第九章:黒幕への糸口
和兎ときいは、生徒たちが誰かに脅され、いじめの指示を受けていたという新たな事実を手にしたが、肝心の黒幕の正体までは掴めていなかった。次の手がかりを探すため、二人はさらに調査を進めることを決意する。
「どうやら、茶子だけじゃなくて、いじめに関わった全員が何者かに脅されていたみたいだね……」
きいは疲れた様子で言った。
「うん。山本たちは、完全に脅迫されて動いていた。しかも、家族まで危険に晒されるとなると、逆らうのは不可能だ」
和兎は腕を組み、真剣な表情で考え込んだ。
「でも、先生、何で茶子がターゲットになったんだろう? それがまだ分からないよね……」
きいは眉をひそめながら疑問を口にした。
「そこが一番の謎だ。茶子はただの生徒じゃない。彼女には何か隠された秘密があるはずだ。そして、それが原因でこの事件に巻き込まれたのかもしれない」
和兎は考えを整理しつつ、推測を述べた。
「もしかして、茶子も脅迫されてるのかな? それとも、もっと違う理由が……?」
きいは目を輝かせながら、さらに推測を重ねた。
その時、ふと和兎の携帯にメッセージが届いた。差出人は不明だが、そこには「次はきいが狙われる」という不気味な文面と、きいの写真が添付されていた。
「えっ……これ……」
きいはメッセージを見て、驚愕の表情を浮かべた。
「誰がこんなことを……?」
和兎もその写真を見て驚いたが、すぐに冷静さを取り戻し、周囲を見回した。
「この写真……つい最近撮られたものだ。つまり、俺たちはずっと誰かに監視されている」
和兎は声をひそめながら、きいに注意を促した。
「私がターゲットに……?」
きいは少し震えたが、すぐに表情を引き締めた。「でも、怖がってる場合じゃないよね。むしろ、このメッセージが何かの手がかりになるかも」
「そうだ。このメッセージを辿れば、犯人に近づけるかもしれない。だが、慎重に行動しないといけないな」
和兎は冷静にメッセージの送信元を調べようと試みたが、発信元は高度に偽装されており、簡単には追跡できないことが判明した。
「くそ、手がかりが見つかりにくい……だが、この状況を利用して犯人をおびき出せるかもしれない」
和兎は一瞬考えた後、きいに提案した。
「お前がターゲットにされるというのなら、あえてその状況を逆手に取る。相手がきいを狙うなら、そこで奴らの正体を暴くチャンスだ」
和兎は落ち着いた声で説明し、きいもうなずいた。
「うん、やってみる! でも、先生、あんまり危険なことはしないでね……」
きいは不安げに言ったが、和兎は笑みを浮かべて答えた。
「心配するな。お前を守るのが俺の役目だ」
その言葉に、きいは少し安心した表情を見せた。
こうして、和兎ときいは次の行動に移ることに決めた。茶子がなぜターゲットにされたのか、そしてこの不気味なメッセージの送り主が誰なのか――全てを明らかにするため、二人はさらなる調査を開始する。
事件の真相は、徐々に二人の手の届くところまで来ていたが、まだ多くの謎が残されていた。それでも、和兎ときいは、最後までこの謎を解き明かす決意を固めていた。