第6話 爆買いアナスタシア
ストロベリアの街。イチゴ商店街。
ザワザワ。ザワザワ。
商店街は青い髪の、水の精霊ウンディーネたちでにぎわっていた。
「にぎやかだね」
種屋に来たラズは、精霊の多さに驚く。
「苺王国のお姫様に仕える侍女たちらしいよ」
侍女ウンディーネか。
種屋の主人は、お姫様も来る予定があると言う。
「お姫様が来るの?」
「名産の白リッチを食べに来るらしいよ」
「ああ、そうなんだ」
ラズは、種を買う。
すると。
「カッコいい…」
一人の赤毛の女の娘が見上げてきた。
カッコいい。ラズのことである。
「まあ、確かに僕はカッコいいけど」
否定することはない。
今日は、メイドのコアンと一緒ではない。
コアンは、自分がメイドだから、洋館のお仕事をしたいと、言い張ったのだ。
帰ったら、お仕置きという“愛”で、抱きしめるつもりだ。
「この街のイチゴの相場はいくらかしら?」
「イチゴかい?一個1ゴールドで買えるよ」
「安いわ。全部買う」
「全部…」
ラズは、顔が引きつる。
「全部ですね。買いましょう」
10人以上いる水精霊ウンディーネがイチゴを買いあさる。
爆買いだ。
「水の精霊が動くってことは…」
「私は、アナスタシアよ。貴方は?」
「アナスタシア…」
苺王国のお姫様。
アナスタシア・ストローベリーズ。14歳。
赤毛のツインテールの女の娘。
ウワサに聞く、プリンセス。
「僕は、ラズ。イチゴ商人だよ」
第6話 爆買いアナスタシア
白い洋館。
玄関。
「ただいま。帰ったよ。コアン」
「おかえりなさいませ。ラズさま」
「すぐ、ミーズを呼んでくれないかな」
ラズは、白イチゴ栽培の水精霊を呼ぶ。
白リッチの収穫前と在庫に、一斉に買い手がついたという。
白魔法のホウキも、不思議そう。
「買い手がついたのー?」
「それがね。お姫様なんだよ」
「お姫様ですか?」
「そうなんだよ。大もうけの大チャンスさ」
入り口。外庭。
豪華なピンク色の馬車が、止まっている。
トーマスも加えて白リッチの箱を馬車に運び入れる。
「10万ゴールドで買わせていただきます」
「爆買いしてもらったよ」
「すごいです」
「やったー」
「すごい。すごい」
洋館の商人ラズ、メイドのコアン、栽培係のミーズ、使用人トーマス。大喜びで手をつないでまわる。
白魔法のホウキは、その中央で踊っている。
名産イチゴ。白リッチは、1個10ゴールド。
1箱10個入りで、100ゴールド。
高級品なのだ。
1ゴールド=100円。
それを地下の氷魔法の冷凍室に、100箱、保管していたのだ。
手数料やら、氷魔法料、何やらを一括で、10万ゴールドでお買い上げしてもらった。
これは、大もうけである。王族ミラクル。
「在庫が売れてうれしいよ」
だきっ。
ラズは、コアンを抱きしめる。
イチゴ香水の香りにつつまれる。大好きな香り。
「ラズさま。良かったですね」
「うん。良かった」
完全な黒字だ。当分、遊んで暮らせる。
「これは…コアンに、本当のお仕置きをするチャンスかも」
「え?」
「ふふふ」
上機嫌のラズは、不敵に笑う。
スタイルの良いラズは、コートの中に、お仕置き用の教鞭を持ち歩いている。
「これで、ビシッとやっていいかい」
「い、嫌です…」
この困る顔。これが、たまに見たくなるのは秘密だ。




