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[完結しました!]【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られた都市~  作者: こばん
2-1.再会

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21-4

 遠山の指示によって、壊れたシャッターの裏口に近寄った白づくめが持つ松明の明かりによって、少しずつ中の様子がわかってくる。


 遠山は部下の白づくめ達に前進を指示しながら、自らも進んでいた。


 そして、松明の明かりに照らされた人影が見える。遠山の指示で殺到する白づくめ達。

 その人影の姿とそばにしゃがんで刀の鞘を握りしめる少女の姿を認めた時、遠山は大きく口を開けて何かを言おうとした。


 しかし、遠山の口から言葉が発せられる事はなかった。


 それより早く人影……カナタが動いていた。


「…………飛燕!」


 その言葉と同時に、全身全霊を込めて刀を振り抜いたカナタは前のめりに倒れた。


 松明に照らし出されたカナタとゆずに殺到していた白づくめ達の間を一陣の風が通り抜けた。

 それは後ろで指示を出していた遠山まで届くと、さらに通り抜けて行った。


 それまで騒然としていた現場を静寂が支配した。通り抜けた一陣の風が、遠山達の後ろの駐車場に繁っていた雑草を揺らした。


 束の間の静寂は、大口を開けたまま凍りついたように動かない遠山の、上半身が徐々に滑り落ちて、残った下半身が後ろに倒れるべちゃっという音を皮切りに、次々と二つに分かれ倒れる白づくめ達の音を際立たせた。


「カナタくん!」


 前のめりに倒れたカナタに縋りつこうとするゆずを止めて、カナタは何とか立ち上がりながら叫んだ。


「行けぇっ!すぐに周りの奴らが来る。俺が生きてる間はここで足止めしてみせる。行ってくれ、頼む!」


 カナタの言葉にゆずが顔をグシャリと歪める。そんなゆずの肩に手を置いて、涙を我慢したヒナタが強い口調で言った。


「みんな、正面の家の庭を突き抜ける!私とゆずちゃんが前を切り拓く!花音ちゃんは私達の後ろに。ダイゴさん、スバルさんとアスカさんと由良さんは戦えない人を護衛して!お師匠さまとハルカちゃんは後衛を、急いで!」


 矢継ぎ早に指示を出したヒナタの声に、それぞれが従い動き出す。

 その様子を頼もしげに見て微笑むカナタの脇を、ヒナタは走り抜けた。噛み締めすぎて口の端から血を流しながら……


「カナタ……」


 ヒナタの指示通りに通り抜けて行った仲間達の一番最後でハルカがカナタを見る。


「ハルカ……すまない」


 カナタがそう言うと、ギュッと口を結びハルカも駆け抜けて行った。


 すでに表の方からも突入したのか、物音が近づいてきている。

 カナタはしばらく仲間達の背中を見つめていたが、歯を食いしばって刀を握る手に力を込めて振り返る。


「さて……ここは通さないぞ。俺の命があるうちは……」


 そうしてるうちにも、扉を蹴り開ける音がすぐ近くで響いた。


 ◆◆ ◆◆



「どいてっ!」


 たまたまそこにいた白づくめが、走って来たヒナタに気付いて武器を構える前に、ヒナタの声と斬撃が通り抜けて行った。


 首から血を流しながら倒れる白づくめの脇を十一番隊が駆け抜ける。


 ヒナタ達はなるべく道を避けて、住宅の庭や時には家の中を通り抜けて移動していた。

 それでもネメシスは広範囲に部隊を展開しているらしく、それなりに白づくめと遭遇する。


 ただ、先頭を走るヒナタだけではなく、隣を走るゆずも、その後ろの花音も……

 一切の容赦も躊躇もなく、出会う人影に体当たりするような勢いで肉薄すると、次の瞬間には斬っていた。


 相手が誰なのか確認する事もしていない。仮に一般人だったとしても、向かってくるなら容赦なく斬っただろう。

 それだけの気迫と勢いで進んでいた。


 ヒナタは何も考えないようにして、ただ前に進む事だけを考えていた。

 民家の庭を通り抜け、ドアを蹴り開けて室内を抜けて次の家に……


 夢中でそれを繰り返して、気づけば大きな通りに出ていた。ちょうどそこにあったのは、倒れた緑色の看板。

 それは高速道路の乗り口を示す物だった。


いつの間にか、夜ははしらみ始めていた。


 高速道路の乗り口にも、塞ぐようにして白づくめの一団がいたが、いきなり現れたヒナタ達の姿を見て明らかに動揺している。

 その様子から本隊はまだ戻っていないと見たヒナタは、突撃の指示を出した。


 ――今は、時間との戦い……。もたもたして、阿賀部や佐久間達の部隊が戻って来たら、さすがに……


 後ろを振り返る必要もないほど、みんな疲れているのは分かる。昨日の夜からほとんど休憩もなく戦いづくめなのだ。

 それでも無理をして、道じゃないルートを直進して来たのは、本隊が戻る前に瀬戸大橋を抜けたかったからだ。


 ここから四国に戻るには、瀬戸大橋をわたるしかない。高速道路であるそのルートは、もし大勢で守られてしまえば、数の少ないヒナタ達では絶対に通り抜ける事はできない。

 

それは、カナタから後を託されたヒナタにとって、絶対に避けたい事だった。

 

 慌てふためいていた白づくめ達だったが、駆け寄るヒナタ達を見て我に返ったのか、簡単なバリケードに隠れるようにして隊列を整えて出していた。


「止まれ!お前らどこから来た?何者だ!」


 白づくめの中から十人ほどが前に出て来て、そう叫ぶ。どうやらヒナタ達を見て、今も本隊が追っている標的であるとは思っていないようだ。「今はここは通れないから、どこかへ行け!」などと、叫んでいる。


 まだ、夜が明けきれていないことが幸いしたのかもしれない。

 制止の声に動きを止めないヒナタ達に、白づくめ達は武器を構えだした。それぞれが鉄パイプやナイフなどを構える。


「はああっ!」


 そこにヒナタ達は一切足を止めずに突っ込んだ。


「なっ!ぐぁっ……」


 一気に肉薄したヒナタが揺れるように二人の白づくめの間を抜けると、首筋を真っ赤に染めて崩れ落ちる。それを見もせずに、「桜花」と「梅雪」を手に舞うように次の白づくめに踊りかかった。


「きさまっ!」


「とまっ……」


 ヒナタと同時に白づくめに飛びかかったゆずは、手に持った刀で前にいた白づくめの心臓をひと突きすると、それを抜きながら左手の銃で隣の白づくめを撃った。


 タン!タン!と軽めの銃声が響く。


 ゆずの脳裏に、少し前の事が浮かぶ。それはカナタが居合の構えをとって、ゆずが鞘を握っていた時の事だ。

 今にも破られそうなシャッターに、ゆずは歯を食いしばる。シャッターが破れればカナタとはもう……。


 ギリっと噛み締めたゆずに、カナタは思い出したように言った。


「そうだゆず、俺のベルトを外してくれ」


 そんな事を言い出したカナタに怪訝な目を向けると、カナタは苦笑いしながら言った。


「バカ、変な意味じゃねえ。俺の腰にあるハンドガン、持って行ってくれ。結局ほとんど使わなかったから弾もそこそこあるはずだ」


 カナタは自分で言うように、ほぼ使用しなかったが一応ハンドガンも所持していた。

 支給されたものではなく、探索で見つけた銃でカナタは必要ないと言うのを一応持っておくようにとゆずが言った物だ。


 少し変わった銃で、反動も小さく射撃を得意としないカナタでも扱い易いと思ったからだ。

 日本では珍しい5.7mmという口径の、その名もfive sevenという銃だ。

 どちらかと言えば貫通力が高く、感染者相手にはあまり向かないが、サイドアームとしてカナタがずっと持っていた。


「俺が持ってても……な。せめてお前が使ってやってくれよ」


 そう言うカナタに、ゆずは無言でカナタのガンベルトを外した。ほとんど使った形跡のないキレイな銃身と、マガジンポーチには満タンのマガジンが五つ入っていた。


「宿舎の俺の部屋にまだ弾は残ってるからさ」


 ゆずはそう言うカナタのスネを蹴った。形見みたいな言い方がなんだか癪にさわった。


「イタっ!お前……」


 そのやりとりに、いつもを思い出してまた泣きそうになるのを、ゆずはぐっとこらえる。

 カナタも同じように思ったのか、それ以上何も言わず微笑んだ。

 ……シャッターが悲鳴を上げて破られたのはそのすぐ後だった。


 ◆◆ ◆◆


 ゆずは右手に刀を持ち、左手にfive sevenを持った変則の超接近戦を仕掛けていた。

 ヒナタのように舞うような動きは出来ない。しかし、即興で刀と銃を使ったガン-カタのような動き方を独自に編み出していた。


 刀で斬りつける、もしくは相手の攻撃を受ける。そして僅かな距離からの銃撃。

 そこに小柄な体を活かした体捌きを加えて、次々と白づくめを沈めていく。


 ヒナタとゆずから逃れても、その間隙に狙い澄ました花音の刀が白づくめを切り裂いた。


 三者三様、バラバラの動きをする三人が三位一体となって、あっという間に十名ほどいた白づくめを沈黙させた。

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