39.女王陛下
あたしたちはその通路を真っ直ぐに進んでいく。
仄かな明かりが灯っていて、なんの飾り気もない道だ。
「止まれ」
鋭い声がしたと思った瞬間、2つの影が目の前に現れた。
互いの長い槍をクロスさせ、あたしたちの行く先を塞ぐ。
背丈が小さい、まだ12歳くらいの少年2人組だった。
鈍い銀色の鎧を身にまとっている。
「子供…?」
思わず呟くメルにシェルダンは首を振る。
「立派に成人してますよぅ。ゾーアンは体の小さな種族なのです。そして長寿な為、成長がとてもゆっくり。彼らは20代半ばといったところでしょう」
そうなんだ!
顔立ちもあどけなく見えるのに。
「私はルウナリィ・ヴォトルザーク。女王陛下にお会いしたい」
ルウは優雅な仕草でお辞儀をする。
2人は槍を引き、鋭い視線であたしたち一同を眺めた。
「聞いている。ここから先は我々が案内する」
「ついて来たまえ。勝手な真似はするな」
2人は声変わりもしていない声で、厳しくそう言い放つ。
魔王であるルウにこんな話し方ができるのは、ゾーアンだけなのだろう。
「案内、感謝する」
ルウは気にも止めないで静かに答えた。
あたしたちはそのまま兵士の後についていく。
奥に進めば進むほど、通路の壁や天井は豪華になっていった。
ただの土壁から、木の壁に。
最終的は彫刻がされたり、色とりどりの宝石が埋め込まれた壁になった。
「ちょっと天界を思い出すね」
「魔界の地下で思い出せるとはな」
あたしがメルにささやくと、彼は顔をしかめた。
やがて1つのドアの前に立つと、兵士は三回、強めにノックをする。
「女王陛下!ヤツらをお連れしました!」
…言い方。
「入れ」
聞こえて来た声も…幼い女の子の声。
兵士が扉を開け、あたしたちに進むよう促す。
室内は広く、あちこちで宝石が輝きを放っている。
「…よく来たな」
椅子に腰かけたまま、水色のドレスを着た少女がニコリともせずに言った。
腰くらいまであるプラチナブランドの髪に白い肌。
見た目は9〜10歳くらいに見える。
「お招きありがとうございます、女王陛下」
そう言いながらもルウも微笑みは見せない。
「地下帝国の女王・ニコラ様です」
シェルダンがあたしとメルに教えてくれる。
「魔王にお前が就任した時に文をやりとりして以来だな、ルウナリィ?」
「はい」
ニコラはルウの後ろに控えてるあたしたちを見て、眉間に皺を寄せる。
「なんだかおかしなメンバーで来たのだな。天使までいる」
「彼女は少し変わり者で、魔界でキューピッドの仕事をしてるのです」
しれっとルウが言う。
うう、あってるけどさぁ…。
だけど、その紹介が良かったらしく、ニコラは笑顔を見せた。
「それは変わってるな!変わり者は私は好きだぞ。天使、名前はなんという」
「は、はい!シャーロットです!」
あたしは一歩前にでて挨拶をする。
「部屋などに飾ってある宝石は我が領土で採れたものだ。天界とも取引をしてるのだぞ」
「どうりで!天界を思い出したんです」
ニコラは微笑みながら頷くと、ルウの方にチラリと視線を送る。
表情は再び冷たいものに戻っている。
「ババ様に会いたいのだろう?」
「えぇ」
「…地上の揉め事を地下に持ち込まれるのは迷惑なのだがな」
「地下に持ち込まない為の話し合いをしたいのです。このままだと地下帝国だけ無関係という訳には行かなくなる」
「そうだろうか?」
「確実にそうですよ、女王陛下」
どことなく挑発的な色を声に滲ませるルウ。
ニコラは睨みつけるように彼と視線を合わせる。
「そして時間もありません。賢明な貴女ならおわかりでしょう?」
ルウはさらに畳み掛ける。
ニコラはぎゅっと唇を噛みしめると、勢いよく椅子から立ち上がった。
「ついて来い。とりあえず、会わせるだけ会わせてやる。後のことは知らん」
そう早口でまくし立てて。




