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よんじゅーよん(かい)


申し訳ありません!

せっかくリアクションをくださった方には申し訳ないのですがっ……話の都合が合わなくなっちゃった(プロットがあっても、本書きで内容が変わる所為かもしれない……)ので、微妙に書き換えを行いました!


(改)verも、よろしくお願いします!



 




「ぷー、くすくす! ブレイク、負けてるわ!」



 クスクス、クスクス。

 ユーディは今負けたばかりのブレイクのことを笑う。

 そんな彼女の隣で、マリアは違和感を感じずにはいられなかった。今の彼の戦いに対して。けれど、それがなんなのかが分からなくて、首を傾げる。


(……変、であったのは間違いないのですが……。一体何が、変なのかが分かりませんね……)

「ふふふふふっ! 本当、弱々なんだから! やっぱりブレイクじゃお兄様の足元にも及ばないわ! お兄様はアイツを従騎士に選ばなくて正解だったわね!」

「…………? お兄様? 従騎士?」

「あら? あんまり騎士団の仕組みに詳しくないの? なら、代々騎士の名家として名を馳せるラスレット侯爵家が長女ユーディ・ラスレットが教えてあげる!」


 ユーディはふふんっと胸を張りながら、セヴェール王国騎士団の仕組みを話し始めた。


「我がセヴェール王国騎士団ではね、従騎士制度を採用しているのよ! ちなみに……他の国の騎士団と違って、我が国の従騎士は騎士見習いって訳じゃないの。どちらかといえば寄宿学校の兄弟制度や、相棒パートナー制度に似たようなモノよ」


 一般的に、従騎士というのは正式な騎士になる前の騎士見習いのことを示す。

 けれど、セヴェール王国における従騎士というのは兄弟制度……先輩あに騎士専属の後輩おとうと騎士として、遠征先で先輩の身の回りの世話をしたり。その見返りに戦闘訓練をしてあげたり、武器や防具を融通してあげたりする関係なのだとか。

 つまり、従騎士制度の〝従〟は従士や従者、という意味合いが強く含まれているらしい。


「まぁ、全員がこの従騎士制度に従って、関係を結んでいる訳ではないけれどね? 失態を犯した時は一蓮托生で責を負わなきゃいけなくなる代わりに、互いの功績も相手の評価に加算されるの。つまり先輩が功績をあげたら、後輩にもちょっと良い評価がつく。逆も然り。昇進する時に少し評価が足りないって時に、相手が何かしらの功績を挙げたら、そのちょっと足りない評価を補ってくれるって訳!」

「えっと……その従騎士として。ブレイク様はユーディ様のお兄様に付くはずだった、ということですか?」

「そうよ! でも、ブレイクって弱々じゃない。これって充分なマイナスだわ。つまり、もしもお兄様がブレイクを従騎士にしていたらお兄様の評価が下がっていた可能性が高かったってことなの! だから、お兄様はアイツを従騎士にしなかったの。自分の足を引っ張ると判断なされたから。本当、先見の明がお有りだわ。あたしのお兄様には!」


 心底、実の兄に対する尊敬があるらしいユーディは、目を輝けながら兄のことを褒め称える。

 対してマリアは、ユーディの話をきっかけに、ブレイクに感じた違和感を、ほんの少しだけ理解したような気がした。


(なるほど……。私の目には、ブレイクが本気を出しているようには見えなかったから……。だから違和感を覚えたんですね……)


 マリアは戦いに関してはズブの素人だ。だから、間違っている可能性も否定はできなかったが。それでも案外この予想は当たっているような気がした。

 だとしても何故、あんな風に戦ったのかは。当然のように全然、予想がつかなかったのだが……。


「あら。負けたのが恥ずかしくて逃げ出すのかしら? ふふふふっ、これぞ正しく尻尾を巻いて逃げるってヤツね!」


 考え込んでいたマリアは、ユーディの言葉を耳にして、ロキ達の方を見る。

 すると丁度、ブレイクが苛立った様子を隠さずに舞台の出口から姿を消したところで。

 肩を竦めているロキに、呆然としているタニアや。思案顔のグラディスを見て、どうやら多少のいざこざが起きてしまったらしいことが察せられた。


「……だいじょーぶ、かなぁ?」

「さぁ? でも、兄貴達も大人なんで。きっと大丈夫っすよ」


 幼いながらにロキ達の様子を見て、喧嘩をしたのだと察したらしい。ホープが心配そうに呟いた。

 そんな幼子を慰めるように。スレイがピコピコと耳を動かして、〝大丈夫だと〟告げる。それも自信満々で。

 ……マリアでは距離があり過ぎて、ロキ達の会話を聞くことはできなかったけれど。もしかしたら、スレイはその高性能な耳で彼らの会話を盗み聞きできたのかもしれない。だから、こんなにも自信があり気なのだろう。


「おっと。遂に兄貴の出番みたいっすよ! ホープ坊ちゃん、応援! 応援!」

「はっ……! パパーッ! がんばって!!」


 ブレイクのことはそれなりに心配ではあるが、今はチームでの模擬戦な最中。次の試合が……ロキの出番が、やってくる。

 マリアは意識を、ロキへと向けた。

 前に出た彼が剣を構える。半身を引いて立つその姿は、素人目でも実力があるように見て取れる。

 しかし、だとしても怪我をしないとは限らないから。マリアは無意識の内に両手を組んで、心の中で祈る。


(……どうか、怪我なく。無事に模擬戦を終えてください、ロキ……)


 だが……そんなマリアの祈りも儚く。

 彼女はこの後、とんでもなくハラハラする戦いを、見せられることになるのだった──……。



 ◇◇◇◇



「──始めっ!!」



 オーロラが試合開始の掛け声をかけた瞬間──ロキは構えていた剣をゆっくりと下ろした。

 流石のこれには目の前にある相手の騎士だけではなく、周りの人々も騒ついている。

 それでもロキは剣を構え直さない。

 そんな彼の行動を……相手の騎士は嘲るように、鼻で笑うのだった。


「おい。なんのつもりだ?」

「……なんのって?」

「まさか戦う前から戦意喪失か? やっぱり、怖気付いてたのか」

「ははっ、んな訳ねぇだろ。別にお前程度の相手じゃあ、武器を構える必要もないってだけだ」

「……………は??」

「なんなら、剣を使うのも止めてやろうか? それでやっと、アンタとは実力差は等々ぐらいになると思うぜ?」

「……っ!!」


 ロキの煽りは、上手くいった。相手は目を見開いて、般若のような顔になる。

 冷静さを失えば失うほど、粗雑さが目立つ。綻びが出る。それこそが、ロキの狙い。


「先手、譲ってやるよ。どうぞお好きに」


 最後の駄目押しとばかりに、更に煽った。

 そんな挑発に容易く乗った相手は、勢いよく飛びかかってくる。

 ロキはそれをさらりと避けて、反撃を……しない。

 その代わりと言わんばかりに、煽るようにケラケラと騎士を嘲笑った。


「ほら、頑張れ。頑張れ。そんなんじゃ一撃も入れられないぞ〜」

「っ!」


 相手の騎士の攻撃を避けて、避けて、避ける。攻撃の手は一切出さない。

 相手が剣に炎を纏っても慌てることなく。余裕で避け続けてやる。

 それどころか今度はこちらが馬鹿にするように笑って。赤子を相手にするような言葉で煽ってやる。


「あんよがじょーず、あんよがじょーず」

「っ……! お前ぇぇぇぇ!!」

「ちょっ、まさかっ……! 待──」


 審判を務めているオーロラの焦ったような声が響いたが、もうその時には遅かった。


 ──豪ッッ……!!


 容赦のない火柱が、ロキのことを包み込む。


「わ、わぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

「人が!! 人が炎にっっ!!」


 その光景に、観客席から悲鳴が響いた。

 それはそうだろう。見学をしているのは、物騒な事に慣れていない箱入り貴族ばかりだ。ゆえに、目の前の恐ろしい光景に彼らはただ悲鳴をあげていた。

 そして、流石にやり過ぎたと思ったのか……相手の騎士も冷や汗を描いていた。あんなに散々避けられていたから、これもまた避けられると思っていたところもある。

 けれど、そんな予想に反してロキは炎に包まれた。この魔法は、魔法を発動した者の意思に反して、一定期間消えないため、騎士本人にもどうすることができない。

 慌てたオーロラが、周りの騎士達に命令をする。


「水属性を得意とする騎士! 手を貸せ! 火を消すぞ!」

「は、は──」

『おっと。余計なことはしないでくださいよ』


 複数の騎士達が水の魔法を放とうとした瞬間──地面が揺れた。誰も彼もが立っていられないほどに激しい地震だ。

 それは、ロキが発動させた魔法──《大地振》。フィールドを激しく揺らすことで、相手の体勢を崩したり、地面に敷かれた設置型地雷などを無効化する効果などがある魔法であった。

 《大地振》の効果によって、騎士はその場に片膝をつかざるを得ない。何が起きたのだと辺りを見渡そうとして──……。


「ほら、油断大敵ってな」

「…………」


 次の瞬間には、一切、動くことが叶わなくなっていた。

 その声が聞こえたのは、騎士の背後。首筋に添えられた剣。収まっていく地震。

 驚く騎士に、いつの間にか背後に回っていた──《潜地》いう地中を移動する魔法を使ったのだ──ロキが……クスクス嘲るように笑いながら、馬鹿にするように囁く。


「そうやって短慮だから、簡単に背後を取られるんだよ。なんだったっけ? 俺ら程度の実力でも護衛任務ができるなんて楽な仕事だ……だったか? こんな俺に負けるお前がやってる仕事は、更に楽で簡単なお遊び騎士でもできるような仕事なんだなぁ? ……俺を倒せるぐらいの実力つけてから、寝言は言えよ。騎士モドキ君?」

「ひっ……!?」


 その言葉同時に、一瞬だけ解放された、ロキの本気の殺気。

 それは騎士の首を掻き切る姿を皆に幻視させるほどの濃密さで。騎士の首から血が吹き出すという幻に、見学者達からはまたもや悲鳴をあがる。

 同時に、白目を剥いて気絶する騎士。


「セルリーツッ!!」

「幻ですよ、ま・ぼ・ろ・し」


 やり過ぎを叱責するオーロラからの声に、ロキは口笛を吐きながら剣をくるりっと回転させて鞘に納めた。

 人々は倒れた騎士が血塗れになっていないことに、困惑していた。確かに、その首が掻き切られる瞬間を、見たはずなのにと。目を瞬かせている。


「副団長、判別を」

「……はぁ。勝負あり。勝者は第十大隊第十五部隊ロキ・セルリーツ」

「ども」

「此度の模擬戦、三勝一敗で第十大隊第十五部隊の勝利とする」


 ロキは笑う。

 こんなにも容易く、大勢の前で負けた奴らは、さぞ恥晒しだろうし、屈辱的であろうと。

 ぶっちゃけ、可愛い甥っ子を馬鹿にしたことはまだまだ許し難いが。あんまりやり過ぎると、《魔王の卵》であるホープやモドキである自分の悪評の方が強くなってしまうので、この程度に収めるしかない。

 それに……だ。


(王子に見せたかったモンも見せられたし、良しとするか)


 この模擬戦の最後でワザと殺気を全開にしたのは、騎士が人の命を奪う剣を持つ集団だというのを……人殺しと変わらないロキから剣を教わりたいと言っている王子に見せつけて。本当に教わる覚悟があるのかと、それを問うためのものでもあった。

 だから、ホープを馬鹿にした騎士にお灸を吸わせて。更には王子に見せたかったモノを見せれたのだから、この模擬戦はだいたい目的を達成できたと言えるだろう。


「お疲れ様でしたわ」

「お疲れ様です」

「おー。お疲れさん」


 タニア達の元に戻り、ロキは軽く挨拶をする。

 今日の模擬戦で仲間達も自分達が強くなってきたというのを実感しただろうし、その反面で大きな問題が浮き彫りになった部分もある。


(はぁ〜……これからも色々と大変そうだなぁ……)



 そんな心の呟きはある意味、微妙にフラグになっていたのかもしれないが……当然、この時のロキは知るはずもないのであった。





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