ベルゼバブ再び
扉から現れたのは、またしてもベルゼバブだった。先程と違うのはパーティが七人に減っているだけだ。
「よく来たな、勇者よ」
(このガチ勢め、また来たのかよ)
「(バルちゃん、よろしくな)」
「(はい、分かっております)」
アイコンタクトを交わし、赤い絨毯の真ん中まで悠然と歩みを進めたバルバトスは、お決まりのモーションで大剣を構えた。
「ここからは通さん! 魔王と戦いたくばこの小鬼、バルバトス・アレクサンドを倒してからにしろ」
(……お願いだから、優しく倒して下さい)
「よし、皆行くぞ」
その掛け声と共に、ベルゼバブを含んだ合計八人のキャラクターが一斉にバルバトスへと襲いかかる。
「向かって来るか。よいだろう。勇ましき戦士たちよ。お前たちの力を見せてみよ!」
(やめて、来ないで下さい)
先陣を切ったのはベルゼバブだった。
手にした聖剣を振り上げると、どこからともなく雷が宿った。迸る稲妻は煌びやかに輝く。そのあまりにも美しいエフェクトは、まるで宝石のようであった。
「喰らえ、轟雷神牙宝滅剣!」
一気に間合いを詰めたベルゼバブ。
バルバトスに向かって聖剣を振り下ろす。
「ぐわぁぁああ!」
『Critical 48993』
『Critical 69819』
『Critical 79592』
「流石は、勇者だ。こんな形で出会いたくなかった……」
(もっと優しい技にして欲しかったです)
「よし! HPストッパーまでは削った! 後は皆の番だ!」
ベルゼバブが号令をかける。
後ろにいた魔法使いの精霊人たち五人が杖を構え、呪文を唱える。
「精霊の導きによって、全てを切り裂かん風となれ! ストームカッター!」
五つの風の刃が出現し――巨大な竜巻と化したそれは、バルバトスを無慈悲に切り刻む。彼の頭上は、無数のダメージ表示で埋め尽くされた。
「まだだ、魔王様の元へは行かせんぞ」
(大丈夫です。早く行ってください。後、魔法使い多すぎません)
次に出て来たのは鬼人であった。身の丈ほどもある巨大な斧を軽々と肩に乗せ、バルバトスに接近――そして、豪快に横一閃に引き裂いた。
『Critical 863』
白く輝くエフェクトがバルバトスを包む。
「くっ! ここまでか」
(あれ? 痛くない。あなたは大好きです)
その言葉を最後に、バルバトスは透明になるように消えていった。
「よっしゃー!」
パーティメンバー達の叫び声と同時、各メンバーの頭上には『LEVEL UP』の表示が出た。その表示は、何度も何度も繰り返された。
「ふっふっふ、よくぞバルバトスを倒した。褒美として、この魔王コロウス・ゾ・コラが相手をしてやろうぞ」
(頼む、恥ずかしいからやめてくれ。コロウス・ゾ・コラって本名で言わせないで)
「さっきと同じパターンで行くぞ! 【闇の剣・終式】がないから簡単にいけるはずだ」
再び、ベルゼバブが先陣を切る。剣に稲妻を纏わせ、先ほどバルバトスに放った大技を繰り出した。
「轟雷神牙宝滅剣!」
コロウスは向かって来るベルゼバブを見ながら奥歯を噛み締めた。このまま馬鹿にされたまま負けてたまるかと。
(えぇい、一か八かだ。【闇の剣・破斬】を使ってやる)
「喰らうがよい。闇のはじまり、そして闇の入口」
コロウスは玉座に座ったまま、右手を天に掲げた。闇が右手に――全てを呑み込むように収束する。そして、集まった闇は実体のない巨大な黒い剣へ変貌を遂げる。
「破斬!」
その刃が振り下ろされた。
『1』
(やっぱり、カスダメージじゃねえか)
「魔王よ、その技はずっとバグってんだよ」
ベルゼバブはそのままコロウスへと向かい続ける。
――そのはずだった。
『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』『1』
ベルゼバブのHPバーが、凄まじい勢いで減少していく。
(えっ?)
その後も度重なるように、ベルゼバブの頭上には『1』の表示が連続して表示される。
「嘘だろ!?」
ベルゼバブの足が止まった。
技を放ったコロウスだけではなく、ベルゼバブの味方すらも唖然と動けない。
そして――。
『DEATH』
ベルゼバブは倒れ込んだ。
「勝っちゃった」
ここに最強魔王誕生である。




