第十二章:名探偵きいの誕生
「ワトソン先生! 違う! 違うってば!」
突然、きいが勢いよく声を上げ、和兎は驚いて振り向いた。
「ん? 何が違うんだ?」
和兎は怪訝そうな表情を浮かべたが、きいは真剣な顔で彼の前に立ちはだかる。
「探偵きいじゃない! 先生がワトソンなんだから、私は!」
きいは拳を握りしめ、まるで何か大発見をしたかのように胸を張った。
「名探偵! シャーロック・ホームズ! 私、名字に『家』って入ってるし、きいだって『キー』。鍵は開けたり閉めたり、つまりロックできるでしょ?!」
彼女は得意げに言いながら、まるでそれが最も論理的な結論であるかのように頷いた。
「……え、いや、それはさすがにこじつけだろう?」
和兎は一瞬言葉を失い、苦笑いを浮かべた。無理矢理すぎるきいの論理に、どこか呆れつつも、少しだけ感心する自分がいることに気づいた。
「でもさ、シャーロック・ホームズとワトソンなんて、名探偵の二人組みたいで運命感じない?」
きいはキラキラした目で和兎を見つめ、まるで子供が新しい遊びを思いついたような顔をしていた。
「運命……ねぇ。強引すぎるな」
和兎は再び笑いながら肩をすくめたが、ふと何かを思いついたように視線を上げた。
「でも、待てよ……」
彼は顎に手を当てて、考え込むように言った。
「何か思いついたの?」
きいはすぐさま和兎の側に駆け寄り、彼の顔を覗き込んだ。
「お前の手品の道具、使えるかもしれないな」
和兎は微笑みながら、きいが先ほど取り出した手品の道具を指差した。
「えっ? 手品で犯人を捕まえるの?」
きいは目を丸くしながら聞き返す。
「ああ、犯人が次に何かしようとしているなら、こちらが先手を取る必要がある。手品のようなトリックを使って、相手を動揺させたり、意図的に間違った方向へ導くことができるかもしれない」
和兎は自信に満ちた表情で言い、少しずつそのアイデアを具体的に練り上げていた。
「なるほど! さすがワトソン先生、やっぱり頭がキレるね! でも、手品なんてそんなに簡単に使えるのかな?」
きいは半信半疑ながらも、興味津々の様子で和兎を見つめた。
「簡単じゃなくても、お前ならできるだろう? さっきのトリック、もう少し練習すれば、十分に使えるかもしれない。犯人に悟られないように、自然に仕掛けを組み込むんだ」
和兎はきいに対して微笑みながら、手品の具体的な使い方を考え始めていた。
「よーし! じゃあ、私がシャーロック・ホームズ役として、次の作戦を立てるよ!」
きいは元気いっぱいに答え、早速手品の練習を始めようとした。
「……いや、だからお前はシャーロックじゃないんだってば」
和兎は呆れながらも、少しだけほっとしたようにきいを見つめていた。
彼女の無邪気な強引さが、また一歩事件の解決に近づける。和兎はそのことを確信し、次の一手に思いを巡らせていた。




