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[完結しました!]【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られた都市~  作者: こばん
2-1.再会

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22-5

殺風景な部屋の中、とても全員が座れる余地もないソファしかない場所で、ダイゴに肩を抱かれ伊織は口を開いた。


「……先にこっちに戻ったアタシと詩織はすぐに№3に走って親父に伝えた。十一番隊の状況とネメシスと友愛の会二つの大きな勢力が瀬戸大橋を狙ってるってな。親父は急いで戦力をかき集めて、アタシらはそのまま№4に走った。松柴サンにも伝えんといかんって思ったからや」


 静かに語る伊織の言葉に、誰も口を挟むこともなく耳を傾ける。誰かが唾を飲む音まで聞えるような静寂の中、まるで罪を懺悔するかのような口調で伊織は話を続けた。


「長旅で体調に不安があった詩織は途中で感染者研究センターで別れて、アタシだけで№4に行って、松柴サンに会って話もできた。松柴サンもすぐに動くってゆうてくれてな。安心して№3に戻ったまではよかったんや」


 そこから伊織の口調がもう一段沈んだ。


「でもな?№3は佐久間の件での疲弊が想像よりも大きくてな……。№3で動かせる戦力で想定されるネメシスと友愛の連合から砦を守れるのかに大きな不安があった。考えた親父とアタシは、他の都市に援軍を要請した。瀬戸大橋の砦が破られれば本土からの出入りに収集がつかんようになる。それは№都市全体の問題やから№3だけで意地はってどうなるもんやないって……そうかんがえたんや」


 確かに四国と本土とを結ぶ三つの橋に砦を作って封鎖できてこその№都市の安全がある。もし、砦が破られて出入りに制限が無かったらそこから感染者や略奪者が入ってくる。そうなってしまえば、№都市ができる前の四国に逆戻りしてしまう。


 そこまでの話に何もおかしいところはない。伊織も藤堂代表も正しい判断をしたと言える。しかし伊織の表情は硬い。


「正直、№1と№2からの援軍はあんまり期待してへんかった。№1は自分のエリアで色々と問題が起きてるみたいやったし、№2はそもそも今治にかかる来島海峡大橋の砦を守る戦力を除いて軍事力に力を入れてなかった。実際に№2に出たマザーを抑えるために何度か№3から戦力を出したくらいやったんや。実質、№3と松柴サンの連れてくる№4の戦力で何とか守る事になるやろうって思ってた……」


 そう言った伊織の言葉にゆずが頷いた。


「聞いたことある。№1は外部に接していないから安全なイメージが強くて避難民が殺到しているって」


「他の都市からあぶれた連中も安全を求めて№1に行ってるっても聞くしね。相当治安が悪化してるって僕も聞いたよ」


 ゆずの話をダイゴが補強する形で№1の状況が理解できた。


「№2は平野部が多くて数の多い感染者を抑えられないって言うもんね」


 ヒナタが言うと、アスカも口を開いた。


「予備隊でも№2では防ぐよりも逃げる手段を取っていると聞きました。農地にできる平野部が多い反面、侵攻を防ぐならその広大な平野をカバーできるだけの人数が必要になる。今の世界ではそれは不可能だから逃げる……と。それゆえに本土と今治をつなぐ来島海峡大橋を守る戦力以外は持っていないと……」


 つまり現状で№1や№2からの援軍は期待できなかった。そこに何かしらの想定外があったようだ。


「嘘やったんや。余計な戦力は持ってませーんって周りにアピールしといて……しっかり戦力は蓄えとったんや。援軍要請を出した後、アタシも動かせるだけの守備隊を率いて砦に向かった。予想通り№からの援軍はなくて、気持ちばかりの物資を送ってきただけやった。ところが……」


 そこで言葉を止めて、伊織は何かを耐えるような表情になった。隣に座っているダイゴが、その大きい手のひらで伊織の背中を覆っていなければ伊織は泣き崩れていたかもしれない。

 なんとか耐えた伊織は、震える声で話を続けた。


「アタシらが砦に着いた頃、№2から援軍と称してきた部隊……余計な戦力はなかったはずの№2から、二番隊から六番隊まで……総勢で百人を超える人員を寄こしよった。二十にも満たん№3の部隊なんか押しのけて砦を占拠した後……残ったのが今おる二番隊や」


 その後遅れて到着した松柴の率いる№4の部隊は、№3の部隊同様砦にも入れず追い返されたらしい。さっき会った麻木に「そんな戦力でやってきて何を守るつもりだ、馬鹿にしているのか」と、にべもなく。


 話し終わった部屋の中に重い沈黙が訪れる。戦力を隠していた№2がこの砦を占拠したのは、ここを守ると言う気持ちではないだろう。明らかに外……ネメシスや友愛と繋がっている。


「状況は……最悪みたいだね」


 ぽつりとこぼしたヒナタの言葉に誰も異論を唱える事は出来なかった。


 重い沈黙がその部屋をしばらく支配していたが、おもむろに立ち上がったゆずが足音を消して扉に近付いて気配を窺った。そして戻ってくると声を潜めて言った。


「見える所にはいない。でも間違いなく見張ってる。それも一人や二人じゃない」


 ゆずの言葉に、明らかに警戒されているのがわかる。


「事情聴取って言ってたな……」


 顔をしかめながらスバルが言うと、それまで黙って話を聞いていた喰代博士が口を開いた。


「間違いなく、本土で手に入れた情報を吐き出させるつもりだろうね。今の世の中、情報は生命線だと言っていい。実際それを武器に№4は他の都市と対等な立場にいるわけだからね。恐らくそれを聞きださない限り私たちを解放することはないだろう」


「で、でもさ!松柴さんだって近くまできてるんだろ?藤堂さんだってこのまま黙ってはいないんじゃないか?」


 スバルがそう言ったが、喰代博士は難しい顔をして首を振った。


「私たちが砦にいる事を知らないとしたら?実際№2の人間としか接触していない。戦力を隠して砦を占拠するような奴らが、今保護しました。なんて伝えると思うかい?逆に情報統制を敷いて外に漏れないようにしているはずさ。それもこれも私たちが持っている情報を奪うために。そしてヒナタちゃんの刀やゆずちゃんの銃を奪うために、ね」


 その喰代博士の言葉は説得力がある。誰もが唸るような声しか出せなくなった頃、廊下を歩く音が近づいてきた。時間的に「事情聴取」とやらをするために迎えに来た隊員だろう。


「みんなそれぞれ思う事はあると思う。その上でお願いだ。奴らとの交渉は私に任せてくれないかい?」


 近づく足音を気にしながら小声で喰代博士がそう言う。ヒナタもゆずも急な事で戸惑っていたが、続けて言った言葉で頷くしかなかった。


「感染反応のある美鈴ちゃんを奴らの手に渡さず、無事にここを通すためには私が意見を通すのが一番なんだ。一応感染者研究センターの所長の肩書もあるしね」


 そう言って片目を閉じて見せる喰代博士に、ヒナタもゆずも深く頷いて返した。


 そして靴音がヒナタ達のいる部屋の前で停まり、ノックもせずに開かれる。


「これから聴取を行う。指定された者のみついて来い」


 無礼極まりない態度で、有無を言わせない口調でそう言った隊員は、何かの用紙を見ながら隊長のカナタ、喰代博士、そして美鈴の名を読み上げる。そしてその名前は喰代博士が予測していたそのものだった。

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