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第二十九章:油断の代償

保健室の静寂の中、和兎は茶子の手を優しく握りながら、彼女の様子を確認していた。何か言いたげな茶子の表情に注意を払っていたその時、和兎はふと、茶子の手に微かな異物感を感じた。


「茶子、大丈夫か?」和兎は優しく声をかけながらも、茶子の手に付着した何かに気付いた。薬品のような香りが鼻をくすぐった。


「…ありがとう…先生…」茶子は再び力なく答え、目を閉じた。


しかし、その時、和兎の視界が一瞬ぐらついた。額に汗がじわりと滲む。


(何だ…?)和兎は急に重くなってきた瞼を何とか持ち上げようとしたが、体が急速に力を失っていく感覚に襲われた。


「きい…気をつけろ…」和兎は、きいに何かを伝えようとしたが、声がうまく出ない。手も重くて動かせない。茶子の手を握ったまま、和兎はそのままゆっくりと椅子に崩れ落ちた。


「先生!?」きいが驚いて駆け寄った。


和兎は何とか目を開けようとしたが、視界がぼやけ、意識が次第に遠のいていく。かすかな記憶の中、茶子の手に触れた瞬間の冷たい感触が蘇った。


(薬品…まさか…)その考えが頭をよぎるも、全てが闇に覆われる。


和兎は深い眠りに落ちた。



---


保健室に残されたきいは、事態を理解するのに時間がかかった。和兎が突然倒れたのを目の当たりにし、彼女は瞬時に緊張感を覚えた。


「先生…どうしたの?」きいは不安そうに和兎の顔を覗き込む。しかし、彼の呼吸は安定しており、ただ眠っているように見える。


「これって…まさか…」きいはふと、茶子の手に付いていた何かを思い出した。


「茶子…!」きいは茶子に問いかけようとしたが、彼女はすでに意識を失っている。


「どうしよう…先生が倒れちゃった…」きいは混乱しながらも、冷静さを取り戻そうと必死に深呼吸した。


(まずは状況を確認しなきゃ…)きいは和兎を見つめながら、自分に言い聞かせるように行動を開始した。


部屋の中を見回し、怪しい物がないか探すが、特に異変は見つからない。ただ、和兎が触れた茶子の手に何か仕込まれていたのは明らかだった。


(何かの罠?それとも偶然?)


きいは、これが単なる偶然ではないと確信しつつも、今は和兎が眠ってしまった原因を解明する必要があると考えた。そして、犯人の意図を見極めるための次の一手を考える必要があった。



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