は、善人ではあったが優秀ではなかった。彼等の親を名乗る連中が言った隣町が、何処だかまったく興味を持たなかったし、子供達が自由に移動が出来るよう車を持っていたかどうかすら気にしなかった。

 ここから隣町まで何キロあると……とは全く考えなかったのである。



▼▼▼▼▼



 ホークガールと過ごす数日間はとても充実していた。

 はっきりいうと、とても助かった。


 彼女は大きめの町に入ると、彼等の持ってきた装備をまず全部処分し、新品のリュックをはじめとしたサバイバルグッズをそろえ。さらに服も新しく頭のてっぺんから靴まで全部かえるように要求した。

 そしてその代金を全部、彼女が持ってくれたのである。

 それだけではない。

 元気の無かったメガンにも「好きなだけ食べていいよ」と許可を出し、その面倒まで見てくれた。


 ディアナはすまない、いつか返すから。と言ったが彼女は気にするなと言った。

 ヴィクターが『こっちは助かるけど、本当に一緒に旅をするのか?』と聞いたら、そうしてほしいと答えていた。

 ハッキリとは口にしたわけではないが、その言い方から、どうやら彼女も似たような境遇のように感じた。


 そんなホークガールと子供達の凸凹コンビのこれからの進路である。

 子供達はこれまで南下しながら、東か西の海岸線を目指していたわけだが、世話になっていることもあって、ここでホークガールの意見を聞くことにした。

 彼女は簡単に西と南ならどこでもいく、それだけしか言わなかった。どうやら東側には行きたくない、行けない事情があるらしい。なので、西南方向に転進して進むことにした。



 今いるのはキャンプ場。季節外れということもあってか、人影はほとんどない。それでも若い男女だけでキャンプしているというのは目立たないわけではないが……まぁ、長くとどまることもないし。第一、お行儀よく【子供らしく】振舞って見せていれば怪しまれることは無いのだ。

 そして、家出からそろそろ10日が過ぎようとしている。



「それで、どうなんだ?」

「なにが?このイモのこと?そうね、皮をむくのも飽きてきてる」


 ルーベンが唐突にディアナに聞くと、彼女はとぼけて自分の手元の作業の文句を言ってみせた。といっても、ふざけているだけではない。チラリと目の前に座っている最年長で無口な男の顔を確認する。

 彼がめずらしくこんなことを口にしたのだ。やはり、心のどこかに不安を持っているのだろう。

 実際、それを望んでいたとはいえこの10日間をこえて、親達の気配を身近に感じないというのはうまくいっているのだとわかっていても、なにかミスは無いだろうかと気になってしまうものだ。

 それに夕食に向け、今は2人でイモの皮むき中。ホークガールなどの他の連中は、近くの店に買い出しに向かっていた。


「ホークガールのこと?わかってる」

「ああ、ヴィクターはどう考えている?」

「わからないってさ。本名は相変わらず教えてくれないし、事情もダメ。そのかわりこっちについても興味はない。感心する、あそこまではっきりと無関心に振舞われるとね。徹底的に一線を引いていて、こっちは正直困ってるかな」

「そう、なのか?」

「そうよ。トニーはアホだから余計なことをしゃべるかもしれないし。ヴィクターもあの通りの悪魔だから。彼女は絶対心を許したりしない。あんたも……まぁ、別にいわなくてもわかるでしょ?マイペースだし。メガンは、お腹一杯になれると喜んじゃってもうベッタリだから」

「本当に元気になった。嬉しいよ」

「そうね」


 とはいえ、本当に困っていた。

 彼女に対して自分達は一方的に借りを作ったままだし、彼女が一緒にいることはこちらにとっても有難いことではある。なんせ、5人組の子供を親達は探しているのだ。いつのまにか1人増えていれば、それだけでこちらを見てもわからないかもしれない。

 だが、同時にホークガールの隙の無さが悩ましかった。

 なんとか打ち解けて、彼女と言う人間を知りたいと思っていた。が、とにかくガードが固く、もし強引に聞き出そうとすれば、こちらの事情に合わないならそこで別れていいと言いだすだろう。そうなったら、それはそれで申し訳ない気がするし、こちらとしても少し困るところだった。


 とはいえ、このままでいいはずもないのだ。


 一番の問題は自分達に親達が追いついた時がそうだ。彼女を巻き込むかもしれない。

 当初は自分達にもメリットがあるからと納得していたものの、根が極悪人にはなれない子供達にとって今の関係が良くないと気がつくのも早かった。

 ところが今度は肝心の彼女が思った以上に頑強で。こちらから全てを打ち明けようと試みると、むこうは知りたくないと言う始末。そもそも自分達のあまりにひどい出自を誰かれ構わず話すというわけにもいかないので、そうサバサバと扱われてしまうと対応に困ってしまうのだ。

 とにかく、どこかでホークガールとはちゃんと話し合わなくてはいけないが、どうにもそれを切りだすことができなかった。


「あたしのテレパシーで会話、とかだったらパパッと説明も出来るんだけどねぇ」

「…まさか、試したのか?」

「試そうとした、だけ。魔法使いって、この程度ならできるって言って興味を引いてみたの。【作戦を頭の中に直接、映像イメージこみでブチ込む】とはいえないから、そこは【男に告白するのもこれなら一撃】って感じに変えてね。そしたら彼女、凄いね、でもいいよ。だってさ」

「参ったな」

「ホント、この夕食の支度くらい困った話よ」



 その時、ディアナは軽い頭痛を感じた。

 それが今、まさに話題にだした誰かからの念話がしたいというメッセージであることを理解する。すぐに集中して相手を探ると、ヴィクターであることがわかった。どうやら大急ぎで皆と話したい事があるが、その前にディアナとルーベンに話があると言う。


『なによ?』

『今夜、なにかあるかもしれない』

『なんのこと?』


すると、ヴィクターの脳裏から様々な映像と情報が激流のように流れてきてディアナの脳内に炸裂した。



▼▼▼▼▼



 深夜、焚火のまわりで眠る子供達の中から、1人だけ体を起こす影があった。

 それは周りが深い眠りに入っていると確認すると、荷物の中から何かを取り出してから、その場から離れて行く。


 ディアナはゆっくりと体を起こすと回りを確認した。思った通り、今しがたここから立ち去ったのはホークガールであった。

 彼女が何処に向かっているのか、それもわかっている。



 うす暗い店内は、昼間の季節はずれのキャンプ地を訪れている客の少ない販売店とはまた違った静けさがあった。

 そこに髪と同じく明るめの黒で統一された、肌をあまりさらしていな体にフィットするスーツ姿の少女が、扉についている犬が出入りするような小さな窓をくぐり抜けて侵入した。

 夕方、ここを訪れた時に確認した。すでにこの店のセキュリティレベルは大体がわかっている。

 扉に警報装置、店内にはカメラが1台。無いよりマシ、程度の防犯意識だがこんな小さな店が必要なモノとも思えない。


 ホークガールは素早く壁際を移動すると、視覚を広くとろうとしている店内カメラまで近づき、ひょいとレンズを傾けてみせる。これで終わり。


 あっさりと警備システムを無力化すると、彼女はレジへとむかう。だが、のばした手はレジスターではなく。その下にある机の引き出しに………。

(!?)

 ホークガールは突然、自分の背後に異変が起こったのを感じた。

 これはとても悪いことだとわかったが、自分は何か見落としていたのだろうか?


「その手を引っ込めて、ホークガール」


 それは小さな声だったが、誰なのかはすぐにわかった。


「わかった。ついでに振り向くよ。なにもしないから」


 そう言って両手をあげて振り向くと、そこには思った通り。険しい顔のディアナが立っている。初めて見るが、その手にはなんだかものものしい杖(?)のようなものが握られ。そこについている刃はこちらに向けられていた。

(そうだった。この人は自分が魔法使いだと言っていたっけ)

 魔法使いの存在は知っていたが、このくらいの年齢ならばたいした力はないはずだ。そう勝手に思っていたし、ここ数日一緒に居て彼等の何人かは力が不安定なことがわかったから、少し舐めていたのかもしれない。

(なるほど、失敗するわけだ)

 これは厄介なことになりそうだ、なかなかにいい関係だと思ったけれど。それも危ないかもしれないな、と思った。



▼▼▼▼▼



「オッケー。それで!どうするのかな?私をお説教?叩く?それとも警察に突き出すのかな?なんでも好きにして頂戴」

 重苦しい沈黙を破って、ホークガールがそう開き直ったように言いだしたのは、キャンプ場と町の道半ばの事である。まぁ、多分ほかにどうしていいのかわからなかったのかもしれない。

 満月のおかげもあってやけに明るい夜だった。

 店内でディアナが開いたジャンプゲートをくぐってあっさり外に出ると、そこにはルーベンとヴィクターも待っていた。彼等はなにも言わず、顎でいこうと指し示しただけでそこからずっと無言でここまで歩いてきていた。

 だが、もうこの沈黙には耐えられなくなったのだ。


「っ!?なにを偉そうにキレてんのよ」

「なによ。それがお小言の始まり?いいわよ、ママ。初めて頂戴」

「あんたねぇっ!」

「ディー、ダメだよ……ホークガール。キャンプに戻るまで、待てないかい?」

「そうね、うん。嫌だ!どうせみんなで吊るしあげるつもりでしょ。それならとりあえず、ここで第1ラウンドやっておきたいじゃない?」

「……わかった、少し話そう。ディー、約束通り黙っててくれよ。話すのはヴィクターとやる」


 ディアナはルーベンに念を押されたのが気に食わないのか、頬を膨らませてそっぽを向いた。

 変わりにヴィクターがひとつ頷くと、持ってきていた袋の中から2つのモノを取り出した。

(ああ、気づかれてたんだ)

 さすがにそれは考えていなくて、ホークガールの顔に焦りが出る。


「ごめん。君の荷物に触ったんだ。追っかける前にね。この2つのものが気になったんだ。説明して貰えるかな?」

「……いいわよ」

「ではまず、この魔法瓶だ。といっても、これは水筒じゃないね?そう見えるだけで実際は違う、君はここ数日これを僕らの前で使おうとしたことはなかった。使って見せてくれるかい?」


 そう言って差し出すと、ホークガールは一度ため息をつくと「簡単よ」と言って受け取り。若干、やけくそ気味にあっさり魔法瓶の蓋をはずしてみせた。

 その中に入っていたのは、びっしりとつまった矢弾であった。


「ありがとう。ならこっちもお願いするよ。道具なのはすぐにわかったけど、これは何に使うんだい?」


 次に取り出したのは、グニャグニャと折りたたまれた棒の塊であった。彼女は再び「いいわよ」と今度は疲れた声で返事をして受け取ると、何かしかの仕掛けがあったのだろう。カチリとなにかボタンを押す音がして、グニャグニャの棒は突然うねうねと動きだすと弓なりに反りかえっていく。


「これって?」

「弓よ。見たことないの?」

「まぁね。変形するのは初めて見たよ。弦が無いね。これじゃ矢は放てないんじゃない?」

「弦はこのあとで張るの。っていっても、今は使わないし。必要ないでしょ」

「さすがにそんな風にニョロニョロ動くとは思わなかった」

「そう?ちょっとしたマジックみたいなものよ」


 ルーベンのあまり面白くない感想に、感動もないとホークガールは淡々と返す。


「これが君の武器なんだね、弓使い」

「ええ、そうよ。このご時世ですもの、何も持たないのは危険でしょ?でも、私はこれでも銃の規制賛成派なの。だから弓を使ってる」

「そうか、わかったよ。とりあえず、両方預からせてもらうよ。こっちに渡して」

「さぁ、どうぞ。それで?ほかにはなにが聞きたい?」


 ヴィクターにうやうやしく弓と矢を渡しながら、ホークガールは強気な態度を崩さなかった。

 だが、話の続きをすることをルーベンが否定する。


「いや、後はキャンプまで待とう」

「ルン、あんたって呑気なの?馬鹿なの?それが嫌だって……いいわ、それなら私が質問したい。質問はいい?」

「どうぞ」


 ルーベンはあっさりと了解するのでホークガールもペースがつかめない。なんだか、どこかおかしい連中だと思っていたが、だいぶ変人ばかりのようだ。


「それじゃ、教えて。いつ気がついたの?」

「ヴィクター。頼む」

「わかったよ、ルン……いつ、と聞かれたら簡単だよ。最初からさ。君はあの時、店から泡を食って飛びだしてきた僕達に声をかけた。なんかの罠だったらよかったんだけど(?)、それでもなかった。

 だから考えたんだ。なぜ君はあの時、声をかけたんだろうって」

「あら、シャーロック。その答えはただで教えてくれるの?」

「もちろんだよ、ワトソン。結論はひとつしかない。

 あの日、君はあのダイナーの中で何が起こっているのか分かっていたんだ。どうやってそんなことができたのかは分からなかったけど、そうでなければ時間として合わない。

 それに君がそんな気になったということは、多分あの時。あの強盗達があそこで何かするんじゃないかと、”君は前もって確信していた”んじゃないかと思ったんだ」

「凄い自信じゃない、シャーロック。でも、どうなのかな。私もあいつらと同じ悪党かもしれないじゃない?なんせ、ほら。イケナイ事をする悪い子なんだから、さ」

「どうかな、それについては確かに確信はないよ。でもね、せっかく名探偵といってもらったけど。これについては僕の勘が囁いているんだ。たぶん、君は悪い人じゃないって」

「悪い女には慣れているっていいたいの?色男さん?」


 ホークガールは意図していったわけではなく、からかうつもりでそう口にしたのであろう。だが、その台詞を聞いて3人が全員顔をしかめた。


「ああ、そうだよ。それで話があるんだよ、ホークガール。僕らはそろそろお互いについて”深く”知り合う時が来たと思うんだよね。君にだって秘密はあるだろう?

 ここ数日、僕らはそれを知らないでもうまく付き合ってきたわけだけど。どうやら君もトラブルを抱えているみたいだし、それに正直言うとそれは僕らも同じことが言える」

「そうかもね。でもそんなことをして意味があるの?」

「どうかな?わからないよ。でも、このままだとお互いの腹を探り合って随分と居心地の悪い話にしかならないし、もしかしたらお互いのトラブルから妥協できる点があるかもしれない」

「でも、彼女はそうはいわないかも」


 ホークガールはそう言いながら、ずっとそばで不貞腐れて怒っているディアナを顎で示す。


「大丈夫さ。今はまだ頭に血がのぼっているだけで、キャンプに着く頃にはいつものディーに戻ってくれているよ。彼女は血は熱いけど、やっぱり魔法使いなんだ。

 あそこでは待っているメガンもトニーも、分かってくれてる。今ならちゃんと話が出来るはずだよ」


 ヴィクターの説得に負けを認めたのだろう。彼女はもう一度ため息をつくと


「叩いたり小言の代わりに、火を囲んで皆で不幸な身の上を告白しあうって言うの?本気?」

「ああ」

「信じられない。そんなの、アルコール中毒やうつ病患者のグループセラピーと同じじゃない。それが本当に必要だと思っているの?」

「ああ、間違いないよ。それに、キャンプの夜はたき火を囲んでしんみりするって言うのも悪くない。それが嫌なら、君は最初からラジオと音楽、それにドラッグにアルコールを用意しておくべきだったんだ」

「……そうね、覚えておくわ。次は必ずそうするって」


 彼等はそこで話を切ると、再びキャンプへの帰途についた。満月の下の夜道は、灯りをつけなくても十分に見分けることができた。

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