38 目覚める
38 目覚める
マリアベルが起きたのは翌朝だった。ベッドは二つしかなくマリアベルと謎の女が占領している。エルクはウォーラと一枚の毛布を使った。さすがにいつものようにからかってくることもなかった。
「あれ? 朝? ここは?」
起き上がるとマリアベルは混乱していた。無理もない。
「マリアベルさんは女の人に驚き気を失ってしまったのです。おかげでならず者を突き出せなかったんですよ」
「女の人?」
マリアベルは隣のベッドに寝てる女性に目を向ける。服は土で汚れていて、足がなかった。幽霊とかじゃない。本当に足がないのだ。
「な、なんで連れて来たのよ」
「あそこで置いてきたら、俺達の代わりに襲われてたろ」
エルクに正論を言われ、黙った。
「この人が幽霊の正体なの?」
「わからん。話を聞いてみないと」
マリアベルは物怖じせずに女性を揺すってみた。幽霊でなければ強気なようだ。
「ん……」
低くて色気のある声が漏れる。
「起きなさいよ」
「ん……、ん?」
目が開くと三人に囲まれているのに気付き、体を硬直させた。
「起きたわね。私を驚かせて……」
そう言われて、女性も事情を察したようだ。
「すみません。介抱までしていただいて」
「そうですよ。あそこに置いていったら、変な男に変なことされてたかもしれないんですよ」
ウォーラは恩着せがましく言った。というかそれはエルクの判断だったはずなのに。
女性は体を起こして、申し訳なさそうにお礼を言ってきた。
「ありがとうございます。私、イージーといいます」
言われて、誰一人自己紹介をしていないことに気付いた。名乗った後、マリアベルは単刀直入に聞いた。
「あなた、幽霊なの?」
「生きてますが」
質問の意図をわかりかねているようだ。
「えーっと、実はこの町で幽霊が出るって噂されてて、もしかしたらあなたを幽霊と誤認した可能性があると言いますか……」
イージーの目を見開かれた。
「そうですか。やはり目立たないと思って夜に聞き込みをしたのが間違いだったのでしょうか。確かに人と出会う頻度が下がってましたし……」
イージーは反省の言葉を口にした。
「あの、聞き込みって、何の」
「私、人を捜していまして、錬金術師の」
「錬金術師?」
「彼から取り返さないと気が済まないのです」
視線を落とした先には足がない。
おそらく錬金術師とやらに足を奪われたのだろう。
「依頼をすればいいと思います。冒険者ギルドはあなたのお悩みを解決します」
ウォーラがそう言うと、イージーはみんなに視線を向け、言った。
「錬金術師を捜していただけないでしょうか。報酬は少ないですが」
「任せてくれ。ただ町のパトロールの依頼を受けてるから、そっちの処理が終わってからで」
イージーはエルクと握手しようとしたが、リーダー面したウォーラに横取りされた。当然イージーは困惑していた。




