第二十二章:不可解な痕跡
翌朝、テストの保管庫の前に集まる教師たちの間で、ちょっとした騒ぎが起こっていた。保管庫の鍵に誰かが触れた形跡があったのだ。鍵穴には細かい傷がつき、手荒に扱われたように見えた。しかし、肝心のテスト用紙は一枚も盗まれていない。
「ただのいたずらだろう」保管庫を管理する担当の教師が、険しい顔をして呟いた。「大事な試験が近いからって、神経質になりすぎているんじゃないか?」
和兎もその場に呼ばれ、状況を確認した。彼は慎重に保管庫の周囲を見回し、痕跡を確認する。「確かに、何か触れた跡がある。しかし、盗まれていないならば、一体何の目的があったんだろう?」
他の教師たちは、その問いに対して首をかしげるだけだった。和兎は心の中で警戒感を強めた。もしこれがただのいたずらだとすれば、わざわざ試験問題に関わるようなリスクを冒す必要はない。何かもっと深い意図が隠されているかもしれない。
保管庫を確認し終えた教師たちは、一通りのチェックを行った後、やはり「ただのいたずら」という結論に落ち着いた。問題用紙に異常がない以上、これ以上騒ぎ立てる必要はないという判断だった。
「まぁ、念のため警備を強化しておこう。試験まであと少しだし、何も起こらないことを祈るばかりだ。」担当教師がそう言って話を締めくくった。
和兎はその場を後にするが、心の中では何か引っかかるものを感じていた。保管庫を触った痕跡は確かに小さなものだが、それがただのイタズラだとは思えない。犯人は何を企んでいるのか、その真意が見えてこない。
「きい、これは何かある。」和兎は保健室に戻り、きいに低く呟いた。
きいは首を傾げながら、和兎の顔を見つめた。「何かあるって、試験問題は無事だったんでしょ?じゃあ、いたずらでしょ?」
和兎はゆっくりと首を振った。「いや、そう単純な話じゃない。もし犯人がテストを盗むつもりなら、もっと大胆に行動したはずだ。それに、痕跡を残すなんてリスクを冒す理由がわからない。これは注意を引かせるためのフェイクかもしれない。」
「フェイク?じゃあ、本当の狙いは別にあるってこと?」
和兎はうなずき、考え込んだ。「そうだ。これが単なるいたずらではなく、何かを隠すためのカモフラージュだったとしたら、次の動きに注意しなければならない。」
「お父さんから借りてきた監視カメラとか使う?」きいは冗談めかして言ったが、その表情には少し真剣さが混じっていた。
「それも悪くないな。」和兎は半笑いしながらも、次の一手を考え始めた。




