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蒼依の風~Deux of Meine Rosto~  作者: 恋住花乃
ファーストライフ
31/100

湯殿温泉へ

「ふぅ。よく寝たな。もう朝か。」

「蒼依さん。おはようございます。」

「咲耶。今日は湯殿温泉へ行くんだっけな?」

「はい。その前に我が家に行きます。」


朝食は前の日に釣った魚を調理して食べた。

とても新鮮な魚介類だ。

「やはり、ここの魚は新鮮で旨いなぁ。」蒼依は実感した。

港が近くにある湯殿市は磯岩町と湯殿町に別れている。

「湯殿はね。市長は居るが、この都市を見守るだけなのだ。実際には、湯殿王と磯岩町長が権力を握っている。」

「市なのに王が居るのですか?」

「代々、湯殿町は湯殿王が治めてきた。初代は、湯殿政広。彼は、湯殿温泉を発掘したとされている。」と咲耶は言った。

「彼は湯殿城を設けて其処に住むこととなった。しかし、六代目湯殿輝政の後、男系は絶えた。そして、湯殿王の継承は、岡沼誠が婿養子となり、湯殿岡沼家による統治が始まったんじゃ。」鴎耶が付け足す。

「ご馳走さまです。とても美味しい魚でした。」

そして、蒼依は、鴎耶が着ていた服を借りた。幸いにもサイズが合った。

「湯殿には、スポーツカーで行くか?」

「はい。鴎耶さん。宜しくお願いします。」


「そんな、畏まらなくて良い。折角若返ったのに年上扱いされるのはちと困るのぉ。」鴎耶が言った。

「すみません。」


外は寒い。しかし、絶好の温泉日和である。ここまで、休む暇もなく争い続けた蒼依にとっては久し振りの温泉だった。

「蒼依さん。高校行かなくて良いんですか?」

「高校?あぁ。戦火にやられた。守れなかったんだ。それより、久し振りの温泉だな。」

「何処の高校なんですか?」

「俺はな。龍秀高校だ。」

龍秀高校…懐かしい名前が出たもんだ。今、きっと俺は除籍処分になっているはずだ。つまり、退学処分だ。と蒼依は思った。

「蒼依さん。どうしたんですか?」咲耶が思考停止している様子を察知して話し掛けた。

「いや。何でもない。気にするな。」

「分かりました。」

周りは都会の風景から田舎の風景に変わってきた。

「じいちゃん。ちょっと、冬にオープンカーって寒くない?」

「若僧!このくらいで寒いってあるかい。」

お前も若僧だろって突っ込みたかったが蒼依はやめた。

段々と都会の風景に戻ってゆく。

「もう少しで湯殿の我が家に着く。待ってろよ。」

数分後、湯殿の家に着いた。

素晴らしい建物である。

湯殿王太子殿下御所。確かに、そう書かれていた。まさか、咲耶の家が王家だったとは。

大変失礼な事をしてしまったのだと改めて思った。

「白峰家が王家だったとは、恐れ多い。失礼いたしました。」

「気にしないでおくれ。僕は、王家ではなく白峰家の当主。湯殿家王太子は、鴎耶のことです。」

「俺も知らないけど。三代目の分家らしい。白峰政耶なる者が生まれていてのぉ。ここに寄りついたら王位継承者だと言われてしまったのだ。まあ、気にしないで鴎耶と呼んでくれ。」

「部屋に案内します。家政婦と言うか下宿人というか。女の子が一人いるけど気にしないで。」

「分かりました。お邪魔します。」

家に入ると、先述の通り、女の子が一人いた。

「お館様。お疲れ様です。そちらの方は。」

「ああ。彼か。ウチのバカ息子の内気を克服させてくれたんだ。」

「バカ息子って何だよ。僕は、対人恐怖症だっただけ。」

「咲耶様の声、初めて聴きました。旅人の方、お救い頂き有難うございました。」

「旅人ってのは、ちょっと悲しいぜ。俺は、南原蒼依。蒼依って呼んでくれ。」

「分かりました。蒼依様。」

「俺達は調べ物があるから二階に上がってるぜ。」

「お館様。行っちゃったようですね。お茶飲みますか。」

「ああ、頼んだ。」

なかなか、色っぽいメイドさんだ。だが、声が何処となく似ている。

クリスマス以来、連絡が取れなくなっていた我が妹に。

きっと、気のせいだろう。

「お茶、お持ちいたしました。」

「ああ、有難う。あの二人が席を外したんだから。何か理由でもあるんだろう。」

「そうですかね。」

「うん。ところで、まだ貴女の名前を聞いていなかったね。何て言う名前?」

「紗希と申します。南原紗希。」

「奇しくも、同じ苗字だな。さては、お前、もしや。」

「お兄…ちゃん?」

「そう来ると思ってたぜ。」

「え、だってお兄ちゃん。こんなお偉いさんと絡んでるはずないと思ってたから。顔が似てる人が居ると思ってたけど。」

「俺も、驚いてる。もう、紗希が心配でな。お父さんとお母さんも行方が分からないし。」

「沙希、普通に観光してたんだよ。でも、夢中になってちょっと遅れて追いかけたらさ。地面に吸い込まれて、ここに一人ぼっちで居たの。鴎耶さんに心配され、住むことになったの。」

「龍神の崇りでもあったというのか。いや、そんなはずは…。」

「お兄ちゃん何か言った?」

「いや、何も言ってないよ。それより、お前、可愛くなったな。」

「お兄ちゃん。そんなこと言って、何も出ないよ。」

「分かってる。」

「よし、お待たせ。さぁ温泉へ行こうか。『道の湯 湯殿』へ。其処には足湯がある。そこでパッチテストだ。入浴中に体が急に変わっても恥ずかしいだろう。」鴎耶が言った。

「随分仲良くなったようですね。何かあったのですか?」咲耶が二人を見て言う。

「こいつは、俺の妹だ。世話になりました。」

「えっ!それは、申し訳無い。さぞ心配していただろう。」

「いえいえ。」


道の湯 湯殿は、硫黄の臭いがする温泉である。

そんなことを聞かされながら、湯殿に到着。

早速足湯に浸かった。

「あぁ。気持ちのよい温泉だなぁ。んっ!」

ヤバい…変化してきてる。あぁ…止めて。

蒼依の体は女性になってしまった。

「お兄ちゃん!?」沙希が驚いて見ている。

「実は、中身に秘めたる女性の体があった。でも、それが表に現れてしまったようだ。」蒼依は、女湯に入ることになった。

「蒼依君へ。君は今まで男子でいたときが、そのまま同じ時間に女子として生きる。もし、男子としてやることがあるなら、低い声で『戻れ!!自分』と言え。ただし、やると疲れるのでお奨めはしない。」作者の声が聞こえた。

「さて、女の子ライフを楽しみますか。」蒼依は思った。


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