第二十七章:動かぬ影
保管庫の微妙な違和感に気づいた和兎ときいだったが、直接の証拠がない以上、何もできずに一度その場を後にした。廊下を歩く二人の足音が静かに響く。
「和兎先生、犯人は何を狙っているのかな?」きいが不安げに聞いた。
和兎は考え込みながら答えた。「狙いがまだ見えないが、確実に何か仕掛けているのは間違いない。テストそのものか、あるいはそれ以外の何か……。とにかく、油断はできない。」
「でも、何も盗まれてないし、変なことも起きてないよね?」きいは疑問をぶつけたが、和兎はあえて答えず、思索を続けていた。
保管庫を離れ、ふたりは再び校舎の見回りに出た。和兎の思考は、いまだに整理されていなかったが、何か決定的な一手を犯人が放つ瞬間を待っていた。
「きい、君にはあえて何も話さなかったが、ここまでの事件には一つだけ奇妙な共通点がある。君は気づいているか?」和兎はふと立ち止まり、きいに尋ねた。
きいは首を傾げた。「え、何のこと?」
「犯人は、なぜ君を狙っているのか。それが問題だ。君がこの事件に関わる理由が見当たらない……一見すると。」和兎はきいの顔をじっと見つめた。
「え……わたしが狙われてるってこと?」きいは驚いた様子だったが、すぐに冷静さを取り戻した。「確かに、今までの事件は私に関係しているように見えるけど……そんなに私って重要な存在?」
「君の成績や行動は他の生徒とは違う。そして、今回の事件でも君は中心にいる。犯人はそれを利用しようとしているかもしれない。」和兎は少し間を置いてから続けた。「この静けさ……ただのイタズラだと判断するのは早すぎる。」
「それって、どういうこと?」きいは不安げに聞き返した。
「これはただの序章に過ぎない。何か大きなことが起こる前触れだ。」和兎は確信を持った声で言った。
そのとき、校内の放送が響いた。
「全生徒はすぐに教室に戻りなさい。すぐに戻りなさい。」
和兎ときいは顔を見合わせ、急いで教室に向かおうとした。しかし、その瞬間、廊下の先に一人の生徒がうずくまっているのが見えた。
「誰か倒れてる!」きいが叫び、和兎と一緒に駆け寄った。
倒れていたのは、クラスメイトの森亜 茶子だった。顔色は青白く、体は冷たくなっていたが、かろうじて呼吸はしている。
「大丈夫か!? 茶子!」きいが必死に声をかけたが、反応はなかった。
和兎は茶子の様子を確認しながら、考えを巡らせた。これも犯人の計画の一部なのか? それとも、別の何かが絡んでいるのか。
「早く保健室に運ぼう。」和兎は冷静に指示を出し、きいとともに茶子を抱えて保健室に向かうことにした。
犯人の真の狙いが徐々に見え始める中で、和兎ときいはさらに警戒を強めなければならなかった。何者かが背後で糸を引いているのは明らかだ。次に何が起こるのか、二人には予測できなかったが、すでに事件は動き出していた。




