30 移動する
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薬草は森の特定の木の下に生えているヤックという名の草だ。刻んで傷口に当てるもよし、煎じて薬にするもよしの万能薬だ。よく取れるので価格も安く、子供の小遣い稼ぎにももってこいである。そんな誰でもできそうな仕事が冒険者としての初仕事なわけだ。
「私の言う通りやれば完遂できます。頑張りましょう」
馬車の荷台でウォーラはまだ偉そうにしていた。まるで武器屋のことを忘れたのではないかと思うほどだ。
「質問。薬草取ってる間になんかに狙われることないの?」
御者であるエルクの横に陣取るマリアベルは話に乗ったフリして、ウォーラに聞いた。
「確かにあるかもですね。では私が警戒して、何かあったら知らせますよ」
やはりウォーラは偉そうだ。
「ナイフ持ってないもんねー」
隣のエルクに寄りかかり、イヤミを言った。
ウォーラはムッとしている。
空気がギスギスしてきたが、エルクはどっちの味方にもつかず、やり過ごした。
もう森の入り口に着いた。移動手段を持っているエルクは他の冒険者に比べて有利だが、森の中へはは入れないなどの不便もある。
森の入り口に馬車を停めて、オルクを連れていった。ヤック草は馬が食べても問題ないので、たまにはサービスだ。
「変態さん、私を馬に乗せてください」
ウォーラは少し歩いてもう音をあげていた。
「オルクな」
「オルクさんに乗りたいなぁ」
甘えてくる。今までの偉そうな態度でマイナスポイントが累積しすぎて、可愛くは見えなかった。が、胸を近付けられると見てしまう。そしてマリアベルと比べてしまう。
「エルクもお金ゼロで暮らしてみる?」
圧をかけてきた。暴力よりもこちらのほうがキツい。
怒っているマリアベルと対照的にウォーラはニンマリした。
「変態さんは胸が気になるようですね。今度からお願いするときに押しつけてみるのも悪くないかもしれません」
「やめて、私のエルクを誘惑しないで」
マリアベルはエルクに抱きついてきた。でも何も感じない。すると腕をつねられた。
「やめろ」
「エルクが悪いんでしょ」
「はいはい、俺が悪いよ」
そこで話を終わりにした。結局ウォーラはオルクに乗せず、みんなで歩いた。公平だが、二人から文句を言われた。どうやらオルクに乗ること=特別扱いされたことになるようだった。
気をつけようとエルクは思った。




