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BLACK&WHITE  作者: 鷹雪
Samurai Girl & BLACK MEN
33/178

追走の果てに

よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。

アークシティ  PM10:12


 この状況が、加速度的に悪化していっていることは間違いが無かった。

 ブッカーマンとの連絡後、次々と入ってくる情報は町のあらゆる闇の中で不穏な動きがあることをはっきりと示していた。

 曰く、東洋人の若い男が突然空から降ってきた。老人と若い女の東洋人が不自然な形で首をつっていた。東洋人の一家が駅で何者かに襲撃されて死亡した、等々。

 当然だが、共通するのは東洋人であることだけ。

 しかし、その騒ぎはすでに昨年起きたミュータントテロリスト達がおこしたアークタワー襲撃事件に匹敵しようとしているように思えた。

 事実、TVでもAACニュースが先程からいよいよ報じ出したこともあり、ネットワーク内でも騒ぎ出しているようである。


 バーガーショップ【キャッチン・リリース】のドライブスルーから車を出すと、近くのバスターミナルの駐車場で止めた。

(町中で騒ぎが起きている・だが、そのすべてがサチコの仕業ではない、なにか別のことが起きている。情報を整理しなくては)

 先程買い求めた、分厚いパテとチーズのダブル・ダブル・バーガー、強烈な辛さのサルサソースがかかったチキン&ホットドッグを取り出してかぶりつく。まさか夕食がコレになるとは思ってもいなかった。


 ダイエットコークでホットドッグを流し込みながら、車と携帯のディスプレイに表示されるさまざまな情報をならべさせ、流し読みでそれを確認する。

(この騒ぎの中、どうやって彼女の行動を読むことができる?)

 難問であった。

 今回は特に事情がわからない上に、行動も大きく制限されている。それは今も変わらないので、警察にも【カサンドラ】にも、どことも情報を求めるわけにはいかなかった。

 サルサソースで口の中が火事にならないよう、頻繁にコークを流し込むが。感じる辛さは、どこか鈍いもので現実味が無かった。

(このままでは駄目だ。手がかりを見失う)

 この騒動の、殺戮劇の行きつく先は今の彼でもはっきりと想像できるものであった。

 苛立ちからハンバーガーに手を伸ばしつつ、平らげたホットドッグの紙を苛立たしげにぐしゃぐしゃにした。だが、こんなことで怒りを発散させてもしょうがない、わかってはいるがもどかしさにそうせずには居られなかった。


”M”>新たなコマンドを入力せよ


 画面のはじにあるウィンドウに先程からそう表示したまま反応の無い”M"からの要望が表示されている。

(アサギリ サチコを探せ……無理だな。失敗を繰り返すだけだ)

 最初は最寄りの騒ぎの場所を順にたどろうとしたものの、すぐに各地域で始まった騒ぎが彼女の足取りをわからなくさせてしまった。仕方なく、次に”M"に丸投げしてサチコの行動ルートを予測させたが、案の定、何十通りものパターンが表示されてしまったのだった。

(限界か、勝負をするならここしかないか)

 美味そうな匂いを漂わせるバーガーを見下ろしながらそう考える、だが決断は早かった。


「”M"今から口にする連中に短くメッセージを送れ。『アサギリ サチコという東洋人の少女を見つけたい』送り先は”皇帝”、”マダム=ミシェル”、”クリアスカイ”だ」


”M">了解


「まともな情報が送られなかったり、聞き返してきたら無視しろ。言葉の意味がわかればなにかあるはずだ」


”M">メッセージ送信終了


 とにかく後は待つしかない、バーガーにかぶりつくと鼻を貫くオニオンと口の中に広がっていくピクルスを勢いよく噛み砕いていく。

(俺はブラックサン、この町の怪人だぞ。たかが東洋人の小娘をおっかけるくらい、できなくてどうするというんだ!?)

 親の仇のようにむさぼりながら、そんな風に自分を叱咤していることが、思っていた以上に心が沈んでいるのだど自覚する。それが、またなんとも腹立たしかった。


 包みを袋に全部放り込むと、ボンネットに置いておいた携帯をたたみ懐に戻す。

「”M"どうだ、返事は来ているか?」


”M">結果報告。マダムからの返答ナシ。クリアスカイからは状況を知らせよ、との返信あり


「くそっ、やっぱり素直には情報をよこさないか。”皇帝”はどうだ?」


”M">直接の返答ナシ。しかし、1分前から彼は自身のフェイスブックに猛烈に書き込みを始めているのを確認


(来たぞっ!さすが皇帝、仁義を守るね)

 笑みが漏れそうになるが、慌ててそれをこらえると車のインターフェイスにそれを表示させるよう指示を出した。

 画面に次々と映し出される文字列に目を通すが、ブラックサンの顔は晴れない。

「なんだ、これは?”M"、わかるか?」

 ”皇帝”はどうやら突然日記のようなものを書き始めているようであったが、どうもよくわからなかった。


”M">そのままを受け取ると、彼は突然商品案内を始めている


「わかっている。だが、これは彼の趣味ではないぞ。品物も滅茶苦茶だ。オリエンタル彫刻?フィギュア?さっぱりわからん。暗号か何かか?」


”M">理解。いくつかの個所に、簡単な文字列を使った隠された文または単語らしきものを発見。


「読み上げろ」


”M">状況、理解、少女は無事、危険、ニンジャ、本


「…以上か?わかった」

 そういうとブラックサンは考える。

(どうやらわかってくれているようだ。危険、ニンジャ?わからん。しかし、たしかTWO=HANDだったか。あれはグレイスンファミリーと今はつきあっていたはず。あの娘が彼等に関係しているというのか?んんん、そんなそぶりはなかったが)

 最後の本というのもわかった。

 本とはブッカ―がネットで書きこむ際につかう名前の一つであった。

 これの意味するのは、つまり…

「”M"、今からそこにブックマンの名義でコメントを残してくれ。そうだな”なにこれ、チョーうける”とかなんとかでいい」

 そう言うと、思いっきりエンジンを吹かすと駐車場から出ていった。


 ブラックサンがコメントを残してきっちり3分後、突然”皇帝”は疲れたとの言葉を残して更新をやめてしまった。

「?どういうことだ、”M"今度は何かあるか?」


”M">ない


 意味がわからなかった。向こうが一方的に返事を絶った?そうとは思えない、この中に答えを残したから交信をやめたのではないのか?

「”M"もう一度確認しろ、ほかに何かないのか?暗号とか?符号とか?」


”M">ない。しかし気になることはある


「なんだ?教えてくれ」


”M">彼の更新の後半、いくつかの共通点がみられる。アークシティのビジネス街が示唆され、そこにあるビルの名前と複数が一致。


”M"のその回答に、ブラックサンの脳裏にうかぶものがあった。

 「さっきのビジネス街って。ビルがたくさんあるところですよね?」この車の中で、あの時彼女はなんの気なしにそう言っていたではなかったか?自分はあそこの高級ブティックを思って答えていたが、あの会話の中でそれを口にはしなかったはず。

 ならば彼女はなぜ、ああいった?


ブラックサンの前にかかった濃い霧が今、ゆっくりと晴れようとしているのを感じた。


「”M"、今から言うとおりキーワードでサチコのルート割り出しをやり直せ!スタートは彼女を見失った家、ゴールはビジネス街。その間で騒ぎのあった場所から彼女の行動ルートを予測!」


(これで足りるか?……いや、まだ足りない!)


「一部訂正だ。ゴールはビジネス街、ただし我々の犯罪データ、TWO-HANDの潜伏場所候補から使え。使い方はわかるな?襲撃事件の動きも忘れるな。この騒ぎはニンジャのボスを狙って動いているはずだ」




▼▼▼▼▼



アークシティ 屋上 PM11:51


 ボイラーの音がヲンヲンと鳴り響く屋上にブラックサンは姿をあらわした。

 ”M"が出した結論。確立27%は決して高い数字とはいえなかった。しかし、先回りできるという点を考慮してこの場所を彼は選んだのであった。


 ここはビジネス街からわずか4ブロックほど手前に位置している。とはいえ、彼女のように闇に潜み、駆け抜ける姿を目ざとく見つけた襲撃者達とやり合ってはここからの4ブロックはまさに地獄への入り口となるだろう。

 なんとしてもここで止めなくてはならない。


 相変わらず連絡を断っているので詳しい状況はわからなかったものの、雰囲気から警察もこの街の裏で何が今行われているのか、わかっているとは思えなかった。

 ひとつだけわかっていることは、ニンジャが街に入り込んできた異物に対して激しく攻撃を加え続けているという事実だけである。しかもその方法は苛烈極まるものだ、徹底的にターゲット達を物影へと誘い込んでから止めを刺して回っている。

 あの少女がいまだにその刃にかかっていないことが、逆に不思議に思うくらいだ。


(サチコ、ここへ来い。なにがあるのか知らないが、私が止めてやる。このままでは君は死ぬことになるぞ)


日付はそろそろ変わろうとしている。ブラックサンは、顔をゆがませた。

 なにがどうとは説明できなかったがその瞬間から、自分の周りにある空気が変わったことを敏感に察したのだ。

 次にビルの谷間の闇の中から、ひと際大きな声が上がったかと思うと、騒がしい物音が急速にこの屋上へと近づいてくるのがわかる。

 ジャラジャラと鎖の鳴る音が響く中、ガチャンと鋼同士が重なる音がそこに混ざっているのもわかる。


 そして、屋上のヘリに設置された囲いを乗り越えて2つの影が姿を表した。


「おおおおうよっ!」


 気迫ある声を上げるのは黒装束の男。

 ブラックサン自身は名前を知らなかったが、あのニンジャのジンザエモンである。

 しかしその姿は先程までとは違い、上半身のそこかしこの衣服が破れ、下に着込んでいる鎖帷子が夜のネオンに照らされて鈍く輝きを発している。そして、その顔も先程までと違い隠しておらず、それどころか額に太く太刀傷を受けていた。そこから流れた血は止まっているようにも見えるが、顔半分を真っ赤に染め上げている。

 そんな鬼気迫る顔をしているために、よりいっそう猛々しく見えた。


 そんな男が追いすがる相手は、屋上の柵を乗り越えると1度、2度と交錯するたびに剣戟音と火花を散らす。

(もう一度来る!?)

 ブラックサンは闇の中でその様子をじっと観察して、次の衝突を予想していた。

 だが、3度めの音はなかった。


 駆けながら衝突の勢いで僅かに動きを鈍らせつつ、再び相手を逃がさん、倒さんとするジンザエモンはニンジャ刀をしっかりと握りしめて振りかぶる。

 信じたくないことだったが、斬りあった2合で自分の方がやや押し負けていたという実感があったからであった。

 同時に対面にいる相手もまた、先程に比べて大きな動作に入ってゆくのを見てとる。

(負けはせん、逃がしはせん!)

 そう思い、横殴りに叩きつけた一撃には恐ろしいほど軽く……虚空を切り裂いていた。瞬転、目の端に相手の刃の輝きを捉える。その光が自らの体へと吸い込まれて行くのがジンザエモンの瞳にスローモーションのように映し出されていた。

 そしてこの下忍の世界は一変する。

 臓物をぶちまけ、血を撒き散らしながら、それが自分のものであると認識できたのは”自分の上半身”がくるりと逆さになって床に叩きつけられ転がったからである。


 そして、その相手をしていたのは当然。アサギリ サチコその人であった。


 そんな一瞬の攻防の一部始終を目にしたことで、ブラックサンは全てをすんなりと受け入れることができた。

 男を連れて屋上へと姿を表したサチコが見せたあの一撃。女でありながら大の男の胴を輪切りにする技に、彼は見覚えがあったのだ。

(その一太刀は魂ごと切り落とす、サムライの技か)

 これまでどこか納得しきれない、そんなもやもやしたものがあった。だが、目の前で繰り広げられた事実とこの場所に至るまでの情報から、彼は全てを受け入れることにしたのだ。

 彼女は、サチコは巻き込まれたわけではなかったのだ。選ばれた暗殺者であるのだということを。


体を2つに裂かれ、弱々しく動く死を待つだけとなったジンザエモンを冷たい目で見下ろすサチコに向かって。ブラックサンは良く通る声で話しかけた。それは絶妙のタイミングで放たれた、交渉人ならではの技である。


「サチコ。ブラックサンだ、君と話がしたい」



▼▼▼▼▼



 その直前まで、崩れながらも屋上の壁まで走りつづけた下半身に向かって這いずる、自分が半分にした男にどう止めを刺そうかと思っていた時であった。

(黒い人……)

 サチコは厳しい顔をしていたが、影からゆっくりと出てきたブラックサンを確認した。

 といっても、なにがどうかわるということはない。

 すでに、サチコは死人であり暗殺者である。すでにTWO-HANDは侵入した暗殺者たちの撃滅に動いていて、いまさらこの町から逃げるなんてことができる状態ではない。ならば、任務優先でターゲットを目指すしかないし、ほかの暗殺者たちも絶対に自分と同じ判断をしているとサチコは考えている。

 なのにサチコは今、ブラックサンの言葉に耳を傾けようとしているように見える。これは彼女の中に迷いが見えているからではないか?


「サチコ、君がどういう任務をおびてこの町に来たのかは知らない。だが、今この町は混乱している。そしてその混乱を引き起こしているのは君たちだ。

警察はまだ君達のことを知らない。だが、勘のいい連中は気がつき始めている。相手がTWO-HANDだけなら裏通りで暴れることもできるだろう。だが、それだっていつまでもできることじゃない。

 君の仲間は今もこの町のどこかで襲われている。そうTVでも放送されているんだ。この町では君等のように我が物顔で暴れるのをよしとしない連中もいる、彼等がその気になればあっというまに君だって身動きが取れなくなるんだぞ」


 そう口にはしながらも、ブラックサンはサチコの体を見つめ直す。

 楽しく遊んだ記憶が邪魔してか、今の彼女の違和感はそうとうのものだ。

 だが、彼がそれ以上に違和感を感じていたのはサチコが身に帯びているいくつもの武器達。サムライの技を高めるために鍛えられたそれらからは、立ち上る妖気を感じるのだ。

 ダ―クハートほどではないにしろ、ブラックサンにも魔法の知識は多少はある。その彼の目から見ると、今のサチコも十分に異質な存在ではあるが、その武器達からも匂い立つ”魔力”もそうとうのものがあった。


 しかし、彼はこのアークシティの唯一絶対の交渉人であるブラックサンである。


 その彼の口から発せられる言葉と力は、例えどれほど強固な術を施され、呪いを背負わされた少女であっても逃れるすべはないはずである。事実、この瞬間まで彼はサチコに追いつけたことで心のどこかで、良かった間に合ったと安堵するものがあったのは否めない。



 それは男と無言の少女が心を通わせようとする最中に起きた。

 真っ二つに斬り裂かれたニンジャ、ジンザエモンがついにその生命の活動を終えようとしていた。残る力も僅かに指先に力を込めるだけ、その時である。

 アークシティの夜空を目に見えぬ力の塊が、”まるでなにかに吸い寄せられるように”して飛んでくるとジンザエモンの傷口から彼の体内へと侵入していく。それはあり得ない活力を死に際の忍者に与えるどころか、その体を内部から一気に破壊してしまう。

 ぼきゃっ、という骨が内部から吹き飛ぶ音と共に中の血肉が勢いよく2人の間に血煙りを上げながら通過すると対面にあった非常口の壁にぶちまけられた。


 その瞬間、ブラックサンは驚きからつい口を閉じてしまう。それこそが彼の失敗であった。


 ニンジャの体に起きた変化が、ここにはいない何者かによる術であるとわかった時には遅かった。

 血肉がこびりついて流れ落ちる壁に、うっすらと白い光がさすとそこに巨大な老人の顔を映し出した。


「じいちゃん……」

(!?)

 はじめてサチコが口にした言葉にブラックサンは驚く。巨大な老人の顔もその声にこたえるように、しっかりとした声を発し始めた。


「サチコ。私の可愛い娘よ。無念である。

 我らの襲撃計画は、そのこと如くをニンジャ共に読まれてしまった。すでにお前もそうであろうが、部隊は皆。襲撃者の手によって追い立てられ、そこかしこにて命を落としている。

 かくいう私も、こしゃくなニンジャ共に囲まれたがそれをいくつも食い破ってきた。だが、それもここまでだ。

 サチコ、私もまた奴等に手にかかって命を落とした。すまない、このふがいない師を、爺ちゃんを許して欲しい。この術は、その時の為。最後にお前に伝えるために用意したものだ。

 聞いてくれ、娘よ。今のお前には”みんな”がついている。そのお前を止めることができるものなどそうはいない。だが、ここから先の地獄の道。それだけでは足りないだろう。

 ならば、今よりワシが。お前のその背にある”みんな”に加わりお前の力となろう。そして師と兄妹達から集めた力で一騎当千の兵に、絶対強者となってこの道を走りきるのだ。

 サチコ、殺せ。ニンジャ共を皆殺しにしろ。その頭領、ウコンとサモンジの大将首をお前の手で切り落とすのだ………」


 ブラックサンはその老人がだれかは分からなかったが、彼が口にする言葉が何かはわかった。

 それは呪いである。闘争の為に、狂気も何もかも全てを飲み込んで、ただただ前進するためだけに必要なモノ。

 アサギリ サチコという少女に与えてはならない最後の武器。

 だがそれは、任務にかける執念から出たのであろうこの老人の最後の術によって完成してしまった。


 悲しい目をしている癖に、そこから飛び出す全ての言葉は狂気にむかうのだとそそのかす凶悪なその術は、言いたい事を言うと光を失い元の暗闇と静寂へと戻っていく。

 だが、その僅かな時間はブラックサンにとって敗北感を砂のように味わう苦痛でしかなかった。

 そしてアサギリ サチコは夜のネオンが輝く街に向かって咆哮を上げた。


おおおおおおおおおおおおお!!


 そこには人間性と呼べるものはかけらも残っていなかった。

 そんな彼女にかける言葉がブラックサンには残っていなかった。

 だが諦めるつもりはなかった。ブラックサンは必死に手を伸ばすが、その手の先にいた少女は咆哮をやめると同時に姿を消した。ついに、その手は彼女に触れることはなかった。


(なんて私は間抜けなんだ。ブラックサン、お前はなんだって言うんだ?交渉人が聞いてあきれる、追いついたんじゃない、彼女に追いつけそうになっただけで安心したからこのザマなんじゃないのか!?)

 ひきつった顔の下では、黒い炎が激情となって自分の中をのたうつのがわかる。後悔よりも怒りがあった。

 そして彼は……飛び去った彼女とは正反対の方向に身体を向ける。


「”M"、車を回してくれ!」


 そう言いながら、左手の腕時計から髪の毛ほどのワイヤーを引っ張り出すと柵に巻きつけたあとで屋上から体を宙へ躍らせる。だが、地上へと降り立っても”M"からのなんの反応もなかった。

 懐から携帯を取り出して画面を確認すると、そこには一文書かれている。


”M">ミスター。ひとつ忠告を。怒りに我を忘れています、任務は失敗です。


「失敗したが、任務はまだ終わっていないぞ”M"」


”M">ブッカ―がいないから私が止めるのです。バニシングポイントはそこでした。


「いいや、違う。まだあと一回残っている」


”M">そこにいたるまでに、ニンジャ達も待ち構えています。あなたは冷静になるべきです。


 珍しく、人間のようにしつこく止めに入る”M"に対し、ブラックサンは再び宣言した。


「私は諦めていない。いいか?まだ諦めない。”M"わかったら手伝ってくれ。私1人ではこの先はさらに困難な道になるのだから」

 腹の底ではいまだに自分への怒りがくすぶっていたが、ブラックサンの頭の中は冷静で、同時に覚悟を決めていた。

 この修羅の道の先にはまだチャンスが残っている。そうだ、その時こそ”なにをしても”あの娘をひきずり戻すのだ、と。

いよいよ終わりが見えてきた感じがします。第2部、というかシーズン2もゴールに向かって頑張りたいと気合を入れなおしてます。

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