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09 天空城決戦へ03

旧県立総合病院・現作戦ベースキャンプ。

イルとミサ、そしてイルの乗る車椅子を押す喜美江は病院の屋上にいた。

三人は辰たちが向かった方角を見ている。

「もう行ったのかな?」

「多分ね、でもまだ静かだから状況は始まっていないと思う」

喜美江はミサに尋ねながら遠い目をしていた。

「それよりも喜美江ちゃん、本当に大丈夫なの?」

ミサは車椅子を押す喜美江を心配していた。

喜美江は先の戦闘で父親を含む隊のメンバー全員を失った後、失意のまま縄文寺の隊に連れられてここへ出向途中、阿熊と遭遇し、そこでも命からがらの激戦になったはずだ。

そんな様子を感じたのか喜美江が不意に声をかけてきた。

「なによそよそして・・・心配してくれるの?

うん、私は大丈夫。縄文寺さんや他の隊員さんたちがみんな支えてくれたから。それにもうそれどころじゃないって」

喜美江はそう言うと車椅子に座るイルの肩を後ろから抱いた。

「二人の事を聞いた時、もう気が気でなかった。家族・兄弟同然の隊員を失い、数少ない友達までもが失うかもしれないと思ったとき、もう体が勝手に動いていた」

「・・・ありがとう、喜美江がきてくれたから私たちはもう大丈夫だよ。でもなんか今日は信じられないくらいおしゃべりだね」

イルは元気がないものの体力を徐々に取り戻しつつある。

ゆっくりと、でもはっきり口を開いた。

「今日はね、なんか特別な感じがするから。なにか私たちの全てが変わりそうな気がする、そんな気がする・・・」

喜美江はそう言うと身体を上げ、空を見上げた。

「見えなくなった私の分までキッチリ拝んどいて」

イルはちょっと意地悪っぽく喜美江に声かけた。

「大丈夫だよイル。お医者さんは回復の見込みはあるって言ってたじゃない」

「ハッ、どうだか」

イルは椅子に座ったまま背をゆっくり伸ばし、柔軟した。

「オッサン達絶対生き残って帰ってくるよ。あのバカを急いで忍ばせたし」

「ルイさんね。オッサンとそのまま心中なんて考えなければいいけど」

「ないない、あのエロガキがいい年こいたオタクのオッサンと心中とか絶対考えないでしょ」

そうやって三人で他愛もない会話をして、笑った。

三人とも辰達が作戦での囮役に当たっていたことは知っていた。

それども、心の不安を少しでも拭うように。彼らを信じて空を眺めた。

ふと、ミサが柵の際まで小走りした。

「ミサ、どうしたの?」

「ん、願掛け。ルイの奴、私やイルの胸見たいって言っていたから、空に向かってストリップしてやろうかと思って」

それを聞いたイルと喜美江の二人は思わず噴き出した。

「はははっは。あいつら私たちがトップレスになったら任務忘れてそっこーで戻ってくんじゃない?」

「私も付き合おうか?」

「だめだよ、喜美江ちゃんが脱ぐと絶対調子乗るよあいつら」

ミサは笑いながらそう言うと空を背にシャツの下端に両手で手をかけた。

今日の空は普段よりも曇りぞらが薄く、もしかしたら、もしかするかもしれないと、ミサは感じた。

「・・・もしかしたら・・・いや、今日は絶対”晴れる”!ほらみんな、帰って来てね」

ミサはそう言うと勢いよくシャツを捲りあげた。


ガンツアーズのガンバスから猛々しい二つの柱が火柱を上げ勢いよく飛び出した。

「爆導線弾発射!!AB共に目標点に向かって側面弧を描くように飛翔し到達後、2秒後に連動爆破」

明姫幹線道路を行くガンバスの周りは建物や密林が生い茂っている。

そしてそこに待ち構えていたおびただしい数の阿熊達の前を爆発能力の有したワイヤー弾が勢いよく飛翔した。

飛び出したA弾、B弾が交錯したと同時に推力が止まり、

空中で停滞すると2秒後先頭から後方にかけて凄まじい爆発が連続して起こった。

阿熊達の痛みに耐える絶叫が辺りに響き渡る。

「オオオオオオオオオオォ!!」

辰はガンツアーのガンバス搭載のイエローサイン形見兵器・カネシドローンに搭乗していた。

カネシドローンは円盤状であり、その”淵”は武器格納及び推進部であるメカブロックが8機搭載されている。

ガンバスからの動力コードに繋がれたまま飛行しており、傍から見ればそれは正月にタコ上げをするような形に見えた。

上空80m辺りを滞空する搭乗ドローンから雄たけびを上げ、両手に携えた単装砲の引き金を阿熊に向けて引いた。

「ガンツアー、総火力!!」

操舵をするルイがアイに向かって叫ぶ。

”了解、セントリーガン全A~H群動体探知一斉掃射、4部カノン砲砲撃開始、後部ドラムマシンガン掃射開始、

フロントバルカン群一斉射撃開始、両サイド20mm2連機関砲砲撃開始、下部グレネード砲状況別砲撃開始、

各デコイ車1~6号車ルーフセントリーガン射撃開始、

各車は旗艦車ガンツアーに連携・追従”

ガンバスの車体の至る所からバレルが伸び、パネルが開き、

凄まじい轟音共に火花を上げて砲撃が始まった。

辰は射撃を続けたまま、ガンバスの前方上部へと勢いよく

飛び出し建物の物陰や生い茂った木々の隙間から

狙おうをする阿熊を一網打尽にする。

両手で撃っていた銃の弾が切れる。

だが辰は弾を再装填することもなく勢いよく投げ捨て、足でドローン床部のスイッチパネルを踏むと

メカブロックから次の銃が飛び出した。

即座に取り出し、構えると同時に射撃開始。

四方八方お構いなし、鬼人の如く射撃を続け敵を打ちのめしていった。

「!!」

高度をやや下げた途端、頭上には体当たりをブチかまそうと

こちらに向かって落下する阿熊が目に入った。

それと同タイミングで両手の銃の弾も尽きる。

「メッサ―トマホーク!!」

”有効時間40秒”

辰は勢いよく叫ぶ。

銃を捨てると同時にせり上がった対阿熊用白兵戦用電磁斧・鉞と銘打たれる辰曰くメッサ―トマホークを掴むと

落下する阿熊を勢いよく両断した。

大砲で狙いを定めようにもすさまじい速さで蛇行するドローンに狙いを定めきれずまごつく阿熊達に

辰はドローンを低空飛行させ次々に阿熊達を切り伏せて言った。

「鏡、俺が本家の使い方を教えてやんよ!」

先の戦闘での鏡を思い起こしながら、辰は自身の負傷もものともせず鏡を超える勢いで曲芸師のように鉞を振りかざした。

そして、鉞の有効時間が切れると次はアサルトライフルを二挺呼び出し、前を向いたまま

右手のライフルを左わき腹から後ろに迫りくる阿熊に向けて掃射し、

左手のライフルは正面の阿熊を正確に撃ちぬいていった。

まるで体の至る所に目が付いている程の正確さである。

ガンバスの勢いも止まらなかった。

あらゆる砲撃が阿熊を追撃し、知能が高い阿熊が打つロケット弾をセントリーガンが弾幕を張って撃ち落とし、

撃ち漏らした阿熊や、迫りくる阿熊をルイが巧みな操舵で蹴散らしていった。

「オッサン、いい感じだ!今モニターを確認してるが姫川市遠方に散らばっていた連中も続々とこっちに向かってる!」

ルイは興奮冷めやらぬ勢いで辰に伝える。

「わかった!アイ、状況は?」

”現在、国道を天空城へ向けて進行中。現在損害率18%、弾薬保有率63%

・・・・・・作戦本部自警団代表より入電。我、虎と共に現在侵攻開始セリ”

(・・・これは、本気で行けるかもしれない、このまま蹴散らしながら本体との合流を―――)

辰がそう思った矢先、戦闘を行くデコイ車の1台の車体に次々と無数の穴が開いてゆく。

「砲撃か?!ヤバい!」

ルイがそう叫んだとたん、そのデコイ車はバスケットボール並みの大穴が幾つも空いて

大爆発を起こし、轟沈した。

「アイ、どこからだ?!」

”分析中、、、本車より10時方向、約200m地点”

辰は報告を受けるや否やドローンの高度を上げ、建物の隙間を縫うようにスコープで索敵した。

(・・・いた!ヤバイ、あいつらは、もしや)

その姿は、ペーロン隊を沈め、自分達をも窮地に陥れた精密射撃ができる

”ヒグマ”だった。


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