32 剣士と戦う
32 剣士と戦う
「なんだ、お前の馬車か。乗っけてけよ。俺等は疲れてんだ」
剣士はオーガの頭をポンポンと叩いた。
「まさか、連れ立ってこんなところにいるなんてな」
「薬草取りか?」
「Fランの仕事か」
剣士以外も悪口に参加していた。ウォーラは息が整わずに何も言えない。それに調子に乗った連中は下卑た笑いを浮かべた。
「冒険者になりたてだから当たり前だろ。いいから降りろ」
「Fランが俺達に勝てるとでも?」
「一対一で戦えないやつが見下すな。僕ちゃんFランの冒険者が怖いから集団で攻めるでち。ってか?」
煽ってやった。すると見事に表情が変わった。
「一対一がお望みならやってやろうじゃねえか! おい、手を出すなよ」
馬車から降りてロングソードを抜く。
相手は鎧を着ている。盗賊の頭と同じタイプではある。しかしせっかく一対一にしたのにこっちが総力戦で挑むと、向こうも総力戦になる気がする。エルク一人でやるしかないのだ。
エルクはオルクに角を生やした。
「角飛び!」
角が飛び、剣士に襲いかかる。
ガキィィン!
剣士はロングソードを振り下ろし、角にぶち当てた。角は折れて、切断面が地面に突き刺さる。
「危ねえ危ねえ。馬から角が生えてくるなんてな。だから店の中じゃやられ放題だったわけだ」
一人納得している。
「角飛び」
今度は螺旋状にして打ち出した。
剣士はまた角をはたき落とす。だがロングソードがかなりの高さまで弾かれ、体勢を崩した。
「角突き!」
角を伸ばして突く。
剣士は地面を転がり、角を避ける。角は地面に刺さった。
剣士はその角を触って勢いよく立ち上がり、ロングソードをまっすぐ突き出した。
「枝毛」
進路を遮るように角から角を生やした。
しかし剣士はそれを屈んで突破した。突きの勢いは死んでない。
エルクの負けに思えた。
「モグラ!」
地面に突き刺さった先端をカーブさせて剣士の後頭部を狙った。突きが届くか角で突き刺すかの勝負だ。エルクは賭けに出た。
「エルク!」
自分の名を叫んだ。
すると剣士だけでなく、馬車に乗っていた彼の仲間達もこう言った。
「エルクを殺す。マリアのために」
言うために動きを止めた剣士は、無事角に刺されて絶命した。




