呪われた運命
今回から第4部【Knights of round Vol.1 Runaway】が開始となります。
アメコミといったらやっぱりチームだよな。ということで初めてチームものを、それも分割方式でという構想でやってみようということになりました。
誰が誰だか分らん、となる可能性があるので出来るだけ早い段階で人物紹介だすべきかな?と思っていますが。意見ください。
あと、よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。
2人の男女が部屋の中をのぞいていた。
彼等の前にあるディスプレイには以下のような文字が表示されている。
【トレーニング モード : 危険域レベル3】
使用申請 及び レベル設定 : ドブ・モリスン ミラ・モリスン
対象者 : ヴィクトール・モリスン
それはつまりこの男女が夫婦で、部屋の中には2人の子供が居るということを意味している。
だが、それにしては様子はおかしかった。
寄り添う夫婦がまるでNICU(新生児特定集中治療室)にいる我が子を見ている、そんな心温まる穏やかな光景では決してなかったからだ。
マイクを通して、自分達の子供に何かを訴え続けていた。多分、彼等にしてみると部屋の中にいる子供に対し、励ましているつもりなのかもしれない。だが、その言葉の節々には明らかに怒り、失望、苛立ちといった感情がまざっている。それは次第に大きくなるのだろう、かろうじて励ましの言葉に見せかけたその声は、時間の経過と共に侮辱と罵りの叫び声へと変わっていった。
そして部屋の中で、少年は叫んでいた。いや、絶叫と言った方がいいかもしれない。
体を鋼の椅子に拘束され、口元だけは剥きだしだったが、頭はヘルメットですっぽりと隠され表情は読めないのが、かえって痛々しく見える。
部屋の中にはブンブンと低い電源の音と、外で彼を見ている両親からの心が凍りつくような罵声がそのまま大きな音量で延々と流され続ける。だが、思うにその声はきっとこの少年には届いていなかっただろう。
それまでは力が入ってこわばっていた身体が、いつしかビクンビクンと激しい痙攣をともなう震えに変わる。それに反比例するように、少年の大きく開けた口はそのままに、喉の奥からほとばしるように出ていた声だけが力をなくして消えていった。
その日、ヴィクトール・モリスンは2年ぶりに心肺停止となった。
訓練室のセキュリティが作動して強制的に電源を落とすのと同時に、医務室から緊急搬送用のロボットが出動して手早く少年の体を回収すると手術室の中へと運んでいく。
その後で、少年の両親は寄り添うようにして部屋から出てきた。
だが、彼等の顔はけわしくはあったが、口から出てくる言葉は我が子にたいする不満ばかり。
そう、彼等は結局、最後まで息子のヴィクトールを助けようとはしなかったのだ。
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この国の北部にはかつて、小さなカルト集団があった。そのリーダーの名はチャーリー。彼は自身の言葉とカリスマ性を駆使して仲間を増やしていく。
そこで何が起こったのかは分からない。
だが、とにかく政府が彼等の存在を危険と認識した時には、酷いことになっていた。
政府の施設や高官への襲撃。政治活動に熱心なセレブ達の殺害などなど。
すぐさま国は法の力によって彼等の罪を白日のもとにさらけ出そうとしたのだが、結果から先にいうとそれができなかった。
ただの小さなカルト集団だと思っていた彼等は、いつの間にかその組織を変容させ、秘密結社と呼べるものになっていたからだ。チャーリーとその仲間達を捕えようと司法が手をのばすと、次々とそれを妨げる者達が現れ、彼等の罪を覆い隠していこうとした。
それでもなんとかチャーリーと犯罪に関わった実行犯を捕えたが、そこで捜査は打ち切られる。
裁判が始まると、容疑者達はそろって自身の狂気の行いの正しさを主張し。法廷であしざまに犠牲者たちを罵倒し続けてみせた。そんなこともあって、検察は粛々と進めるだけでよかったし、弁護側はまったくやる気を見せなかった。
彼等はそろって全員が死刑判決、その年のうちに全員がこの世から消え去った。
だが、組織は残った。
チャーリーは生前、他のカルトと同じようにアーマゲドン(最終戦争)について多くを語っていて、チャーリーの周りに集まっていた仲間達はそれを【教典】として形に残していたのだ。
そしてチャーリーの死後、仲間達は【教典】を手にして新たに【レヴォリューション9】を立ち上げた。
彼等の信じる予言者が口にしたアーマゲドンを実現するため、その戦士となったのだ。
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トッシュ・スティーブンスは自分が気が短いということを知っている。
14歳の反抗期といっても、それはいささか目に余るくらいひどいものだということも理解はしている。理由は簡単、彼は生まれながらの超人であるからだ。
だが、それは別に問題ではない。彼が抱える、この怒りのマグマこそが忌まわしいものであり、呪いでもあるのだ。
それまでも確かに癇癪持ちな部分はあったが、反抗期に突入すると同時にそれはコントロール不能な爆弾となった。
2歳年上のルーベン・キャラハンに、いつもの低いテンションで「ヒステリーはよくない」とまっとうに指摘されたことに腹を立てたあの日の出来事は、今でも鮮明に覚えている。
子供部屋で楽しくディアナとヴィクトール、メガンが遊んでいる中、部屋の隅でついに彼はその爆弾を爆発させた。
トッシュの超人としての力は【グローブ】と呼ばれるもので、手の平から様々な自然現象を放つというものだった。
それはある時は火の球であったり、氷の塊であったり、雷のキューブであったり、煙の塊だったりと色々なことができる。
彼のような超人は別に珍しいことではない。表現する形が複数あることで、一般ではそのことを【チャンネル】または【チャンネルを切り替える】ことができると表現した。
そのかわり、こういった能力は決して飛び抜けたものになることはないとも言われていた。
彼等が作り出す火の球はどこかの宇宙人のように一兆度にはならないし、その氷は絶対零度で安定することはないのだ。
ちなみに【レヴォリューション9】ではこのような超人達の能力のことを【ハイブリット】と呼んでいる。
トッシュの場合は感情、それも怒りによって力が不安定になることが問題だった。
あの時もルーベンに怒りを向けた時、思わず彼は掌から火の球を溢れださせてしまった。怒りにまかせて次々と掌から飛び出してくる火の球は部屋の壁や床へとぶつかりはねていく。
結果は最悪、子供部屋の中は火の海へと瞬時に姿を変えたのである。1つ救いがあるとすれば、低血圧なルーベンが冷静に自分の体を鋼に変化させて火の球を次々と弾いてくれたことと、ヴィクトールがディアナとメ―ガンを守ってフォースフィールドを張って守ってくれたことだろう。部屋は別にして怪我人はゼロ。子供達は全員無事だったが、トッシュはその後、この事件について苦しむことになった。
それも当然だろう。
危うく自分の友人達を愚かな怒りで、焼き殺そうとしてしまったのだから。さらに、子供部屋の修復に親達はたっぷり一年をかけた。そのおかげで子供達は、その一年をひたすら大人達の【授業】に苦しめられる羽目になったことも、彼の心の重荷となった。
トッシュはその経験から自分の怒りをコントロールしようと強く思い。
そして、それが不可能なことだと何度も何度も思い知らされながら、それでも僅かな希望を胸にずっと持ち続けていた。
そのトッシュは冷静そのものだった。
正確に言うと、頭の中が凍りついたようにしびれていて、目の前の光景を脳に刻みつけていた。
2週間前、彼の幼馴染みにして兄弟といっていいヴィクトール(ヴィクター)が彼の両親の手によって”2年ぶりに”死にかけた。
皆と一緒に事件を知らされた時、舌が凍り頭は真っ白になった。
そして、ようやく彼との面会許可が下りた今日。さっそく様子を見に来たのである。
ベットに横になっている友人を見て、安堵するどころか血が徐々に凍っていくのを感じる。
意外に元気そうだと思っていたヴィクトールの顔をよく見て気がついたのだ。
表情が狂っている。
左右の目はそれぞれどこか焦点が合っていなかった。看護ロボットとずっと何かを話しているようであったが、マイクから入ってくる彼の言葉は滅茶苦茶で、話題もあちこちに飛びまくっていてカオスだ。
何よりも恐ろしかったのは右半分が死を感じさせるようになにもないことで違和感を感じる。
嬉しいはずの対面は、ヴィクトールが地獄から再び這いあがってきたという現実を思い知らされる厳しいものであった。
有難いことに、トッシュの目の前にあるコンソールで操作をしなければ向こうからはこちらの様子がわからないようになっている。できれば、今の彼とは話したくはなかった。
そのかわりヴィクトールのカルテを呼び出すと、どのような処置が施され、今後のリハビリ計画などに目を通す。専門用語などかけらも意味はわからなかったし、投薬された内容もわからなかったが、凄まじい状況から生還したことだけは目を通しただけでも容易に想像が出来た。
(リハビリが2週間で終了?早すぎるだろ、あれなら1年くらいかけたっておかしくないだろうに)
入室音と共にミラ・モリスンが。友人を殺そうとした、その友人の実の母親が現れると、なぜかはわからないがトッシュは素早く端末を操作するとそこから一歩後ろに離れる。
「き、今日から面会できると聞いて!元気にしているかなって……」
どう聞いても怪しいし、最悪の言い訳だ。
慌てているトッシュは頭だけではなく舌も思うように動いてくれない。ミラはそんな彼を一瞥するとその横を通り過ぎると「そう」とだけ短く答えた。
「ヴィクターのヤツ。どうなるかと心配したけど、見たら”全然大丈夫”そうで安心しました。来月には退院だそうですね。ホント、よかった」
緊張を隠せない言葉だったが、それでも最後だけは彼の本心から出たものだった。
「ええ、そうね」
「……あー、おじさんは?」
「すぐに来るわ。トニー(トッシュ)、何か用が?」
「いえ、いえっ!ただ、どうしているのかなぁって」
「自分の息子だもの。彼も心配しているわよ」
(お前等が壊そうとした癖に)
心の中で、これは友人の分だとばかりに悪態をつく。だが、続いて彼女が口にした言葉は、出来れば聞きたくは無かった。
「本当に……なんであの子。あんなにダメになっちゃったのかしら?このままじゃ役に立たなくなってしまうわ。怠けることを覚える前に、早く訓練を再開させないと。リハビリ、1週間に短縮して貰えないかしら」
トッシュが耳を疑うようなことを悩ましげに言う母親は真剣な目をしていた。
吐き気がした。
居心地の悪さからトッシュはじりじりと出口に向かってさりげなく体を移動させていく。後は自然な挨拶をして、出ていけばいいだけだ。それなら、ここの床を汚さなくて済む。
なのに、彼を返したくない奴が居るのであろうか。また新しい入室者を告げる音がした。
「トニー!息子に会いに来てくれたのかい?」
「ええ、おじさん……お見舞いが終わって、そろそろ帰る所です」
友人の父親であるドブは筋肉が詰まった上半身を大げさに広げてトッシュの肩を抱いてくる。
「そうか。なら明日もぜひ来てくれよ。息子はきっと入院で退屈しているはずだからね」
「そうですね……次は皆にも声をかけてみますよ」
ドブは陽気にそうか、ありがとうと口にするが、トッシュは笑顔を顔に張り付けていただけであった。
「それじゃ……おじさん、おばさん。今日は帰ります。”ヴィクターは疲れてる”かもしれないし。では」
トッシュは逃げるように、友人の病室から飛び出していった。
これ以上、彼等と同じ場所にいる気にはならなかったのだ。
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ルーベン・キャラハンは本のページをめくる。
今読んでいるのはディアナが感想で「あたしにはちょっと」といい、メガンは「ドキドキした」という恋の物語を読んでいた。正直、面白いかどうかと言われたらよくわからないとしか彼には答えられない。
だが、彼が1人でする暇つぶしには読書しかなかった。ただそれだけのことだ。
トッシュ・スティーブンスが冷静でない様子で子供部屋の中に入ってきたのはそんな時だった。
ブツブツと何かを口にしながら足早に部屋の中へと入ってくると、壁にぶつかったところでUターンする。そのまま入り口のドアの前と壁の間をウロウロしはじめた。よくない兆候だ。
ルーベンは子供部屋の中を素早く見回した。
読書をしている自分以外には、ディアナとメガンの2人が楽しそうにとりとめの無いガールズトークを楽しんでいる。15歳のディアナと12歳のメガンは姉妹のように仲が良いというのもあるが、話に夢中でトッシュのことはまだ気がついていないようであった。
わかっていたことだ。仕方ない。本を開いたままの姿勢で、ルーベンが話を聞いてやることにした。
「トニー、ヴィクターの見舞い。いったんだろ?」
「ああ!」
冷静ではない相手から、肯定の返事があったが、様子はよくならなかった。
明らかに何かに怒りを感じ、必死に感情を抑えようとして失敗しかけている。あまりに異様な返事であったせいで、ディアナとメガンも異変に気がつき、ぴたりとおしゃべりを止めて目をこちらに向けた。
ルーベンはひとつため息をつく。
「どうしたんだよ?なにか……問題があったのか?」
「問題?問題だって!?ルン(ルーベン)、あるに決まってる!」
「落ち着けよ。荒れてても言わなきゃ分からない。とりあえず、話せ」
うながされると、トッシュの口は勢いよく回りだし、先程までいた病室での一部始終をその場にいる皆の前でぶちまけた。
しかし、そのおかげか怒りが和らいだのか、それとも別の所に意識がいったからか、ウロウロするのだけはやめてくれた。
ルーベンはそんなトッシュの話を聞いて頭の中で情報を整理をする。
いくつか主観的な意見が混ざってはいたが、それを無視すればヴィクトールは大丈夫なようで、来月にはとりあえず退院できるということはわかった。とにかく、それだけは喜ぶべきニュースではある。
「そうか、来月には退院できるのか」
「頑丈だよね、アイツ。感心しちゃうわ」
「あ、トニー。明日はメガンも御見舞にいくよー」
3人がそれぞれの感想を漏らすのを聞くと、再びトッシュの怒りの炎が燃え上がった。
「みんな!なにを馬鹿なことを言っているんだ!?」
大声を上げるトッシュを見て、ルーベンは読んでいた本をぱたんと閉じた。どうやら本格的に話を聞いてやらないと、またこの部屋を火の海にするかもしれない。
「話せよ。怒っていてもわからない」
かつての経験から、こういう時は何が起きてもいいように構えておきたい心情ではあるが。ルーベンは横になったその姿勢のままトッシュを促した。こちらが話を聞く姿勢を見せている間は、多分彼も冷静でいられるはずである。
すると、トッシュは3人の少年少女の顔を見回しながら、自分の心の奥に秘めた思いを口に出しはじめた。
「限界だ。もう、限界なんだよ!
ヴィクターが頑丈だとか冗談を言うな!アイツは、自分の親に殺されかけたんだぞ!?
何より重要なことは、これが初めての話じゃないってことだ。最初は8歳の時だ。次は12歳、しかもアイツは自分の誕生日に。誕生日プレゼント変わりだとか言われて殺されかけたんだぞ!?
頭がおかしいのさ。狂ってるんだ。あの調子なら、そのうち毎年殺そうとするに違いない」
「……」
「なのにお前達はアイツが来月には退院できてよかったね?頑丈だ?見舞いに行く?信じられねぇよ……」
ヴィクトールことヴィクターはトッシュと同い年で、兄弟のように過ごしてきた。繰り返し彼に危害を加えようとする相手の両親に冷静ではいられなかったのであろうことはすぐにわかった。
だが、なにをいえばいいというのだろう?
「冷静になれ。怒ってもしょうがないだろ」
「ルン、なに年上だからって偉そうに冷静になれ、だ。そんなこと、アンタにいわれなくたって自分でわかってる」
「なら…」
「だから限界だといっているんだろうがっ!」
なんだかひどくマズい話になりそうな気がした。
「俺は馬鹿だし、すぐにキレちまう。でもよ、馬鹿だからってなにもわかってないわけじゃないんだぜ?
ヴィクターの話だけじゃない。ここにいる皆にだって関係のある話だ。
ここにいる皆は知ってるだろ。自分達の親が、両親が、どちらも毛ほどもマトモじゃないってことを。あいつらが、俺達をまともに子供として扱ったことなんて、2本足で立って言葉を話すようになるまでだ」
「それは言いすぎじゃ」
「どこがだよ!?メガンの親なんてどうした?忘れたわけじゃねーだろ。
あいつらメガンが話せるようになったからって毎日この部屋に連れてきて、『じゃ、よろしく』とかいって放置してたじゃないか。病気の時も、盲腸の時も。医療ロボットを呼んで全部済ませたんだぞっ」
「ちょっと!!」
ディアナが慌てて声を上げるが遅かった。隣に座る少女の顔が曇り、目に涙をためている。
だが、トッシュはやめようとしなかった。続いてディアナに噛みついた。
「ディー(ディアナ)だってそうだろ!?
偉大な魔術師の娘なのに、お前はどれだけ魔法を使える?1つか?2つ?なぜそれしか出来ない?みんな知ってる。
お前が才能が無いからじゃあない。お前の両親は、お前の才能を恐れているから何も教えていないんだってことをな!」
激して口についた言葉であったが、それが事実であるが故にディーは……ディアナも何も言えなかった。
「おい、トニー。いい加減に……」
「だから!冷静とかそういうのはもういいんだよっ。
ルン!あんただってどうなんだ?あんただってもう16だろ?この部屋に出入りできるのもあとどれくらい時間が残っているっていうんだ?」
「さぁな、大人達に聞いてくれよ」
「聞かなくたってわかるだろ!?もう1年もあるかどうかなんだぞ。
あの親達は結局は俺達を自分達の跡継ぎにしたいのさ。死人が残したイカレタ本を有難がって。それを実現させる戦士にさせたいんだ。
あいつらがその気になったら、あんたをここから連れ出して犯罪の片棒を担がせるようになるぞ。それを拒否できると本当に思ってるのか?許されるとでも?」
「……」
ルーベンは何も言えなくなっていた。
確かにトッシュのいうとおりである。ここは【レヴォリュ―ション9】の中にある子供部屋で、組織の構成員たちの子供が自由に過ごしてもよい場所であった。そして、現在この部屋を使っていい子供の数はルーベンを含めて5人しかいない。数年後には、この部屋を使う子供はいなくなることは明らかな事実だ。
「俺はな、もう限界なんだよ!?それに本当はみんなだってどうなんだ?このままでいいって言うのか?」
「……どういう意味だ?」
「とぼけんなよ!このままここにいる全員、犯罪者になるつもりがあるのかってことだ。それを受け入れるのかってことだ。
俺は……いいか?俺……最近、思うんだよ。
ルンは16、ディーは15、俺とヴィクターは14でメガンは11だ。
ここにいる皆が、残された時間がないって事実。どう考えているんだよ。
5年もすればこの部屋は子供部屋じゃなくなる。使う子供が居なくなるからな。その時、俺達は何をしていると思う?
町にいって、たくさん人を殺して、金を奪って、ヒーローとか言われている奴等にボコられてムショにブチ込まれる。そんな人生が待っているかもしれないって考えたことはないのか?
その時、俺達がやりたくないって言えばあの親達がそれを許すと思うか?イカレてるんだぞ?
絶対もっと酷いことをやってくるに違いないんだ。逃げられないんだよ、ここにいたら俺達は」
ぞわりと背中に冷たいものが走った。穏やかに、こんこんと語りかけてくるトッシュの言葉を聞いているうちに、このままではまずいことになるぞ、とルーベンは悟った。「まて、そこから先は言うんじゃない」、そう止めようと思った。
だが、それよりさきにトッシュは叫ぶように宣言してしまった。
「俺はここでみんなに提案したいんだ。ここから逃げ出そう!
あの親達の手の中から離れるんだよ。ここにいたら俺達の人生は決まっちまう。違うモノを望むのなら、ここから出て行かなくちゃ手に入らない。みんなで逃げるんだ!」




