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[完結しました!]【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られた都市~  作者: こばん
2-1.再会

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22-1 帰還‥‥そして

 惟信の話を聞いたヒナタとゆずは、黙って頷いた。そして仲間たちに内容を伝えていく。


 砦にいるのが№2の部隊なら、都市外で得た成果は奪われてしまうのでは、と惟信は言った。ここで言う成果とは情報だ。マザーの情報や試薬の成分。№4は情報において他の都市よりも優位な立場にある。

 むしろそれしかないのだが、一緒に試薬を開発した喰代博士も同行しているし、マザーに効果がある「桜花」も「梅雪」もヒナタが所持している。みすみす黙って通すだろうか?


「通さないだろうねぇ。色々難癖付けて奪おうとするんじゃないかな……」


「むしろゆずのへカートⅡも取られるんじゃね?」


 話を聞いたスバルやダイゴもその結論に達した。砦が№3の管轄のままだったら何の問題もなかったのだが、なぜか№2がいておかしな動きをしている。どう考えてもきな臭い匂いしかしない。


「私も美鈴ちゃんとお別れなんて嫌です!」


 花音が美鈴の手を握ってそう訴える。


「発症していないと言っても感染反応のある美鈴ちゃんは、私の感染者研究施設に研究協力として招いたことにするつもりだったからねぇ。それには誰にも知られないで研究所に着く必要がある。途中でばれたら……事情を知らないと大騒ぎだろうからね」


 喰代博士が、花音と美鈴を抱き寄せながらそう言った。美鈴だけでなく都市の外から来た惟信やリョータもどういう扱いをされるか予想もできないのだ。


「そして、それらを奪いやすくするためには分かりやすい恩を売っておくのが一番手っ取り早いからのう」


 惟信が最後にそう付け加えた。つまり、ここまでヒナタ達が来ているのに救援を出さないのは、ヒナタ達が窮地に陥るのを待っているのだ、と。恐らく友愛の会とも裏で話が通ってるのだろう。

 それならば目の前でバリケードを作るのを見逃すのもわかるし、どうにかして№3から砦主導権を奪ったのもわかる。


「先に戻った伊織ちゃん達が松柴さんに話を伝えてくれているとは思うけど……」


 立場が弱い№4はいつも押さえつけられている。助けようと動いてはくれているだろうが、あてにはできないという状況だ。


「だから……まずは主導権を渡さない!」


 宣言するようにヒナタは言う。



 「おや?何か話し合いをしたと思えば……。どういうつもりだ?」


 余裕そうに様子を見ていた次原が、意外な顔をしている。自分たちの方にヒナタと惟信だけが歩いてきたからだ。残りのメンバーは、非戦闘員を中心にして白づくめを迎え撃つ形をとっている。


 次原の言葉など耳に入らない様子で、ヒナタは惟信の動きに意識を集中させていた。


「よいかなヒナタちゃん。ワシは砦でどう扱われるか分からんし、異物は排除したいじゃろう。そうなれば弟子に何も教えることなく別れることになってしまう。……本当はもっとゆっくり刀を交えたかったがの」


 そう言ってヒナタを見つめる惟信の目には、慈しみが宿っている。


「ここでワシのすべてを見せよう。なに、ヒナタちゃんはすでに下地は出来ている。必ずや青龍流を会得できると信じておるよ」


 それだけ言ってにこりと微笑んだ惟信は、歩きながら腰から二本の棒状のものを取り出した。


「おいじじい!近寄るんじゃねえ!」


 そのまま歩き、友愛の会の構成員の近くまで進んだ惟信を、男が止めようとした。男は惟信の肩を突き飛ばそうとしたが、惟信は寸前で体をひねって力を逃がしてしまう。


「ほ!」


 そして持っている棒でその男の腹を叩いた。


 ドム


  「ごふ……」


 見た目より重い音が聞こえたかと思うと、男は口から色々なものを逆流させた後、膝をつきそのまま昏倒した。


「「誰よりも速く動いて、離れた所までも切り裂く」のが朱雀なら、青龍は、「流れるように動いて力をいなし、必殺の一撃を叩きこむ」じゃ。ヒナタちゃんは近接戦をする時、それはもうできておる。あとは細部を詰めるだけじゃ」


 そう言うと惟信は両手に持った、鉄扇を拡げた。


「青龍四神流の惟信と申す。弟子のため、ここは空けさせてもらう」


 そう言うが早いか、友愛の構成員たちは最初の男が倒されたのを見て、もうすでに戦闘状態に移行していた。


「じじいが……なめるな!」


「死ね!」


 太めの鉄パイプを持った男と、軍用のサバイバルナイフを構えた男が惟信に近付いて、左右から同時に攻撃してくる。惟信はぱちんと音をさせて、鉄扇を閉じるとサバイバルナイフを手に向かって来る男と動きをリンクさせてみせた。


 押せば引き、引けば押す。一定の距離を保ったまま離れない惟信に、男は気持ち悪そうにサバイバルナイフをめちゃくちゃに振り回した。


「相手の動きの流れを読むことじゃ。そして朱雀と違い、至近距離での戦闘を常とする青龍は、間合いが近すぎるために威力のある攻撃を出しづらい」


 手を伸ばせば届く距離で、ナイフを避け続けながら惟信はそう言うと、相手の動きに合わせて動いてヒナタの隣に戻ってくる。


「ゆえに爆発力のある技が必要。しかしの、青龍はその戦い方から小柄な者が多かった。ワシしかり、ヒナタちゃんもそうじゃな」


 しっかりと惟信を見ながらヒナタは頷く。


 ナイフの男は肩で息をしているのに、惟信は息一つ乱していない。

 ヒナタに向かってそう言うと、また瞬時に間合いを詰めた。


「ひっ!来るな……」


 がむしゃらにナイフを振り回す男のせいで、鉄パイプを持った男は近づく事もできないでいる。


「基本は二つ。よく覚えておくのじゃ」


 相変わらずひょいひょいと相手の攻撃をかわしながら……惟信の気が膨れ上がった。


「ほい!」


 右手の鉄扇を無造作に突き出す。


「が……はっ!」


 力は入っていないように見えた突きを胸に受けたナイフの男は、それだけでナイフを取り落として動きを止めた。

 威力も速さも……ハルカの神速の突きと比べものにならないように見えた。


 そのまま地面に倒れ伏したナイフの男を見下ろしながら惟信は口を開く。


「「勁」という技を聞いたことがあるかな?密着した間合いからの瞬間的な力の爆発。今のは捻りを加えた「捻勁」というものじゃな」


 ヒナタは惟信の動きを思い返しながら、頭の中で動きをトレースしていた。

 一見、力の抜けた早くもない突きだった。しかし、相手に当たる瞬間踏み込んだ足の音が大きかったし、腰から腕への捻りの伝達がそのまま相手に伝わっていた。


「ジジイ……妙な技ぁ使いやがって!」


 仲間がやられたのを見て、鉄パイプの男が怒りを露わにして激しく振り回してきた。


「もう一つは……」


 相変わらず相手の攻撃を小さい動きで避けながら、惟信は見極めた一瞬で相手の懐に入った。

 そして、その瞬間には鉄扇の先が相手の胸数センチの所で止まっている。


「う……」


 ナイフの男がやられたの所を見ていたからか、男の動きが止まった。その瞬間……


 ズン!


 ヒナタの所まで衝撃が伝わってきたような錯覚をおぼえる。

 さすがにそれはないのだが、そう思ってしまうくらいの一撃。


「こちらは「寸勁」体全体を使って溜めた力を一気に爆発させる」


 カラン……という音を立てて鉄パイプが地面に転がる。男はもう白目を剥いていた。


「捻勁は威力が貫通して伝わる。熟達すれば、壁越しに打ちこんで、壁は壊さずその向こうにいる者にだけ打撃を与える事もできる。寸勁は当たった場所から波のように衝撃が広がる」


 そう言って振り返る惟信を、ヒナタはポカンとした顔で見つめていた。


「すごい……」


 惟信は、ただの一撃で自分よりも大きな男性を沈めてしまった。これまでヒナタは体の小柄さ、女性ゆえの非力さ、それをカバーするために今の技術を磨いた。

 惟信が見せてくれたのは、その技術のさらに先にあるものだった。

 なるほど、自分を弟子に選ぶわけだ。と、自分で納得できるくらい素のヒナタの技術と根っこを同じくするものだった。


「な、な……。」


 次原が目を剥いてその様子を見ている。小柄な老人がおしゃべりしながら大柄な男を二人も、しかも一瞬で沈めた事が理解できないのだろう。


 わなわならと震えながら、それでもなんとか次原は声を出した。


「な、何している。大勢でかかれ!複数で取り囲んで痛めつけてしまえ!」


 その言葉に、ハッとしたように他の構成員達も動き出した。


「ほっほっ……ここからは応用編じゃな。すまないが見て覚えておくれ」


 そう言った惟信とヒナタは二人で友愛の会の構成員達の中に走り込んで行った。

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