レベルアップ
「コロちゃん? バルちゃんにも攻撃させてあげていい?」
瓦礫の山と化したエントランスを見回しながら、呆然と立ち尽くすコロウス。少しの間の後、ササキの問いに応えた。
「……何故だ?」
「エデファンはね、パーティにも経験値が入るんだけど、貢献度がないと僅かしか貰えないの。だからバルちゃんにも、攻撃させてあげて」
「なるほど」
コロウスはようやく理解し始めていた。プレイヤー側のシステムを。何故、ボス戦に低レベルプレイヤーをわざわざ連れて来るのか。何故、低ダメージの攻撃をさせるのか。それがレベルアップに必要なことは知っていた。だが、その明確な内容までは知らなかった。
故に、コロウスは悟った。
今の自分は、かつて見下していた弱いプレイヤー達と同じ立場なのだと。
(今の俺は弱い)
その事実が、妙に胸に刺さった。
だが、不思議と嫌な気分ではなかった。
まだ強くなれる。
そう思えたからだ。
「バルちゃん……」
「はい。なんでしょうコロウス様」
「……一緒に運命変えようぜ」
「はい! コロウス様」
バルバトスは剣を抜いた。腰元で剣を両手で持ち、真っ直ぐに構える。そして「ふぅ」と小さく息を吐いた。背筋を通し、姿勢を正す。彼の視線の先には、俯せに倒れ込むステイの姿。
「バルちゃん、私の攻撃はスタンの効果あるから、今のステイは少しの間動けないはずよ」
「承知しました」
バルバトスの目から、白いエフェクトが放たれる。
標的はステイのみ。彼の視界からは、それ以外の全てが排除される。――そして、ステイの心臓部が光って見えた。
「魔技【点死羽】」
深く身を屈めたバルバトスだったが、次の瞬間には折り曲げた下肢が大地を蹴り込んだ。全身がバネのように伸び、空高く飛び上がる。
「魔技【点死突】」
一定の高さまで上がったバルバトスは、剣先を地面へと向ける。
そのまま重力に従うように、否、重力に引っ張られるよりもさらに早く、ステイの心臓を目掛けて落下する。
『Critical 8568』
『Abnormality DEATH』
バルバトスの剣はステイを貫き地面へと刺さった。ステイの身体は激しい放電に包まれ、そのまま光の粒となって消滅した。
『LEVEL UP』
コロウスとバルバトスの頭上に『LEVEL UP』の文字が表示された。
「うぉぉお! バルちゃん!」
コロウスは拳を握り締めた。
「コ、コロウス様。申し訳ございません。と、トドメを刺してしまいました」
「違う! すげーよ! 久々に見たよ。その技が決まるの。やっぱバルちゃんはすげーんだよ」
元よりバルバトスは、スピードと一撃必殺を得意とする戦闘スタイルだった。
エデファン初期の【点死突】といえば、熟練プレイヤーですら回避に技術を要する脅威だった。しかし、インフレが進んだ現在では、純粋なステータス差や装備性能だけで容易に回避される。故に、この技が決まることはほとんどなかった。
「コロウス様。そんな、私には勿体ないお言葉。……あれはササキ様のご助力があってこそです」
「違うよ」
バルバトスの言葉を否定するように、ササキは小さく首を振った。
「私達鬼人の取り柄は攻撃力と耐久力だけ、攻撃なんか中々当たらないの。だからコロちゃんのアシストがなければ、きっと避けられていたわ」
その言葉を聞いたコロウスは、胸の奥の方で何かが熱くなるのを感じた。
(これがパーティなのか)
「……ふっ、仕方ない。俺はお前達に感謝してやる。だから、お前達は俺に感謝するんだな」
コロウスが放った言葉に、場にいた皆から笑顔が溢れ出す。それは、決してコロウスを馬鹿にした笑いではなかったことは確かだろう。
「コロウスさん、ステータス見てみようぜ」
「おぉ! そうだな見てみよう!」
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NAME:コロウス・ゾ・コラ
LEVEL:119
HP:30000:30000:50000
ATK:592
DEF:904
INT:45
AGI:371
JOB:魔王
WEP:闇の剣
GEAR:魔王の鎧
EX:NON
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「おぉ! ステータスが上がってるぞ」
コロウスは自分のステータスを指差し、嬉しそうに声を上げた。
「コロウス様。私も上がっております」
「どれどれ」
促されるまま、コロウスはバルバトスのステータス画面へ目を向けた。
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NAME:バルバトス・アレクサンド
LEVEL:127
HP:24000:12000
ATK:609
DEF:568
INT:323
AGI:1001
JOB:小鬼王
WEP:点死の剣
GEAR:点死の鎧
EX:点死の体
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「……えっ、俺よりレベル高くない」
「私がトドメを刺したからでしょうか」
「……まっ、いっか」
確かな手応えを得た一行。
モエン・アーツィが待つ最深部へと歩みを進めた。




