35 ショックを受ける
35 ショックを受ける
神官を連れて帰り、ギルドで手続きをさせた。普段剣士が手続き等をしていたらしく、もらえる報酬の多さに神官は驚いていた。エルク達が言うのも何だが、神官相手に報酬をちょろまかすとか頭がおかしい。
エルク達は薬草を納品して初めての依頼を終えた。やはり報酬はオーガに比べて安かった。
「次の仕事は?」
エルクは焦っていた。依頼料が安くて宿屋に数日しか泊まれない。野宿は絶対にイヤなのだ。
「後は、町のパトロールとかですかね。最近、幽霊が出ると噂が立って誰もやりたがらないんですよ」
幽霊と聞いて、マリアベルがエルクにしがみついてきた。
「よそうよ。他の依頼受けようよ」
「残念ながら、Fランクには依頼がこれしかなくてですね。その分、薬草採取の三倍は報酬を払います」
「やる」
マリアベルは声を裏返させつつ、肯定に転じた。金には思うところがあるのだろう。
「後は神官にアドバイスをもらいましょう。奢ってくれますよね」
神官は報酬を受け取った後、ウォーラにガッチリ捕まっていた。もらうまでは解放しないという強い意志を感じた。
「ああ。仕方ないね」
本気のあきらめが込められていた。
エルク達は神官を連れて宿屋兼酒場に戻った。
酒場での食事は神官の奢りになった。毒くらわば皿までという感じで、もはや抵抗すらしなかった。
「とんだ薬草採取だったわね」
「まったくです。結局、オルクさんに乗せてもらえませんでしたし」
ウォーラはオルクに乗ることに執着していた。別に乗せてもいいのだが、なんか予想の斜め上のことをしそうで拒んでいた。
「やはり変態さんの愛人にならなければならないのですか?」
「そんなことさせないってーの」
マリアベルとウォーラは熱い議論を始めた。エルクはこそばゆい感覚に襲われた。モテ期到来なのかとも考えた。でも神官が余計なことを言った。
「マリアを放っておいていいのか? 好きだったんだろう?」
「は?」
神官はニヤリと笑った。
「変態さんはマリアを追って旅に出たんですか? マリアベルさんを連れて?」
ウォーラが疑い出した。
「エルクはマリアせいで村にいられなくなったの! その女を好きなわけないでしょ! ねえ、そうよね」
マリアベルも確信を持てていないようだ。
エルクは言った。
「俺はマリアに殺されそうになっている。それはジョンが死んだからだ。その逆恨みで、盗賊もお前達も、マリアに操られて殺しに来てる。だから俺は村を追い出された。冒険者になったのも力をつけて、マリアを殺すためだ。そして俺は村に帰る」
ウォーラは驚いていた。
「変態さんは一旗上げたい田舎者ではなかったんですね」
田舎者という単語が妙に刺さった。
「俺って田舎者か?」
「そうね。私達より確実に田舎者よ」
マリアベルに言われショックでエルクは酒に逃げた。
「変態さん、かわいいです。チェイサーで水でもどうですか?」
ウォーラはジョッキに水を入れて渡してくる。
マリアベルは呆れ顔で、逃げ出した神官から財布を盗み、自分もエールを飲んだ。




