表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
Challenger(黒い炎の10番勝負!)
44/178

ROUND 4

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

  観光客は知らないが、この町に住んでいるとBAR【カサンドラ】はひと際変わった店だと言う事がすぐにわかる。

 ここは女店主もそうだが、訪れる客のはほとんど全員が超人と呼ばれるなんらかの”力”をもった連中なのである。しかも、BARのくせして24時間営業などしているのも有名な話。

 夜になればその日の仕事を終えた”普通の生活”をしている超人や、どこかで事件や世界の危機にキツイ一発を食らわせてきた超人達が集まって共に飲み騒いでいるのだ。

 昼のこの店は、夜とは違ういくつも顔を持っているような女性のように、その雰囲気を変えるのだ。

 太陽が昇り夜が明けると、店内では多少の椅子の移動が行われてBARがダイナーへと一変する。

 そして、そんなこの昼の店に訪れる客達もまた超人達で、そのほとんどは夜訪れることはないのだ。



「ほれ、あれよ。あの今季移籍してきた奴。おったろ?」

「あ?ああ、タジマとかいったかな。日本人じゃったな」

「そうそう、あれな。あいつ、検査の結果。やっぱり”人間”じゃなかったらしいぞ」

「はァッ!?超人じゃったんか?」

「ちがうちがう、あの国の……なんたらいう。よくわからん生物だったらしい」

「…なんだ、それ」


 何が楽しいのか、朝早くからやってきてモーニングセットとコーヒー2杯だけで盛り上がっている老人達を目の端にして、女店主は洗ったばかりのビールグラスを棚へと並べていた。

 エグザイル― 彼女はそう呼ばれている。本名は誰も知らないし、知る必要もなかった。

 物質の分解と再構成、この力は決して弱いものではない。

 彼女自身、優れた力を持つ超人ではあるが。ここに店を構えていることもあって、めったに何かの揉め事に顔を突っ込むことはない。しかし、面倒見がいいことと、この町の超人達に広く顔を知られているので頼られることが多く、そして美しい彼女が「お願い」と言えば、まぁ大抵のヒーロー達はトラブルを引き受けてくれるのだ。


「…やっぱりカナダか。おお、そういえばカナダと言えばあれよ。刑務所の事件」

「ああ」

「なんかあったか?」

「馬鹿!刑務所の崩壊のことだよ。まったく、あいつら犯罪者をポンポン娑婆に放り出しやがって」

「そうだ、そうだっ」

「ああ、なんか聞いたな。そんなこと」

「ちがうちがう、アレな。どうも猟奇事件じゃったそうだぞ。中で怪しげな魔法陣とかあったらしい」

「…世も末じゃー」

「ホントかァ~?」

「間違いないわい!ぺテオのニュースにそう乗っ取った」

「なんだ、新聞記者の個人ニュースサイトか」

「あー」

「なんじゃ!?文句あるのか、凄いニュースではないか」


 6人の老人達はそうやって集まってあーだこーだと世間のニュースを口にしてはワイワイと楽しんでいる。今現在、【カサンドラ】にはこの老人達以外の客は、カウンターにスーツを着た中年の男がガァガァとイビキを立てながら突っ伏して寝ているくらいだった。

 ちなみにこの人物、まるで外見は恐竜のそれに近いのが特徴で太い尻尾もちゃんとついている。彼のような姿の超人はだいたいが【獣人】のカテゴリに入るのだが、その中でも珍しい鎧種となづけられた固い皮膚と並はずれた膂力を持つ特殊な存在で知られていた。

 そんな彼も、普段は仕事に追われ、時々はこんな風に店でサボりを兼ねた昼寝をしている。そんなごくごく普通の”市民”なのであった。



「南極の宇宙船、響きがいいとは思わんか?」


 老人達の話題が次に飛んだようだ。たちまち各々の意見を口にしていい立てる。


「どこが!…どうせまた、宇宙のナントカ星人とやらが来て、もめるだけじゃ」

「おお、怖っ」

「お前達2人、夢がないの―」

「ふん、なにが宇宙船が夢、じゃ。夢と言うなら、超人兵士が冷凍されていた!とかじゃろうが」

「…おい、それパルプマガジンじゃろ?」

「そうそう、あったあった。なつかしい」


 こんな感じで、この老人達の毎日はとりとめのないニュース交換を話が尽きるまでこんな感じで続けるのだ。

 そんな彼等の話題に耳を傾けながらも、エグザイルは1人で仕事をこなし、ちらと時計を確認する。

 もうすぐ次のバイトが来る時間である。そうなれば自分も少しは彼等の会話に混じることができるだろう。



「例のミュータント問題のテロリスト達はどうなんじゃ?」

「ああ、この間はEUのレースでやらかしおったと言ってたなぁ」

「むぅ」

「じゃから!ワシが言うとるだろうが、U.S.エージェントを派遣して鎮圧してしまえとな」

「またこれじゃー」

「おい、おいっ。言うただろうが。今はアフリカでN.S.U(New Soviet Union)とChainaを相手に大騒ぎになっとるとな」

「ボケとるんよ」

「じゃろうなー、血圧も上がりやすいしな」

「やかましい!」


 これはいけない、若いことが自慢とか平然と口にしてこっちを口説きにかかる老人達である。

 放っておいて好きにさせていたら、うっかり殴り合いでも平然とやりかねない。エグザイルは、皿を拭きながら自然と彼等に話しかけて話題を提供することにした。


「あ、そういえば大通りの大看板。今日張りかえですって。知ってる?」


 たったこれだけで老人達の興味はミュータント問題のことなどたちまち忘れてしまう。とても熱を持って話すが、同時にあっさりと冷めてしまうのが彼等の話の特徴でもあった。


「おお、知っとるよ。プロレスじゃろ、王座戦をやるんじゃ」

「ほう、誰がやる?」

「現王者がこの町の英雄と一騎打ちすることになっとる」


 ブーブー


 突然、1人を除いてそのほかの老人達がブーイングを飛ばしはじめる。これで1人の方も機嫌を悪くする。


「なんじゃなんじゃ、なにが言いたい?!」

「それってあれじゃろ?」

「そうそう、我が町の恥さらしじゃ」

「あれではなー」

「なんじゃなんじゃ!?応援してやろうと言う気はないんかい」

「ヒール同士の戦いじゃ、どうせすぐにどうでもよくなるわ」

「終わり方も目に浮かぶわ―」

「だいたい、あいつはレスラーになる前から乱暴者じゃった。警察署の連中も往生してたぐらいじゃしの」

「素直には声援を送りたくないの―」


(ちょっとご老人方、少しは仲良くできないの?)

 別人がまた顔を真っ赤にさせておこりだそうとしているのを見てエグザイルは心の中でため息をつく。


「ああ、そうそう!お孫さんと見に行くって言ってなかったっけ?」


 慌ててフォローを入れたエグザイルの言葉に、怒りだしかけていた老人の顔がぱっと明るく輝くと今度はでれでれとした顔で


「そうそう、そうなんじゃよ。わし、孫と会場に応援に行くことになっとってな」


 などと語りだす。それを聞くと今度はそれまでブーイングをしていた老人達の顔がこわばる。


「なん……じゃと…?」

「いやの、この街の英雄のタイトルマッチじゃ。お前達もみたいだろ、と聞いたらぜひ見たいと言ってなぁ。いやぁ、久しぶりなんでとても楽しみにしとるよ。今日も体調がよくってな。散歩するのも足が軽い」

「ハッ、なんじゃそれ!プロレスで孫をつっとるだけではないかっ」

「あ?ああ、まぁそうだな」

「そんなのの何が嬉しいんじゃ?どうせ孫はリングに夢中で、こっちのことなど忘れてしまうわい。なぁ!……なぁ、おい?」


同意を求めて周りを見渡すが、今回はどうやら反応が鈍いらしい。それどころか中の1人がうらやましそうに


「ええのー、わしもいけるかの?」


 などと口にしだした。


「大丈夫ではないか?当日も券は発売されるだろうが、この年では何せきついからな」

「やめやめやめ!なにお前等その気になっておるんじゃ。だいたい、孫がいくとはだれも言っておらんだろう?」

「大丈夫じゃないか?若者はああいうショーは大好きだからな」


 それは必死の抵抗であったが、効果はなかったようだ。2人を除く4人の老人は一斉に懐から携帯端末を取り出すと、一心不乱になにかを入力し始めだす。


「裏切り者~!」との声に混じって、高らかに笑う老人は「今度のは久しぶりのTV生中継のタイトルマッチじゃ、面白くなるぞ」と声を張り上げる。


 こうして、【カサンドラ】の昼は夜と違い、ゆっくりと時が流れるように穏やかであった。、




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




「ふははははは、貴様等動くなよっ!」


 突然、入口から甲高い声が響きわたり、店内にいた客は何事かとそちらに目を向ける。

 

「私の名前はミスター・アンサー!。この店は名うての”ヒーロー”達が通う店だと聞いた!いいか、逆らうなよ。逆らえばこの手に持った爆弾が…・・・」


 クエリーことミスター・アンサーは得意げに喋りながら右手に持った爆弾を高々と掲げてみせた。

 自分に向けられた老人達の驚いた顔がとても、とっても心地よい。

 だが、彼は知らないのだ。老人達が実は内心では(コイツ、この店にそんなことしに来たのか)と呆れるのを忘れるほど驚いていただけなのだと言うことを。

、そして同じように呆れ顔のエグザイルがふうっ、とミスター・アンサーと名乗る男を見てため息をついた。

 こういう店なので、これまでもコレに近いことを口にしながら突撃してくる馬鹿は大勢いた。毎度毎度ご苦労なことである。もう少し別な場所に行ってもらえないものだろうか、たとえば警察署とか。

 エグザイルは気を取り直すと顔を上げて、意識を不審者の手に持つ爆弾へと集中させる。

 そしてゆっくりと、ろうそくを吹き消すように口先をすぼめて息を吐きだしていく。

 

 ミスター・アンサーは客が6人の爺さん連中と、カウンターで今も寝息を立てている服を着た怪獣、そして1人の美女しかいないとわかって実はちょっとがっかりしていた。

 ここには凄腕の超人が出入りしていると聞いていたので、この時間なら1人くらいはいるかもしれないと実は期待していたからだ。

 ふと、店のカウンター側から微かな風が吹いたような錯覚を覚える。それと同時に彼の手に握られていた爆弾が、なぜかさらさらと音を立てて砂と化し、崩れていく。ミスター・アンサーことクエリー・マキシンは呆然とそれを眺めていることしかできなかった。

 そんな無言になってしまった闖入者にエグザイルが色っぽい仕草でカウンターに寄りかかりながら声をかけた。

 

「で、なにか用なのボウヤ」

「あー、いや………失礼しました…」


 顔を青くさせたミスター・アンサーは、回れ右をすると左手にしたドアのノブをついに離すことなく店からすごすごと出ていった。さびしげな背中が扉の向うへと消えると、その様子見守っていた客達は、一拍の間をおいて次の瞬間、店内は大爆笑につつまれた。


「ああん?なんだよ、うるさいなぁ」

「ごめんね、ハンス。起きちゃったね」


 老人達のバカ笑いの大きさに耐えられず、とうとう昼寝をしていたハンスと呼ばれた恐竜顔の獣人が目を覚ましたようだった。

 だが、不機嫌な怪獣の顔をした男を除いてこの店の中の笑いはまだまだ当分は続きそうだ。いや、もしかしたらこのあと数日は話題の出来事に、この時なったのかもしれない。



 こんなはずではっ、こんなはずではっ!走りながらマキシンは心の中で何度もその言葉を繰り返す。あの、ヒーロー達のたまり場を吹っ飛ばすはずが、爆弾が消えてしまって無様に笑われている。その事実が信じられなかった。


(おのれ、ヒーローどもめっ!この次は、この次こそはほえ面をかかせてくれるっ!)


 ミスター・アンサーことクエリー・マキシン。只今4連敗中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ