ROUND 2
よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。
地上にあるアークシティに夜が来れば、そのなかにある 公園も静かになる。
公園を貫く道にある電灯を除けば、あとは暗い林が闇を演出させている。
そしてこの時、偶然にもその輝きの下をステッキをてに軽い足取りで散歩する、随分と不用心な老人の姿があった。
だが、その人物の顔をよくよく見ると……彼の名がポーカーフェイスと名乗る犯罪者だとわかる。
ポーカーフェイス――
40代半ば、口髭と美しい金細工の施された杖がトレードマークの悪党。
ビジネスマンのようにも見えるこの男は、強力な幻惑能力によって警察の目から巧みに逃れて犯罪をプロデュースする、恐るべき怪人である。
どうやら寝静まるこの町を見て、人通りの少ない場所を見て回りたくなったのだろうか。
ざくっざくっざくっ
どこからだろうか、音が聞こえてくる。
耳を澄ますとそのリズミカルな音は途切れることなく続く。そして、それがどうも砂をかき分ける音だということに気がつき、道から外れた場所にある砂場に目をやった。
闇に眼がなれなくて、すぐにはわからなかったが。慣れてくると、そこに……なんともいえない微妙な光景が待っていた。
深夜の公園の砂場で、変な恰好をした若者が一心不乱の様子で砂をかきわけていたのである。
クエリー・マキシンは……いや、それは正確ではないか。
偉大になる予定のミスター・アンサーっぽいのがそこにいた。
なぜここにいたかといえば、昼間に彼を散々に笑い物にした愚かな餓鬼共と、犬っころ達に復讐をせんがためである。
彼の作戦とはこうだ。
明日、あの餓鬼共が再び公園へと来ると、この砂場に見事なアーティスティックなトンネル付きの城(?)ができているわけだ。それを見て、誰がつくったのかわからないまま大喜びするだろう。
そのうち、馬鹿の1人がそこに用意されたトンネルを見て思いつくわけである。
「おーいっ、どうせだからこのトンネル。くぐれるかどうか確かめよーぜ―」
こんな感じで。
だが、いくら餓鬼でも小さいトンネルに入れない。それはもちろん入れない大きさでトンネルを作るからであって、だからこそ潜れそうなあの犬っころの出番となるわけだ。
ところが!このトンネルには仕掛けが用意されていて、中に入ろうとすると………ぐふふふ、さすがに火薬でお腹を傷つけるのはかわいそうだから、量は減らしてあるが。おどかすくらいは当然させてもらうつもりだった。
暗い、狭い中で目の前を突然パッとなにかが飛び散れば、パニックを起こしてどんな騒ぎになるのやら。それをみれば、さぞかし胸のすく思いを味わえるだろう。
なんとも小物臭い、チンケな復讐であった。
「あなた、なにをしておられるのですか?」
と、そんな様子で悦に浸っていたミスター・アンサーが突然何者かに声を掛けられたのだから驚かないわけがない。
心臓と一緒に体も飛びあがり、あわてて声の主を探す。気がつかなかったが、いつのまにか自分の後ろにスーツ姿のヒゲの男が静かに立っていた。
「わ、わたしのことかっ?」
情けないことに、声が上ずってしまった。
「ええ、そうです。そんなところで、それにそんな格好でなにをしているのです?」
格好?
ミスター・アンサーは今いちど、自分の姿を見て確かめる。
パルプマガジンにでてくるヴィラン(悪党)を参考に、お手軽、リーズナブルにそろえられる物で構成してみた。
緑のタイツ、黄色のパンツ。上は黒のタンクトップにやはり緑のシースルー。顔は隠さねばならないから、近所のTOYショップに売っていた星型のかぶりものをして、それにあうようにと顔を黄色に塗りたくっておいた。
まぁ、もしかしたらひどく滑稽な姿だったかもしれない。
だが、仕方ないのである。
オーダーメイドな高級スーツとかパワードスーツが欲しいが、あれは高いし。時間もかかる。なにより手に入れるコネもない。
準備に何ヶ月もかかるのでは、困るのだ。
即断即決、これが大事なのである。つまり、装備の値段ではなく、行動にこそ重要な意味があると言いたいのだ!
「な、何か問題が?ど、ドレスコードとやらにでもひっかかっていたかな?」
「…そうですねぇ。まぁ、とてもマトモなお人のすることではない、とは思いますね」
「マトモ、だと?」
「ええ、大人のすることでは……」
「ダマレ、黙れ、黙れっ!」
ミスター・アンサーは激怒した。
頭に血がのぼってしまい。考えていることをそのまま口から放り出し続けたので、その文脈の正しい意味が伝わったかどうか、さっぱりわからなかったけれども。とにかく、マトモとか大人といった言い草に対する怒りを全部吐き出してやった。
「…ふむ」
驚いたことに、顔色一つ変えずに聞いていたこの男は。こちらが話疲れてゼーゼーやり始めてからようやくそれだけを口にした。信じられない話だが、どうやらあの滅茶苦茶なこちらの言い草の意図は伝わっていたらしい。
うんうん、とうなづいているのを見る限りではそう思えてしまう。アレで、本当にわかったというのだろうか?
「ようするに、色々不満を持っているが、それとは別にして君はヴィランとして大成したい、と。これでいいのかな?」
「そ、そうだ!……よくわかったな、お前」
「ええ、まぁ。君ほどあんなにぐちぐち言う奴は初めてでしたが、似たような人は世の中にいるものですよ」
「そ、そうか」
なぜだろう、ちょっと傷ついた。
「それで、その……なんだったか忘れましたが、君は。その最初の一歩を歩き始めている最中、と。そうですね?」
「そうだ!」
「よければその企み、聞かせておはもらえませんか?」
「…なぜだ?警察に通報するつもりかっ?」
「いえいえ、まさかそんなこと。ただ、大望めざすというあなたの一歩を、私のこの目で見て置きたいと思いまして」
「なるほど、ならば聞かせてやろう」
そこから自分は熱く語った。先程とうって変わり理路整然と。
ヴィランとしてのデビューを思い、思索にふけっていた自分を辱めた事件。さらに不埒な餓鬼共の態度、天誅を下さんと振り上げたこぶしの先につるしあげた犬の許されない行為。さらにさらに、止めとばかりにそんな餓鬼共の肩を持つ、警官と言う名の公務員の登場。
あまりのくやしさに、気がつくと自分の頬を伝って落ちてゆく涙で、自分が泣いていることに気がついた。
不思議なその男は、その全てを黙って聞きながら、時にうんうんとうなづいてみせたりなどしてこちらのことを理解してくれようとしていた。
語り終えた時、涙を流し両膝をつく自分を、彼は目頭を指で押さえてから聞いてきた。
「わかりました。よーく、わかりましたよ。年長者が、愚かで無礼な目下の物を教育してやることになんのはばかりがあるというのでしょう。かの魔の大陸にある国にこんな言葉があります。”忠告耳に逆らう”(注意:正しくは忠言耳に逆らう、である)と。真心をこめていさめるのは、相手にとってはつらい事。
ではやめるか?そうではないでしょう。あなたの判断、決断を私は支持しますよ」
「そ、そうかっ」
「で、それはそれとして。どのような計画を考えておられるのですか?」
そんなに聞きたいのか?ならば聞かせてやろう。
胸を張って、意気揚々と語る作戦内容を聞くうちに、相手の表情がなぜであろうか。すっと無表情なものへと変わっていった。
「いくつか質問が。よろしいか?」
「なんだ?」
「トンネルの大きさを、なぜ子供も入れるものにしないのです?」
「決まっている。明日の朝までには完成させねばならないのだ。そんな大変な事、したくないじゃないか」
「…なるほど。次の質問、犬が相手とはいえ。マグネシウムをたくとは、その……地味ではないですか?」
「そうか?」
「ええ、出来たらもうちょっと。それも時間差で”トンネルが崩れる程度”の爆薬で持って生き埋めにするくらいが良いのでは?」
「ああ、それはダメだ」
「なぜです?」
「犬が死んでしまうし、爆殺した上で生き埋めというのはな。カワイソウではないか」
「カワイソウ?その程度の覚悟しかあなたはないということですか?」
「え?いやいやいや、そうではないぞ!言っている意味を取り違えているだけだ。あの餓鬼共全員に思いしらせてやりたいのであって、犬だけでは最悪1人以外は『あーあ、死んじゃった』で終わってしまうかもしれない。
1人が嘆けば後はいいのか?いや、そうではないだろう。それでは意味が無い!ま、そういうことだ。」
「はぁ……」
「あらゆるモノを恐怖に突き落とす、それこそがこの計画のだいご味!わからんかなぁ」
ポーカーフェイスは手を自分のヒゲへともってくると、それをいじりながら考えた。
なんだかただの馬鹿にも思えるが、ここまでアホだと”本物”かもしれない。ちょっとつきあってみるのも悪くないかもしれない、という気がしてきた。
「いいでしょう。よろしかったらあなたの復讐、私も一緒に見せてもらってもよろしいですか?」
▼▼▼▼▼
あの男の杖につつかれてマキシンの目が覚めた。
どうやら復讐の時が迫っているようだ。気がつけば太陽はもう、だいぶ下の方へと移動しかけていた。最後に見たのは登ってきたところだというのに。
あれからなにもかも大変であった。
見せてほしいと告げた男は、本当に見るだけのようで額に汗して苦戦するこっちをまったく手伝おうというそぶりを見せなかった。それどころか、度々思いだしたかのようにあーだこーだと難癖をつけようとしてくる。
正直、邪魔以外のなにものでもなかった。
とはいえ、疲れ果てたこちらに変わって見張ってくれるというのだけは助かった。おかげでこうしてぐっすりと時間まで横になって眠ることができたし、復讐の瞬間を見逃さずにすんだ。
草むらに男が2人、身を隠していると、公園の入り口からあの餓鬼共がワーワーと馬鹿みたいに騒ぎながら砂場に向かって駆けてくるのが見えた。
その後ろから、まるでそんな餓鬼共のことなどに興味の無い風な大人達がついてくる。ふん、愚かな子供にしか教育できない馬鹿親共め。思い知るがいい。
餓鬼共の方はいつもの遊び場まで来て、おおっと唸り声をあげて足を止める。
ふふふふ、わかるか餓鬼共?お前達の前にあるその1夜の芸術品を。
積み上げた段差は2層。
その上に堂々とした城塞を置こうとしたが、なにぶんにも初めてのことだったので、それらしい窓っぽい模様とらせん状の道を生み出すことで何とかそれっぽく見せることに”成功”した。
そこにドイツのノイシュヴァンシュタイン城を思わせる尖塔部分を作ろうとしたのだが、上手くいかなかった。それでもなんとかしようと努力したものの、できあがったのは花弁をむしり取られた野花のような無残なモノであった。
しかたないので、こちらも削りに削ってむりやり(なんとなく卑猥なモノにも見えるかもしれないが)城の尖塔部分に仕立て上げて見せた。
そして重要なのがこれ、トンネル!
作業中も何度も「もっと穴を広げては?」とか「火薬の量、ふやしませんか?」などと声をかけられ、非常に集中力を削がれたがこちらはなんとかうまくいった。
入口から僅かに下り坂となり、中央からは出口に向かって上り坂となっている。この部分に仕掛けを施してあるわけだ。
「おお、ナニコレ!?」
「なんかできてるっ!」
「ママ―。見て見てー」
なんと嘆かわしいことか。こんな初心者とは思えぬ一夜の力作を、一見してわからない愚か者どもが。お前等、ぜったい将来はロクな大人にはならんぞ。
「あらら、凄いじゃない。誰がつくったんだろうね、そのお城」
誰かの母親はそれだけ言うと、大人同士でまた楽しく話し始める。
ほれ、見るがいい。誰が見ても、これは”素人が作ったとは思えない砂の城”にしか思えないのだ。
そんなことを思いながらゆっくりと計画通りに進む事態を、こうしてながめることでマキシンは体の中をめぐり始めた興奮にゆっくりと酔いしれようとしていた。
「なぁ、どうする?」
子供の1人がそう言う。当然だろう、なにせ砂場の中央にデデンとその存在が無視できないようにと作ったのだ。ほれほれ、そのお前達の為につくった罠に、さっさと飛びこんで見せるがいい。
「あっ、これこれ。ここにトンネルがあるよ!」
鼻水たらした馬鹿っぽい餓鬼がそう叫ぶのが聞こえる。きたかっ!?
「でもダメじゃん、これ。僕らじゃとても入れそうにないよ」
「そうかな、確かめてみる」
そういうと、あろうことか。鼻水坊主は無理矢理腕を伸ばして頭を穴にねじ込もうとした。
(アホかっ!?お前のその無駄にデカイ頭が入ってたまるかっ。それより、その無駄な努力でせっかく作ったトンネルの入り口が崩れたらどーするつもりだっ)
顔からみるみるうちに血の気が引いていくのがわかる。
自分の芸術品が、餓鬼共の無茶で汚されているように感じていた。
なのに、餓鬼共はなにがたのしいのか鼻水小僧の無謀な挑戦を見てゲラゲラ笑って喜んでいる。
(止めろォォォ、今すぐにそのアホを止めろォォォ!ブッ壊れたら、入口が壊れたら中に影響、でるだろうがっ)
冷汗と共に、口の中が乾いていく。
なんで餓鬼はこんなにバカばっかりなんだ?あの大きさの入り口を見れば、あいつらの連れている子犬でないと入らないとなぜわからないんだっ。
「あはははは、無理無理。崩れて壊れちゃうぞ、それ」
(だから壊すな―!もっと真剣に止めろっ)
「えー、そうかなー?」
「そうだよ、ほら。ボロボロおちてるし」
「チェ、使えないトンネルだな」
(誰が使えないトンネルだっ!?お前等の足りない頭を使えばわかるはずだろうがっ。早く気がつけっ)
焦りと興奮だけでもうこちらもテンションがおかしくなってしまっている。正直、出来ることなら今すぐ出ていってあいつらにどう使うのか説教してやりたいくらいである。
「あ、でもさ。これならジェイのテリーなら入れるんじゃない?」
「ああ、そうだね。犬なら入れるかも」
来たかっ!!!
それは勝利の約束が訪れを告げる鐘の音か。
喜びと興奮が自分の体の中を駆け抜け、勝利の証に半べそかいて逃げだすあの餓鬼共の顔が次々と脳裏に浮かんでくる。
やった、やったぞ。やりきってみせた、完成された犯罪の最初の一歩。
絶頂感が、しばし自分の認識力を低下させる。
たぶんそのせいなんだろう。その直後に起きた出来事はあまりにも唐突で信じられなかった。
「ええー!?やだよ、そんなところに僕のテリーを入れるなんて」
犬を抱いたクソ餓鬼のありえない言葉に、マキシンは天国から一転して地獄に叩きこまれようとしていた。
「なんでさー、いいじゃん」
「やだよ。泥だらけになるだろ?」
「そんなこというなよー、つまんないなぁ」
そ、そうだぞクソ餓鬼共。つまんないこと言うんじゃない。どうせ普段から犬の世話や面倒は親に丸投げするだけの可愛がり方しかしてない癖に、こんなときだけ変な気をおこすんじゃない。
「つまんなくてもいいんだよ。テリーはシャワーに2時間かかるんだぞ?それに、先週いれたばかりだから汚れても来週までシャワーつかえないんだぞ?それだと僕が一緒にテリーとベットで眠れなくなるじゃないか!」
怒った声で言う。
信じられなかった、世のクソ餓鬼は犬の面倒を真面目に見るはずが無いと思っていた。ところが、よりにもよってこの餓鬼は律義に自分が世話をしているらしいことが伝わってくる。
これは大変な誤算であった。
「じゃ、どうすんだよ!」
「そうだそうだ。ナニして遊ぶんだよ!」
おやおや、どうやらクソ餓鬼同士、内輪もめをはじめたようだ。これはこれでチャンスだし、嬉しい誤算である。軌道は多分、修正されたのだ。
こうして複数が攻め立てれば、あいつもあきらめて犬をトンネルに入れる気になるはずだ。
周りの友人達に責められ、子犬を胸に抱いたままふくれっ面をするジェイという少年。
犬の方はそれが気になるのか、さかんに主人を気にしてその口元をぺろぺろと舐めはじめる。
「どーすんだよー、ジェイ?」
「どーするー、どーするー」
事態は一気に好転し、最高の悲劇のフィナーレと共にマキシンの元へ勝利が転がりこんできているように思えた。
「どうする、だって?」
ジェイは突然そういうと、なんとも子供とは思えない悪い顔をしてみせた。
「どうするか、なんて簡単じゃないか。見てろよ」
そういうと、テリーと名付けた犬を地面に下ろすと座らせる。その後で、再びみんなの顔を見
まわしてからいった。
「どうするって?こうするんだよっ!」
彼はそう言うと、砂場の中央に向かって両足をそろえてダイブした。
ああーーーーーー!
子供達の大きな声が聞こえる。
「どうやら終わりですね。なんとも楽しくない、意外なラストシーン。そんなところでしょうか」
となりで男がそう言うと腰を上げるのがわかった。
だが、ミスター・アンサーは、クエリー・マキシンは身動き一つできない。それどころか、呼吸もままならぬのか、ぐがっほがっとか喉を鳴らす。
視線の先には、子供達が我も続けとばかりに砂の城とトンネルを無慈悲に踏みつぶしてまわっていた。
あの綺麗に積み上げた段差も。
必死で飾り立てた壁面も。
削りだすことで形にしたらせん状の道も。
必死にらしくしようと手を加えた尖塔部分も。
そしてなにより、仕掛けたトンネルの罠はトンネルの崩落を持って計画の失敗を、終わりを告げていた。天井が落ちてきて光り輝いても、土の中では意味が無い。
信じたくはなかった。まさか、最初の戦いどころかその復讐戦までもがこんなことになるなんて。
リベンジから始まる、自分の栄光のヴィランの道がさっそく残念のものへと変わってしまっていた。
「まぁ、これも一つのいい経験。そういうことにしておきなさい」
ポーカーフェイスは一応、慰めのような言葉をかけたが内心では大笑いしていた。
なんて馬鹿な男、愚かで間抜けな奴なのだろう。これは本物かもしれない。
そのどうしようもなく哀れな敗北者を見て、軽蔑するよりもむしろ感心してもっと応援してやりたい気持ちになっていた。
こんなタイプは初めてだ。チンピラのような中からではなかなかこういうのはお目にかかれない。
ミスターナントカ言うタイツ姿の変人の肩をポンポンと叩いて慰めてやる。
相手は口を馬鹿みたいに開けたまま、その瞳を見ると、どうやら必死になって自分の現実を受け入れようとしているように見えた。
「正直ね、あなた半端なんですよ、何事もね。そんなだからあんな子供相手になにもできないのです」
説教臭かっただろうか?このタイプは自分が褒められないとすぐにへそを曲げるからな。
「ま、次は私も少し手を貸してあげますよ。腹が据わって、本気を出そう。そう思えるようになったらここに連絡しなさい」
そういうと、一枚の名刺を取り出し半ば強引に変人の手に握らせるとその場を去っていく。
酷く間抜けな時間の使い方をしてしまったが、素直に赤くなったり青くなったりしていたアイツは中々面白くはあった。それでよし、としようではないか。
公園を出た大通りを歩きながら、ポーカーフェイスは先程のことを思い出すと今度は我慢などせずに腹の底から大笑いしてやった。
▼▼▼▼▼
クエリー・マキシンは震えていた。
そうではない。ミスター・アンサーは怒りに震えたのだ。
こんな屈辱が、こんな侮辱があっていいのだろうか!?
いい経験だ?半端者だと?子供相手になにしてるだ?”次”は”私”も手を貸して”あげます”?
もう、言葉だけが無かった。
クエリー・マキシンは死んだ。
男は自分にそう言い聞かせようとした。
クエリー・マキシンは死んだのだ。
もう一度そう繰り返す。そうだ、そうなのだ。なにが腹が座ったら、だ。そんなものとっくに出来ている。
覚悟完了、それだからこそのヴィランではないか?
未だ屈辱にまみれてはいたが、2戦して2敗の連敗ではあったが、男の目は明日へとすでに向けられていた。




