ROUND 6
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「あなた、どこまで馬鹿なんですか?」
「なっ!?」
思わずクエリー・マキシンは言葉に詰まる。電話の向こうの声は、単純に心の底から呆れていた。
「し、しかしっ」
「ああ、いいですよ。やる気はある、そういうことでしょ?それはそれでいいんですけどね。こういうことには、やっぱりセンスというものが必要な訳でして。そろそろ、腹をくくった結果の方を出していただかないと」
「む、むむ」
一言も言い返せなかった。
まぁソレも仕方が無い。なんせ、戦う前に負けていた、とか。戦うつもりで何も出来なかった、がつづいているのではそう言われるのも仕方が無いというものだ。
「わ、わかっている。今度は大丈夫だ、映像的には弱いとは思うが。相手を決して自分の近くには寄せつけるつもりはない!」
「そうですかァ?」
電話の向こうではまだ疑っているようだが、自分はこれでもちゃんと反省していた。
相手はやはりヒーローである。自分のルールで相手を何とかしたいと思うのは、考えてみれば至極当然のこと。前回のように筋肉馬鹿を側に近付けたことは、やはり大失敗以外の何物でもなかったのだ。
「まかせてくれ、次こそやってみせる」
「……わかりました、それではひとつ。仕事をご紹介しましょう。別の方面からの相談を受けてましてね。是非、口が固くて、目的意識を共有できる人物を可能な数集めたいという要望でして。あなた、そこに混じってみるといい」
「む、手伝いということか?」
「まぁ、1人で計画を立てては至らぬ点も出るようですし。ここらで”本物の仕事”というのを体験することで経験値を増やそう、そういうことですよ」
「しかし、私の目標は……」
「ですから、その中で。可能であるならご自分を試してみるといい。とにかく、明日また連絡しますから。心の準備だけはきちっと整理しておいてください」
そう言うとむこうはさっさと電話を切ってしまった。
(ふむ、まぁいいだろう。むこうも困っているようだし、世話にもなってるから手助けの代わりということだな)
しかし、一体何をやることになるのだろうか?
▼▼▼▼▼
アークシティに降り注ぐ太陽はその勢いをさらに増している中、大通りを走る一台のSUVと呼ばれるタイプの車が走っていた。ただ、その車には一つ、他にはないおかしなところがある。
それは、乗っている男共が、運転手からしてみんなが頭に動物のマスクをすっぽりとかぶっていたのである。
「みな、今日は良く来てくれた。といっても、お互いこれだから顔も名前も知らないはずだ。だが、それでいい。そのままで終わることがプロなら面倒が無くていいとわかっているはずだ。
俺は今回のリーダー、頭のこれと同じでペンギンと呼んでくれ。
ドライバーは馬だ、彼とは以前にも組んだことがある。腕は確かだし、信用して貰っていい。にわとり、虎、君達とは今回が初面識だ。クールに仕事が終わるよう、努力を期待する」
ペンギン頭のマスクをかぶった男がそう告げると、さっそく鶏頭が声を上げる。
「これで全部か?」
「いや、あと2人いる。そいつらとは現地で合流することになっている。フクロウとキリンだ。あらかじめ言っておくぞ、動くのはこの6人だが、分け前は7等分。面倒なことを言いださなけりゃ、一週間後にはみんなハッピーに南の島でバカンスに入っている予定だ」
続いて虎頭が不満そうな声を上げる。
「7か、自分は手を汚さないで分け前をもらえる奴がいるってのがな……」
「確かに気持ちはわかる。だがな、そいつはすでにここまでの間、多くの仕事をしてきている。あんたを俺に引き合わせたのも、今日のターゲットも、この車も、そして予定だが金の洗浄もそいつの担当だ。
忠告しとくぜ。そいつへの不満はここで終わらせておけ。
そいつはちょっと厄介な奴で有名なんだ。つまらん言いがかりをつけて怒らせても、ハッピーエンディングはないぞ」
「わかった…」
不満そうな声を上げると、運転席の馬顔が声を上げる。
「ペンギン、あと5分だ。計画の最終確認を」
「わかった……ちょうど今頃、別に動いているフクロウとキリンが屋上から侵入。建物のネットワークを無力化をはじめている。俺達3人は到着と同時に、ロビーの人間を制圧。
ひとついっておく、銃は使うな。
そのための電磁警棒と、ショックガンを渡してあるはずだ。それだけを使え。繰り返して言っておく、銃は使うな。いいな?
馬が逃走用の車に乗り換えて戻ってくるまでの間に、頂くモノを持ちだす準備を整えておく。
どうだ、簡単だろ?
予定では都合30分かからずに終わることになっている。むこう数年はパーティ三昧ができるアルバイトだ。気合いを入れていけ!」
ペンギンの言葉が終わると同時に車が止まると、3人の男達は勢いよく飛び出していく。それを確認すると、車は再びうごきだした。
その建物にはルーサ・ルーサ・コープ銀行と書かれている。大通りの喧騒でパンパンと乾いた音が中からするが、大通りを歩く人々はそれに気がつくことはなかった。
が、それからわずかな時を挟んで銀行の中から凄まじい衝撃が噴き出し、周辺を歩いていた人達はみんなして耳をふさいでしゃがみこんでいた。
一体、何が起こったというのだろうか?
ルーサ・ルーサ・コープ銀行の中もまた、大変なことになっていた。
窓ガラスは外側へと軒並み吹き飛んでおり、空気を軋ませた衝撃で目を回している客や従業員もいた。そんな中で、ペンギンはカンカンになって怒っていた。
「クソッ、このシロ―トの間抜け野郎めっ、銃は使うなと言ったことを忘れたのかっ!?」
そう言うと鶏の手から銃を取り上げる。銃口の先には、警備員の制服を着てキラキラと輝く肌の超人が倒れていた。
「で、でもよ…」
「こういうところの警備は昨今は超人が多いんだよ。そいつらは契約で体内に緊急のシステムを立ち上げる生体スイッチの役目を果たしているんだ。銃で殺したら、それが一気に解放されるんだよ。だから銃はやめろと言ったんだ!!」
「す、すまねぇ」
「黙れ、やかましい!お前は下行って様子を見てこい」
そう吐き捨てると、慌てて腰の無線機を取り出した。
「馬、おい馬!聞こえているか?こっちはしくじっちまった」
「……ああ、確認した。大通りは混乱している。衝撃波が対面する建物のガラスまでも吹き飛ばしているようだ」
「すぐに迎えに来てくれ!」
「…すまないが無理だ。お前からは見えないのだろうが、ここからだとすでに警官がちらほら集まってきている。急げば2分でそちらにいけるだろうが、そこから出る頃にはもう囲まれている。逃げ場はない」
「…クソッ!」
「一緒に捕まるためにそこに戻るつもりはない。俺はここで抜ける、あんたに運があるように祈っているよ」
「…っ!?……わかった、生きてたらまた会おう」
「ああ、それじゃ」
ペンギンは交信を切ると、肩を落とした。足を失った、ここでなんとか逃げる方法を自分達で考えないといけない。
彼はプロだった、抜けると馬にいわれた瞬間は罵ってやろうと思ったが、それがとても無意味なことだとわかっていたから、すぐに冷静になることができた。そう、ここからは5人で何とか知恵を………あれ?
「おい、キリン。虎頭はどこにいった?姿を見てないぞ」
そう、ロビーから1人だけ姿を消していた。
(準備よし、なにが虎マスクだ。馬鹿じゃないか、あの銀行強盗)
スーツとマスクを脱ぎ終え、いつもの”自分の姿”へ、コスチュームへと着替えた。
屋上へと出ると、すでにヘリが到着しているようで。すぐにこちらを確認しているようだった。
そしてクエリー・マキシンは、嫌そうではなかった。ミスター・アンサーは声を上げる。
「よーく聞け!この手に持っているものが見えるかな?そう、爆弾のスイッチさ。この銀行の周りを含めてたっぷりの爆弾を用意した!今から僕のいうことを、一言一句違えずに、お前等の上司に伝えるといい!!」
中にいたペンギンが、虎マスクが何処で何をしているのか理解したのはそれから10分後、情報の為につけたラジオのニュースが教えてくれた。
▼▼▼▼▼
サンダーランド警部は通りの向かいに位置したところにあるバーガーショップの2階に仮の本部を設置していた。
事件発覚よりそろそろ2時間がたとうとしている。
ようやくだが、わかってきた情報はなんだかとても面倒くさいことにしかならない気がする。
そんな事を考えて仁王立ちしていた彼の横に、黒い高級スーツを身につけた男が隣に立つ。
「私の出番、なのでしょ。警部?」
なにやら楽しげなその声を聞くと、なぜかイラッとした。
「ああ、そうだブラックサン。お前に頼みたい、重症らしい怪我人が1名。人質は30名前後いる。これを……おい、お前だけか?」
話していてここにいるのがブラックサン1人だけだと気がついて思わず質問をしてしまう。
「ああ、警部。心配しないで。外にいるだけです、まだ動いてませんから。ご安心を」
「そうか、頼むぞ。特に、お前の所の新人。カメラの前でうっかり人をサシミにでもされてはかなわんからな」
「大丈夫、お任せください。信頼と実績の交渉人ですから」
ブラックサンはにこにこと笑顔で不信の目を向けてくる警部をいなしてみせる。
「フン…まぁ、いい。とりあえずお前のことだからTVとラジオでいってることは知っているな?犯人グループの詳しいことはまだ分からないが、リーダーと一名に限り身元が判明している」
「どんな奴です?」
「リーダーはマクシミリアン・ヘイターという男だ。銀行強盗一筋のプロだな。元妻がかなりの借金をしているのがわかった。それが今回の理由だろう、妻子の方はすでに押さえてある。
もう1人はクエリー・マキシン。知っているか?先日プロレス番組にあらわれて、速攻で叩きだされた馬鹿、なんだそうだ。なんでもレスラーをやっている超人に脅しをかけたと聞いている」
「ああ、それならブッカ―とサチコが見たそうですよ。なかなか”愉快な出しものだった”、とか」
「そうか、とにかくそれが今わかっていることの全部だ。どうする?」
警部が聞くと、ブラックサンは少し考える”フリ”をしてから口を開く。
「まず、ここの下の厨房をフル回転させて彼等の食事を用意してください。それをエサに怪我人を出してしまいましょう。むこうと話してこれから1時間以内にまとめてみせます。だから必ず用意してください。
そうそう、食事は人数分ではなく。多めに用意してください。50人分くらいがいいでしょう」
「わかった。他には?」
「引き渡して1時間後くらいから”我々”が動きます。21時のニュースに警部の事件終了の記者会見が開けるよう、頑張ってやってみますよ」
ブラックサンの言葉を聞くと、サンダーランド警部はフウと大きくため息をつく。だが、何も言わずにやってくれ、と手で飲み合図を送る。
それを見て、黒の交渉人はヘッドマウントのマイクを装着した。
2時間半が過ぎた。
突然、ある回線が開くと電子音を響かせた声が発せられた。
<こちら”M”、回線を確保>
「よくやった。こちらブラックサン。みんな、いるな?」
「はい、ミスター」
「………ミスター、お腹が空いた」
老人に続いて不満そうに声を上げる少女の声に、3人(?)はため息をついた。
「サチコ、少しは空気を読め」
「だが、腹が空いたのは事実だ!」
「レディがそんなことを口にしては…」
「でも事実だ!」
<サチコ、あなたが悪いのですよ。用意された食糧から勝手に盗もうとしたのですから……それも1個か2個なら警部も何も言わなかったでしょう。あなたは両手一杯に、10個も持ってこうとしたのがいけない>
「しかし、戦の前なのだ!Nipponの言葉にも”腹が減ったら皆殺し”とある。空きっ腹では、力の加減が難しくなるんだ………」
なんとも悲しげな少女の声に、呆れながらブラックサンは返事をする。
「わかった、わかった。さっさと終わらせよう。サチコの好きなレストランに予約を入れておくから。ちゃんと頑張って仕事をしてくれよ」
喜びの声を上げる少女の声が流れると、彼等の間の空気が一変する。ついに、ブラックサンが動く時が来たのである。
「彼等の手口が判明した。どうやったのかは分からないが、あの銀行のセキュリティのバージョンをダウングレードしておいたようだ。そのおかげで侵入された際に一気にシステムを掌握された。
現在は物理的に切断することで無理矢理なんとかしようとしているのはわかっている。
まず、こっちでマスコミのカメラを時間に合わせて蹴散らしていく。
サチコ、渡した装置をもって”M”の指示を仰げ。そいつを使ってシステムをこっちに取り戻すんだ。
ブッカ―そっちはどうなっている?」
「ミスターの指示通り、カッチーナ警部補を含めた狙撃部隊約20名を再配置しております。もしもの場合はこちらで”対処”いたします。どうぞご心配なく」
「その時は頼むぞ。
サチコ?装置を設置したら君は屋上へ向かえ。君に中を制圧して貰うが、最悪の事態を除いて犯人と人質は確保したいとの要望が出ている。わかるな?斬るんじゃないぞ」
「はーい、わかったよ。ミスター」
「すでに話したが、屋上にいる変人と中のリーダーとはどうも話が噛みあっていない。
仲間割れしたわけでもなさそうだが、これはチャンスだ。彼等自身を利用して、一気に事件を終わらせてしまおう。
よし、それでは皆。はじめようか」
ミスター・アンサーは実にみじめな気持で屋上の端に体育座りしていた。
屋上に居続けたせいで、ビュービューとふく風ですっかり体が冷えてしまっていたのだ。そこに先程からグーグーと腹の虫が盛んに泣き始め、ぶっちゃけひもじい思いをしている。
だが、こんな事で負けるわけにはいかなかった。
手元にある携帯端末で確認する。先程から始まったニュースでは、屋上でカッコよく叫ぶ自分の姿が流され、そこにテロップで銀行強盗とのおどろおどろしい言葉が並んでいた。
(ついに、ついにこの時が来たんだな)
あのナンたらいう老人には、次に会った時にでも感謝の言葉を述べるべきだろう。なんといってもこの”銀行爆破”事件(?)を”この自分の為”に用意してくれたのだから。
どうやら警察もマスコミもその辺は勘違いしているようで、先程から繰り返し何千万ドルを狙った、とか、銀行強盗という言葉を繰り返している。
「そこにいるのかな、ミスター・アンサー?」
突然、近くに置いてある無線機から声が流れだす。まだ太陽が出ているうちに、警察がこちらに渡してきたものだ。
「む、もちろんだ。私はここにいる。ずっと待っているのだぞ!」
「それはすまなかった…君の下にいる人達が、色々と文句を言ってきてね」
「そうか、下の連中が迷惑をかけてすまないな。それで、私の飯はどうなっている?」
「それなんだよ。困ったことさ。すでに十分な食料と水はそちらに渡したんだけど、下の人が言うには君が屋上から降りてくればいいだけの話だと言って聞かないんだよ。ずっと頼んでみたんだけどね」
「むむむ!?」
どうも下にいる連中は何を考えているのかわからない。
最初に屋上に来た時も、ドアをちょっとだけ開けるとそこから必死な声で「こっちにこい」とかなんとか散々ささやいていたっけ。もちろん、”わたしことミスター・アンサー”はそんな影に隠れるようなことはしない!
「いや、こちらもまさかそんなことになるとは思わなくてね。でも、君が望むなら少し時間がかかるけど。新しく用意してヘリで屋上に届けてもいい。ただ、30分くらいは時間を貰わないとダメなんだが」
「頼む、ぜひにお願いしたい!」
正直、寒いこともあってなにか口にしないとどうにかなりそうな気もしてきていた。
「わかった、もう少し我慢していてくれ。それに関連して、君の要求していたショーのことなんだけどね」
「うむ、どうなっている?」
「装置の方はそろっているのを確認した。ショーの進行役として希望してたバクスター・フェロンも『楽しみだ』といって引き受けてくれたよ。ただ、やはり全てをそこに持っていくのに時間が必要だ。多分、君も見ていてわかってると思うが。この時間、バクスターは自分の番組で生出演している」
バクスターとは多くのクイズショウの司会をしてきたことで知られる初老の男性である。
最近はちょっと下世話なトークショウなど始めているが、そちらの方でも往年の輝きを見せている。彼のトークは最高で、ちょっと相手に質問を投げかけただけで、感情豊かな言葉を引き出すことができることで有名であった。
クエリーの時から考えていたのだが。もし、自分とヒーローの対決の場をTVショウ仕立てでやるというなら男の司会者ならば彼がいいと思っていた。きっと、自分の知的な部分をちゃーんと聞きだして理解してくれるだろうし、ヒーロー共のいかに粗野なことをはっきりと見るものにわからせてくれるはずだ。
「ああ、確認している。ところでそっちでも見たかな?彼はこの番組冒頭で『この後、驚く話が今さっき楽屋の僕の所に飛び込んできた』といったんだ」
「ああ、もちろんさ。それが君のショーのことだよ。他に何があるというんだい?とにかく、一刻も早く多くの人に見てもらえるようにと、今は21時にできないかと言っているんだ」、
「そうか、そうなんだ」
ミスター・アンサーの胸が高揚する。どうしよう、最高の舞台が目の前に用意されようとしてるとは。
「そ、それで?相手はだれがくる?」
「おいおい、それこそ君の望む通りを用意させてもらうよ。だれがいい?
アークシティを代表する光の騎士、アークナイトはどうかな?闇に蠢く亡者を襲う不死の探偵は?大魔法使いにサン・ナヴァ-ル病院院長にして不惑の白い婦人はどうだ?彼等とは知り合いだからね、こちらが連絡すればすぐに来てくれる。
警察の中にも大勢そろってるよ。雷人、ゾンビ刑事、獣人、とにかくよりどりみどりさ」
次々と交渉人の口からでてくるビックネームにくらくらしてきた。
「そうだね。うん、まぁ私もいろいろと考えて選ばないといけないかな」
「わかるよ、当然のことさ。でも忘れないでくれよ?君が決めないとショーの相手は用意できないんだから……ああ、そうそう。こちらからも1ついいかな?」
「なんだ?」
それは用意された罠、一瞬の空白、そして致命的なミス。
「いや、たいしたことじゃないよ。すまないけど、”ちょっと僕らに捕まって貰えないかな”?」
それはごく自然に出てきた言葉であったが、その言葉の意味を今のマキシンには考えられなかった。
「…ああ、かまわないさ」
「そうか、ありがとう。じゃ、すまないけど、ちょっと後ろを見て欲しい。多分、黒髪の美しい少女が立っているはずだよ。”彼女の前までいってもらえるかな”?」
「…わかった」
確かにいつの間にそこにいたのだろうか、にこにこ顔のサチコが立っており。その左手は腰につるされた刀に添えられていたが、右手には手錠を持ってクルクルと弄んでいる。
「次で最後だよ。その少女が君の手に手錠をはめるから、すまないが”ちょっと寝ころんでしばらく待っていてくれないかな”?」
もう返事は必要なかった。ボーっとしたまま、サチコに後ろ手に手錠をかけられ、優しく寝転がされるとそのままなんだか眠けすら感じる。
「ありがと、それじゃ待っててね」
クエリーから離れる時、背中越しにそう囁くとサチコは屋上の扉を開けて中へと入っていった。
それからきっちり2分後。サエコの合図で銀行のロビーへと警戒しながら入っていった警官達は見た。
館内放送で発せられたブラックサンの”オーダー”により身動きが取れなくなって床に転がされる犯人グループの姿を。
いつもながらの仕事ぶりに心の中で微妙な気持ちになっている警官達の前にサチコはくると、犯人たちから取り上げた武装を差し出してきた。
こうして事件はあっさりと終了した。
ポーカーフェイスは深く、深くため息をついた。
TVには21時から始まったニュース番組の冒頭で、サンダーランド警部の会見が流されており。彼は冒頭で事件は無事に終わったことを告げ、すでにあちこちから上がる記者達の質問に答えていた。
(なにをやっているんですか…ね。私の人物眼は間違っていたんでしょうか?)
おもわず、頭痛すら感じて額に手をやってしまう。
だが、もう結果は出てしまったのだ。
ミスター・アンサーことクエリー・マキシンの戦績。6連敗をなおも更新中。




