第5話 若くてフレッシュ
ストロベリアの街。農林大臣邸。
「そうか。息子は。トーマスは元気か」
農林大臣グランドリーは、安堵した表情を浮かべる。
第二夫人候補にメイドを迎えようとする大臣。
実の息子トーマスのイチゴ泥棒問題に頭を悩ませていたのだった。
自ら、栽培する白イチゴを食べるなら、泥棒にはならない。
ひと安心だ。
「僕なら、メイドだけと結婚します」
イチゴ商人ラズ。
その後ろには、メイドのコアンがいる。
洋館をミーズとトーマスにまかせている。
「キミには、相談にのってもらい助かっている。まだ聞いて欲しいことがあるのだが、いいだろうか」
大臣は、深く考え込んでいる。
「聞きますよ」
「イチゴ農園をまかせている水精霊ウンディーネたちがいるだろう」
「いますね」
「年若いウンディーネたちが、作るより食べる派になってしまって困っているそうだ」
「ああ。有りがちですね」
後継者問題ってやつである。
第5話 若くてフレッシュ
ストロベリアの街。中央イチゴ大農園。
街の中央にある、一大に広がるイチゴ農園である。
水の精霊ウンディーネの長老を筆頭に、水精霊のイチゴ農家たちが集まっている。
イチゴの産地。
街の約70パーセントのイチゴを提供している。
ブランドイチゴの白リッチや、赤リッチ、無印イチゴが作られている。
イチゴ商人のラズも、毎度の仕入れに訪れる。
「農林大臣から、聞きましたけど。後継者問題があるそうですね」
ラズは、イチゴの仕入れのついでに話題をふる。
そして、摘みたてのイチゴを物色する。
赤リッチの摘みたてが、安く置いてある。
10個入りの赤リッチの箱を二つ買う。
「年若いウンディーネは、駄目である」
青い長い髪で筋肉系の長老は、腕組みで仁王立ちしている。
若いウンディーネは、イチゴを作らず、食べてばかりで何もしない。不健康でもある。
精霊は、長老でも、元気で健康的だ。
「コアン」
「はい。何ですか?」
「帰ったら、二人でこのイチゴを食べよう」
「え。いいんですか?」
「いいよ。いいよ」
ラズは、コアンと、ひと箱ずつ、イチゴを持つ。
「後継者問題ですが…」
「うむ」
「気合です」
「うむ」
「やる気、根気、気合をたたき込むべきですよ」
「うむ。その通りだ。ありがとう」
筋肉系の長老は、腕を高々と上げる。
農園で働くウンディーネも全員、腕を高々と上げる。
やる気、根気、気合を持つ大人たちだ。
若い者には、この気力を継承をしなくてはいけない。
白い洋館。
「おかえりなさいませ。ラズさま。コアンさん」
トーマスが出迎えた。
掃除係の白魔法のホウキも元気に出迎える。
広間。
「買ってきたイチゴを食べようか」
「はい」
箱は、二つ。
10個入りの箱だ。
「一人一日10個くらいでいいよね」
「そうですね」
「食べ…させて欲しいな」
ラズは、コアンの瞳をのぞき込む。
「一個ずつ…ですよね」
「一度に、二個は多いよ」
「そうですよね。…どうぞ」
ヘタを取って、ラズのお口の前にイチゴを。
パクリ。
「うん。美味しい」
働くウンディーネたちのおかげだ。
「ウンディーネたちに、感謝だね」
「そうですね」
ヘタを取ってコアンのお口にもイチゴを寄せるラズ。
パクリ。
「女の娘のイチゴを食べる姿は可愛いね」
これを見れるのもウンディーネたちのおかげなのだ。




