第7話 ラズとコアン
ストロベリアの街。
10年前。
白い洋館の女主人グラン・リーベ。ラズの母親。
イチゴ欠乏症で、イチゴを食べ続けなくてはいけない病気になった。
白い洋館のメイドのロッテ・マーチ。コアンの母親。
同じく、イチゴ欠乏症になった。
二人は、ストロベリア中央病院に、入院していた。
「お母様。大丈夫?」
「イチゴさえ食べれば、大丈夫よ」
ラズ。10歳。勉強ばかり、していた。
母親の病気を良くするため、イチゴ商人を目指す。
イチゴをたくさん売れば、イチゴを、皆んなが作り続ける。
「何も、出来ないです…グス」
コアン。6歳。いつも、泣いていた。
何の取り柄もない女の娘。母親を治すために何をすればいいかわからない。頭が良くない。
「コアンは、メイドを目指せばいいと思うよ。家事は出来るじゃんか」
「家事…?」
「僕と、一緒に頑張ろうよ」
ラズとコアン。手をつなぐ。手を取り合う。
やがて、イチゴ商人になるラズ。
そのメイドをするコアン。
二人三脚。はじまりは、そんな感じ。
第7話 ラズとコアン
ストロベリア中央病院。
「お母様。お見舞いにきたよ」
「最近、忙しいの?久しぶりね」
「マザコンは、卒業したんだ」
ラズは、母親グランに花束を手渡す。
「お母さん。お久しぶりです」
「お久しぶりです。コアン。元気でやってます?」
「ラズさまと頑張っています」
コアンと、母親ロッテは、双方頭を下げる。
ラズとコアンの母親は、相部屋で入院を続けている。
イチゴ欠乏症は、水属性の呪い。
母親たちは、共に、夫とケンカ別れしていた。
ラズの父親だった男は、水属性魔法使いで、二人の女性に、イチゴ欠乏症になる呪いをかけた。
それが、現在も続いているのだ。
「ケンカ別れで、迷惑かけてるわね」
「お父様が悪いんだよ」
ラズは、父親が嫌いだ。
イチゴ欠乏症の呪いをかけた当人が、治せない。
父親の水属性魔法使いは、イチゴ欠乏症の呪いを解く研究を“別の女”と続けている。
いつか治すつもりは、あるのだろうか。
信用できない。
「僕が、苺王国の宮廷魔術師に頼んでみようかな」
お姫様の爆買いのおかげで、使えるおカネがたくさんある。
母親のために使うべき時なのかもしれない。
でも、親のために、生きるつもりにはなれない。
白い洋館。
「おかえりなさいませ。ラズさま。コアンさん」
サッと、白魔法のホウキも挨拶。
「ああ、いつもありがとうね。トーマス。ホウキ」
ドサッ。
ラズは、右手に持っていたカバンを、わざと落とす。
「コアン。お仕置きしようか」
笑顔だ。
「え」
対応出来なかったコアン。
あわてて、カバンをひろいあげる。
中庭。
「お仕置きね」
ラズは、教鞭を手に笑顔だ。カッコいい人。
「え。あの…」
「僕、嫌な父親を思い出して、機嫌が悪いんだ」
「ああ、わかります」
「ちょっとした、高速お仕置きに気づいた?」
「はい…」
「寂しいんだよ。気づいて欲しいな」
教鞭を手放す。大きく手を広げるラズ。
「おいで」
「はい」
コアンは、自ら、ラズの元に向かう。
だきっ。
ラズとコアンは、強く抱きしめ合う。
勝手な大人たちに、傷ついた10年前を思い出す。
でも、時間は、自分のものだ。
自分たちのために使ってきたつもりだ。
「今も、これからも、ずっと一緒だからね」
「はい。ラズさま」
イチゴの香水が香る。きっと、二人は上手くいく。




