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300年前の魔術師  作者: 卯月木蓮
第3章 筋肉と盗賊
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第13話

「グハッ」

「今のうちに屋敷の方に逃げなさい」

「あ、アラン様、ありがとうございます」


 アランは小さい子供を連れた母親に襲いかかろうとしていた

盗賊を剣で倒し、屋敷の方に逃げるよう指示する。

そして、振り返りながら背後から襲い掛かってきた

盗賊を斬り伏せる。


 前方に盗賊の小集団を見つけ、

雷魔法”電光”を使いそちらに向かう。

 この魔法は、自身の体に雷を纏うことにより

身体能力が上昇し、直線で移動するならまるで

瞬間移動したかのごとく移動することができる。

 紫電をまとい、一瞬で距離を詰め盗賊2人を斬り伏せる。


「なっ、どっから現れやがった」


 味方が突然倒れたと思ったら突然現れたアランに

警戒する盗賊たち。


「これ以上、私の村での狼藉は許さない。

 おとなしく降伏しなさい」


 盗賊に殺気を放ちながら宣言する。

 アランの殺気に当てられた盗賊に動揺が走る。

しかし、盗賊たちが動揺したのは少しの間だけで

逆にニヤニヤと怪しく笑み始める。


「投降するダァ? 勘違いしちゃぁいけねぇなぁ。

 投降するのはあんただよ。領主・サ・マ」


 盗賊のその言葉を合図にアランの周囲の家から盗賊が現れる。

その手には丸い小さな盾のようなものが握られていた。

 アランの周囲を囲んだ盗賊たちが盾もどきを掲げると、

その盾もどきが一度ピカッと光り輝く。


「ぐっ。 こ、れは!?」


 盾もどきが光ったと思った瞬間、アランは自分の体が

まるで鉛でできているかのような錯覚に陥った。

 だが、この表現はあながち間違いとは言えない。

なぜならば、盗賊たちが使った盾もどきは魔法具で

その効果は”身体弱体化”。


 ここで少し”身体強化”と”身体弱体化”の魔法について説明する。

 火、水、土、風、雷の5属性それぞれに”身体強化”と”身体弱体化”

があり、それぞれ特徴がある。

 例えば、アランが使う雷魔法では強化では瞬間的に早く動けたり

大きな力を出したりすることができる。逆の弱体化では相手の

反応速度を落とすことができる。

 ”身体強化”系の魔法は身体能力とともに魔力・・も上昇する。

 ”身体弱体化”系の魔法は身体能力とともに魔力・・も低下する。

 どちらも自分の魔力を消費する・・・・・・・・・・

 よって”身体弱体化”は自らの魔力を使って自らを弱体化する

とても悪質な魔法である。


「オウオウ、辛そうだなぁ、領主様ぁ。

 まあそれも当然か。なんたってぇ、こっちはぁ30人で

 5属性全ての”身体弱体化”を使ってて、そっちはぁ

 それを1人で受けなきゃぁならねぇ。ギャハハハハハ」


 通常であれば他人に直接魔法をかけるのは難しい。

しかし、盗賊たちは大人数で”身体弱体化”を使うことで

難易度を下げているのだった。

 現状、アランは身体を動かそうにもノロノロとしか動かせず、

持っている剣はまるで巨大な岩のように重かった。


「ろくに魔法が使えない魔法使いんなんザァ怖くねぇ」

「殺っちまおうぜええええええ!」

「死ねぇぇぇぇ!」


 盗賊たちは、弱体化のせいで満足に身体を動かせない

アランに一斉に襲いかかるのだった。


ーーーーーーーーーー


領主の屋敷


「手こずらせやがって、このクソアマ」

「うぐっ」

「おかあさん!」


 ナタリアの美しい銀髪を掴み無理やり立たせる盗賊。

 その様子を見たシャルロットは母の元へ向かおうとしたが

盗賊に拘束され、ただ叫ぶことしかできなかった。


 村人たちが逃げ込んだ屋敷の敷地にも盗賊たちは押し寄せてきていた。

 村人を守るため、領主の妻として盗賊たちと戦ったナタリアだったが、

例の盾もどきにより実力を発揮できずに無力化されたしまった。


「旦那の領主の前で犯したら面白そうだぜ」

「おお怖。そんなに睨まなくても後で可愛がってやるから

 お利口に待ってな。グフフフ」


(まずい、どうする。ゴーレム作って襲撃させるか?

 いや、あの盾みたいなので無力化されてお終いか。

 父さんの方も上空の鳥型のゴーレムで見た感じまずそうだし

 万事休すか?

 それにあの盾もどきについてるマーク。

 僕がいた研究所のマークによく似てる。

 でも、あれは義父さんが潰したはず。) 


なんとかこの事態を切り抜けようと考えているユートの横、

同じように盗賊に捕まっている弟のシリウスは、


(こ、これはもしかして

 ついに俺の転生の女神様から貰ったチートスキルを

 使う時がきたのか? よ、よし。やってやる!)


 シリウスは自分を拘束している盗賊をチートスキルの一つで

一瞬のうちに無力化し、いざ、盗賊を倒そうとして


「がっはっはー。奥さん、お待たせいたしやした。

 警備隊隊長ロベルト、ただいま参上!」


 できなかった。


 シリウスが行動を起こす前にロベルトが登場と同時に

盗賊の男を殴り飛ばした。

 顔面を殴り飛ばされた盗賊の男は口から折れた歯を吹き出し

見事な弧の字を描いて顔面から着地。そのまま地面とキスを

しながら数ネートル(メートル)進み、動かなくなった。

 静まり返る盗賊たち。


「ガッハッハ、おい、坊主。俺が来たからにはもう大丈夫だ」

「ひぃぃっ」  じょーー。


 シリウスの頭をガシガシと撫でて安心させるロベルト。

 しかし、シリウスはロベルトのヤクザも真っ青な眼帯強面を

直視してしまった為、恐怖で漏らしてしまった。

 夜の闇の中、松明の光に照らされるロベルトの顔。

通常より5割り増しで怖い。


「漏らしちまうほど怖かったか。

 へへ、すぐ終わらせるからここで待ってな!」


 実に頼もしい。 顔が怖いが。


「な、なんだ。あの筋肉ダルマ!」

「とりあえず、あいつも弱体化させるぞ」


 正気に返った盗賊たちがロベルトを囲み盾もどきが光る。


「? なんだ。眩しいじゃないか」


 ロベルトはおもむろに一番近くにいた盾もどきを持った

盗賊の男に近づくと、盾もどきごと男を抱きしめる。

 盾もどきがメキメキと音を立てながら潰される。


「ぎゃああああ。痛い痛い痛いムサい、暑い、臭い

 こんな筋肉ダルマに抱かれて死ぬのなんて嫌だああぁぁ・・・」


 口から血を吐き出し、ロベルトに抱かれたまま男は静かになる。

 ロベルトは男をポイっと横に投げ捨てニヤリと笑う。

顔に男が吐いた血がかかっており、通常より3倍怖い。


「ば、化け物だ」

「なんでっ、なんで効いてないんだよぉ!」

「お、俺はあんな死に方したくねぇ!」


 誰だってむさ苦しい筋肉男に抱きしめられて死にたくはない。

ユートは盗賊たちに同情の目を向ける。だが、襲った村が間違いだ。


 盗賊たちは必死に抵抗を試みているが、無駄だった。

 剣で斬りかかっても筋肉に弾かれ、剣で防ごうとしても拳で剣が粉砕され、そのまま殴り飛ばされる。

 一番多い死因は圧死。筋肉ダルマに抱きしめられて死ぬのである。

 盗賊たちの士気はもうボロボロである。


 しかも、ロベルトは素の身体能力で盗賊を圧倒している。

 恐ろしいことである。


 盗賊たちがポーンと空に打ち上がっては地面に落ちる。


 領主の屋敷はロベルトの活躍により無事解放された。

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