37 気絶する
37 気絶する
「ねえ、離れないでね」
いつもと同じようにエルクの腕に抱きついているが、いつもと感じが違っていた。
「なんかずるいです。ハブられている感満載です」
違和感を察知したウォーラがうるさかった。
「ホラ」
エルクはマリアベルが抱きついているのとは反対側の肘を向けて、同じように抱きつくように促す。
「ナメないでください。そんな変態さんしか得しないことしませんて」
「俺だっていざという時逃げられないからイヤなんだよ」
「何ですか、その嫌々な感じは。私の胸を押しつけてられて喜ばない男はいないんですよ」
「で、みんなマリアに取られたと」
「ぐ……変態さんのくせに」
ウォーラは結局、エルクに抱きつくことはなかった。
かなりの距離を歩いた頃、
「おうおう、見せつけてくれるやんけ」
と背後から声がかかった。マリアベルはエルクにさらに強くしがみつく。
「マリアベルさん、町の輩です」
ウォーラは水の尻尾を生やした。
エルクはマリアをしがみつかせたまま振り返る。確かに町の不良住人が三人いた。
「何だ。人間かあ」
マリアベルは安心して、エルクを解放する。
「お前等、幽霊知ってるか?」
対話を試みた。
「もうすぐなるよ、お前がな」
気の利いたことを言ったようですべっていた。
エルクとマリアベルはナイフを抜いた。
輩は剣やナイフ、素手もいた。エルク達を弱そうだとナメている。
まずマリアベルがナイフを盗み、手ぶらになった一人を刺した。
エルクは剣を持った男に向かっていったが、攻めあぐねていた。やはりオルクがいないときつい。
そして頼りのウォーラには素手の男が胸目掛けて掴みかかった。
「来ないでください」
水の尻尾から蛇を出して、素手の男に絡み付かせた。男は胸に向けて伸ばした手を引っ込めた。
「まだまだです」
尻尾からさらなる蛇を出して、顔を噛ませにやる。素手の男が息もできずに脱落した。
マリアベルもナイフを手放した男をさらに切り付ける。
「強い」
ナイフを手放した男は仲間に見向きもせずに逃げていった。プライドなんてものはないらしい。
三対一になった。
マリアベルがロングソードを盗み、ウォーラが蛇をけしかけ、エルクがナイフで切りつけた。ロングソードを持っていた男は観念した。
町の輩をやっつけた!
ロングソードを持っていた男は殺しはせずに縛っておく。一人殺してしまい、一人は逃亡。敵の命の管理はFランにはまだ早かった。
「今日はこれで終わりだな」
「じゃあ、依頼は終わり?」
「何言ってるんですか。最低三日は拘束されます」
「そんな……」
マリアベルは頭を抱えた。後二日見回りを続けなくてはならないのだ。
「あの」
「よく頑張ったな、飲もうか」
「あの」
「水の催促なんて、積極的ですね」
「あの」
「酒に決まってるだろうが」
「あの」
「ただのからかいですよムキにならなくてもいいじゃないですか。ねえ、マリアベルさん」
「あの」
三人の会話が途切れたとき、声がはっきりと聞こえた。それはマリアベルの背後から。彼女が振り返るとそこには宙に浮かんだ足のない女が。
「きゃあああああああ!」
マリアベルは悲鳴をあげ、気を失ってしまった。
そして女も倒れた。マリアベルの悲鳴にびっくりしたらしい。
「馬車に乗ってくればよかった」
「私、力仕事したくなきんですけど」
不満を言い、マリアベルと女を宿に連れ帰った。




