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座談

「知能があるって、あんた達が!?」


 三人は玉座の前で円を描くようにして床へと腰掛けていた。その中で、ひときわ目立つ大声を上げたのはベルゼバブだった。目は見開いており、開いた口がふさがらないようだった。


「そうそう。俺らさ、優先順位がプログラム側なんだよ。だからさ、この玉座の間にプレイヤーが入ってくると、決められたセリフしか喋れなくなる仕様でさー、動きも制限あるし、嫌になっちゃうよねー」


 そう言って、コロウスは遠くを見つめた。


「いや、やっぱり信じられないな……でも今普通に会話してるしな……」


 それは、ベルゼバブにとって不思議な感覚だった。今まで当たり前のように幾度となく倒して来たボス達とこうして話していること、それが自分の意思を持っていること。思わず二人を何度も見返し、戸惑ったように首を傾ける。


「まぁまぁ、そう思われて仕方ないよなー。でもこれは事実なんだよな」


 ベルゼバブのそれとは正反対、コロウスは今の状況がさも当たり前かのように淡々と語る。


「あぁ、やりにくいなぁ、せっかくバズるチャンスが来たと思ったのによ。戦いにくいじゃん」


 よほど困惑しているのか、髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き毟るベルゼバブ。その言葉に、コロウスがすかさず反応した。


「えっ? バズる? 何それ? おいしぃ」


「あー! コロウス様、それ以上言うと威厳がなくなりますぞ」


 普段は温厚なバルバトスが、珍しく声を荒げた為、コロウスは残念そうに口を閉じた。

(えっ? 駄目なの? 何それ美味しいのって古すぎて今どき面白くないの?)


「あぁ、あんた等にはそういう現実世界の情報は入って来ないんだな」


 その後、ベルゼバブはバズるの意味や、自分がカメラの向こうの人間たちに戦いを届けるゲーム配信者であることを熱弁した。


「なるほど、良くわかった。……ってかこれ今も配信されてるの?」


「いや、これ今は検証用の録画だから、まだ配信はしてない……それより気になったんだけどよ」


 ベルゼバブは前のめりになり、指を重ね合わせて膝の間においた。


「さっき、あんた達は、プレイヤーが来ると決まったことしか出来なくなるって言ったよな」


「そうだが」


 重なった指をほどき、ベルゼバブは顎に手を当て――少し考えてから口を開いた。


「……じゃあ、何で今は喋れているんだ」


「……」


「……」


「……」


 三人ともが顔を見合わせ、意表を突かれたように目を丸める。誰も何も発しない。ただただ静かさだけが満ちていた。


「うぉおおお! 本当だー!!」


「ベルゼバブ様! あなたは天才でございます」


 雷鳴のように鳴り響いた音、それはコロウスとバルバトスの喚き声であった。


「えっ? えっ? ほんとじゃん! 自由じゃん」


 コロウスは声を弾ませるだけでは飽き足らず、両手を上に挙げる。そして、その場で左右に奇妙なステップを踏む。


「本当でございます。私も絨毯の真ん中で、構えてないでございます。プレイヤーがいるというのに――」


 バルバトスは魔女の箒よろしく、剣を股の間に挟み、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。


(えー、俺ってこんなやつらと戦っていたの……)


 何故か、ベルゼバブは恥ずかしくなった。


「おい! バルバトス!」


 直後、部屋中にコロウスの鋭い怒声が飛んだ。


「はっ! 申し訳ございません。嬉しくて調子に乗ってしまいました」


「違う!」


「はい?」


「箒にするなら、もっと角度は水平にするんだ!」


「おぉ! お言葉ありがとうございます!」

 

 バルバトスは言われた通りに、角度を調整し飛び跳ねる。


(いや、そこじゃないのよ)


 ベルゼバブは深々と頭を抱えた。

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