47.戦闘開始
「ちょ、ちょっと待て」
あたしの背後でメルがストップをかける。
「こんな短時間で城へ戻って、あいつらを連れてきたってのか?」
確かに、早すぎる…。
「あれはアコードの一族に伝わる、空間結合能力だ」
「空間けつご…?」
「場所と場所を繋ぎ、一気に移動できる」
頭にハテナマークが浮かんだあたしに丁寧に説明してくれるルウ。
「ただし、多量の魔力を使い、その回復に時間がかかる。これからの戦闘には向かないだろうな」
「ですねぇ。防御はできますが、致命的な一撃とかは無理です」
アコードは朗らかに宣言して、ルウの隣に降り立つ。
「でも、その代わりセス様とクロエ様を連れてきたんで。この戦いはすぐ終わるでしょう」
「…オレとしては馬鹿な今の王族をまとめて塵にできるから、嬉しい話だがな」
グランツは攻撃をまともにくらってしまった怒りを抑え、口を開く。
「一箇所にいてもらえた方が助かる」
「聞くところによるとさぁ」
そんなグランツの重々しいトーンとそぐわない、セスののんびりした声。
「お前、シャロたん狙いなんだって?まだオレが手をつけてないんだからダメだよ」
「早いもの勝ちだろ?」
グランツは言うや否や、拳に光を溜め、セスのお腹にぶち込んだ!
「セス!」
光は彼の至近距離で爆発を起こす!
光が消えた上空にはセスの姿はなく、グランツとクロエだけが浮かんでいた…。
うそ、セスは…!?
「はい、残ねーん」
またしてもグランツの背後で爆発が起こる。
交わし損ねた彼が睨みつけた場所にはセスの姿…!
ん?どういうこと??
「さっきまで喋って動いていたのは、アタシのお人形さん。本物じゃなかったのよ」
混乱するあたしにクロエは得意げに胸をそらせる。
「…くだらん、人形遊びか」
「それに引っかかったのは誰よ」
あたしと一緒にグランツと対峙した時、クロエは力の差に震えていた。
でも今は堂々としている。
強い兄たちと一緒にいるからなのか…もしくは能力をあげてきたのか。
グランツが腕を振り、また例の魔物を召喚する。
「出てきなさい!」
クロエの声に合わせて、背負っていたリュックから小さなぬいぐるみが沢山飛び出してきた。
そしてあっという間に3メートルはあろうかというサイズに変化した。
「魔物はアタシが引き受けるから!お兄ちゃんとルウくんは早くアイツを仕留めて!」
たちまち魔物とどう猛な姿になったぬいぐるみの乱戦が始まる。
「アコード、メル。クロエを援護してやってくれ」
「了解しました」
アコードはすぐさまクロエの元へ駆けていく。
「シャロはどうする気だ」
「オレたちがグランツを弱体化させ、留めを撃ち込んでもらう。大丈夫だ。必ず守る」
メルはその言葉を聞いて頷くと、あたしを見た。
「気をつけろ。…でもお前なら出来る」
「ありがと」
メルもすぐさまアコードの後を追う。
「兄弟ともに戦うなんて、熱い展開になってきたねぇ」
セスがルウの隣に降り立った。
「セス、シャーロットに怪我させるな」
「誰にいってんの?女の子に怪我させるなんて、オレのポリシーに反するんだよ」
「なるほど。…じゃあ、とっとと済ますか」
「そうしよう。オレ、デートの約束入れちゃったから」
あたしたち3人は上空のグランツを見上げた。




