第一話 目覚め
「あの...あなたは誰ですか?」
私は青年に訊いた。名前を最初に訊くのは人として基本だ。
「えっと...俺はノヴァ・スコール。これでも魔法使いだよ。君は?」
「私はプラム・メメント。この屋敷の主よ。あなたは門の前で倒れていたのよ。あなた...随分とやつれているけど何があったの?」
私は椅子に座ったまま、ノヴァに質問した。彼は苦笑いで教えてくれた。
「いやぁ、俺は旅をしていてね。基本宿暮らしなんだけど、お金が底を尽きちゃって行き倒れてたんだよ。」
「あなた、旅をしているのね。それにしてもあなた。お金がなくなったって、なんで気を付けていなかったのよ。」
「それは...まぁ、旅に浮かれていて全く考えていなかったんだ...」
ノヴァは全く反省していなかった。私はよくここまで生き延びてこられたなと思いながら、ふと、ある疑問が生まれた。
「あなた、今後どうするつもりなの?また他の屋敷の前で倒れるつもり?あなたがよければ...この屋敷に住まない?ここなら衣食住は約束されているし、図書館もあるの。それに、街にも近いから暮らしやすいのよ。それに...私も話し相手が欲しいの。」
私は言ってから内容の重大さに気づき、ノヴァから目を逸らした。初対面の人にいきなり同居暮らしを持ち掛けられるのだ。いくら何でも驚かれて断られるだろう。だが、現実は違った。
「え!?いいのか!?ありがとう、これでやっと安心して寝られる...!」
...このノヴァという男、恐らく常識が通用しないタイプの人間だった。普通の人間なら断るはずの提案にこの男はほぼ即答で乗ったのだ。私は予想外の展開に、内心頭を抱えていた。
「初対面の人からの勧誘を即答できるなんてあなた...随分変わった人なのね。まぁ、いいわ。あなたの部屋は用意しておくから今日はこのまま安静にすること。食事は後で持ってこさせるから待ってて。」
私は魔術具のベルを鳴らし、厨房にいるであろう料理担当のメイドに食事の準備を促した。
「それにしてもあなた、何で旅をしているの?何か探しているのなら私も手伝うけれど。」
「俺は人探しをしているんだけど、まぁ、今度詳しく話すよ。」
ノヴァは明らかにはぐらかした。私は彼の視線が一瞬逸れたのを見逃さなかった。こういう時の人間は大抵何か隠している。だが私は特に指摘しなかった。今はまだ、その時ではない。そう頭の中で何かが呼びかけてきたのだ。彼が再び眠りにつくのを見ながら私の心は少し波立っていた。
青年が目覚めましたね。皆さんお気づきかも知れないのですが、このノヴァという男、危機感がないですよね。僕も書きながら「この男は今までよく生きてこれたな」と思いました。今回のお話では新たにメイドの存在が示唆されました。果たしてこのメイドは常識的な人なのか、はたまた個性が強すぎるのか。第二話、乞うご期待です。




