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旅立ち

「おい!レイン!」


観衆の中から、カイルの声が響いた。


「お前!運良いとかのレベルじゃないぞもう!すご過ぎだろ!!」


「……あ、ありがとう」


「……うれしくなさそうだな。まぁ、お前は選定に否定的だったしな……いやか?」


「そういうわけじゃないよ。少し、整理がついていないだけで」


「まぁとにかく!選ばれたからには絶対エデンに辿り着いて、絶対神になれよ!お前なら絶対なれる!」


「……そうだね、がんばるよ」


その時。


「選定者レイン」


背後から、声がかかった。


振り向くと、軍服に身を包んだ男が立っている。


「身支度を済ませた後、中央施設へお越しください。」


感情のない、均一な声だった。


「……わかりました」


それだけを告げると、軍人は踵を返す。


「……がんばれよ!」


カイルの声に、軽く手を上げて応える。


帰路につく足取りは、どこか重かった。



家に戻る。


海風で軋む、いつもの家。


家族はいつも通り漁に出ていて、誰もいない。


短く手紙を書き残し、最低限の荷物をまとめる。


――すぐに家を出た。


【中央施設】


案内されたのは、石造りの建物の一室だった。


広さは十分、我が家と同等かそれ以上、だが――何もない。


寝具、机、そして食事。


ただ一日を過ごすためだけの部屋。


(おそらく牢獄というのはこんな感じなんだろうな)


「こちらの部屋で一晩お過ごしください。明朝、出発となります」


軍人が淡々と告げる。


「……はい」


「そちらにある食事と水は、必要に応じてご利用ください。追加の提供は行われません」


「……わかりました」


「また、外出は制限されています。ご理解ください」


一切の抑揚がない。


「……何か質問はありますか」


「いえ……特には」


「承知しました」


一拍の間。


「それでは、失礼します」


音もなく、扉が閉じられる。


静寂、それ以外の言葉が出てこない。


もし今大きな声で叫んだとしても静寂がそれを遮るかのような。


それほどに静かだ。


部屋もなんだか整いすぎていて落ち着かない。


机の上の食事に目を向ける。


見た目は整っている。


おそらく今後の人生で食べることのない、いや、できない豪華なものだろう。


だが、それに温かみはなかった。


(歓迎されてる、って感じじゃないな)


椅子に腰を下ろし、小さく息を吐いた。


「……代表、か」


実感はない。 


あるのは、違和感、それだけ。


しばらくして。


廊下の向こうから、微かに声が聞こえた。


「あれが人間の代表で大丈夫なのか?」


機械的じゃない、生を感じる言葉、聞き間違いではない、だが聞かなかったことにして食事に手をつける、食べれる分だけ食べて今夜は眠ることにした。


夜は、静かに過ぎていった。



まだ太陽が半分も昇っていないくらいの時間。


「選定者レイン」


扉越しに、昨日と同じ声。


「時間になりました、集合時間に間に合わなくなります、出発準備をお願いします」


「集合時間…?エデンに向かうんじゃ?」


「エデンへと向かう前に、他種族の代表と合流していただきます、集合時間は12時、厳守でお願いします。」


《他種族》この言葉を聞いて一気に目が覚めた。


この世界には主に4の種族が存在している


遙か北、極寒の大陸、《タルタリア》に住む【竜族】


西の西の西、瘴気に満ちた過酷な大陸、《フィンブリック》に住む【魔族】


少し南、広大な自然に覆われた、別名南の楽園、《アルフイム》に住む【妖精族】


これらの種族は人間よりも魔力量が遙かに高い。



魔力の少ない人間族の中でも、一際魔力が低い僕が代表でいいのかと改めて思った。 


「……はい」


気が重くなり、短く返す。


扉を開けると、昨日と髭の濃さも、靴下の色も、何一つ変わらない軍人が立っていた。


「こちらへ」


無駄な言葉はない。


レインはただその軍人の後を追った。


建物の外、既に数人の軍人が待機していた。


「これより、指定地点までの同行を行います」


一人が言う。


「当該区域では異形種の出現が確認されています。十分警戒して行動してください。」


淡々とした口調。


「……異形種、ですか」


「はい。詳細は現地にて確認してください」


それだけを説明すると、会話は一切なく、そろった足音だけが木霊した。


やがて


「我々の同行はここまでとなります」


「……え?」


思わず声が出た。


「ここから先は他領域に該当します。規定により、これ以上の同行は許可されていません」


「まだ国を出たばかりじゃ……」


「規定です」


即答だった。


「……」


言葉が出ない。


「支給品です」


短剣と最低限の物資が差し出される。


「使用は自由ですが、補充は行われません」


「……ありがとう…ございます」


一拍。


「ここからずっと西に行くと、一目でそれだとわかる建造物があります、全種族の代表が揃うまでそこで待機となります、その後の動きに関しては、その場の状況に応じて行動してください」


「健闘を祈ります」


その言葉に感情はなかった。


軍人たちは振り返ることなく、その場を離れた。


残されたのは、レイン一人。


静寂。


「……なんだよ、それ」


小さく呟く。


手にした短剣は、軽かった。


(……普通すぎる)


装備も。


食料も。


何もかも。


(これで行けってことか)


小さく笑う。


「……まぁ、もうやるしかない…か」


誰に言うでもなく、そう呟いた。

ミズガルズ(人間族)


地理:多数の島国で構成された海洋国家群

特徴:環境適応と多様性の国

   島ごとに文化や生活様式が異なる


政治:中央都市【アスガリア】による緩やかな連合統治


エデンに対する考え:半信半疑(信じる者と疑う者が混在)

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