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大好きな幼馴染を狙うライバルが現れたので、諦めようと思ったら幼馴染がヤンデレ化して激重感情を向けてきた。  作者: エース皇命


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3/10

第3話 今度はこっちが素っ気ない態度を取った

「それでどうなんだよ、紫音(しおん)。告白はもう終わったのか?」


「いや、もう諦めた」


「は?」「え?」


 あっさりとした俺の返事に、紅輝(こうき)茶夏丸(ちゃかまる)が目を丸くする。


 昨日の昼休みは二人に背中を押してもらった。

 俺にとっては、もう緑子(みどりこ)を諦めるという意味で新しい一歩を踏み出せたわけだ。


 朝のホームルーム前。


 紅輝たちが緑子の件に関して聞いてきた。

 俺が緑子に告白したのかどうかという問題は、今後彼女に告白するであろう彼らにとっては最重要問題だ。


 だから気になって聞いてきたんだろうが、まさかこんなに驚かれるとは。


「紅輝はサッカー部で大活躍の人気者だし、茶夏丸は男女を問わずモテる。そんな強敵二人に、俺が勝てるわけがないだろ」


「おいおい、何言ってんだお前」


「照れなくていいって。事実なんだから」


「いや、照れるとかじゃなくて、オレらより紫音の方がずっとすごいだろ」


 紅輝は半分キレてるんじゃないかってくらいの勢いで、顔を近づけてくる。


 それを隣で見ている茶夏丸はというと、俺を責めるようにうんうんと頷いていた。

 紅輝の意見に賛成していることのアピールなのか、これは。


 それにしても、いつもマイルドでフォローが上手い茶夏丸に責められるというのは、かなり刺さるものがある。


 でも俺は悪くないぞ。


 悪いのは優秀な紅輝とモテる茶夏丸だ。この二人がライバルになるとか言い出したから、こうなったわけだ。


「紫音は謙虚すぎるんじゃないかな。学力も運動神経も、人気も信頼度も――僕たちじゃ紫音の足元にも及ばないよ」


 謙虚なのはどっちだ。


 茶夏丸は息子を見守るような温かい笑顔で言ってくる。

 こんな顔で見つめられたら、文句も言えないじゃないか。やっぱり茶夏丸はズルい。


「茶夏丸の言う通りだっての。お前な、実は女子からめっちゃモテてるんだぜ」


「はぁ? そんなわけないだろ」


「いやいや、逆になんで紫音がモテないんだよ。お前みたいな超人好青年がモテないわけがないだろ」


 こいつら、どれだけ俺のこと褒めるんだ。


 尊敬(リスペクト)してくれているのは嬉しいが、ここまでとは思わなかった。茶夏丸も紅輝の言葉に何度も頷いている。


 これで俺に自信を与えて、そのまま告白させようっていう作戦だろうか。だとすると、なんで敵に塩を送るような真似をするんだろう。


 前から緑子のことを好きだった特権みたいな感じか。


 紅輝たちが半分憤慨していると、生徒だけだった教室に担任の兎川(うかわ)百桃(もも)が入ってきた。


「はーい、みんな席に着いて~」


 もうホームルームが始まる。

 紅輝たちは納得がいかない表情のまま、少し離れた自分の席に戻っていった。


 全員が着席したことを確認すると、兎川先生が今日の連絡事項を伝えていく。


 兎川先生はまだ25歳という若さで2年2組の担任をしている英語教師だ。


 クリっとした丸い瞳。雪のように白い肌。

 どちらかと言えば可愛らしい顔立ちだが、背中にかかる茶色(ブラウン)のストレートヘアが大人っぽさを演出している。


 生徒からはモモちゃん先生と呼ばれるほど親しまれている人気教師。

 だが、俺は彼女の裏の顔(・・・)を知っている。


「5月は気が抜ける時期だから、来月の中間考査に向けて徐々にエンジンかけていこーね」


 兎川先生がウィンクすると、一部の男子生徒が歓声を上げた。


 彼らは兎川先生にメロメロらしい。俺も最初は可愛い人だなと思ってたが、今はただの性欲(・・)モンスターにしか見えない。




 ホームルームが終わってから1時限目の授業までは5分くらいの空き時間がある。


 俺はいつもこのタイミングでトイレに行っていた。

 もうルーティーンのようになっているから、この時間になったら尿意が襲ってくるわけだ。


 このルーティーンが始まった原因は、犬飼(いぬかい)緑子(みどりこ)


 彼女もルーティーンのような感じでこの時間にトイレに行く。

 男子も女子も連れションする生徒が多いが、緑子は絶対に連れションなんてしない。


 なぜなら彼女は、孤高の女神だから。


 ヤバいヤバい。

 もう諦めると決めたはずなのに、気づけば緑子を称賛している。


 ――よし、一旦緑子のことは忘れよう。


 気を取り直し、トイレへ向かう。


 緑子は3組。

 いつもはトイレ帰りの緑子を眺めるために教室の中を確認しながら廊下を歩くが、今日はノールックで足を動かす。


 考えてみたら、今までの俺って変態だったのかもしれない。

 トイレから帰ってくる好きな人を眺めるために自分の尿意まで合わせにいくなんて。


 冷静になると恥ずかしくなるとは、まさにこのこと。


「……あ」


 教室に戻る途中の緑子とすれ違う。


 緑子は軽く右手を上げて挨拶みたいなことをしてくれたが、なんとなく気まずい俺は素っ気ない態度を取ってしまう。


 それはほぼ無視に近かった。


 いろいろ考えていたら、反応するタイミングを逃してしまったのだ。許してほしい。


 冷たい印象を与えるのは不本意だったので、ほんのちょっとだけ頭を下げて会釈する。


 幼馴染にするような挨拶じゃないのはわかってる。でもしかたないだろ。パニクってたんだから。

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