BAD DREAM
今週は3話を予定。あと、話は今回から新章突入って感じになっています。
よかったら一読後、感想その他を残していっていただけると嬉しいです。
【RE:DOMINION ... START】
Chaina、眠れるアジアの巨獣。この国は先のグレート・ウォーとThe Crashにより一時は息もしていないのではなどと囁かれるほど、混沌とした国情をさらしていた。
しかし、その国に住む彼等自身はそうは考えていなかったようだ。
傷だらけの肉体をいたわるなどということなく、その目は暗く四方を睥睨し、とぐろは常にうねりをあげ大地にその巨体の跡を残す。
そのように物事を動かしていったからなのだろう。
傷を癒すのではなく、牙と爪をとぎ、空腹に任せてあらゆるモノを腹の中へと納めていく。その結果、大地にはことごとく人々の嘆きと苦しみの声が響きわたり。そして、死して大地へと還っていく。
他のアジア諸国がそうであるように。巨獣はいつしかその姿をさらに醜悪なものと変え、空は常に黒雲でもって太陽が遮られ、地上には悪鬼羅刹が弱き者達を容赦なく襲う。そんな魔界とも呼んだ方がふさわしい世界と成り果ててしまった。
実際、この国を拠点に活動する人ならぬ存在達も多く。それが一層の混沌をこの大地に呼びこんでいた。
そんな巨獣改め、アジアの巨魁となったChainaで今。不穏な計画が進行している…………。
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十数年前の話からはじめよう……。
無意味と感じるほどに広くて長い廊下は、その細部まで光源でもって飾り立てられている。輝くそのありようは、まさに黄金の敷き詰めたかのような煌びやかなものだった。
その廊下を今、40代は前半の精悍な顔立ちをした男が軍服を着て歩いている。
服の胸には、はみ出さんばかりの勲章がならんでいるが、彼がこれに相応しい働きをしたのは、この中では5分の1にしか過ぎない。残りはすべて、金と世渡りで得たものばかりであった。
しかし、彼はそれを恥だと思ったことはない。
金が無ければ、いまだに前線の汚泥の中で転げまわって死の恐怖におびえていたはずだ。実際彼の同期はその大半が軍を辞め。さらに残りの半分は墓の下で眠っている。
つまり、それほどの金を集め。自分に投資することが出来る才能は、彼が非凡な存在であるという証拠なのである。
廊下の行き止まりにある扉がようやく見えてきた。
ノックをし入室すると、部屋の中はほとんど真っ暗で何も見えない。黄金色の廊下の中を歩いてきたせいで、暗闇に目がなれないのだ。
「陳威信、中校(中佐っぽい感じ)であったな?よくきた」
「ハッ!!」
目が暗闇に慣れていないため、そこに誰が、何人いるのかはわからなかった。胸を張り、勇ましく返事の声をあげる。印象とは大事なものなのだ。
部屋の中には数人の人物。それも老人達がいる、ということだけは理解できた。
「そのまま3歩前に歩きたまえ。見えないのであろう。そこが君の位置だ」
もそっと近くによってもいいが、そこまでだ。ということらしい。
「君がまとめ上げた。第7次超兵計画を読ませてもらったよ。大変いい」
「ありがとうございますっ!!」
「しかし、書かれている事をそのまま鵜呑みにはできん。この手の超兵計画は各国が一度は手をだすが、そのほとんどが失敗に終わっている。
かくいう我が国でさえ、それらしいモノを作り出してはみたが、期待ほどの成果をあげているとは言い難い。
はっきり言おう。そのような無駄に、貴重な国費を投じるつもりはない」
その言葉が終わると同時に、陳は声を張り上げる。
「我が国の威信をさらに高いものとするためには、超兵計画は避けては通れぬ問題と考えます!今、存在するあらゆる大国でそれが作り出せないのならば、我が国がそれを最初になすべきなのです!
私の計画は、その成功の最初のものになるであろうと自負しております!!」
パフォーマンスである。
上官のやる気のない態度に、愛国の炎をたぎらせてみせただけ。彼がこの場に呼び出されたのは、この場にいる老人達の内心が、この計画に対して涎を垂れ流さんばかりに興味を持っていることはわかっていた。
あとは承認を下すだけ。
実際、彼の言葉に老人達は一様に満足している。そんな空気が流れているのを、陳はしっかりと感じ取っていた。
「なるほど。ということは、この計画は当然君が自ら手掛けたいと。そういうことでいいのかな?」
「もちろんです!自分以外に、この計画を成し遂げられる者がいるとは、考えておりません!」
「随分と言うじゃないか、んん?」
「自分は、自分の愛国心は偉大で雄大な長江の流れと同じであれと。日々、研鑽しておりますのでっ!」
「おうおう、元気だな」
「ありがとうございいます!」
次々とあがる違う老人達の声に、間髪いれず陳は答えていく。
(とっとと結論をだせよ。死にぞこないの爺ィ共が。どうせこの俺にまかせるしかないんだ)
そう思ってはいても、表情にそれをあらわすことなどない。
どうせ結果は分かっているのだ。あとはこの老人達が会話に満足するまで付き合うだけ。それでも、内心ではイライラするものがあった。
「そこまでいうなら、君に任せよう」
「はっ、感謝いたしますっ!」
「ただし、計画の一部を変更して貰う」
「……了解しました。どこの部分でありましょうか?」
「それについては、こちらでもまだ話がまとまっていない。後日、指示をだそう。今日は下がりたまえ」
お前の欲しがっているエサはやるから出ていけという事か。
陳は一礼をして、素早く部屋から退出していった。来る時とは違い、黄金色の廊下を戻っていく彼の足取りはどこか、軽かった。
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「さて、無駄な金の浪費にならないといいがな」
陳が退出するのに合わせ、老人の1人がチクリとぼやいてみせる。
「そう言うな。どの道、あの若造の言うように超兵は避けては通れぬ道だ。可能性があるというなら、やってみるまで……」
「まったく、老人というのはいちいち愚痴臭い。そのうえ話を進めるのに、儀式でもって大仰にやらないと満足しないというのだから。まったく醜くて、見ていて虫唾が走る」
老人達の会話に、突如若い男の声が挟まれた。
だが、何よりも驚くべきことは。それが彼等を嘲笑する言葉であり、言われた方も嘲笑するこの男に対する怒りを感じていたとしても、それを口にするものは皆無だということだ。
「そう言うな。赤頭……」
「申し訳ないんですがね、ご老人。私を呼ぶのにそれは勘弁してくださいな。この国の言葉の響きが気にいらない」
再び、沈黙が暗い部屋を支配する。
この暗い部屋の中は、良く見れば中央に円状の机がうっすらと光を放っており。そこに数人の老人が席についていた。
そして陳が出ていった入口の影から、進み出てくる男の姿がある。
その彼に向かって、老人の1人が溜息をつくと話しかけた。
「彼の計画は君にも関係しているだろう。なにせ、計画が上手くいけば。彼の生み出す超兵を率いるのは君だ」
「しかしそれも満足以上のできであれば、の事です。また醜い姿をしただけの、どうしようもない化物の残骸を用意して。またぞろ偉そうに胸を張ってプレゼンテーションされては、こっちも気が狂いそうになる」
「……完全な失敗などこれまでにもない。一定の成果はあったじゃないか」
「ほう!本当に!?それは知りませんでした」
陳と違って老人達と平然と会話し、彼等の座る机に近づくとその上に置かれていた菓子に男は手をのばした。
「あれはなんといいましたかね?その肉と乳は食卓に並び。その皮は生活用品に使われる。その牛と人の合いの子でしたっけ。西欧の神話にもそんなのがいましたね。
あれを始めてこの目にした時は、あまりの不味そうなソレをみてゲロをはきたくなった」
「……安価だが、高い評価は出ている。戦場でも、それなりにきっちりと成果をだしている」
「そうでしたね。ヒット商品ではありませんがね。
ただ、牛の頭のせい。いや、頭が牛になってしまったから、でしょうか、”本気をだす”と途端に人の言葉をすっかり忘れてしまう。
ご存知ですか?Nipponでは獣の言葉を翻訳するおもちゃがあるそうですよ。彼等と意思を交わす為に、そのおもちゃを大量に軍が発注するべきでしょうな」
「…………”人鬼”達は、それでも結果は出ている」
「確かに多少は褒めてやってもいい。ただ、言うほどたいしたものじゃありませんよ」
菓子を口に入れたのだろうか、むしゃむしゃと者を口に放り込みながら男は老人達に答えてみせた。
「それは……”君”の性能と比べることはできないがねぇ……」
苦々しい声で老人はそう言うが、その言葉はまるで男に言わせられているようで屈辱を感じている風である。
男はそれで何かが満足したようだった。
そして机に一層身を寄せると、前かがみになる事で光の中へとその正体をあらわしていく。
「”そこまで”高い性能を自分だっていきなり求めやしません。そうでしょう?
世界でもまれな存在でもあるこの私に対抗できるほどの性能のある超兵なんてものはね」
光によって暴かれていく男の姿。
蝶ネクタイで決めたスーツ、そして髪が全く生えていない。真っ赤に彩られた髑髏の頭部が浮かび上がる。
世界で5人しかいない不死者の1人。アークシティに住む黒の髑髏と同じ存在。
この魔界と呼ぶにふさわしい国の軍にいつく彼を、人は”レッドコア”と呼ぶ。
「だが、私が征く戦場に部下をもたせたいというなら。もっとふさわしいものでないとね?話の通じない部下を連れ、ピクニック気分での殺戮なんてのは御免です。第一、イライラして面白くもない!」
カカカカカッとレッドコアは高らかに笑うが、老人達は誰一人それに合わせて笑おうとはしなかった。
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陳威信 中校を第536次新規開発責任者に命ず
それは週が明けて、少将の部屋へと呼びだされた彼が受け取った栄光への道しるべであった。
普段ならば眉一つも動かさぬ演技力を発揮して、模範的軍人の体を崩さない陳であったが。この時ばかりは、愉快で愉快で思わず頬を緩ませてしまう。
しかし、少将はそれを知っても咎めることはなかった。
(そうやって、俺のような男があんたの席に近づくまでは無関心なフリでもするんだな)
気が大きくなっているのだろう。ついつい、そんな不埒なことすら考えてしまう。
「陳君、念のため。プロジェクトの内容を確認して。質問は、ここで受けよう」
「は、それでは失礼します」
不気味なことに、その場で確認しろと言われてはしょうがない。この少将と向かいあって、席に着くと渡されたファイルの束を整理してみることにする。
まず委任状を始めとした書類は別にして、計画スケジュールから確認を始める。特におかしい所はない。自分がまとめて、構成にも気を配って作りあげた計画書であったから。どこかに手が加えられていればすぐにわかる。
(予算もほとんど言い値に近いし、納期も特に定められてはいないようだ。これはいいな)
超人兵士計画。
それは世界の軍関係者が、生まれてくる超人達を見て、喉から手が出るほど欲しがっている存在である。
人を、人のまま超人の域へとたっした戦士達。それは、最強の軍団の誕生ともいえる。
現在は、一部の軍が超人達もそこに組み込もうとする試みがされているが。彼等の力はバラバラで、それに能力が不安定すぎて戦闘には役に立たないことが圧倒的に多い。
一律、所属する兵士達全てが戦闘に適した超能力を持った部隊。
力を欲する以上、この言葉の魅力にあがらうことはできないのである。
自分の立てた計画書のそれがまんま記載されているのを、うんうんとうなづいて満足していた陳であったが。計画書の一部分に変更がされているのを見て、動きが止まる?
「なにかな?おかしなところがあったのかね」
どうやらこの陳の驚きは上の連中にとっても想定内の事であったらしい。
すこし躊躇うと、少将に素直に疑問を口にすることにした。
「その……評価査定は追って、と書かれています。どういうことでしょう?」
「ああ、それですか」
相手はうんうんとのんきに頷くが、陳にはそれは気の抜けない部分である。自身が開発する超兵の査定を明らかにしないというのは、自分を信用していないという事か?それとも、失敗するとでも?
「君の前任者達。はっきりいえば、前とその前の計画の事ですよ。事情は知っておいでかな?」
「上層部の気にいらなかった、という程度は聞いています」
「ああ、それはいけない。ちゃんと知らせておかなければね」
「?」
「気にいらない、というのはね。彼等と彼等を登用した愚か者たちへの配慮だよ。簡単にいえば、彼等は失敗したんだ。大言を吐いて、国庫の金を湯水のごとく使い、無様にも失敗した」
「……」
「映像が残っている。参考までに、君も見てみるといい」
少将はその手にどこからともなくとりだしたリモコンを握ると、操作を始めた。
部屋に備え付けられた小さいほうのテレビが突くと、音のない映像がゆっくりと見えてきた。
「最初の奴は、完成と断言するまで8年をかけた。次のは、5年で完成させると言って、言葉通りにやってみせた。
しかしね、どちらも酷いものを見せたのさ」
あまり綺麗ではない画像の向こうでは、下着一枚となった8人の兵士が立ち並び。白衣の男達が次々と彼等に注射を施している場面が流れていた。
白衣の男達が、画面から退場すると。映像が勝手に早送りされ、8人の男達の顔が高速のなかでしだいに顔をゆがませて苦しみだす様が表示される。
そして早送りが止まって、普通に再生が始まる中。男達の肉体が次々と劇的な変化を遂げていく。
筋肉が膨れ上がり、骨すらも膨張して皮膚を破って姿をあらわし始め、その顔の形も頭蓋の変化によって異形のものとなっていく。
「何年も大金と時間をかけた研究の成果がコレかと、当時は見て心をときめかせた瞬間もあったんですがね……」
少将が言いたい事はすぐにわかった。
8人中、3人の姿は異様と言うほかなかった。ただでさえ醜く膨れ上がった筋肉が急速に重くなったせいなのかもしれない。骨からはがれおちてしまい、手足がもげかかっていた。
「醜いでしょう。ありゃ、まさに悪夢でした」
そう続けると、当時の感想を口にしたが。陳はもうそれを聞いてはいなかった。
ただ、カメラが次第に失敗作とゆっくり変化していく3人の顔にアップになっていくのを見ている。
「次は、君の前任者ですよ」
その言葉通り、画面は切り替わり。場所も変わったことが分かる。
今度は先ほどと違い、今度は2人の男が写っていて、片方がおもむろに自分で自分になにかの注射をするのが見える。
「第4次における成功例、【人鬼】に変わるものを作る。それが、彼の言葉でしたね」
この【人鬼】とよばれる超兵達は、すでにこの国の軍に少しだけ投入され実用化が進んでいる技術である。
戦士としての闘争心と、肉体の強化。それに集中した結果であったが、それまでのどうにも使い道の難しい完成品達に比べると、はるかに実用的な性能を持っていた。
「【人鬼】にはただ一つ、知能の低下がみられるという問題があった。彼は全ての性能をあげ、この問題をなくすことが先決だと言ったのです。それでも、5年かかった」
画面の中では、上半身を異様な角度でくねらせ。顔が次第に狼のそれを思わせるものへと変貌していくのが見られる。
この瞬間、体の大事なバランスを保つべく。あらかじめ埋め込まれたサイバネティクス技術によって、”強制的”に狼人間へと仕立て直していく。
「彼の性能が口で言うほどのものか、試してみたのですよ」
変身中の狼人間の映像から切り替わると、今度はおかしなものが写った。
15人ほどの、女性達がカメラの中に入ってきたのだ。だが、狼人間の姿はそこにはない。
「?」
「これでいいのですよ。まぁ、見ていてください」
少将の言葉はその通りで、なにやら楽しげにいくつかに別れて話しこんでいた女達の部屋に、突然壁をぶち破って先ほどの狼人間と思われるそいつが姿をあらわした。
「こ、これは?なにをするのですか」
「見ていてください。それでわかります」
女達は悲鳴をあげているのだろう、恐怖の表情で逃げまどい。最終的には壁際へと集まっていく。
それを、狼人間は上手く両手を広げてコントロールするように。全員をできるだけ集めるような位置へと誘導させていく。
(知能がある?ということか)
それを見て、陳は心の奥底でひそかに舌を巻く。
【人鬼】達の問題としてあげられるのは、意思の疎通が不可能になるという事だった。
変身の苦痛からか、肉体を変化させてから以降はまったく意思の疎通を望む事が出来なくなり。しかも、彼等は暴れることができなくなると、そのまま衰弱してあっというまに死んでしまうのである。
だが、それが思い違いであることはすぐに理解した。
集まって震えている女達の中から、勇気があったのだろう。1人が抜けだして、狼人間となった兵士の横を素早くくぐり抜けようと試みる。しかし、それを獣のごとき反応で許さずに胴体を歯で咥えこむと、その場で頭を振って女の胴を派手に引き裂いて見せる。
そして次の瞬間、狼人間は怯えている女達の中へと突撃すると、容赦なく全員を殴殺していってしまった。
「それらしい反応は最初だけ。血を見た瞬間から、このように興奮した反応を見せてただ暴れるだけ。ちなみに攻撃力はどうか知りませんが、皮膚は形を保つのに限界で、棒でつついただけで肉が裂けて骨までビリビリと音を立ててみせてくれましたよ」
「こ、これは……?」
「この間違いを、君もしないように気をつけてくれ。ということですよ」
「……」
この時、この感情の乏しく自分に語り続ける少将を、陳は始めて恐ろしいと感じた。
「彼等は、我が国が総力をあげて開発に投じたメンツも金も、なにより時間も全て無駄にしてしまいました。さらに、その後警察の捜査によって明らかになったのですが、彼等は研究のために渡されていた資金の一部を横領していたのですよ」
「そ、それは……ゆるされない、ことですね」
「そうでしょう、そうでしょう。本当にね。酷い有様を結果として見せつけられた後、『もしや』との疑いから”警察の調べて”もらったら出るわ出るわ……」
「それで、彼等は?」
「ああ、最初の責任者は捜査中、前線に出た際に戦闘に巻き込まれて行方不明。死亡扱いです。前任者の方は、お父上が有力者で、頭を下げられましたからね。不問という事で、軍を除隊することで許されましたよ」
「そう、なん、ですか」
「ああ、ただね。彼はその後、上海でテロの標的になりまして。可哀想に、ひどい拷問を受けて殺されてしまいました」
ゴクリ、知らず知らずのうちに陳は唾を飲み込んでしまう。彼が言わんとする、漠然とした警告は恐怖となって彼に今、すりこまれたのである。
「あなたの約束した通り、上が求めているのはこれまでの【超兵】をこえる性能の超兵以外ありません。それを用意してください、いいですね?」
「……わかって、おります」
「その判断基準として、今見てもらった映像に近い状況で結果をだしてもらいます」
「と、いいますと?」
「難しいことではありません。愛国心のある、命令を素直に聞き、それをただ実行する。あなたの生み出す兵士のそんな姿を、我々に見せてほしいのです」
「……はい」
「それでは頑張って」
陳を部屋から追い出すように退出させると、少将はまた静かに席へと戻る。
さらなる上を目指し、純粋に結果を求めようとしたのだろうが、それは少し野心に過ぎる行為だったと、彼は知るべきだったのだ。
明日から彼のデス・ゲームが始まる。
成功以外許されない、命と未来をかけたゲームだ。さぞやスリリングなことだろう。
(ま、納得いくまでやってみればいいんじゃないかな)
まるで他人事のように、少将は陳に心の中でエールを送る。
だってそうじゃないか?自分がもし再び彼と出会うとするなら、それは彼が成功して自分と同じ場所まで登ってきた時か。それとも、失敗して”彼の前任者たちと同じように”死者の列に彼を並ばせるべく、この私が動く時しかないのだから。




