表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結しました!]【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られた都市~  作者: こばん
2-1.再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

415/426

21-7

「むー……。どうも弾はたくさんあるみたいだね。弾切れにはならないみたいだ」


 それまで何度か敵の前に姿を見せて、撃ってくるように挑発していたヒナタだったが、お互いリロードのタイミングがズレるように息を合わせて間断なく撃ってくる。


 節約してる様子もなく、バンバン撃ってくるので弾は豊富にあるみたいだ。


「どうするかな……。せめて標的を散らせることができたら少しは……」


 まさにそう考えていた時だった。ヒナタの視界の端にチラチラと動くものがあった。


「え?」


 高速の乗り口。バリケードがあって白づくめ、さらにその後ろ。

 五階建てくらいのマンションがあり、その三階のベランダに手を振る数人の人影があった。


 その人影はヒナタが気付くと、今度は小銃らしき物を見せて……白づくめに対して撃った。


「うわ!なんだ!」


「どこから撃ってる!


「上だ、顔を上げるな!」


 突然後ろから撃たれた白づくめ達は混乱しているが、それでもバリケードに隠れながらヒナタ達とマンションに向けてと別れて射撃しだした。


 さらに……


「ヒナタ。一つだけ使えそうなものがあった……ヒナタ?」


 そう言って、ゆずが細長い金属の筒のような物を持ってきてヒナタに見せたが、ヒナタは久しぶりに嬉しそうな笑顔を見せていた。

 どうしたのかと訝しむゆずに、ヒナタはマンションから白づくめに対して射撃している人達を指差して言った。


「前野さんだ。他の人もいる。諦めずに動いてる……今度は私達を助けようとしてくれてるんだ」


 ヒナタの言った事でゆずも思い出した。病院に避難していた生きる事を諦めた人達。死を待つばかりだった避難民達は、生き抜こうと必死に足掻くヒナタ達を見て、再び立ち上がったと聞いていたが……


 ゆずがライフルのスコープで見ると、ヒナタの言うとおり前野が射撃している姿が見える。


 それを見たゆずも何だかとても嬉しくなり、ヒナタの背中をポンと叩くと、ヒナタも久しぶりに見る輝くような笑顔で頷いた。


「ん。よかった……なら今がチャンス。きっと病院の人達はそれほどたくさんは弾を持っていないはず。ヒナタこれを」


 そう言ってゆずが持ってきた円筒形の物……スモークグレネードをヒナタに渡す。


「うん!そうだね。じゃあみんな、戦闘準備だよ!」


 振り返ってヒナタがそう言うと、全員が力強く頷き返してくる。


 それを見て、ヒナタは微笑むとスモークグレネードのピンを抜いて、白づくめの方に思いっきり投げた。


 カン!カラカラ……


 甲高い音を立てて転がったスモークグレネードから勢いよく煙が吹き出してくる。


 それと同時にヒナタは「桜花」と「梅雪」を抜き放った。


「みんな!流れ弾にあたっちゃダメだよ。せぇの……とつげきぃ!」


 サッと右手の桜花を、すでに煙にまかれつつある白づくめの方に振り下ろした。


 走り出すゆず、ダイゴとスバルや花音。ヒナタが惟信を見ると、惟信は何も言わずに頷く。


 ここに残る喰代博士達を惟信や近接戦に不安のあるアスカと由良に託して、ヒナタも走り出した。

 白づくめ達の位置から射線に入らないように迂回しながら……



「くそ、煙幕か!おい、撃つのをやめるな!近寄らせるな。射撃班以外は武器を構えろ!」


「わ、俺の武器!どこにいったから知らないか!」


「武器って言ってもナイフしか持ってない!」


 豊富に支給されている弾丸で撃ちまくって、接近を許す事などほとんどないからか、そもそも油断していたのか……。充満しつつある煙幕のせいで視界が塞がれて慌てる声が聞こえる。


 このグループの指揮を任されている白づくめは、はっきりわかるほど舌打ちをする。


「なんでもいい!その辺にある物掴んで、姿が見えたら思いっきりぶん殴れ!慌てるな、お前達も見ただろう!相手はガキみたいな奴らだ。近寄る事も逃げる事もできないほど撃ち込まれてビビってるだけかもしれんぞ?いいから構えろ!」


 周囲に怒鳴りながら自らも、降ろしていたリュックサックに結びつけてある物を抜いた。

 どこぞの博物館から流れてきた物で、四尺近い長さの太刀。見れば威圧感を感じる、その太刀を肩に担いで白づくめのリーダーは辺りを睥睨した。


「どこからでも来い、叩き切ってやる」


 煙幕は思ったより広がっていない。高架下という風が通り抜けやすい場所だというのと、白づくめ達の後ろから高速道路に上がった先は、瀬戸大橋がある。

 海からの風がそっちから吹いてくるので、煙幕が白づくめ達を完全には覆えなかった。


 一車線分の幅しかない乗り口に十数名の白づくめがいて、バリケードも強固な物を置いてある。そうやすやすと抜けるはずがない。

 落ち着いてそれを見た白づくめのリーダーは頭巾の下でニヤリとほくそ笑む。


 落ち着いて長大な刀を構えるリーダーの姿を見た白づくめ達は、少しずつ落ち着きを取り戻していた。


 銃を持っている者は道の端に寄って、広い範囲に弾をばら撒いている。煙幕は後ろからの強風で自分達の方まで広がりきれていないし、すでに薄くなってきていることで、銃持ち以外も得物を構えて警戒している。


 苦し紛れの一手は不発に終わったな。白づくめ達の誰もがそう思い始めていた時……


「よいしょお!」


 気の抜ける気合いの声と共に、頭上を何かが通り抜けた。

 それは高架道路の壁を蹴ってくるくると回転しながら白づくめのリーダーの後ろに着地した。


「なっ!」


 振り返りながら太刀を振るう白づくめのリーダー。


「わお。すごい太刀だね」


 少し離れた所に着地した少女――ヒナタは、見ただけで誰もが震え上がる太刀を見ても、感心するような声をあげただけで一気に間合いを詰めてきた。


 ――バカが。真っ二つにしてやる!


 白づくめのリーダーはその太刀を振り回すだけの膂力はあった。近づいてくる全てのものを切り裂く勢いで、その両腕に力を込めた。


「なっ!……」


 ヒナタの動きは素早かった。凶悪な見た目の武器を持っているのに、全く躊躇もせずに接近して太刀の根本の部分に刀を合わせて止めた。


「とっ……止めたっ?」


「力不足だね、太刀が泣いてるよ」


 つまらなそうにそう言った瞬間、姿を消した。


「なあっ!」


 別に瞬間移動ができるわけではない。ヒナタはしゃがんだだけなのだが、焦っている上に頭巾のせいで視界が狭い。何よりヒナタが言うように、この男は剣術の達人でもなんでもなかった。


 長大な武器は当然重い。一瞬だけ拮抗した力がなくなって白づくめは太刀に振り回されてたたらを踏んでいた。


「はい次!」


 ガラン


 なんでもないように白づくめのリーダーを斬ったヒナタが他の白づくめの方を向く。目を見開いたまま声も出せずにリーダーは倒れ、業物だった太刀は地面に転がった。


「く、くそっ!」


 道の両端で威嚇射撃をしていた銃持ちの白づくめが慌てて、ヒナタにライフルを向けようとする。


タン タン タン タン


 そこに射撃が浴びせられた。……頭上から。


 飛んできたのはヒナタだけではなかった。同じように飛んできて高架道路の壁に足をついたゆずが、冷静に銃を持っている白づくめを先に無力化した。


 特殊な弾丸のfive sevenは、拳銃ながら貫通力が高いだけではなく、着弾の際の威力もあるように作られている。


 タン タン


 ゆずの体が重力に従って落下を始めたとき、five sevenのスライドが開いたままになる。反射的に空になったマガジンを排出しようとして……やめた。


 そのまま着地したゆずは下にいた白づくめを蹴りつけて距離をとって、ようやくマガジンを交換する。外したマガジンは大事にポケットの中に入れて。


 もう、残っている白づくめに積極的に向かってこようとする者はいない。そこに銃撃が途切れた時にスタートを切っていたスバル達が突入してきた。


「はあああっ!」


 最初に煙の中から姿を現した花音は、素早く今の状況を見てとり、白づくめの腕や肩を斬りつけた。

 無力化で十分。花音が見た時白づくめ達はヒナタやゆずに怯えて距離をとっていたのを見たからだ。


 そこにスバルとダイゴも到着して……あっという間に鎮圧した。


 その様子を離れた所から見ていた前野達は、感心して声も出せずに見ていた。

 少し離れていたからこそ、ヒナタ達と白づくめ達の様子がよく見えたのだ。


 煙幕があまり拡がらなかった事も、白づくめのリーダーが凶悪そうな武器を所持していた事もヒナタ達にとっては問題なかった。


 あまり拡散しなかったスモークグレネードだったが、視界を遮ったと判断したヒナタ達はすぐに行動を開始した。

 射線に入らないように注意しながら、壁際に走ったのはダイゴ。

 そこに助走をつけたヒナタが走り寄って、ダイゴに向かって飛んだ。そして、その勢いのままダイゴが壁と平行に投げたのだ。


 いくら身が軽いといっても、バリケードやその付近の白づくめ達を越えて、後ろに控えていたリーダーの所までヒナタが飛べたのはそういう事だった。

 同じようにしてゆずも飛ばした後、射撃が止まるのを待って突撃していた。


 その鮮やかな様子を離れた所から眺めていた前野は感心するのと嬉しくなったので、思わずヒナタに向かって大きく手を振った。

 きっと近くにいたらハイタッチくらい求めていたかもしれない。


 大きい身振りで手を振る前野に気づいたヒナタも、ぴょんぴょんと飛びながら両手を振って返すのだった。

残すところ、あと十話ほどになりました。読んでいただいてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ