戻れない。最高の舞台・・・。
――2日後…。
「 なんで、無理してでも引き留めないんだよ!居なくなったら勝てなくなるだろ‼︎ 」
結局、午前中の内に、比奈にはメールを送って
日本代表の試合を家で1人で観戦することに決定。
シフトを宣言通り……。
代わってもらって助かったとは思うが、
まだ放送開始直後で・・・、
アップも碌に映ってもいないが…、
……やっぱり、あのまま龍と組んでいられたら変わったんだろうな…。
今でこそボチボチ盛り返してるらしいが、
「流通経済柏」にとって、高瀬龍という【エースストライカー】は、全国行きの切符確定だったのもそうだが、後輩・友達。計2人を誘えば
あのチームだって上手く行ったかもしれない。
そもそも、龍1人いたら一気に【全国優勝】を狙えるだけの火力が引き出せたため、
未来の代表強化まで――が目標になったと
思うが、どうだろうか・・・。
「俺は悪いけど、もうチーム抜けることにするわ。結衣菜の話も碌に聞かないやん。」
ただでさえ、思った以上に下手くそで幻滅してた
なか。龍を説得するのはかなり難しかっただろうが……、面白かっただろうな……。
紅白戦における龍の存在と再試合の要求などで諍いが勃発――。
どうでもいいことで揉め始めたのもそうだが。
今に思えば、「俺」と組んだのは久しぶりで最後だったが、
いかに相手のレベルが低いところにいるかを
実感してしまったのだろう…。
同じような力量で組まされたかのようにみえた紅白戦で【4-0】だったし…。
ユースに行けなかった俺の、「唯一」の希望が何となく様子を見にきてくれたコイツだったが。
あんな風に揉められたら、
あいつの「転校」の考えに理解を求められたとき、素直に引き止められなかったのは友情も含めた俺の意思だが。
――あれはやっぱり仕方なかったよな…。
日本代表とブラジル代表が、縦に並んで国家斉唱が始まるのを見届けるが・・・、
怒られて、当然の結果に終わった話だ。
「ようやくな、お前の前進楽しみにしてるよ!」
「うるさい、集中して観てやるけどよろしくな!」
あのとき、ユースなら駄目だろうが、
プロからのスカウトなら文句言えないだろう。必ず追いつけばいい。と
決意した、俺の努力は無駄に終わったが。
スカウトも学校側に遠慮でもしていたのか、
最悪なヤツらだったと思う・・・。
2日前に約束してた話だったが、
今までの失敗は、コイツと付き合うための犠牲だったと思えば意外と悪くない。
短いやり取りで理解し合えるのもそうだが、
優しくて、可愛い彼女が――結衣菜もだったが、手に入ったのだ。充分幸運と言えるだろう…。
……サッカーという取り柄無くして、トラウマ持ちの女泣かせ男だったのに……、ありがたい話である。
それぞれの代表選手がピッチ中にちらばり、
解説の声とともに、龍の顔が映し出される――。
成長速度、プレイヤーのレベル、何ら遜色なかったのに、……プレミア1流選手とただのバイトの一人。
あのとき止めなかったで、幾らかくれねぇかな?
あのときの決断には完全に友情込みだが、
学力のレベルが落ちたのは、コイツが決着をつけるためにクラブのオファーを保留にし。
練習参加だけにとどめて、牙を向きにきたからだ――。地元のその敵校には、来る価値なし…。と
暗に地元のクラブに帰れと伝えた優秀な後輩のいる
学校に行きやがったのも悪い。
一般常識で、本人の性格や想いを省いたらの話だが、全国大会に一緒に行った中学のメンバーの巣窟
のようなチームでもあったし、
当たれば【負け確】どうにか戦って「アピール」
しろとの話だったが、奇跡は起きず…。
結果は無惨にも敗北し…、
オファーの数はゼロ……。
試合のスコアも――、八○代高校8-0流通○済
と俺がいた前半は、終了間際に1点とられただけで
あったものの。
監督から嫌われているせいで、途中で交代――。
個人的なマッチアップについてはほぼ完璧に対応できてはいたが……、
1年前にはとっくに強豪のプライドなど、
捨てた上でチームが成り立っていたため……、
ピッチ上においての「勇者」のような1人だけ別格に上手い存在の俺は…。
「穢れ」がないようにとのお題目でピッチ上から消されてしまったのだ…。
「ピーーーーーッッ!!!!」
両親、妹、ともに俺に気を遣って、
去年から日本代表戦の日には必ず帰ってくる時間をズラしてくるようになったなか、
炭酸である「フ○ンタ」のレモン味を
コップから飲む…。
――ブラジルボールからキックオフ…‼︎
試合のスコアのほうはどうなるのかな――?
笛が鳴るとボールを前に蹴り出し、さっそく1人がボールを後ろに下げる――。すぐにDFまで繋がり、何度か自陣でパスがまわると、
こんなもんなのかーー?
そう思ったところで…、
ようやく見せ場がきた――。
ブラジルのLWGであるヴィニ○ウスに
ボールがまわり……、
日本代表の菅原○勢が相対する――…。
えっ、こんなパス出すーー?
あきらかに中途半端なバックパスから2本目でブロックされ、今度は日本代表のターン。
「これは・・・、微妙な試合になりそうだな…。」
次の瞬間には、でっかくなった元親友のドアップの映像を観て――、
サイン入りのユニフォームを「無料でくれないかなー?」と考えたりしたが、
ボールを奪った日本代表は不調なのか……、微妙なパスワークで試合から、
「塩試合」になる予感を感じてしまう・・・。
紙面じゃわからないが、今の代表は意外と弱いのかーー?
久しぶりにオンラインでやった「efootboll」の腕は、ちょっとだけイジれば。
すぐに復活したわけだが…、
時代の変化が生じているのか、
ちょっと海外で活躍してます。くらいで、いまいち現在活躍出来ているのか知らないメンツの
プレーをよそに、勝手に予想を打ち立てるが、
……俺のほうが上手くないか?
高校の頃の記憶だし、実力が劣るとも感じた
ことはなかったがーー、
これは案外、危ないのじゃないかーー?
日本代表がパスを繋いで、
今度は、もしかすればクラブの後輩になってたかもしれない。
久保にボールが渡る・・・。
◇
「Qワールドカップの優勝候補の基準ってどのくらい?」
「A世界的ビッグクラブのレギュラーが7人に、穴埋めが4名それぞれのポジションで…。」
ビッグクラブで活躍する「スーパースター」の特筆した能力が、光りを放つことで…
錆びたベテランや、若手選手の才能を輝やかす。
そうやってチームの上昇気流を生み出すことが
【日本代表】が優勝候補に名乗りをあげる方法及び、最高の世代と呼ぶに相応しい基準じゃないか?
と猥談を交わしたのは、
中学2年の夏休みである……。
龍は結局…。ワントップで出場してるが、
恵まれたとは言えねぇな……。
せっかくアーレナルに移籍して、今年でブレイクを
果たしても、ワールドカップ優勝の夢は遠そうだな。
すこしばかり、可哀想に思えるが…。
時代を変えるだけの力とは、
そう簡単に生み出せないものだろう――。さすがと言えるような飛び出しも、
仲間からのアシストはなく、攻撃は微妙な連携でしか攻められていない…。
「 俺ならもっと速く達成して、代表のレベル
まであげれてた気がするけどなぁ・・・。」
日本代表2人目の世界トップランカーとして、
日本の7分の2番目として活躍できたんじゃないのかと思う。
3つうえにドルトムントの選手で、LWGとして宮森○星が3年前から活躍しているため
2番目だが...、俺ならフランス代表の【アドリ○ン・ラビオ】を超えるスター選手としての活躍が、
高校途中あたりから海外に挑戦できてりゃ、
十分複数いけてた気がする…。
『 ヴィニ○ウス...ドリブルで突破して、シュートはクロスバー!!!!』
解説の唸り声が、部屋中に響き渡るが…。
衝撃が走るシーンだったのは事実。
あれくらい、決定力最高クラスの選手が日本にも居ればと思うが、
俺もラビオも最大の武器は本職以上の高級なミドルシュートだ。
セカンドボールに反応できず、
ブラジル代表の攻撃が……、不発に終わったかにみえたが。ボールはサイドラインにクリア。
『もう1回サッカーがやりたいな…。』
俺ならもっとできる・・・。
そう思っての話だが、
結衣菜から金が借りれなかったことが本当に
悔やまれる・・・。
▽
ったく…。今のくらい躱してパス通せよ――。
せっかくのブラジル戦――。
あの頃から、行く分か弱くなったと思うが。
それでも、「あの」ブラジル代表との試合。
ここで勝ってーー、日本を大きく進化させる
ことがどれだけ大事だと思ってるのか。
適当なクリアで再び守備からのスタート。
それが、そんなに悪いわけじゃないが。
相手を崩して、攻撃のリズムを作るにはうってつけのシーンだった。
和也だったら、間違いなく攻撃にスイッチを
入れられただろう。
「 彼女の座ももういらないから...、人生1回きりなのに、自分が一番上手かったって思ってるでしょ?もういっかい4人で日本代表目指そう?」
"今からでも誘うべきか?"
あいつが、また環境で苦しむことがあってはならないと思うし、喧嘩中なのも事実。
前線の守備から
未だに引きずる気持ち恋心とサッカーへの想いは、むこうも代表の上層部とかに怒られたりしたらしく、破談に終わってしまったが...。
右の久保に流れて終わった攻撃がスローインになり、今度は反対側からの立て直し...。
相手のキーパーがボールを回収し、
再びブラジルの攻撃がはじまると・・・。
◇
『あーっ、ザ○オンは反応できない…‼︎』
試合開始35分...。
日本は龍が勝手にゼロトップのような動きをみせるなり、工夫を凝らしたポジショニングを魅せたりも
したが…。
ゴールはエンド○ッキのミドルシュートから生まれ。この試合のスコア予想が一気に難しくなる…。
(どんだけ楽しいだろうな。この会場に、このピッチ...。)
俺が自由に練習できるなら、今から1ヶ月あたりでもJ3くらいなら加入できるだろうか…?
死ぬ程錆びつくような真似はしてないが、ボールタッチの感覚をちょっと取り戻して。
身体能力の向上にギリギリまで時間を充てられたらどれだけ出来るだろう…?
若い奥さんに逃げられたとかで、うちの母親と結婚した父親が、
「日本代表の奥さんなんて辞めとけ。プレッシャーが凄すぎるうえに、大切な彼女がいるならそっちを離すな‼︎」
なんて、糞みたいな台詞吐きやがったが、
もうすこし、コイツらが待ってる。世界的逸材だった俺をすこしは信用しろよ。
( プロのレベルがどれだけ上からみたら足りないか...。)
もっとボールを持って行けるはずだし、
相手の間合いを完全に殺すことは出来ていると
思うが、
コーナーキックは俺が蹴りたかったな...。
もうすこし、身長の高いDFからの得点とかが
必要になるだろう...。
「ただいま〜!!」
前半が終わった途端。
玄関のほうから、妹の声が聞こえる。
「 前半も終わったみたいだし、部屋上あがるよー?」
リビングにいる俺から、遠く離れた位置だし
返答など求めてもいないだろう。ニコだって連絡
してあるだろうし、再びグラスにレモン味の炭酸をいれにいく。
○