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13/16

探索

「喰らえ!」


 赤い床が続く狭い通路。自身のその掛け声がコロウスを掻き立てる。

 目の前には敵。人間で表すのであれば、少年ぐらいの身長だろう。赤い傘に紫の斑点模様を浮かべた茸の怪物、手こそないが、四本の足を器用に使い、縦横無尽に床や壁を動き回る。牙の生えた巨大な口は獲物を飲み込む為にあるのだろう。


 茸の怪物はコロウスの背後に回り、噛みつこうとする。しかし、その攻撃は届かなかった。先にコロウスの闇の剣の刃が茸を二つに割いたのだ。

 赤い稲妻のようなエフェクトを発しながら茸の怪物は消滅した。それを見ながらコロウスが呟く。


「うーん、レベルが上がらなくなってきたな」


 ステイを倒してから順調に紅蓮の館を探索していた一行。ここに来る道中で幾度となく戦闘を行なって来た。その度にレベルが上がっていたのだが、その流れも緩やかになりつつあった。

 コロウスは空中にステータス画面を展開し、現在の数値を確認する。


――――――――――――――――――――

NAME:コロウス・ゾ・コラ

LEVEL:131

HP:30000:30000:50000

ATK:609

DEF:935

INT:56

AGI:375


JOB:魔王

WEP:闇の剣

GEAR:魔王の鎧

EX:NON

――――――――――――――――――――


「そうだね。雑魚モンスターだと、経験値はあんまり貰えないからね」


 隣を歩くササキが、先ほどまで怪物がいた空間を指差しながら同意する。


「ちなみにササキのレベルはどれくらいなんだ」


「あっ! そうだね。私のステータスも見せておくわね」


 ササキが何かを思い出したように空間に指を滑らせると、コロウスの画面の隣に、もう一つのステータスウィンドウが展開された。


――――――――――――――――――――

NAME:ササキ

LEVEL:531

HP:85020

ATK:2780

DEF:521

INT:353

AGI:121

JOB:鬼人オーガ

WEP:呪鬼(ジュキ)

GEAR:力の鎧(チカラノヨロイ)

EX:破壊の腕輪+47

EX:剛力の腕輪+67

――――――――――――――――――――


「ご、ごひゃく、さんじゅう、いち……」


 展開されたササキのステータスを凝視したまま、コロウスの口から魂の抜けたような声が漏れる。

 あの破壊力の技から、ササキのレベルはもっと高いと思っていた。だが、ベルゼバブに比べたらまだ半分程のレベル。それであの火力。そう考えるコロウスは、思わず身震いを起こしてしまった。


「そのレベルであの火力ってエグくない」


「そうね、鬼人オーガのスキル補正もあるから、あれぐらいの火力は出るのよ」


「スキルかぁ……」


 ボソッと小言を吐くと、今度はスキル画面の表示を行った。


――――――――――――――――――――

SKILL

魔王の加護(マオウノカゴ)常時パッシブ

闇の剣・破斬(ヤミノケン・ハザン)(使用不可)

――――――――――――――――――――


「それも、第一フェーズだけのぽいな」


 コロウスのスキル画面を覗き込むベルゼバブ。


「第二フェーズだと、常時パッシブで霧に消えるスキルとかあるはずだしな」


「せめて【破斬】が使えればなぁ」


 あからさまに肩を落とし俯くコロウス。

 せっかく得ることが出来た最強スキル。それは玉座限定という縛りのせいで使えない。常時パッシブである魔王の加護も、ありとあらゆる状態異常だけでなく、回復薬や強化といったアイテムの恩恵すら受けられない。

 そんな何とも言い難い内容に嘆くことしか出来なかった。


「なぁ、……ラスボスってこんなに弱いものなのか」


 ベルゼバブに問いかけるコロウス。

 いつものベルゼバブのことだ。弱いとか、まぁ初期ボスだからな、と言った返答が来るものだとコロウスは思っていた。

 しかし、ベルゼバブはその場に立ち止まり、顎に手をあてて何か考えている素振りをみせる。


「確かに変なんだよなぁ」


「えっ?」


 想定していた答えと違った為、思わずコロウスは聞き返す。


「確かに、ラスボスとはいえ、リリース当初のボスだから弱いは弱い」


「お、おぅ」

(やめて、ちょっとはオブラートに包んで)


「だけど、コロウスさんとバルバトスはずっと二人なんだよな」


「はっ? 意味が分からん」


「いや、人気のあるボスってさ、追加アプデとか、レイドイベントとかで、強化バージョンが出てくるんだよ。普通はな」


「ほぅほぅ」


「コロウスさんとバルバトスさん、エデファンの中でも人気高い……俺はそんなだけど」


「んっ?」

(えっ? いる? 今の一言いる? 傷付くんですけどー)


「でも、追加アプデもなく、強化バージョンも存在しない。ずっと二人のままなんだよな。単純に人気があるから、どっか記念のタイミングで実装検討しているのかなぁ」


「そうなのか。自分が何人もいるなんて、俺からしたら考えられないがな」


「確かに、コロウスさんさぁ――」


『2647』

「いっ、痛たたた!」


 ベルゼバブが何か言おうとした時だった。あの茸の怪物がコロウスの尻に噛み付いたのだった。その牙は想像以上に鋭く、コロウスの鎧を貫通し、肉体にダメージを与えた。


「この野郎!」


 コロウスは後ろに手を回すように闇の剣を振った。風を切る音がし、続いてまるで食材でも切っているような音が鳴る。

 茸の怪物の身体が胴体から二つに切り裂かれ――光って消滅した。


「リスポーンしちゃったな……ササキ達も先に行っちゃったし、また沸く前に俺達も急ごう」


「……あ、あぁ、そうだな」

(いつの間に二人は移動したんだ。ってかおいて行くなよ)


 一行はさらに紅蓮の館の奥へと突き進む。

 とりわけ、ベルゼバブは自身の中にある懸念を振り払うかのように走った。

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