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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
Challenger(黒い炎の10番勝負!)
40/178

いつやるって?今でショ!

今回から第3部開始です。

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

 目が覚めた事がぼんやりとではあるがわかった。

 体をわずかに動かすと、なにかに触れて動かしたのか、どこからかカチンとアルミ缶にぶつかる音がする。

 それにもかまわずに上体をおこそうとすると、腹の上に会ったパルプマガジン(コミック誌のこと)が滑り落ち、ベットからも落ち、床でグシャという音と共に大きく広がるように潰れていた。

 まだよく動かない頭をガリガリとかきむしるように掻いて見せると、赤い髪の癖っ毛がボサボサになっているのがわかってちょっとイラとくる。そのままいっそのことむしり取れないかと思いながら、テレビの電源を入れた。


「続いてのニュースです。政府は今回のEU各地でおこるテロ活動の高まりを抑えようと……」


 まだつまらんことをやっている。

 こういうニュースは退屈だ。知性派だの対話路線だのいったって、結局ドンパチ撃ちまくるのが一番うまくいくってことはこの国の誰でも知っている事なのに。弱腰になって始めるその対話とやらだって、いちいち後ろからロビイスト共が騒ぐんだからまともなモノになりゃしないんだ。時間の無駄だね。


チャンネルを変える


「……最近の株価の上昇率が緩慢な事を受け……」


 これも無駄だ。

 そういえば「あなたの資産、賢く運用しませんか?」とかまだ電話来るんだよな。うざったい。


 チャンネルを変える。


「……ということで、わずか8歳のユーリーちゃんは無残な姿となって……」


 これこれ、こういうのがクールだ。


「……犯人グループはいずれも12歳の4人の未成年者で……」


 なんだよ、餓鬼かよ。まぁ、それでもいいか。

 その後もこのレポーターは事件がいかに悲しく、陰惨なものであったかを、演技過剰気味に緊張した面持ちで視聴者に伝えようとしている。なのに、余計なカメラが入って。時々、スタジオで深刻そうなフリをしたままのオッサンの顔が入るのが邪魔だ。お前は、机の下にフッカー(売春婦)でもおいて、ナニをしゃぶらせてこの時間を楽しんでおけよといいたい。

 こっちはこっちで、あの現場を踏みしめて歩く彼女を見て楽しみたいのだ。

 彼女、名前はなんだったか?いいや、どうせ最後にいうだろう。

 服は落ち着いた色でコーディネートをしているように見えるが、こっちはそれでは誤魔化されない。体のラインは嫌でもはっきりと出るようにやけにぴっちりしているし、胸元もそれほど気にならないようにしてるがなかなかの露出だ。

 そしてなんといっても色がいい、赤だ。真っ赤なら最高だったが、それでも悲しい現場を闊歩して見せるその姿は、いっそダンスミュージックをかけてその場で野外ストリップでも始めてくれないだろうか、などと妄想してしまう。


………幸せを感じたのはそこまでであった。


 画面の中のあのセクシーな彼女が続いてこの事件の解決に導いた立役者をご紹介しますと口にした直後であった。

 突然、カメラが激しく揺らぐと、アホなマスクをした野郎の顔が画面一杯一杯にアップで映った。最悪だ、鼻毛が2本抜けてないぞ。

 そしてそいつはがなり立てはじめる。イラつく男の声で、だ。


「いいか!よく聞けこの腐れ(ピー)!!

 お前等女も相手にしてくれない(ピー)の予備軍はすぐに平和を乱したがる。それはこの俺にはお見とおしだ。

 お前等は女の(ピー)に顔を突っ込むだけじゃ物足りなくて、てめぇの(ピー)も一緒に耕してくれとも恥ずかしくて言えない連中だ。お前等に比べれば酒場の隅で(ピ)繰り合ってる奴等なんてまだマシだ。マジで尊敬したっていい。

 ムショでわざわざ開発して貰うためにブチ込まれるお前等と違って、正しく納税し、正しく(ピー)しているわけだからな!

 おお、そうだった。

 こう見えても俺は女性差別はしない男だぜ。だから(ピー)にもメッセージがある。

 お前等は街角に立って男共から数ドルまきあげることで性病を蔓延させているだけなら、俺だって何も言わなかった。男共にまたがるたびに、増えていくエ(ピー)者を思って勝手に笑っていればいい。

 だがお前等はいつも、この俺の前に出てきてまで嘘を吐きやがる。

 (ピー)のにおいをぷんぷんさせている癖に、札束を叩きつけて買ってきたお高いドレス、寝た相手からくすねた腕時計、お前等と同じ(ピー)の餓鬼の(ピー)から作った化粧水に、寝た切りの婆さんの枕元から持ち帰った宝石の数々。

 俺には全部わかっている!

 (ピー)の血は容易に消えることはねぇ。なぜなら、お前等のその匂いは決して誤魔化せない、クサイんだよっ。

 俺を訴えた29人は皆、そんな(ピー)共ばかりだった。あいつら、俺に罪を暴かれても、それでどうしたといいやがった。それだけじゃない、自分が被害者なんだと俺の”相棒”の”説教”痕をカメラの前で泣いて見せながらさらした奴だっている。

 そいつらはどうなったかって?

 もちろん、”この俺が全員反省させてやったぜ!”

 わかるか!?俺は………」


 最悪だった。そいつはなんか叫んでいたが、ちっとも面白くない。

 だけどそのうち、そいつを止めようとしてあのキャスターがカメラを取り戻そうとしたところを、あのやかましいナントカいうパトリオット(愛国者)がそうはさせまいとして彼女の肩に触れた。思ったよりもそれは強かったらしく、カメラの前でポロリをやってくれた時はなんて最高な奴なんだとちょっぴりは思ったけど。(いや、ブラしてはいたんだけどさ)

 でもあの頭のおかしいマスク野郎が「相棒」だの「”クリス”に触るな」だの叫ぶ中、騒ぎになった現場からスタジオのオッサンにカメラが変わったところでチャンネルを変えた。


「…少年達は、目立つギャング団のような格好をしており。その誤解から悲劇が起こるかに思われましたが。現場付近を丁度通りがかったアレックス・アークナイトこと”光の騎士”によって…」


チャンネルを変えた。


「…のように、行方不明だった子供は、この匿名の老人。ヒーローによって無事…」


チャンネルを変えた。


「…地下鉄で起きようとしたこの電車ジャックに、警察はさっそく”交渉人”ブラックサン氏に仕事を依頼。8時間にわたる説得で、無事。誰も傷つくことなく事件は解決へと…」


チャンネルを変えた。


「…マンション、アーバン・ヴィレッジに起きた火災は、市の公式ヒーロー。マスク・ド・ドミニオンの活躍によって…」


チャンネルを変えた。


「…”T-T”と名乗る学園の若きヒーロー達の活躍により…」


チャンネルを変えた。


「…警察はこの日の意義は、掲げている”正義”に揺らぎが無いことを示しているのだと…」


耐えられなくて電源を消した。




 ベットの上に、コントローラーを放り出し、床に落ちたパルプマガジンを拾い上げる。

 ぱらぱらとめくると、ある1コマが目に飛び込んできた。

 ヒーローの左ストレートをくらい、のけぞって顔を歪める化物がそこに書かれていた。


 これだ、これだよ。

 なんで腕力で戦おうとするんだ?

 このみんなが好きな知性の時代は、もっとスマートで知的なヴィラン(怪人)が必要ではないのか?

 銃や武器の規制を、国はことさら大きな声で推進しようと試み続け、ロビイスト達はそれに抵抗する。これをいまだにカメラの前で演出をまじえてやってみせているが、皆知ってる。


 超人のいる世界に、銃が何の役に立つ?


 昨今じゃ、ハイジャックと銀行強盗はリスクが高すぎてやる奴がいない。

 どちらも犯罪の華だったのに、だ!

 客の中に超人が1人、2人いるだけで。十人からなる武装したグループは、無力化されてしまうのだ。

 例え武器が貧乏人の使うAK47であろうと、M4カービンにたっぷりパーツをくっつけようとそれに変わりはない。

 ライフルも、ショットガンも、グレネードだって、バズーカだって、超人がいる今じゃおもちゃも同然だ。

 子供のことを考えるなら、おもちゃ屋にこれらをすぐに並べることが急務だと誰にだってわかるはずじゃないか?


 いやいや、話が脱線してしまった。


 そう、悪党。スマートで知的な悪党が必要、そう言う話だった。

 つまり時代の波に乗った、そんな知的で素敵な悪党が今こそ必要なのに全然出てこないのは失望する、という話だ。

 なら、どうする?


 自分がやるしかないでしょ。だよね?

実はラストをまだ決めてないのでどう進んでいくか、とても楽しみですよ。ふふふふふ。

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