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300年前の魔術師  作者: 卯月木蓮
第3章 筋肉と盗賊
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第12話

ローレンス領の隣の領地のとある村、

そこは盗賊たちに占拠されていた。

村の男や年寄りは全員殺され、

生き残ったのは女や子供だった。


「お頭、この村の食料

 そろそろなくなりますぜ」

「あー、じゃあ、そろそろ別の村に行くか。

 今度は蓄えが沢山ある所にするぞ。

 おい!テメェ、その女は奴隷商に売る商品だ。

 何勝手に手ェ出してんだ? 価値が落ちるだろうが。

 ぶっ殺すぞ? あ”あ”?」


頭に睨まれた手下の男は恐怖で動けなくなっていた。

その様子を見ながら頭は思う。

気持ちはわからないでもない。

この村にいた女はほとんどが老人か子供だった。


つまり、若い女はあまりいなかった為、

女で楽しめる人数に限りがあったのだ。

これではつい商品に手を出したくなるだろう。

それは、次の村を襲えば解決することだが。


「まあ、お前が商品に手を出した気持ちはわかる。

 というわけで隣の貴族の村を襲って

 食い物と酒と女を奪うぞ」

『うおー!』


酒盛りをしていた盗賊たちがそれを聞き雄叫びをあげる。


今度襲う予定の貴族の村は人口が2000人程だが、

なんと、そのうち4割が子供らしい。

ならば、村の男は600人ぐらいだろう。

そのうちほとんどが農民だ。

こちらは集めれば400人いる。


謎の男からもらった武器もある。

この村同様楽勝だろう。


こうして盗賊たちはローレンス領に行くことになった。


ーーーーーーーーーー


「風よ 集いて 斬り裂け ”ウインドカッター”」


風が掲げた手に集まり、シュッと音を立てて

見えない風の刃がゴブリンの首を刈る。

ドウッと音を立て首なしゴブリンが倒れる。

その後から2匹のゴブリンが左右に分かれ襲いかかる。


そのゴブリン達の足元が円形に光る。

次の瞬間、光った部分にぽっかりと穴が開き

そのままゴブリン2匹は落とし穴の中えと消えていった。

そして、再び円形の日からが輝くと

そこは、元の穴のない地面に戻っていた。


「ふぅ、やっぱ魔法陣の方が使いやすい」


そう呟いたユートは家に向けて森を歩く。

頭の上にルーチェを乗せて。


今、ユートはルーチェを連れて西の森に来ていた。

その目的はルーチェの母親の墓参り。

しかし・・・


「キュキュ?、キュ!」


周りの景色が珍しいらしく

あっちへキョロキョロ、こちへキュロキョロ

鳴きながらご機嫌だ。

はぁ・・・。


「キュルゥ?」


どうしたの?と首を伸ばして顔を覗き込んできた

彼女に、なんでもないよと答える。

どうやらお墓参りは早かったようだ。


話は変わるが、

彼女のお気に入りの場所は僕の頭の上。

ルーチェはすくすく育ち体重も増えてきた。

何が言いたいかと言うと重・・・


「キュルゥゥ?」


頭上のルーチェが怒気を含んだ鳴き声と共に

尻尾をバシバシ、両脚で頭をギュウゥゥッと掴んできた。

止めて、痛い、ハゲるから止めてッ!


「ごめんなさい、ごめんなさい」


その後、ルーチェの好物のペルの実をあげて

機嫌を直してもらう。

僕の頭の上に後ろ脚でしっかりと捕まり

両前脚でペルの実をしっかり抱えて

モキュモキュと美味しそうに食べている。


そういえば最近、弟のシリウスの様子がおかしい。

お父さんとお母さんを見て、すてーたすおーぷん

とか言った後に


「ちーとだ、ちーとがいる」


と愕然とした様子だったり

同じく僕を見て、すてーたすおーぷん

と言った後に


「ま、魔力が・・・ 俺よりも・・・

 それに、てんせい・・・」


と再び愕然とし

マリアお姉ちゃんとお母さんのエリザさんを見て

石化していた。

と思ったら妹のシャルロトを見て


「そう、そうだ。これが普通なんだ・・・」


と感動して抱きしめていたり。

将来シスコンにならないか少し、心配だ。


そんなことを考えていたら、無事に家にたどり着いた。


ただいま!


ーーーーーーーーーーー


その夜、ローレンス領唯一の村の住民は

突然の爆発音により一人残らず目を覚ました。


どうしたのかと思いドアを開けると

お母さんに兄弟揃ってリビングに連れてこられた。

一緒に寝ていたルーチェは頭の上にいる。

するとそこにはすでにお父さんがいた。


「エリザ、マリア」

「「旦那様、ここに」」


お父さんが名前を呼ぶとお父さんの前に

音もなくメイド服の2人が現れた。

いつの間に?


「エリザ、何が起きてるか調べて欲しい。

 大至急頼む」

「かしこまりました」


そう言ったエリザさんの姿がフッとかき消える。

え?何が起きたの?

僕が混乱しているとエリザさんがまた突然現れた。

この間5秒。


「盗賊が襲撃してきたようです。

 数は409人。魔導具を所持しています。

 西門が破壊され、そこから侵入されています」

「そうか・・・。マリア、君は警備隊に連絡を。

 エリザは賊の足止めを頼む」

「「かしこまりました」」


エリザさん仕事が早すぎ、それに詳しい。

ああ、2人とも音もなく消えた・・・。

うちのメイド何者?暗部の人?


「ナタリー、子供達を頼む」


そう言ってお父さんが家を出た後

バチバチッという音が聞こえ西門の方に

一筋の電光が駆けて行った。


ーーーーーーーーーー


「女、子供は生け捕りだ。

 男と年寄りは皆殺しだ」

「ヒャッハーー!」

「酒だ、金だ、女だ」

「殺すころすコロス!」


西門を魔道具で破壊した盗賊たちは

慌てて逃げる村人たちに襲いかかる。

平和な村が一瞬で地獄と化す。


その地獄の中に突然メイド服を着た

獣人の女性が現れる。

村人を追いかけていた賊達は

突然現れたメイド、エリザに驚いたが

すぐに嫌らしい笑みを浮かべる。


「おい、女だ。しかも上玉だ」

「後で可愛がってやるから大人しく待ってな」

「グヘへへへへ」


盗賊の1人がエリザを捕まえようと手を伸ばす。

しかし、その盗賊はニヤついた顔のまま

横に吹き飛ばされ家の壁に埋まった。


静まり返る盗賊。


「旦那様の命により、足止めさせていただきます」


メイド服のスカートをつまみ優雅に一礼するエリザ。

その姿は正にメイドの鑑。



その場にいた20名の盗賊は抵抗らしい抵抗もできず

一瞬のうちにエリザの手により無力化され

ロープで簀巻きにされ地面に転がされた。




ペルの実


赤色の大人のこぶし大の実。

甘くて美味しい。

村の子供達に人気のおやつ。

ルーチェの好物。

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