46.言うことを聞かない部下
「で?作戦はあるのかよ?」
いつのまにか近くに来ていたメルが、あたしの頭にずっしりと体重をかける。
「負のオーラが強すぎて、天界育ちの俺にはひどく臭うぜ」
「野性味溢れる見た目なのにねぇ」
緊迫した雰囲気に合わない、のんびりとしたアコードのツッコミ。
「シャーロットの弾を確実にアイツの胸に当てるには、無力化させるしかない」
「四肢を切り落としますか?」
ルウの提案にアコードはあっけらかんと答える。
「…危ねぇやつだな、こいつ。やっぱり魔族だな」
あたしにこっそりささやくメル。
確かに。
「いけそうか?」
「手伝って下さい、よ!」
言うや否や、アコードは空に舞い上がり、素早く剣を振るう。
その度に剣から光が生まれ、グランツに迫っていく。
続いてルウが両手で握り拳を作ると、雷が生まれグランツを直撃していった!
あまりの轟音と激しい光に思わず目を閉じてしまう。
…だけど、グランツは涼しい顔でそこに立っていた。
漆黒の光に包まれながら。
死の扉に手をかけてるからだろうか…彼は人や周りを引きずり込みそうな空気を放っている。
「こんなものか?お前たちは。オレはお前たちじゃなくて、天使と遊びたいんだよ」
グランツはそう言うと、あたしの方へと向かってくる。
メルは障壁を展開し、あたしは銃を構える。
その間にアコードが飛び込んでくる。
「邪魔だ」
グランツが光を放ち、かわすことが出来なかった彼は地面に激突する。
そしてアコードの攻撃で一瞬隙が出来たグランツに、すかさずルウが雷撃を放つ。
「チッ」
ギリギリでかわした奴に、あたしも銃を撃ち込む。
グランツはお返しとばかりにあたしにも光を放つ。
「あっ!」
障壁にあっという間にヒビが入った…!
と思ったとたん、ルウが間に入り込み、光を相殺させた。
「はぁっ…」
息苦しさに思わず大きく息を吐く。
「大丈夫だ。落ち着け」
そんなあたしの様子にルウがそっと声をかけてくれる。
だけど、このままじゃ、防戦一方だ。
何か…何か良い方法…。
「…いつの間にか、小僧がいなくなったな」
え?
グランツの言う通り、地面に叩きつけられたアコードの姿がない。
「恐れをなした部下に逃げられたか。無様だな」
ルウは黙ってグランツを見上げている。
そんなわけない。
「あいつは恐れをなすタイプじゃないよな」
メルが言うけど、あたしも同意。
「もうこの範囲にあの小僧の魔力は感じないぞ?」
グランツはあたしの心を読んだように笑う。
「お前も感じてるんだろ、ルウナリィ。あの小僧が逃げていったことを。魔王も地に堕ちたな」
近くにアコードがいない?
あたしにはグランツの禍々しい気が邪魔して、アコードの魔力を感じ取れない。
「そうだな。あいつは元々あまりオレの言うことを聞くタイプじゃないんだ」
ルウの手の平から生まれた青い光が、まっすぐグランツへと伸びた。
グランツはそれをわざと寸前で避ける。
「それは残念だな」
「残念だよ」
カッ!!
突然、グランツの背後で光の塊が炸裂した。
不意打ちでまともにくらった彼は数メートル落下して、なんとか宙で踏みとどまった。
「イェーイ、大成功!」
そう言いながら、ピースサインなのはアコード。
「アタシたちが加勢するからねっ!」
仁王立ちしてるのはクロエ。
「本当は面倒くさいんだけどさぁ…シャロたん、元気ぃ?」
手を振ってくるのはセス。
「お二人を戦闘に参加させたくない気持ちはわかってたんですけど、手っ取り早く皆んなでぶっ飛ばせばいいかな、と思いまして、連れてきました」
アコードは敬礼をしながら主人に報告する。
「な?言うこと聞かないんだよ」
ルウはあたしに苦笑いをした。




