湯殿温泉に浸かる。
蒼依の生活の始まり。
蒼依は、女体化した。「お兄ちゃん。いや、お姉ちゃん。可愛いね。」紗希が言った。
「おい。俺、いや私は可愛くないよ。紗希照れるようなこと言わないでよ。」
「お姉ちゃん、混乱してる?」
「何を言ってるのよ。混乱なんてしてない。」
「もう慣れたのか?女体に。」と咲耶が言う。
「あぁ。もう慣れた。そうでなければ生きて行けない。」
「そりゃ良かった。ワシも一旦、若者文化の勉強をして年相応に成らないとな。」鴎耶が言った。
「じゃあ。私達は一時間後に上がるので、その頃合流しましょう。」
「そうだな。蒼依。」
初めての女湯に浸かることとなった。
廊下をすすみ、暖簾を潜る。そして、脱衣場へ。蒼依は、興奮して鼻血が出ることを恐れた。しかし、もう慣れているかのように何も起こらなかった。
「お姉ちゃん。肌綺麗だね。艶が凄いよ。」
褒められて恥ずかしいけど、妹の新たな一面が見れた気がする。
男の時は、あまり、触れ合う事が出来なかった。恥ずかしいと言う気持ちと喧嘩しそうだということで。
でも、女性同士の今なら、気を置くこともなく話せると思う。
「じゃあ、お姉ちゃん。御風呂行こうか。初陣だから、油断しないでね。」
「何よ。その初等兵みたいな扱い方は。」
と言いつつも、蒼依は納得していた。慣れない女性の身体だ。いつどうなるか分からねぇ。と。
まずは、礼儀の一つ、かけ湯。あまり熱くなくて、支配人の心遣いを感じた。
そして入浴した。硫化泉と言うべきか。硫黄の臭いがする温泉であった。
「あぁ。やっぱり、温泉は体に良いねぇ。」
「美少女がそんな話し方をしないでよ。」
「紗希、嫉妬してるの?」
「えっ!お姉ちゃん、やめてよ。」
「あら。図星?もう、紗希ったら単純なんだから。」
紗希にお湯を掛けられた。どうやら照れてるようだ。やられたらやり返す。ハイリターンですよ。
流石に、お湯を掛けるのは、周りの人に迷惑かなと思ってやめたけど。
やっぱり、 妹の事好きなのかも。今まで過ごしてきた時間を無駄に思った。何で、もっと妹と触れ合わなかったのだろうかと。
「湯煙や 我らを戻して 過去の時」という俳句を詠みたくなるほどの後悔だ。
俺の才能は、所詮作者の才能。幾ら、俺が詩を詠んだってこいつは俺の評価を下げる一因となるんだ。
皆には、決して僕を見捨てないでくれ。頼む。




