食事風景
今回は蒼依目線で書いています。
アーリオージャだね。そういう名前のイタリアン料理店で私…南原蒼依は、妹の沙希と夕食を取ることにした。
パスタは生パスタであり、宇治抹茶を練り込んだパスタや、つけ麺風パスタ、まぜそば風パスタ等、店主の心意気を感じる店だった。
ピッツァも季節の野菜がふんだんに使われており、菜の花が使われていた。
海軍、いや海上自衛隊か。金曜日はカレーを食べて、体内時計を合わせると聞いた。
度重なる喧嘩や動乱で、すっかり忘れていた。春であることを。
因みに、沙希は、「ホタテのカルボナーラ風」を頼み、私は、「豚肉とマッシュルームのトマトパスタ」を頼んだ。二人で菜の花マルゲリータを分けあった。
「お姉ちゃん。どうしたの?」
「ん…あぁ。何でもないよ。ちょっと考え事してたみたい。」
「何考えてたの?」
まずいことになった。どうすればいいのか。 何も隠すことじゃないが、とても恥ずかしい。
「もしかして、男?」
「いやいや、違うって。」
体は女子だけど、魂まで女子じゃないし。
ここは否定する。じゃないとイメージが変わってしまうから。
それに、恋愛経験もしたいけど、あの眠っている少女に申し訳ない気持ちで。
いや、恋心は、むしろ少女の心を発展させるのか。
きっとこの感情はあの子にも伝わっているんだろう。
こんな考えしない方が良いのかもしれないな。
大事なのは今を生きる。それだけだ。
そんなことを思いながら、パスタを頬張る。
「お姉ちゃん。もしかしてまた悩んでるの?アイドル活動が、うまくいかないの?」
「そうじゃないけど、ここでは相談に乗ってもらいたくないことだから。」
蒼依は、ここまで悩むとは思ってもいなかった。
男の時は、只、前を向いていた。それだけでも生きていけた。
高校の現代文の授業で、中島敦の山月記を読んだが、同じ様な心境にとらわれている。
ー己は、向うの山の頂の巖に上り、空谷に向って吼える。この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。己は昨夕も、彼処で月に向って咆えた。誰かにこの苦しみが分って貰えないかと。しかし、獣どもは己の声を聞いて、ただ、懼れ、ひれ伏すばかり。山も樹も月も露も、一匹の虎が怒り狂って、哮っているとしか考えない。天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己の気持を分ってくれる者はない。ー
嘗ての自分には、李徴の気持ちは分からなかった。
でも、今なら分かる気がする。
その内、女として生きることになるのかもしれない。
李徴が人間の魂を持った虎として存在する時間は少なくなった。
私は、畏れている。女になってしまうことを。
勿論、李徴は意識がとんだ。
だが、私は人間だ。意識がとぶことはない。
だから女としての習慣が身に付くかどうか分からない。
きっとこのままでは、男の自分が出てしまうのではないか。不安に思った。
蒼依の思考は難しくなっていった。
難しいけど、読んでくれてありがとう。こんな作者ですみません。此れからも宜しくお願いします。
次回は、北川白太郎の外伝をお送りします。




