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制空猟兵  作者: 九木圭人
嵐の中、過ぎ去った後
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嵐の中、過ぎ去った後7

 周囲に意識を向けながら、ターゲットが来た方向へと足を進めちょっとした空間に達した――瞬間、左右から挟み撃ち。


「クソッ!」

 毒づきながら右にすっ飛ぶ――無論、ターゲットの正面=相手の射線から外れた位置で。

 背後のターゲットから伸びるレーザー=敵の射線を現したそれを躱すこともわすれずに。

 相手の射線を躱して、反対にこちらの攻撃は目をつぶっても当たる距離で引き金を引く。

 マガジンの底に残っていた弾がターゲットを捉え、倒れていくそれを尻目に飛び出したもう一枚に、ライフルから離した左手で逆手に抜いたナイフを突き立てる。

 M6対装甲ナイフ。その名称に反して装甲の隙間に突き立てるように使うのが正確な用途と習ったが、人型のターゲットの首の辺りに深々と突き立てたということは、恐らく成功だろう。


 そしてそれを示すように、こちらに突っ込んできたターゲットの動きが止まる。

 同時に銃声が二度。背後からのレーザーが消える。

「クリア」

「クリア」

 今度こそ本当にクリアだ。

 ターゲットからナイフを引き抜き、マガジンを交換した後、ペイント弾に染まったターゲットを飛び越えて出口へ。

 このキルハウス型のエリアももう出口だ。


「フォボス4、そのまま地面のガイドラインに従いBフィールドに向かえ。次の指示は到着後に行う」

「了解。Bフィールドに向かいます」

 無線越しの声に応えながら、滑走路のように地面に引かれた線に沿って、指示のあったBフィールドへ。

 訓練場の端に位置するその場所は、普段あまり使わないエリアだ。

 言われた通り、先程までいたキルハウスエリアよりもいくらか遮蔽物が疎らな、しかし銃撃戦は十分に可能だろうエリアへ。


「エリア内に進入せよ」

「了解しました。エリア内進入します」

 指示に従い、ゲートのように左右にそびえる、キルハウスと同様雲の描かれた壁の間を抜けて中へ。

 キルハウスエリアのようにといっても、ここはすり鉢の底のように周囲に比べ低くなっていて、周囲に遮蔽物が広がる独特の形状をしている。

 まるで闘牛場――初めて見た時と同様の感想を抱きながら、その周囲を警戒。


「よし、では次は――」

 そんな俺の横を通り抜けた軍曹機がこちらに振り向き、何かを言いかけ――そして銃声と、三発のペイント弾で途切れた。

「ッ!!?」

「フォボス2大破!」

 全てを一瞬で察する――途切れたのではない。これが台本通りだ。

 撃たれたのと同時の軍曹の声と、すり鉢の上から駆け下りてくる二機のエトナ=それぞれ肩に「01」と「03」の表記。加えて「01」には右肩に部隊長を意味する一本の青線入り。

 そして隊長機に先行するもう一機が、こちらに銃口を向ける。


「ちぃっ!!」

 その場からすっ飛んで、一番近くの遮蔽物に身を隠す。

 ペイント弾が、その軌道を追いかけるように着弾。

 コンクリート製のその壁の向こう炸裂するそれらの音をかき消すように、コクピットの中で叫ぶ。

「クソッ!どうする!?」

 無線にはのせず、故に答える者はいない。

 己一人に何をするべきかを問うためだけの声。

 レーダーに目を向ける。バイザーに表示されたフォボス2=大破した軍曹機の友軍信号はまだ切られていない。

 つまりこうだ――バディ機が撃たれ、行動不能ながらパイロットは生存。その状況で敵機二機の襲撃を受けている。

 そして敵の取る動きは典型的なファイア&ムーブメント=隊長機が牽制射撃でこちらの動きをこの壁の裏に封じ、その間にもう一機=フォボス3がとどめを刺すべく接近中。


「ちぃ……」

 その場で振り向き、ライフルだけを壁から出してのブラインドショット。レーダーによって目視せずともフォボス3の方向が分かるのは救いだ。

「動いた!」

 反撃に対して遮蔽物の正面=こちらの腕の可動域の外へ逃げようとするのをレーダー上の光点で視認し、それを合図に腰部ブースターを最大推力で起動。

 フォボス3と膝をついているフォボス2の間に割って入るように飛び込みつつ、空中でフォボス3の方に方向転換を済ませる。

「スモーク!」

 着地と同時に煙幕展張。胴体部分の左右に装備された60mmの発射筒から放出された赤燐(せきりん)弾が辺りを濃霧のような白煙で包み、俺と軍曹機を完全に覆い隠す。


「シッ……!」

 その煙の中、レーダーに見えていた光点を手掛かりに突撃。再度腰部ブースターを最大出力で爆発させ、一気に飛び込んで距離を詰める。

「おおおおっ!!」

 回避動作から立ち直った瞬間のフォボス3に突入。

「ッ!!」

 その動作を、後ろに飛び下がりながらライフルを構えなおした相手の動きで急遽変更。腰部ブースターをバックに入れて飛んだ相手と、お互い鏡映しのようにライフルを構え合う。

 一瞬の睨み合い、いや、睨み合いという時間など経っていないし、お互いに睨むつもりもない。目の前の敵に照準し、お互いに着地と同時に発砲。これまた鏡映しのように双方の銃弾が双方の頭部を掠めていった。

「ッ!!!」

 そして次の瞬間、自機の頭部にペイント弾が爆ぜた。


「状況終了だ。全機ハンガーに戻れ」

 フォボス1=俺を仕留めた張本人の声が部隊間通信で三機に告げた。


(つづく)

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